表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
1章 ー朝陽覚醒編ー
4/481

第三星:再開

登場人物紹介


青年(?)

朝陽が出会った(ぶつかった)青年。纏っている服装から『軍』の将校であると思われるが正体は不明。優しい笑みを浮かべるなど心優しそうな青年。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至っておらず、現在は指揮官の報告官を務めている。戦えないことに引け目を感じている。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。根拠地にいる『グリッター』を束ねる部隊の隊長。責任感が強く、仲間たちから信頼されているが、妹の朝陽が絡むとポンコツ化する。

 斑鳩(いかるが) 朝陽(あさひ)は『グリッター』であって『グリッター』ではない。


 少なくとも今はまだ、という意味でだ。


 『グリッター』としての力は間違いなく秘めている。しかし、開花するまでに至っていない。


 それはつまり、『脅威(メナス)』との戦いに出ることが出来ないことを意味する。


 そもそも『グリッター』のもつ光とは何なのか。残念ながらその正体は完全には明かされていない。


 しかし、復権した科学力によってその謎の一部分が解明されている。


 突然現れた『グリッター』の力の原因は、隕石がもたらした謎の粒子である。


 その粒子は人体に悪影響を及ぼしていたが、月日を経て人間はそれに適応し出したのだ。


 いや、突然変異と言った方が正しいかもしれない。


 その変異した部分は染色体。それも性染色体である。


 性染色体は粒子の影響を受け突然変異し、人間の性別を決める働きに留まらず、それまで受け継がれてきた遺伝情報から、その人間が本来持つ力を引き出し、それに耐えうる人体を作りだそうした。


 その為に次に着手されたのが遺伝子。


 人間の本来持った力を常時解放した状態は、人間の体に負担がかかり過ぎてしまう。


 遺伝子は人間の身体がその暴走をセーブするために、一部の機能を停止させている。


 その停止している機能を、染色体は解放した。


 受け皿となる遺伝子を目覚めさせ、肉体を強化し、その全てを引き出した。それが『グリッター』のもつ能力の秘密である。


 では具体的にどんな能力を使うことが出来るのか。それは開花するまで分からない。


 中には武器を生み出して戦う者もいれば、超能力で物体を操って戦う者もいる。


 その力はまるで人間の性格のように千差万別なのである。


 個々人によって現れてくる『グリッター』の能力は、『星輝グリット』と呼ばれている。


 星輝(グリット)の間では、当然能力の相性の問題も出てくるし、差も現れる。それが等星の階級という形で表されているのである。


 更に、この突然変異にはもう一つ特徴がある。


 それは性染色体のうち、X染色体にしか変異を及ぼさなかったということである。


 それは即ち、X染色体を二つ持つ女性に多く顕現することを意味する。


 通常であるならば、X染色体に突然変異が生じた場合、真っ先にその影響が出るのは、X染色体を一本しか持たない男性であると言われている。


 しかし、今回の突然変異に関しては、眠っているX染色体を無理やり覚醒させる効果を持つために、二つもつ女性が多くその影響を受けているのだと推察されている。


 実際、『グリッター』の男女比は8:2の割合かそれ以上の割合で女性が多い。


 この根拠地にも、指揮官を除けばほんの数名しか男性はいない。


 理由は単純、戦えないからだ。


 こと脅威(メナス)との戦いにおいて、男性、いや『グリッター』の力を持っていないものは無力でしか無い。戦おうとすれば待っているのは死だけだ。


 だからこそ、本来『軍』と『グリッター』は立場が逆であってもおかしくはない。


 寧ろ『グリッター』によって統治される世界、それが最も可能性としてあり得たのでは無いだろうか。


 しかし、かつて権力者達によって統治されていた世はそれを望まなかった。強力な力を持つもの達を管理下に置くことを選んだのだ。



────閑話休題



 つまりは一重に『グリッター』と言っても千差万別である。女であっても必ず開花するわけではないし、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 朝陽の場合は既に『グリッター』としての力を持っていることが確認されている。


