第358星:決勝、開始
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆近畿地方
黒田 カナエ (22)
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月 (24)
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町 (24)
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。『戦神』と化した剣美の攻撃を受け、脱落した。
織田 野々 (24)
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器を持っている。
「よし、舞台の準備は整った。全員用意は良いな」
俊雅の立つフィールドの中央から、各地域の待機場所までは離れており、その姿は確認できないはずであるが、規格外の感覚を持つ俊雅は、全地域が了承したのを把握していた。
「これが最後の舞台。ルールは改めて説明するまでも無いだろうが、とりあえず危険を感じたら俺が介入する。それはつまり脱落を意味するからそれだけは覚えておいてくれ」
不思議とフィールド全域に通る声に、再び全地域が了承すると、俊雅は片手を上げ…
「『大輝戦』決勝、開始!!」
そう言いながら手を振り下ろした。
「誘導弾」
それと同時に動いたのは東京選抜の遥。
第二部との戦いの時のように、二つの地域目掛けて『輝弾丸』を放った。
全ては再び優位に立つために、遥の行動に躊躇は無かった。
「『光の矢』!!」
「一弓入輝・『破魔の矢』」
しかし、両地域とも伊達に一戦目を勝ち抜いていない。
遥が同様の行動に移ることを想定していた朝陽と沙月の両名は、迫り来る輝弾に対し、冷静に素早く対応していた。
朝陽の放った光の矢と、沙月の放った『エナジー』の込められた矢は、それぞれ遥の輝弾に直撃し、空中で弾けていった。
「ハハハ、流石に二戦連続で同じ展開は出来ないか。しかしこんなに的確に対処されるとは、私が思ってた以上の実力者だね」
攻撃を防がれた当の本人である遥は、しかしケロッとした表情であり、防がれることも想定内といった様子であった。
「さて、私の奇襲は通じなかった。となると、前回と同じほどサポート効果も見込めないだろう」
「別に…サポート何か無くたって俺達は……」
「おっと、その手の発言はもう無しだよ天城君」
天城が発現しようとした時、遥がそれを遮る。
「第二部の戦いで、私達個々の戦闘能力は測られているだろうし、もう個人で挑むのは得策じゃない。それを繰り返すのは東京本部の人間からしたら愚策だ」
ただ説明しているだけにも関わらず、まるで天城を咎めるような圧に、天城は思わず黙り込む。
「じゃあどうするんです?悪いですけど、私達、根拠地から選ばれた選抜メンバー達みたいに、仲良しこよしで連携取るのは難しいですよ」
言っていることは子供じみていたが、あくまで自分達の現実を踏まえた葉子の発言に、遥は笑顔で頷いた。
「それが素直に言えるの良いことだね。確かに私達はお手てを繋いで仲良くというのは向いてない。しかし、一回私達の戦い方を見てる以上、単体で攻撃を仕掛けるのも得策じゃない」
敢えて防がれると分かっていながら攻撃をしたのは、追撃があるかもしれないと思わせて動きを牽制するためである。
その理由は、 血の気の多いメンバーのために一から戦略を話すためであった。
「では、どう攻撃を?」
メンバーのなかでは唯一冷静な円香が、遥に改めて遥に戦略を尋ねる。
「なに、簡単なことさ。真正面から叩き潰す」
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「は?真正面から突っ込んでくる?」
遥の攻撃を防いだ沙月は、その後カナエから説明された東京選抜の動向の推察について話され、思わず叫ぶ。
「はい。何度も色んなパターンを考えてみたんですが、それが一番可能性が高いんですよ」
カナエもどこか困ったような表情を浮かべつつ、沙月から返された言葉に頷く。
「元々個々に優れる奴らだ。正面から挑んできてもおかしくはない。だが第二部でも似たような戦いはしていた筈だ。それとは何が違う?」
野々はより深いところまで考察し、カナエに尋ねる。
「第二部は、二つの地域に対し一人ずつが向かい、対峙するような形でした。今回は、それをひとまとまりにして挑んでくるような感じです」
「あの癖の強い東京本部の奴らがそんな連携染みたことしてくる?」
カナエの出した結論に、沙月は首を傾げる。
「確かに意識して連携してくることは無いでしょう。だから連携せざるを得ない距離で攻め込んで来るのがミソです」
