第368星:キーマン
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。
それは突然脳に響いてきた。
「『斑鳩 朝陽さん、聞こえますか?』」
「うぇ!?」
側には誰もいないはずなのに聞こえてくる声に、朝陽は思わず声をあげてしまう。
「『落ち着いてください。私です、黒田 カナエです』」
「あ、カナエさん…なるほど、『グリット』で…」
カナエの『グリット』、『念通信』は、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるもの。
通常なら通信機でも良いが、朝陽達は本来は敵同士であるため、現在通信機同士での会話は不可能。
その為、カナエが『グリット』を使用し、朝陽の脳内に語りかけていた。
「『そちらも脳内に言葉を思い浮かべて下さい。それでやり取りが出来ます。声に出すと悟られますので』」
「『わ、分かりました』」
カナエの言われた通り、頭に言葉を思い浮かべると、不思議な感覚でそれが相手に直接伝わっているのが感じて取れた。
「『今からこの戦局を変えるための作戦を伝えます。その為のキーマンは、朝陽さん、貴方です』」
「『わ、私が、ですか!?』」
膠着状態が続いていることもあり、自分がそのキーマンになるとは思っていなかった朝陽は、驚きの声を(心の中で)あげる。
「『対峙している朝陽さんが一番実感されていると思いますが、目の前にいる草壁 円香さんの《グリット》は、時間が経てば経つほど効果が強力になっていく《グリット》です』」
「『は、はい。それは分かります。段々と私の動きが読まれてきてるのを感じてますから』」
ここまでの肉弾戦のなかで、徐々に押し込まれている現状を踏まえ、朝陽は答えた。
「『他の場所も同様に、既に私達の動きを読まれている現状です。ですので、時間を掛けた戦闘はドンドン我々が不利になっていきます』」
「『で、でも、この状況を直ぐに打破するのは難しいです』」
「『そこでです!!』」
頭の中がキーンとするような声量で、カナエがプランについて語り出す。
「『彼女の予測を裏切るプランが必要なんです!!』」
「『よ、予測を裏切るプラン…ですか?』」
ある意味で至極真っ当な意見ではあるものの、円香相手にはそれが難しいと理解していた朝陽は困惑する。
「『まぁその辺りは口で伝えるよりも、イメージをお見せする方が早いでしょう。こちら、このようなプランになっております』」
まるで案内サービスのような物言いに首を傾げた朝陽であったが、やがてその頭の中に、カナエの思い描いていたプランが流れ込んでくる。
これがカナエの『念通信』の真骨頂は、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能な点にある。
これにより、複雑怪奇なプランを組み立てるカナエの思考も味方が理解できるようになり、より綿密な連携を図ることが可能になるのである。
そのイメージを目にした朝陽は……
「こ、これ……私めちゃくちゃ大変じゃないですか…?」
と思わず口に出していた。
「……?」
その様子を訝しげな様子で見つめる円香の視線でハッと我に返り、何事も無かったかのように振る舞う。
「『いやぁまさにその通りでしてね!!朝陽さんの第一手が全てと言っても過言では無くてですね!!』」
「『分かっててやらせるんですね!?』」
ケラケラと可笑そうに笑いながら語りかけるカナエに、朝陽は呆れた雰囲気を漂わせる。
その時朝陽は一瞬脳裏で考え込んだ。
これは自分を酷使して、漁夫の利を得ようと企んだ作戦なのではないのかと。
しかし次の瞬間、今は自分の考えたことが相手に筒抜けになってしまっていることに気付き、直ぐにその考えを捨てた。
しかし、カナエにはしっかりと伝わっていたようで、僅かに気まずい沈黙が漂った。
「『…まぁ我々は本来敵同士ですからね。これだけ骨の折れる作戦を建てられたらそう疑うのも無理はありません』」
「『ちがっ!!……わないんです……けど……』」
即座に否定しようとするが、頭の中で考えたことは実直な考えのため、否定は意味がないと思い直し、素直にその通りだと認めた。
「『アッハッハ!!本当に、聞いていた通り素直な方ですね!!普通いくら考えを読まれたからといって、それをハッキリとは認めないでしょうに』」
疑われたにも関わらず、カナエはそれを気にした様子を一切見せず、笑って答えた。
「『まぁ無理をして貰うんですから、私も少し自分語りしておきましょう。アレです。慣れてるんですよ、疑われることには』」
「『え…?』」
先程の高いテンションからは一変、僅かに暗い雰囲気を漂わせながら、カナエは自分語りを始めた。
