第363星: プログラム
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。
三つの戦場での戦いは、苛烈さを増していた。
制空権を握る戦いでは、遥・沙月・瑠河の三名による輝弾と矢がぶつかり合い、互いに譲らないと言わんばかりに衝突を続ける。
一方で地上では、真衣の球体による高速の攻撃により、意識を散らされる状況で、加速した幸町の攻撃を、天城のそれを更に上回る加速で回避するという、超高速戦闘が繰り広げられていた。
片やもう一方の戦場では、膠着しながらも互いに距離を保ちながら牽制し合い、隙を伺う展開が続いていた。
「ちっ…まだるっこいのう。お前のド派手な攻撃で一気に散らせんのか?」
膠着状態が長引き、焦れてきたのか、野々が朝陽に尋ねる。
「私の攻撃は、攻撃速度こそ速いですけど、モーションか少し派手なので真正面からだと回避される可能性が高いんです。だから、出来るだけ着実に、堅実に当てられるタイミングで技は仕掛けたいんです」
朝陽もこの状況が長引くのは良くないと思いつつも、野々の言葉で焦る事なく、冷静さを保っていた。
「(実践経験が少ない割には頭が良く回る。第三部の時から思っていたが、誰か特別な師でもいるのか?)」
野々の感は鋭く、朝陽の若さと経験の浅さからは考えられない状況判断力と実力から、咲夜の存在を見抜いていた。
そして、そう読ませるほどに、朝陽は成長していると言えるだろう。
「まぁ理由は分かった。だがもうすぐ彼奴のリロードが終わるぞ。こっちの増援に来たのは良いが、我の真骨頂は『グリット』にあるのでな。近接戦闘も中距離戦闘もあまり期待してくれるな」
「あの剣美さんと斬り合っておいてそんな事は無いとは思いますけどね…でも、前衛は引き続き私がやります。何とか隙を作るので、野々さんはその隙を突く形で連携しましょう」
野々の発言を謙遜だと諭しつつも、朝陽はその言葉を受け入れ、自ら前衛を売って買った。
「(指揮慣れしているな。これは教わったというよりも経験してきたといった感じか。確か千葉根拠地は小隊編成を採用しているんだったな。その恩恵ってやつだな)」
普段は常に鼓舞する側であった野々は、初のタッグを組む朝陽から指示を出されるが、不思議と不快感は無かった。
それは、野々が心の奥底で、既に朝陽を好敵手と認めているからかも知れない。
「良いだろう。ならば前は貴様に任せる。我は『へし折り長谷部』で牽制しながら、隙をつく。逆に銃剣の弾丸で逆に隙を作れるやもしれん。その時は貴様が仕掛けろ」
「分かりました!」
迷いなく応えた朝陽は、全身を輝かせると真正面から葉子のもとへと突っ込んでいった。
「(チッ…速いわね。飛翔能力もあるんだっけ?あの織田 野々が合流してきたから、距離を取る必要が無くなったってわけね)」
これ以上距離を保つのは不可能と判断した葉子は、片手に握っていた『グリットガン』を収納し、代わりに両手にダガーを構えた。
接近戦を仕掛けてくる朝陽に対抗するためである。
「『フリューゲ』……!!」
「それは使わせない!!」
単純な手数では、『六枚刃』を有する朝陽が有利になるため、葉子はその『フリューゲル』が朝陽自信を巻き込みかねない距離まで詰めることで封じ込めた。
同時に、銃剣を有する野々の攻撃を防ぐことにも効果的で、朝陽の影に隠れたことで、野々は狙いを定めることができずにいた。
そして、軽く素早い動きを可能とするダガーを駆使し、朝陽に猛攻を仕掛けていった。
相手は槍一本。素早さで勝ることが出来れば、攻め切ることが出来ると踏んでいた葉子であったが、ここでも葉子は予想を裏切られる。
葉子の細かく素早い猛攻に対し、身の丈ほどある槍を握る朝陽は、身体を軸にしながら華麗な槍捌きでこれを凌いでいた。
「チッ…!!ホントムカつくわ、貴方!!」
建てたプラン通りに行かず、葉子は苛立った様子を見せる。
対して朝陽は、目の前で猛攻を仕掛けてくる葉子の姿に、咲夜を重ねて戦っていた。
「(素早くて鋭いけど、先生の方がもっと上だった。これなら捌ける)」
決して余裕があるわけでは無かったが、それでも、葉子の攻撃を防ぐのに冷静さを失うことはなかった。
「(でも攻撃が早くて反撃に手を回せない…このままじゃ野々さんのために隙を作ることが出来ない…)」
そこで朝陽は、局面を打開すべく、ここでもまた修行の成果を発揮した。
これまで自滅を防ぐために展開を抑えていた『フリューゲル』を展開し出したのだ。
「(…?どういうつもり?あの『六枚刃』は彼女の意思で動かすもののはず。これだけ攻め続ければ、操れはしても細かな動作までは出来ないはず。下手をすれば自分を傷付けるだけよ?)」
それを朝陽の焦りと捉えたのか、葉子はより一層猛攻を強めた。
そんな葉子に対して、朝陽は敢えて一度防ぐ事をやめた。
「!?」
一瞬戸惑いはしたものの、葉子はその隙を見逃さなかった。
罠である可能性も考えたが、それでも自分は対応は十分であり、それを突破できる自信があった。
そして、葉子のダガーが朝陽を捉えた瞬間────ガキンッ!!
