第372星:織田 野々
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。『グリット』は『他化自在天降臨』で、自身の背面に5〜15mのエナジー体を顕現させ、高い防御力と攻撃で相手を圧倒する能力。
「あら?お戻りになられたのですか、大和」
観客席に戻ると、先程までとは同じように、咲夜が客席に腰掛けながら試合を見ていた。
「ん、まぁね。やる事はやったから、あとは専門の人に任せてきた」
「……?」
咲夜は大和の言葉の意図を図りかねていたが、大和は笑みを浮かべるだけで、それ以上のことを口にはしなかった。
「それで、どう?ボクが離れてた5分くらいの間に、何か変化はあった?」
大和はフィールドの方へと目を向けると、咲夜もそちらに向き直り、大和の言葉に頷いた。
「えぇ、だいぶ戦闘が本格化しました。と言うよりも…」
「……成る程、野々君が大暴れしてるわけか」
●●●
「『徹甲貫通弾』!!」
通常弾を重ね合わせ、遥は威力と貫通力を上げた弾丸を放つ。
「フハハ!!その程度かぁ!?」
しかし、具現化した巨大な鎧武者は、これを片手で防ぐ。
それだけでなく、防いだ勢いで腕を薙ぎ払い、遥達に攻撃を仕掛けた。
「『爆裂弾』×『爆裂弾』=『爆裂発弾』」
「『輝伝衝波』!!」
迫り来る巨大な手に怯まず、遥は自身最高の威力を誇る弾丸を放ち、同じタイミングで葉子が『輝伝衝波』を伝播させる。
真正面からではなく、斜め下から直撃した二つの攻撃は、野々の『グリット』の薙ぎ払いの進行方向を僅かに逸らすことができ、どうにか回避に成功する。
「私の最高威力の弾丸が進路変更にしか役に立たないなんてね!!なるほど、最強の『グリット』に推されるだけの強さはあるね!!」
「遥さんの弾丸と、私の『輝伝衝波』でどうにか軌道は逸らせましたけど、ダメージを負っている感じは全くしないですよね。どうします?」
遥は「う〜ん…」と考えた後、すぐに答えを出した。
「ひとまず回避に専念しよう。これ程強力な『グリット』を開始と同時に使用しなかったのは、何かウィークポイントがあると見た。だから、天城君を除く私達三人が固まったピンポイントのタイミングで使用したんだろう」
遥は、「それに…」と視線を隣に向けながら続ける。
「時間が経てば経つほど、円香ちゃんの『グリット』の精度は高まっていく。より明確な弱点が見えてくるのも時間の問題でしょ。私達の仕事は、それまで逃げ切る……いや、生き残ること。良いわね」
「了解」
この後の方針を固めた二人は、再び野々の攻撃に対する迎撃体制に入る。
「フハハ!!まさかこれを逸らされるとはな!!ならばこれはどうだ!!」
野々は今度は薙ぎ払うのでは無く、鎧武者の腕を振り上げ、そのまま遥達目掛けて振り下ろした。
「私の弾で攻撃速度を遅らせる!その隙に散開して!!」
遥は動揺することなく、二人に指示を与えると、自身は両手で輝弾を組み合わせて作り上げていく。
「『爆発裂弾』」
真上へと放たれた弾丸は、振り下ろされた鎧武者の腕に直撃し、僅かではあるがその速度を緩ませた。
その隙に全員が各々の方向に散開。どうにか二度目の攻撃の回避に成功していた。
「(さて…あぁ言ったものの、このペースで合成弾を使わされるとなると、あまり長時間の回避は質量的にも『エナジー』的にも厳しい)」
次の攻撃に備え、直ぐに輝弾をセットしながら、遥は尚も現状の把握に努める。
「(こういう時のために円香がいるとは言え、これ程の規模の能力を解析するとなると時間を要する筈…)」
そこで遥は、ふと一つの答えに辿り着く。
「(第一部の戦いで、織田 野々が全開の『他化自在天降臨』を使用しなかったのは、円香ちゃんの解析をさせないためか…そしてその仕込みをしたのは勿論…)」
チラッと横目でそちらを見れば、その視線に気が付いたカナエがニヤリと笑みを浮かべた。
「(参った…潔く認めよう。私は戦略家としての彼女の力量を甘く見ていた。まさか第一部での勝利を見越した上で、こんな隠しダネまで用意してたとは。『近畿の平和に黒田 カナエ有り』というのは伊達でも何でもないね)」
勝利を思い描き、先を見通すという点において、完全な敗北を認めた遥は、しかし勝負までは捨てていなかった。
迫り来る野々の攻撃を迎え撃ち、再び味方に回避する隙を与える。
「(だが逆を言えば、第一部で温存せざるを得なかったとも言える。彼女の『グリット』、何か大きな弱点があるんだろう?)」
それを見つけるのは円香の役割になるだろう。
しかし、それを見つけた時、東京選抜は大きく勝利に近づくことになるだろう。
遥はその事を十分に理解していた。無論、織田 野々も、である。