 しかし開花には至っていない。こういった症例は朝陽だけではない。


 開花に至っていない者は数多くいるし、『グリッター』としての力を有していながら、見つかっていない者もいる。


 開花の条件がどのようなものであるのか、またそれが同じものであるのか…その力は未だ謎な部分が多いのが現状なのである。



「(でもだからって…ずっとこのままで良い訳がない!早く…早く『グリット』の力を開花させないと!開花させて、私も戦えるようにならないと!)」



 与えられた仕事を終えた朝陽は、この峠の先でいつも鍛錬を行なっている。


 いつ開花しても良いように、体を鍛えているのだ。


 しかし、その思いとは裏腹に、朝陽の中に眠る『グリッター』としての力はまるで開花の兆しを見せることがない。


 それがますます朝陽の心の中の焦りを増長させていた。



「早く…早く開花してよ!!このままじゃ私…本当にただの役立たずだよ…」



 それは、今の指揮官に言われ続けた朝陽に対する侮蔑の言葉。


 いつまでも力を開花させられない屈辱の言葉だった。


 しかし、力を開花させることが出来ずにいた朝陽は、次第にそれを間に受けるようになっていっていた。


 自分は役立たず。才能がないのだ、と。焦りは不安に、怒りは悲しみに…朝陽の心は少しずつ沈んでいっていた。



「そんな沈んだ顔をしていては、せっかくの綺麗な顔が台無しだよ?」



 と、そこへどこかで聞いたことのある男性の声が聞こえてくる。


 ふと目を向ければ、そこには昼間倉庫でぶつかった青年将校が立っていた。



「あなたは…昼間の…」



 朝陽が話しかけると、青年はあの柔和な笑みを浮かべて朝陽の近くに歩み寄る。



「君は熱心なんだね。仕事を終えてから毎日こんなところで鍛錬をしているなんて」

「は、恐縮です!」



 物腰の柔らかい雰囲気の青年に対して、朝陽は思わずかた苦しい言動を取ってしまう。



「うーん堅いなぁ…」

「は…一応上官様でいらっしゃいますので…」

「まぁ立場上そうなんだろうけどね。今はほら、業務時間外みたいなもんだからさ、普通に接してくれて良いよ」

「いえ、でも…その…」



 尚も食い下がろうとする朝陽だったが、次の瞬間、朝陽の目に映った青年の表情を見て言葉を詰まらせる。



「今のこの下らない社会の風潮、()は嫌いなんだ。上下関係以上…まるで主従関係みたいじゃないか。同じ人間だっていうのに…冗談じゃない」



 強い…強い憤りの感情。


 言葉だけでなく本心から今の社会を嫌っている。その本心が、目から、表情から、取り巻く空気からヒシヒシと伝わってきていた。


 と、自分が殺気立っていることに気が付いた青年は、直ぐにもとの柔和な笑みを浮かべる。



「や、怖がらせてしまったかな?悪いね、ちょっと感情が出てしまった。君に対してのモノじゃないから安心してほしい」



 その笑みに、朝陽は全身の力んでいた力が抜けていくのを感じた。


 これまでにも高圧的な上官とは会ってきたが、そらとは違う、純粋なプレッシャーだけでこれほど畏怖を感じたのは初めてのことだった。


 しかし、身がすくむような今まで感じてきたものとは違い、目の前の青年将校から発せられたプレッシャーは、決して悪感情を抱かせるものではなかった。


 寧ろ、何故か身が引き締まるような、そんな、どこか心地の良い圧のように感じていた。



「まぁ今言った通り、いまボクはただの爽やか青年だからさ。そんな堅くならないで、こっちでちょっとお話ししようよ」



 業務時間外であろうと無かろうと、目の前の青年が自分より上の人物であることは変わらない。


 それでも、何故かこの青年の言葉は信じても大丈夫だと朝陽は無意識に感じていた。


 言われた通り、朝陽は青年の隣に腰掛ける。その様子に青年は満足そうに頷くと、ゆっくりと目の前に広がる海に目を向ける。



「綺麗な夕日だ。海に太陽の光が反射されながらゆっくりと沈んでいくのを見るのはなかなか乙なものだね」

「はい、太陽の光は私も大好きです。昼は力強く、夕日は美しく…この時間ここを使うのは私だけなので、いつも私が一人でこの景色を独占しているんです」



 朝陽の言葉に、青年は「はは、独り占めか。欲張りなんだね」と言ってからかう。つられて朝陽も笑ってしまう。



「(あ…こんなに自然に笑ったの久しぶりかも…)」



 自分が笑っていたことに驚きつつも、それがとても気持ちの良いことであることに、朝陽は気がつく。



「はは、やはり女の子は笑っている方が良いよ。それだけで一つの花がキレイに咲いているように見える」



 そう言ったあと、青年は「ちょっとクサかったかな?」と言って照れ笑いを受かべた。


 朝陽もつられてもう一度クスリと笑ったあと、青年を見て思った。


「上官殿は…女の扱いに長けていらっしゃるのですね」


 それは侮辱とも取れる言葉だったが、青年はフッと笑うだけだった。


 朝陽も、なんとなくではあったが、青年はこう言ったことでは怒らないということを分かっていた。



「慣れている…と言うよりは慣れてしまった…と言う方が正しいかな。ボクの立場上、ね」



 立場上…と言うのは恐らく『グリッター』を指揮する立場であることを意味しているのだろう。


 『グリッター』の大半が女性である以上、それも当然のことなのかもしれない。



「だからって別に女性を巧みに操ってるとかそういうんじゃないよ?ちゃんと本心から言ってる。『グリッター』とは言っても女性なんだからね」



 青年の言葉は今の社会からすれば異端で、朝陽にとっては待ち望んでいた様な言葉だった。


 それに対して朝陽の反応は…



「それでも私達は…兵器です」


ども、琥珀です!!最後までお読みいただきありがとうございます!


Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―の第三話でした!!

女性の扱いなんて分かるわけがない(ぼっち歴=年齢)。けどまぁそこは得意の妄想を膨らますしかないですね笑


当然ながらこの青年がこれからの物語の運命を左右していきます。さて、この青年の正体は…?


次話も明日の10時に更新されますので宜しくお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