「ッ!?『六枚刃』が…!?」
そのダガーによる一撃を、朝陽が展開した『フリューゲル』が当たる直前で防御した。
その隙に朝陽は反撃を仕掛けるが、葉子が硬直したのは一瞬で、すぐさまこれを回避した。
「(どういうこと!?あれだけ攻めて、まだ『六枚刃』を操る余力が残ってるってこと!?)」
葉子の考えは、正確には否、である。
朝陽は葉子の猛攻を凌ぐだけでギリギリであり、『フリューゲル』を操るだけの意識を割くことは出来ずにいた。
そこで朝陽が行ったのは、寧華との訓練で会得した、『グリット』のプログラム化である。
朝陽は『フリューゲル』に対して、『自信に危害を加える攻撃を防御する』ようにプログラミングし、そして展開していた。
これにより、朝陽は『フリューゲル』に意識を割かずとも稼働させることが可能となり、今のような反撃につながっていた。
「(惜しい…思ってた以上に硬直時間が短かった。次はもっと隙は小さいはず。素早く、正確に仕掛けなくちゃ)」
冷静に槍を構え、周囲に『フリューゲル』を展開する朝陽に、葉子は分かりやすく苛立った様子で舌打ちした。
「(どういう理屈なのかは知らないけど、自分の意思じゃなくても動かせるってこと!?接近戦を仕掛けてる限り反撃は無さそうだけど、槍+『六枚刃』を突破するには手数が足らなすぎる)」
葉子は「それに…」とその僅かに後方へと目を向ける。
「(後ろには織田野々も待機してる。今はサポートに徹してるみたいだけど、全力の『グリット』を使われたら対処しきれない可能性がある)」
チラッと葉子は自身の両手を見る。
「(リロード完了まであと一分ってところかしら。とにかくどちらか一方だけでも倒さないと、押し切られる。二回目のリロードを待ってくれるはずもないし、次の装填が終わってからが勝負!!)」
腹を括った葉子は、再びダガーを両手に構え、朝陽の方へと接近していった。
繰り出される両手からの攻撃を、やはり朝陽は正確に防いでいく。
それでも防ぎきれない箇所は、周囲を漂う『フリューゲル』が自動で反応し、攻撃を防ぐ。
「(やっぱりたまたまじゃないって事ね。ならもう驚かないわ)」
先程とは違い動揺を見せなかった葉子は、今度は朝陽に反撃の隙を与えないために猛攻を続けた。
「チッ…近過ぎて今撃つと朝陽を巻き込みかねんな。敵同士なんだから構わないと言えば構わないが、ここまで純粋に信頼されて後ろから不意打ちというのは我は好かんしな」
葉子の目論み通り、野々のサポートを封じることには成功しており、二対一という状況にありながら、どうにか拮抗した戦いを繰り広げることが出来ていた。
「(実質一対一の状況を作られてる…!!このまま守りに入ってたら野々さんと組んだ意味がない!!プログラミングで、『フリューゲル』にもう一つの機能を追加させて…!!)」
その時、朝陽は気が付いた。
朝陽の槍と鍔迫り合いを続ける、ダガーを握る葉子の両腕に、八本の光の帯が灯っていることに。
瞬間、朝陽は息を呑み、葉子はニッと笑みを浮かべた。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は明日を予定しておりますので宜しくお願いします。