「あ〜ちょこまかと鬱陶しいの〜。大方、草壁 円香とかいうやつに我の『グリット』を観察させるための時間稼ぎをしているであろう?」
遥達の目論みは野々にもバレていた。
しかし、これだけ回避に専念していれば、野々に気付かれる可能性は当然あると遥も考えていたため、想定内のことである。
「そういう能力とはいえ、このまま誰も倒せんまま観察されるのも気分が悪い」
野々は僅かに考え込んだ末、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
「だが面白い。そ奴の観察力とやらを試すために、我ももう少し本気を出してやろう」
その何気なくこぼされた一言に、遥達の思考が一瞬止まった。
その間に、野々はゆっくりと腰につけられた刃、『へし折り長谷部』を抜いた。
すると、それに合わせて巨大な鎧武者も懐から巨大な刃を抜いた。
「ハハ……まさか、武器の携帯も可能なのかい…?一体どこまで……」
武装された姿の鎧武者の姿に、流石の遥も苦笑いを浮かべるしか無かった。
「さぁ…これをどうする!?」
そして、野々はそれを思い切り良く横に薙ぎ払った。
その動きに合わせるようにして、鎧武者も巨大な刀を横に薙ぎ払う動きを見せ出した。
「『爆発裂弾』!!」
遥は直ぐさま攻撃を仕掛けるが、先程までの腕とは違い、振り回された刀は、遥の合成弾を容易く弾いていった。
「(なんて強力!!私の合成弾でさえ全く効果が無いじゃないか!!)」
弾く事を諦め、遥は回避に専念する。
身を屈め、刀と地面に出来た僅かな隙間からギリギリのところでかわすことに成功する。
「む…?地面との距離を測り間違えたか。いかんな、『他化自在天降臨』の全開は久々だからなぁ。まだ加減が分かっておらん」
薙ぎ払ったあとの『へし折り長谷部』を肩にトントンと当て、野々は不敵に笑みを浮かべた。
「(これはまずい。円香も分析を続けてるけど、今言ったことが事実なら、織田 野々もまだ能力を全開放していないことになる。そうなると、いくら円香が分析しても、その結果が正しいとは限らなくなる…このまま回避だけに専念するのは得策じゃない…けど…)」
ここにきて、遥は『大輝戦』という舞台で初めて迷いを見せた。
圧倒的な実力を誇る東京選抜ではあるが、同じ猛者である、たった一人の強大な実力者によって、その優位性が覆されていた。
それは、エリートの集まりである東京選抜からすれば未知の経験とも呼べる。
そんな状況に、一筋の汗を額から垂らし焦る遥に、耳元の通信機から通信が入る。
『遥さん、一つだけ、弱点らしきものを見つけました』
それは、この状況でも常に観察を続けていた円香からの通信であった。
『彼女の《グリット》は、エナジーを具現化させたものです。ですが、その本体は、具現化をしているだけで、鎧武者のような堅甲な鎧に覆われていません!』
円香に言われ、遥が野々に視線を向けると、確かに野々自身はオーラを発しているだけで、その周囲は無防備であった。
しかし……
「だけどどうやって彼女本体に攻撃を仕掛ける?この鎧武者の硬さは半端じゃない。正直言って、私の全エナジーを持ってしても、破れる自身は無いよ?」
『破る必要はありません!』
遥の言葉に、円香は即座に答えた。
『遥さん、落ち着いてください。遥さんなら出来るはずです。鎧武者の防御なんて関係なく、本体に攻撃を仕掛けることが!』
自分が今、冷静で無い事を見透かされた上で、円香の言葉を聞いた遥がハッとする。
円香が何を言わんとしているのかを理解したからだ。
遥も東京選抜のエリート。だからこそ、ある種の挫けやすい側面を持つ。
いまの一瞬、遥はその壁にぶつかっていたが、円香の強い言葉で再び自信を取り戻していた。
「(あぁ情けない。散々彼女達に言葉を投げかけてきた私が、この決勝の舞台であろうことか真っ先に挫けそうになるとはね)」
フゥ…と小さく息を吐き、冷静さを取り戻した遥は、円香の通信に答える。
「分かった。その作戦で行こう。彼女の弱点を見出すチャンスだ」
己の未熟さを痛感した遥は、いまこの時、更なる飛躍を遂げようとしていた。
「(仲間に頼る、仲間を信頼する。その大切さは理解していたつもりだったんだけどね。私もまだまだ、ということか。伸び代だらけで嬉しいね!)」
そして、両手に輝弾を携え、遥は再び最強の『グリット』を持つ、織田 野々に立ち向かっていった。
※後書きです
ども、琥珀です。
週五の更新は本日までになります。
土日はお休みをいただき、来週からは週三回更新に戻りますので宜しくお願いします。
そろそろ左半身…治ると良いな…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




