第353星:総評
各地方総司令官
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
興梠 叉武郎 (56)
北海道総司令官。厳正・冷淡な性格で、物事を淡々とこなす。『グリッター』をあくまで手駒として考えているが、それは自分の経験のもと、部下達を死なせないようにするため。直接指揮を下すことは無くなったが、様々な事態に対応できるマニュアルなどを作成している。
工藤 あやめ (45)
東北地方総司令官。元技術・科学班出身で、作戦を論理的に立てる。そのため、経験則に則ったやり方を主とする興梠や武田沢とは馬が合わない。但しこれまでに『メナス』を研究し続け、今の『軍』の基本戦闘スタイルの確立に貢献している点は両者共に認めており、戦術における先駆者と言える。
藤木咲 柚珠奈 (42)
中部総司令官。快活で明るく真っ直ぐな性格。元々前線で戦っていた『グリッター』で、『グリッター』に対しての理解がある。現場は指揮官達に任せているが、『グリッター』としての立場を経ての助言をするなど、総司令官として尊敬されている。
武田沢 銀次 (60)
近畿地方総司令官。頑固者で厳格。但し良くも悪くもをも意味し、自陣に非がないと思えば断固として守り抜く姿勢を貫く。北海道総司令官の興梠とは長い付き合いで、厳格なもの同士反りが合わず喧嘩ばかりしている。が、実際は互いにその力量は認め合っている。
桂木 捻 (35)
中国地方総司令官。捻くれ者で根性なし。基本的に護里の慧眼で選ばれる総司令官のなかで、唯一最高議会から選出されたいわゆるコネ出世。思考も差別の塊であり、単に情報を最高議会へ垂れ流してる傀儡だが、そういった待遇を受けているためか根拠地等は反骨心で溢れており、最もタフと言われている。
東條 龍一郎 (50)
四国地方総司令官。明朗快活で豪快な性格。決して揺らぐ事のない信念に、力強さと意志の強さを持つ。『グリッター』ではないものの、『戦闘補具』を使用し前線に立ち続け、かつては『人類最強』と言われていた。実績に裏付けされた言動に、心酔する者も多い。
鷹匠 悟 (35)
九州地方総司令官。大和に次ぐ若さと早さで出世した人物で、話の場をまとめたり和やかにしたりと、天性のカリスマ性を有する。絶望的な状況を打破する先見の明が鋭く、そこに目をつけた護里がいち早く抜擢した。本人もそれが一人でも多くの命を救えるのならと了承し、真剣にあたっている。
「これで明日の決勝に残った三地域が出揃ったわね!!」
初日の三部全てが終了し、最高司令官である護里を中心とした総司令官達は、再び会議室へと集まっていた。
「残ったのは関東に近畿、そして東京選抜の三つ。みんな素敵な戦いばかりだったから、今から決勝が楽しみだわ!」
あまり戦いを好まない護里ではあったが、部下達の成長を見ることの楽しみを感じ出したのか、その表情には笑みが浮かんでいた。
「ちぇ〜勝った地域は嬉しいだろうけど、中部地方からすると複雑な心境だなぁ〜」
拗ねた様子を見せるのは、中部地方総司令官の藤木咲 柚珠奈。
普段は明るく快活な彼女も、流石に敗北したことには悔しい思いをしている様子であった。
「ですが中部地方選抜メンバーの鍜名 剣美さんの強さは聞いていた通り…言え、それ以上でした。『シュヴァリエ』の候補と呼ばれるだけはありましたね」
逆ににこやかに中部地方の剣美を讃えたのは、九州・沖縄地方総司令官の鷹匠 悟。
中部地方と同じく敗北した地域ではあるが、柚珠奈と違い悔しそうな表情は浮かべていなかった。
「まぁね!ウチではダントツの実力者だし、力だけで言えばいま一番強いんじゃないかしら?」
悟に持ち上げられ、分かりやすく調子に乗った柚珠奈であったが、それを近畿地方総司令官の武田沢 銀也が嗜める。
「確かに実力だけを見れば群を抜いておる。だが窮地に陥らなければ『軍神』と呼ばれる力を発揮出来ない点と、現実として地方としては敗れている点を鑑みれば、まだ物足りんな」
