第362星:第二ラウンド
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。
「はっはっは!!だいぶ早くなってきたなぁ!!」
天城と対峙してから、幸町は常に『グリット』を発動し続け、加速を続けていた。
その速度は100km程にも及んでいた。この速度から繰り出される攻撃を、しかし天城は容易くあしらっていた。
理由は単純で、幸町の動きを見切った天城が、幸町が攻撃を仕掛ける瞬間に、それを上回る速度で回避していたからだ。
更に、ただ回避するだけでなく、攻撃が空振った隙をついて、再度加速して攻撃を仕掛けていた。
「んぎっ!!」
幸町はどうにか二本のうち片方の槍を構えることでこの攻撃を防いでいるが、当てようと思えば当てられる攻撃。
弄ばれているのは分かりきっていたことであった。
「(同じ加速系の『グリット』等とは申し上げましたが、『グリット』としての能力も、最高速度も、私より遥かに優れているのは分かっていました…!!)」
幸町の『グリット』、『直進邁進猛進』は決して弱い『グリット』ではない。
スロースターターという欠点はあるが、自身の最高速度まで達した時の強さは無類の強さを誇る。
しかし、『グリット』の能力には弱点もあれば、上位互換の様なものもある。
天城と幸町がまさにその例に当てはまる。
同じ加速系の『グリット』を有する両者だが、幸町が時間の経過とともに加速し続けるのに対し、天城は一瞬にして最高速度に達することが出来る。
加えて、現在幸町は、『グリッター』でも視野を失うと言われる時速500km超にまで加速可能であるが、対する天城の『未光粒操作』は、理論上は光を超える物質を操る能力であり、瞬間的にではあるが、その速度はマッハに迫る。
瞬間的にしか操ることは出来ないが、その速度まで一瞬にして達することの出来る天城に、初速でも最高速度でも劣る幸町が真っ向から挑んで勝てる相手では無かった。
「(しかし!!彼の『グリット』の持続時間は決して長くは無い!!虚実を交えながら、一瞬でも不意を突けば、死中に活を入れることが可能なはず!!)」
幸町は天城が完全に自分を舐めていることに気付いており、そこに隙が出来ると見越していた。
しかし、流石は東京選抜と呼ばれるだけあり、天城は幸町を見下しながらも、決定的な隙までは作り出していなかった。
「(せめて…せめて何かもう一つ、隙を作るものがあれば……)」
幸町がそう考えた時だった。
加速を続ける幸町よりも早く、球体のようなものが通り抜け、そして天城の方へと向かっていった。
幸町の背後という死角から現れた球体に、流石に驚きを隠せなかった天城は、第二部同様、『戦闘補具』である『機槍』を取り出し、それを弾き返した。
時速100kmの速度の幸町を超えて現れた球体は重く、天城は思わず後ずさる。
「そこです!!」
バランスを崩したのを見計らって、幸町は一瞬にして天城に接近。そして攻撃を仕掛けた。
「ちっ!!」
天城は追い詰められながらも『グリット』を発動。
『機槍』で幸町の攻撃を捌きながら、どうにかこれを回避する。
「(惜しい…!!あと一歩でした!!)」
距離を取った幸町は、その後自身を援護してくれた背後の味方の方を振り返る。
そこでは、球を投げた本人である、周囲に黒い影の触手を纏った真衣の姿があった。
「(成る程…夜宵さんの影の触手で球を加速させ続け、一気に速度を上げたのですね!!)」
その予測通り、天城によって跳ね返された真衣の球は、再び夜宵の触手によって回収され、まるでお手玉のように周囲を行き来していた。
「ナイスサポートです真衣さん!!このまま二人で押し切りましょう!!」
『加速』、という意味では、真衣の『加速投球』も同じ系譜である。
ただし、真衣の場合対象が物質であるため、理論上最大加速に限度はない。
上手く回すことが出来れば、マッハに至ることも可能だろう。
無論、速度が上がれば上がるほど、コントロールすることも難しくなり、また夜宵による『グリット』のサポートも間に合わなくなっていくだろう。
その真衣の役割は、幸町との連携で天城の意識を逸らすことが目的である。
「これ…ッ!!結構衝撃が強いわね!!これ以上加速すると私だけじゃ制御出来ないかも…!!」
「な、投げたのは『硬歪翼球』です!距離さえあれば、私の意思で方角をある程度操れます!!このまま一気に加速させても操りきれないので、敢えて旋回させて加速させる速度を落としましょう!!」
扱いに関しては真衣に一日の長があるため、夜宵はその指示に従い、一度『硬歪翼球』を手放し、どこでもない方角へと飛ばしていった。
真衣は『硬歪翼球』に手を伸ばして操ると、球から小翼が展開され、周囲を旋回するようにして漂い出した。
直接迫ってくることは無くなったが、周囲を漂うことで、天城の意識は少なくとも先程よりは割かれるようになっていた。
「ちっ……ハエがウロチョロと…」
「ここからが第二ラウンドです!!さぁいざ尋常に、勝負!!」
幸町の声とともに、両者が再びぶつかり合う。
●●●
────ダァン!
という銃声音とともに、葉子はいち早くその場から後退する。
その直後、その足場に弾丸が打ち込まれた。
「フハハ。正面切っての不意打ちでは通じんか」
大胆にも真正面から姿を現したのは、織田 野々。しかしこの大胆さこそが、野々の真骨頂も言える。
「舐められたものね。わざわざ真正面から挑んで来るなんて」
流石の葉子も憤りを感じたのか、その口調はやや苛立ったものだった。
しかし、その苛立ちなど意にも介さず、野々は笑って答えた。
「フハハ!舐めてなどおらん。だからこうして二対一の状況という、本来なら我に相応しくない条件も飲み込んでやっているのだろう?」
完全な上から目線の物言いではあったが、自身の強さに自信を持つ野々からすれば、確かにこの状況は不服であり、了承したのは意外と言えるかもしれない。
しかし、自信を持ちながらも過信しないのが強者たる所以でもあり、そういった意味でカナエの作戦を呑んだのは必然とも言えるだろう。
つまり、野々から見ても片桐 葉子という人物は、それに値する実力の持ち主であると認めたということになる。
「野々さん!心強いです!」
野々がきた事を素直に喜ぶ朝陽に、野々は目を丸くして尋ねた。
「お前、分かってるのか?今は仮に組んでいるだけであって、此奴を倒したら、我らは再び敵になるんだぞ?」
「分かってます!でも逆に言えば今は味方だって事ですよね!だからとても頼もしいです!」
敢えてしっかりと伝えた野々であったが、それでも尚純粋な心境をぶつけてきた朝陽の言葉に、野々は暫くキョトンとした様子を見せた後、大声で笑った。
「アッハッハッハッハ!!こんな状況とはいえ、再び敵になると知りながらここまで我を信頼するか!底抜けのお人好しよな!」
顔を抑えて大笑いする野々は、「はぁ〜」とゆっくりと息を整え、再び刃を構えた。
「気に入ったぞ斑鳩 朝陽。束の間の共闘とは言え、貴様のその純粋な心意気に応えて、我も全力で戦おうじゃないか」
それは、先程とは違う真剣な眼差し。
己を最強と自負し、そしてカナエにもそれを認められている野々が、本気を出すと決めた表情であった。
「えへへ、やっぱり頼もしいです」
返した朝陽の言葉は同じもの。そして事実、朝陽は野々の増援により、大分気を楽にしていた。
対する葉子は、面倒臭そうな表情でその光景を眺めていた。
「(ここで増援か。リロードはもうすぐ終わるとは言え、二人を同時に崩しながら戦うのは面倒臭そうね)」
両手の武器を構えながら、葉子は二人と遠過ぎず近過ぎず、絶妙な距離感を保っていた。
「(斑鳩 朝陽も厄介なのは分かったけど、織田 野々はもっと面倒臭い。少なくとも、『グリット』を発動させる前に倒し切りたい)」
東京選抜のエリートにさえそう思わせる野々の『グリット』を警戒しながら、葉子は攻撃を仕掛けるためのパターンを探っていく。
「(時間は掛けられないけど…もう一発のリロード分を使って動きを把握していくしかないわね。そしたら円香から情報を貰って、対応する。ホントは遥かにさんが制空権を取ってくれるのがベストだけど、それも直ぐには無理そう。ここは単独で仕掛ける)」
作戦が決まった葉子は、二人に目を向け、意識を集中させていった。
決勝戦の舞台では、早くも三つ巴の戦いが繰り広げられていた。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は明日を予定しておりますので宜しくお願いします。