「……成る程な。味方同士の距離を縮めることで、お互いの不利な状況が共有される。だから連携して攻め込むしか無いということか」
沙月より先に、野々がカナエの言葉の真意を理解し頷いた。
「でもそうまでするメリットはあるのでしょうか!!第二部の戦いを見る限り、個々人の戦い方だけでも十分な強さがあると思いましたが!!」
第一部では剣美に敗れ脱落していた幸町が、モニター越しに見ていた所感を述べる。
「第二部との違いは、個々人の能力をより正確に把握されていること。同じパターンの攻撃を仕掛けてくる可能性も少なからずありますが、今の最初の佐伯 遥さんの攻撃を即座に防いだ事で、より一層、集団となって挑んで来る可能性は高いでしょう」
「個々人で戦うデメリットよりも、集団にしたメリットの方を選んだってわけね。そうなると、この決勝戦の舞台は混戦になりそうね」
沙月の言葉に、カナエはその通りと言わんばかりに指をパチンと鳴らした。
「向こうの攻撃の主軸は変わらないでしょう。唯我 天城が先陣を切り、片桐 葉子さんが中核を担い、草壁 円香さんがサポートに徹し、佐伯 遥さんが局面を支配する」
「なんだ。うちと同じような編成だな。幸町が前衛、我が中核となり、貴様がサポート役、そして沙月が遠距離支援。特段不利な点は無いな」
フフン、と自信気に鼻で笑う野々に、沙月は苦笑いを浮かべていると、カナエは意外にも頷いた。
「そうです。我々が不利になる要素はあまり無いんです。あとは個々の力次第。先程沙月さんは混戦狙いと申しましたが、実際は真っ向からの力勝負なのですよ」
「やる事が大胆というか……流石は東京選抜って感じよね」
沙月は呆れた様子で肩をすくめる。
「攻防の序盤のキーマンは、沙月さん、そして関東選抜の朝陽さんになるでしょう。理由はお分かりですね?」
「佐伯 遥さんの遠距離攻撃に対処するから、でしょ。接近戦に至るまでの優位性は、制空権を握った方が制する…って感じかな」
説明をせずとも理解をしていく面々に、カナエは話しやすそうにしながら説明を続けていく。
「恐らく遥さんは、近畿選抜と関東選抜を近付けようとするはずです。狙いは私達同士の衝突では無く、一つにまとめて一掃するためです」
「舐められたものよな。一つに固める事で倒しやすくなるという考え方をされている時点で気に食わん」
野々は苛立った様子で答える。
「実際、それを可能にするだけの実力はありますから。先程私は、我々が不利になる要素はあまり無いと言いましたが、やはり総合値では負けているんですよ。幸町さんと野々さんは互角に渡り合える力をお持ちですが、私と沙月さん、特に私の方は、総合値で見れば円香さんに遥かに劣っていますからね」
「……ま、能力の差異ならともかく、純粋な遠距離勝負と汎用性をもった佐伯 遥と比べると、撃ち合いには自信は無いわね」
カナエから、遥より劣るとハッキリと告げられた沙月ではあるが、現実的に捉えて劣っているのは事実であるため、それを受け入れる。
「で、どうする。奴らの誘いにのるのか?それとも我々から迎え撃って奴らの作戦を変更させるのか?」
「そうですね……正直、この後の動きは関東選抜の動き方にもよるんですが…」
ここが分岐点の一つなのだろう。カナエは直ぐに結論を出さず、僅かに考え込む。
やがて顔を上げたカナエは、結論を出した。
「ここは待ちで行きましょう」
「ということは、関東選抜と合流する方針で行くのね?」
遥が返すと、カナエは頷いた。
「我々だけで攻め込んでも、恐らく劣勢を強いられる上に、消耗して関東選抜に有利な状況を作ってしまいます。それは非常に好ましく無い」
「まぁそうだな。むざむざ関東選抜を有利にしてやる必要はない。だが、関東選抜と合流するということは、佐伯 遥のプラン通りに行くことになるぞ?」
カナエの作戦に対し、不満は無いものの、先行きの見えない不安から、野々が尋ねる。
「そこは敢えて乗っかります。関東選抜と合流すれば、単純計算、戦力は増えます。東京選抜を倒すための、我々の弱点を補うことにもなる筈です。その後の展開は、いくつか考えてあるので、もう少し時間を下さい」
鼻からカナエの考える作戦に異を唱えるものはいないため、一先ずそのカナエのプランに乗っかる。
そして、一向が結論を出したのと同時に、遠方から、佐伯 遥による攻撃の第二波が放たれていった。
※後書きです
ども、琥珀です。
実は本日、わたし誕生日を迎えました。
後書きなのでどなたもご覧になられていらっしゃらないかと思いますが、書き続けてきて迎えた何度目かの誕生日というのは、少し感慨深いものがありますね。
このまま歳を重ねても書けると良いな、と思ってます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