その銀次の発言に、柚珠奈はムッとした様子を見せるが、言われていることは正論なので言い返さない。
「その点で言えば、近畿選抜の強さは多様ながら抜群でしたね。特に黒田 カナエさんの戦略は近代きっての智将と呼ばれるだけありました。即席メンバー、未知数の相手でありながら、まるで全てを知ってるように知略を張り巡らせていくのは見応えがありましたよ」
その場を宥めようと、悟は今度は近畿選抜を褒め称える。
「当然じゃ。アイツはワシなんかとは頭の出来が違う本物の天才だからな。他のメンバー、特に織田 野々も名声に恥じない力を持っているが、カナエが居れば鬼に金棒じゃろう」
普段は身内に厳しい銀次であるが、この時は素直に選抜メンバーのことを讃えていた。
「第一部の近畿地方と中部地方を話して北海道地方を話さないわけにはいくまい。興梠 叉武郎殿は自身の地域の戦い振りをどうみた?」
北海道地方総司令官の興梠 叉武郎に尋ねたのは、四国地方の総司令官、東條 龍一郎。
尋ねられた叉部郎は、不機嫌そうな様子で「フンッ」と一つ鼻を鳴らすと、これに答える。
「まだまだ青臭いガキだったということだな。策略にまんまとハマって最後は戦わずして敗北。屈辱以外の何でもないわ」
その手厳しい発言に、一同は思わず黙り込むが、その沈黙を破るように、叉部郎は「だが…」と続けた。
「北海道選抜らしい連携力を見せつけ、『軍神』と呼ばれる鍜名 剣美に対して一歩も引かず、一瞬とは言え、その喉元に刃を届かせた。有益な戦いになったのは間違いない。これから成長していけば良いだけのことよ」
最後には身内の成長をしっかりと認める姿に、護里は笑顔を浮かべて笑った。
「さて、一転して評価が偏りそうなのが第二部だな」
第一部の話を締め、一向は第二部に話題を変える。
「内容も結果も東京選抜が圧倒。東北、四国も善戦はしていたが、結果としてはやはり、といった感じですね」
悟がそう言うと、東北地方総司令官の工藤 あやめがメガネを上げながら答えた。
「そうですね。カリスマ性を備える神守 紅葉を中心に、東北選抜はよく戦っていたと思いますが、実質4対1の状況で敗北。反論の余地なく完敗ですね」
潔く敗北を認めるあやめに対し、龍一郎は頭をガジガジと掻きながら、悔しそうな表情を浮かべていた。
「ポテンシャルを見せられた東北地方はまだ良いよな。うちは手早く今獅子 スバルっていう頭を抑えられたせいで、本来の強さを発揮出来なかったのが悔やまれるな。アイツが本来の強さを発揮出来てれば、もっと違った展開になったと思うんだがな」
よほど悔しいのか、又は四国メンバーの実力を買っていたのか、龍一郎は心底敗北を悔やんでいた。
「それが分かっていたから、東京選抜の佐伯 遥は一番早く今獅子スバルを抑えたのでは?それだけ脅威になり得る存在だった、ということでしょう」
フォローなのかは分からないが、あやめが悔しがる龍一郎にそっと告げる。
「…まぁそうとも取れるか。素早く仕留められたと言うことは、それだけ警戒されていたということ。今獅子 スバルは第二部の中で唯一佐伯 遥に倒された奴でもあるしな。まぁやむを得まい」
あやめの言葉に龍一郎も納得したのか、一先ず頷いて落ち着く。
「まぁそうは言ったけどさ、やっぱり悔しいけど東京選抜は強かったよね。流石、護里さんが選んだだけあるわ」
柚珠奈が笑みを浮かべて護里の方を見るが、当の本人である護里は、複雑そうな表情を浮かべていた。
「ありがたい言葉だけど、今回の選抜メンバーは、私が選んだんじゃなくて、最高議会の人達が選んだ人選なのよ」
その衝撃な一言に、大半のメンバーが驚きを露わにする。
「…存じ上げませんでした。若手と中堅のバランス取れた配置、個々人の能力の組み合わせ、それらを鑑みても、護里さんが人選したものかと」
「私も私も!!最高議会の人がそんなうまい人選出来るわけないって思ってたからさ!!」
柚珠奈の言葉に反応したのは、中国地方総司令官の桂木 捻。
最高議会により総司令官に選出されただけあり、怒りの表情を浮かべていた。
「失礼だね君ぃ。仮にも我々最高司令官の上に立つお方々だよ?そのくらい出来て当たり前じゃないか?常識を弁えたまえよ」
捻の言葉に、柚珠奈はめんどくさそうな表情を浮かべながらも、相手にしないと決めたのか無視する。
その裏で密かに東京選抜のメンバーが護里のものでない事を知った大和は考え込んでいた。
「(柚珠奈さんの言葉は正しい。最高議会の面々に、あれだけ良く出来た構成の選抜メンバーを整えられる筈が無い。なら一体誰が…)」
考えにふける大和の頭の中に、ある一人の人物が思い浮かんだ。
「(…ボクが千葉根拠地の司令官として出向したあの人物…確か月影 天星。彼ならばもしかしたら…)」
そこまで考えたところで、ふと、大和は視線を感じ取る。
そちらを流し目で見ると、そこでは護里が大和に向かって視線を送っていた。
大和はそれが、今考えついた人物について語るな、という意図を読み取り、疑問を抱きながらも無言で頷いた。
「(…どうやら、一筋縄ではいかない、何か裏の事情があるみたいだな)」
護里の意思通り、その場でそれ以上のことは口にせず、大和は再び各総司令官達の総評に耳を傾ける。
「残るは第三部か。ある意味で一番拮抗した戦いではあったな」
龍一郎がそう呟くと、全員が頷く。
「結果として関東選抜が勝ち抜きましたが、辛勝、といったイメージが強かったな」
「まぁでもさ、『軍神』に並ぶ異名を持つ九州地方の『守護神』の仙波 盾子ちゃんと、中国地方の『荒破鬼』の百目鬼 大河ちゃんがそれぞれいたわけでしょ?辛勝とはいえ、それに勝っちゃうなんてすごく無い?」
銀次が所感を述べると、柚珠奈は興奮した様子で関東メンバーを褒め称える。
「そうですね。正直、うちの『守護神』を破れるのは、身内ならば『シュヴァリエ』か『戦神』と化した剣美さんくらいだと思っていました。それを打ち砕かれて、私も正直驚いていますよ」
「フンッ!!こっちは訳の分からない変なやつにかき回されるしな!!関東選抜というより千葉根拠地はどういう集団なのかね!?」
一同の視線が大和に集まり、大和は困ったような笑みを浮かべながら答える。
「どんな集団、と言われても、他の根拠地や選抜メンバーと変わりませんよ。ここに至るまでに必死に努力を重ねて、生き抜いてきた猛者だってだけです」
当たり障りのない解答に、一同は一応納得したような様子を見せる。
「ひとつ気になったのは、斑鳩 夜宵君かな。彼女、途中で自我を無くしているように見えたが、まだ自分の力をコントロール出来ていないのかい?」
悟が大和に尋ねると、大和はどこかそっぽを向きながら答える。
「いやぁ、彼女の力は確かに強大ですけどね。でも結果として彼女の能力が最後の決定打になったでしょ?コントロール出来てなかったら、最後のような結末にはならなかったんじゃないですかね?」
こちらを見ない大和に不信感を抱きながらも、悟は一先ず納得した様子を見せる。
「私は妹の斑鳩 朝陽ちゃんが気になったな!!途中までは戦線は二つに分かれたたけど、結局は彼女が両方とも片付けたじゃない?まさに期待のルーキーって感じよね!!」
柚珠奈の場合は純粋に朝陽のことを褒めている様子であったため、大和は素直にそれを受け入れ小さく笑みを浮かべる。
「じゃが逆を言えば纏まりという点においてはあまり良くない印象じゃったな。集まったメンバーの若さ故かも知れんが、決勝ではそれが致命的になるかもしれんぞ?」
叉部郎からの手厳しい言葉はしかし的確で、大和も受け入れざるを得なかった。
「まぁそれは、彼女達が一番実感しているんじゃないでしょうか。追い詰められたのも半ば自滅に近いところは有りましたし、寧ろこれが成長に繋がってくれることを願っていますよ」
その発言に対し、大和の本音をぶつけることで、叉部郎も納得し、それ以上発言することは無かった。
「総評は大体出揃ったかしら?それじゃあ次はこの会議の本題に移るわよ」
護里がそう告げた瞬間、会議室内には、ピリッとした雰囲気が漂った。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




