第361星:戦況経過
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。
朝陽の放った矢が葉子の周囲に土煙を起こし、葉子の姿は見えなくなる。
「(当たってない!!)」
朝陽からも同様に姿は見えていなかったが、朝陽は直感的に放った矢が直撃していないことを感じ取っていた。
「…ッ!!『光の盾』!!」
そして、同じように直感的に盾を真横に形成。
その予感は当たり、形成直後に光の衝撃が朝陽の盾に直撃していた。
「ちっ…私の姿が見えてない今ならチャンスだと思ったのに…」
土煙が晴れ、そこから現れたのは、やはり無傷の葉子の姿であった。
そして、朝陽の光の矢が巻き起こした土煙を利用し、『輝伝衝波』を死角から発動させた判断は流石と言えるだろう。
「(帯が二本とも消えてる…最初の一発で私の『光の矢』と相殺させて、二本目で私に攻撃を仕掛けたんだ)」
対する朝陽も、奇襲を受けながらも状況を整理し、細かな情報を逃すことなく理解していく様は流石であった。
「(あの一瞬で攻撃から防御に思考を切り替えて、更に反撃まで…やっぱり手強い…)」
盾を解除し、ゆっくりと槍を葉子へと向ける朝陽。
対して葉子はゆっくりと立ち上がり、リラックスしたような姿勢で朝陽を見る。
「(最初に四発、朝陽単体に四発、防御に一発、カウンターで一発。残弾数はいまゼロ。両手のリロードまで五分は掛かる上に、やり手だからリロードしても無駄撃ちは出来ない。コイツは能力無しで『輝伝衝波』の攻撃を防ぐしね)」
正確には光のオーラを槍に纏わせて防いでいるため、厳密に言えば能力は使用しているが、葉子はそこまでは気付いていなかった。
「(威力の劣るグリットガンを乱射しても牽制にしかならないだろうし、接近戦になっても、あの面倒臭い『六枚刃』が邪魔で私の方が手数で劣る。確実にダメージを与えるなら『輝伝衝波』しかない。リロードが終わるまで距離を保つのは前提として、問題は…)」
葉子が考えている間に、朝陽は直ぐに行動に移っていた。
「(葉子さんの『輝伝衝波』には撃ちきったらリロードするまでに時間が必要なはず。攻めるならいま!!)」
咲夜との勉強会の甲斐もあり、葉子の情報も頭に入れていた朝陽は、好機とばかりに攻勢に出る。
「(ま、そうくるわよね…)」
葉子もそれは想定していたのか、前進してくる朝陽に対し、後退の姿勢を取った。
プライドの高さで有名な東京本部の精鋭達であるが、長年務めている人物ほどその傾向は強くなると言われている。
理由は単純で、過酷な戦場のなかで生き残り続けて来ているからである。
そのため、『グリッター』にとっての本懐である、『生きるために立ち向かう』という志を最も体現しているといっても過言ではない。
だからこそ、不利だと判断して状況に応じ、退くことに対してなんの抵抗も無かった。
後退しながら、葉子は『グリットガン』を乱射。朝陽はこれを槍で難なく捌いていく。
「(牽制目的だからダメージが無いのは良いけど、ぶっちゃけ牽制にすらなってないわね。あの『六枚刃』が操れないほど超接近戦に切り替えようかしら)」
葉子がダガーを構え、接近戦に切り替えようとした時だった。
その頭上から、大量の爆発音が鳴り響いた。
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「『通常弾』」
前衛組が攻防を繰り広げる中、遥は再び遠方から攻撃を仕掛けた。
「『発放必中』」
「『一弓入輝』」
その遥から放たれた無数の弾丸に対して、瑠河と沙月の二人がそれぞれ矢を放ち、遥の弾丸を撃墜していく。
「あ〜あ、私、彼女とじゃなくて貴方と撃ち合うのを楽しみにしてたんだけどな。まさかこんな形で肩を並べて撃ち合うだなんて」
「『万能の弓者』とも呼ばれる貴方にそう言われるのは光栄だな。だが本来は味方同士なんだ。この状況が正しいのではないか?」
「だからこそ、よ」
新しい矢を弦にセットしながら、沙月は残念そうに答える。
「こうして味方として肩を並べるのが普通。つまり、こうして相対するのが特別なわけでしょ。だからこそ、この機会に、同じ弓使いとして競ってみたかったのよ」
「ハハハ…成る程。まぁ一理ある」
間も無くして再び放たれた遥の弾丸に対し、二人は躊躇いもなく矢を放ち、見事に全て撃墜していく。
「まぁ、こうやって彼女の攻撃を的確に撃ち落としてるだけでその実力は大体分かるけどね。だからこそ、競ってみたかったわ」
およそ戦場に立っているとは思えない緊張感のない言葉に、瑠河は苦笑いを浮かべながらも、どこか不敵な笑みも同時に浮かべた。
「その言葉、そっくりそのままお返しする。…がしかしだ沙月殿」
その不敵な笑みに気付き、沙月は瑠河の方を見る。
「我々が対峙する機会、それがまだ訪れないと決まったわけではないだろう?」
それは、共同戦線により東京選抜を倒した時のケースの話。
しかしそれでも、確かにまだ可能性があることに気が付き、沙月もニッと笑みを浮かべた。
「そうね、まだお楽しみのチャンスは残ってるわね」
モチベーションが上がったのか、沙月は笑みを浮かべたまま、再び矢を構える。
「だからこそ、彼女との撃ち合いに遅れを取るわけにはいかないぞ、沙月殿」
「当たり前よ。あの余裕のある笑み、引っ剥がしてやるわ」
遥と沙月、瑠河による制空権の奪い合いは、ここから更に苛烈さを増していった。
●●●
「んで、我らはどうするのだ?このまま戦っているのを見てろと言うわけじゃあるまい?」
愛刀であり、自身の『戦闘補具』でもある『へし折り長谷部』を肩にトントンと当てながら、智将であるカナエに野々が尋ねる。
「無論、ここからアクションは起こしますよ!このままじゃ無駄に時間と『エナジー』を浪費してしまいますからね!」
当然といった様子で、野々がそれに答える。
「御三方には、東京選抜の陣営の肝となっている前衛組を崩してもらう役割を担って貰います」
「前衛を崩す…?」
夜宵が尋ねると、カナエはその通りだと頷いた。
「東京選抜は、一見すると遥さんが戦況を動かしているように見えますが…いえ、実際そうなのですが、それは前衛の動きと活躍があってのことなんです」
それだけでピンときたのか、野々が納得したように小さく頷いた。
「つまり前衛の動きと状況に合わせて自身の攻撃を加える事で、自分の能力の真価を発揮させてるというわけか」
「その通りです」
カナエはピッ!と野々を指差した。
「ですが、そのサポート役となる遥さんの攻撃は、沙月さんと瑠河さんのお二人のお陰で封じることが出来ています。いずれ攻略法は見つけられるかも知れませんが、それまで東京選抜の前衛はサポートを受けられないということです。つまり…」
「攻めるのであれば、今が絶好のチャンス、ってわけね」
今度は夜宵がカナエの考えを理解し、先に答えを述べる。
「見たところ、前衛お二人の力は拮抗している様子。幸町さんの方はまだ不確定要素が多いですが、それでもこちらにはフリーな『グリッター』が三人もいます。不利になる可能性は低いでしょう」
「内容は分かったわ。それで、具体的にどうすれば良いの?」
夜宵が尋ねると、カナエは地面にガリガリと絵を描いていく。
「まずは組み分けです。幸町さんと対峙している天城君は、完全な近距離タイプ。対する幸町さんも接近戦を得意とするタイプなので、どちらかと言えばサポートに徹する役割を担える人が理想です」
「それならウチの真衣ね。遠距離タイプだけど投球はコントロール出来るし、幸町さんと『グリット』の性質も似てる。相性は良いはずよ」
名前を呼ばれた真衣は緊張しているようであったが、大きく息を吐き出して頷いた。
「なら斑鳩 朝陽の方へは我が行こう。純粋な接近戦だけでなく中距離戦の能力も求められるのであれば、『へし折り長谷部』持ちの我が適してるだろうよ」
カナエも同意見だったのか、その言葉に頷く。
「じゃあ私は?」
唯一役割を振られていない夜宵が、カナエに尋ねる。
「夜宵さんには両者のサポートをお願いしたいです。あの影を操る力なら、『エナジー』をそれ程酷使せず、尚且つ遠距離からサポート出来ますよね」
カナエの言葉に、夜宵は頷いたが、同時に内心動揺していた。
「(私の『エナジー』の回復が万全じゃ無い事を見抜かれてる…その上で、一回見せただけの技から『エナジー』の使用量まで…まさに智将ね…)」
改めて、黒田 カナエのもつ二つ名が伊達では無い事を悟り、夜宵は畏怖していた。
「役割が決まったところで行動に移りましょう。時間をかけず、手際良くね!!」
カナエの言葉に呼応して、それぞれが移動を開始した。
関東と近畿による共同戦線は、その本領を発揮しようとしていた。
※後書きです
ども、琥珀です。
既に退院のご報告と、私の身体につきましては、前回の投稿に載せておりますので省略させていただきます。
皆様にはただただご心配とご不便をおかけしてしまったことを謝罪致します。
本日から自動ではありますが、一週間更新をして参りますので、楽しんで頂ければ幸いです。
後書きについては、毎回書くことが出来ませんので、週最後の更新までは以後割愛させていただきます。
それでは、読んでくださる読者の皆様が、少しでも楽しんでいただけますように。
本日もお読みいただきありがとうございました。
琥珀