「『そら今でこそ智将だとか軍師だとか色々な名声をいただいてますよ?それだけの実績と功績を残してきましたし、自負もあります』」
カナエは『でもね…』と続ける。
「『それだって、最初からついてきた訳じゃないですし、最初から全てが上手くいっていた訳でも無いんですよ』」
それは意図してか、それとも無意識か、かつての、『グリッター』として戦い出した時のカナエのイメージが、朝陽の脳裏に流れ込んできた。
「『数々の作戦を立案してきた私ですが、当然犠牲者も出してきました。愚かで最低な私は、勝利のための最少の犠牲は、名誉ある死だと考える大馬鹿モノだったわけですよ』」
その当時のカナエの姿が、断片的なイメージとして朝陽の目に映る。
「『そんなある日ですね。私の目の前で友が亡くなったのは……あぁいや違う……私が殺してしまったのは』」
その場面は具体的なイメージは暈されていた。それでも、カナエの涙を流し、絶望し切った表情は、映し出されていた。
「『私の采配ミスでした。万全を期しておけば避けられた犠牲を、私は攻め急ぎ、結果として少なくない犠牲者を出しました。私の名前が世間に通り出して、一年位経ったある日のことです』」
朝陽の目に映し出されたイメージには、勝利を喜ぶ周囲の面々と、荒んだ表情でそれを見るカナエの姿があった。
「『友を無くしてようやく気付かされたんですよ。《生きるために、立ち向かう》という、初代グリッターが残した言葉の本懐を』」
イメージが映ったわけではない。それでも、念話からカナエの言葉の重みが伝わってきていた。
「『私は指揮をするだけ、前線に立つことは滅多にない。けれど、前線に立っている人達は、常に死と隣り合わせで戦っているどれだけ優れた采配をしても、犠牲はどうしても出る』」
話が進むにつれ、カナエの声のトーンが暗く、重くなっていく。
「『だからこそ私は…生き続けた者は死んでいった者の想いを背負って戦い続けていかなくてはならないのだと』」
そして、その覚悟が、想いが、カナエの『グリット』を通してハッキリと朝陽に伝わっていった。
「『だから私は常に最善の策を練ります。何百、何千通りのパターンを考案して、組み合わせて、最高のプランを作り出します。それが、私の《グリッター》としての覚悟なんですよ』」
念話は素直な思いや考えを相手に伝える。
だからこそ、朝陽はカナエの言葉と想いを素直に信じることが出来た。
「『たはっ!!いやすいません、ちょっとお話しするつもりが、何か変にしんみりした話になっちゃいましたね!!』」
そこからはいつも通りの明るく軽そうなカナエの雰囲気に戻っていった。
「『でも……まぁその、どうです?ちょっと無謀な作戦なんですけど…乗っかってくれます?』」
どれだけ真摯な話をしようと、話し相手は最終的には敵である朝陽。
その朝陽がカナエのたてた作戦に賛同してくれるかは、カナエにも分からなかった。
それだけ、朝陽に無理を強いる作戦であるからだ。
しかしもし、この時この念話の中に夜宵が入っていれば、その答えは考えるまでもなく出ていることに気付いていただろう。
そして実際、朝陽の中で答えは既に決まっていた。
「『分かりました、カナエさん。その作戦、やりましょう!!』」
キョトンとした雰囲気を漂わせながら、僅かな沈黙の後、カナエは恐る恐る尋ねる。
「『良いんですか?私が提案しといて何ですが、ホントに朝陽さん有りきの作戦というか、朝陽さんに負担を強いて成り立つ作戦なんですが…』」
「『だってそれが、カナエさんの導き出した最善の策なんですもんね!なら、今は私はその作戦を信じます!!』」
朝陽がカナエの信念を感じ取ったように、カナエもまた、朝陽がどこまでも真っ直ぐに自分の作戦を、否、自分自身を信じているという思いを、感じ取っていた。
「『ホントに…お人好しなんですねぇ…』」
その言葉は朝陽に届いたかどうか。
「『兎にも角にも、私達の次の動きは決まりました。いっちょ目に物を見せてやりますか!!』」
「はい!!」
そこで念話は途切れ、朝陽は再び意識を円香へと集中させた。
カナエの考えた作戦を遂行するための、覚悟を持って。
※後書きです
ども、琥珀です。
先日、初めてエッセイを投稿致しました。
思っていたより読まれなかったのは正直残念でしたが、それでも少しでも多くの方に自分の創作活動について思い返して貰えていれば良いな、と思います。
ここからは、また本作の執筆に力を入れて参りたいと思いますので、宜しくお願いします。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は明日、火曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




