第352星:第三部戦終了
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。『グリット』は、『想いを香りに添えて』で、エナジーを香りに変え、各効果による香りを吸った者の気分の抑揚や感情の起伏を操るもの。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
朝陽達に迫り来る大河と駿河の表情には、鬼気迫るものがあった。
ただ脱落しただけでなく、目の前で味方を失ってしまったことが、二人の闘志と覚悟をより強いものへとさせていた。
朝陽の日輪が弱まり、夜宵の攻撃範囲も狭まっていたが、関東メンバーの面々もこれに臆する事なく反撃に出ていた。
量は減ったものの、それでも数の多い闇の触手を可能な限り回避し、避けられないものは駿河の『引用率糸』で捌く。
更に、先程の真衣の奇襲も警戒してか、駿河は十本の糸のうち、数本を必ず残し、いつでも対応できるように準備していた。
「(隙がない…!!攻撃を仕掛けても全部防がれる…それに加えて…)」
夜宵は一つの懸念を抱えていた。
それは、攻撃を始めてから大河が一切攻防に加わっていない事である。
夜宵の攻撃は全て駿河が対応しており、大河は駿河が捌ききれない攻撃に対して回避行動を取るのみであった。
「(接近戦に持ち込んだ時の攻撃に備えてるってわけね…この距離でも並々ならぬ気迫をここまで感じるわよ…)」
それでも、その気迫に飲まれないよう、夜宵は更に攻撃の手を増やしていく。
「チッ!!数が多いですね!!」
駿河は一本一本の糸に夜宵の影を括り付けつつ、捌ききれない別の影に当てる事で攻撃を凌いでいく。
しかし、夜宵の闇の触手の数は10や20では足りないほど多く、それだけでは防げない状況にまで追い詰められていた。
そして、その内の一本の影が、大河と駿河の二人に襲い掛かる。
朝陽の日輪の効果もあり、闇を扱いやすくなった夜宵は、実体化した闇にも通常の闇の効果を付与する事が可能になっていた。
つまり、大河が『硬化』を発動しても、それを無効化して貫く事が可能であることを意味する。
大河もそれに気付いており、直前で回避を選択する。
同じく夜宵の攻撃を避けた駿河であったが、よく見ればその身体には、少なくない切り傷が出来ていた。
大河を無事に関東メンバーのもとへ届けるために、自身よりも大河を優先にした代償である。
そして、今の攻撃もまともに回避しきれず、腕にはこれまでよりも大きな傷が出来ていた。
「分かってるよね、大河!!」
「…ッ、ああ!!」
互いに視線を交わさずに、言葉のみが行き交う。それだけで、大河も駿河も互いの意図を察していた。
関東メンバーとの距離が残り50メートルを切った瞬間、その時はやってきた。
「これで、一気にいくわ!!」
夜宵は両手を地面につけると、再びその腕から一瞬闇が溢れ出す。
しかしそこから生み出されたのは、『闇の影穴』ではなかった。
夜宵は自身の影と周囲の岩陰から、マグマのような闇を噴き出させ、二人を飲み込むようにして攻撃を仕掛けていた。
「これが、私の最後の攻撃よ!!」
その闇は駿河の『引用率糸』ではどうやっても対処できる質量ではなく、中国選抜の二人は完全に追い込まれていた。
「行きますよ、大河!!」
「…あぁ…!!こい!!」
しかし、二人にとってこれは障害にならなかった。
駿河は大河の前に出ると、糸の全てを大河の身体に引っ付けた。
「どっ………りゃああああああ!!!!」
そして駿河は、持てる力全てを駆使して、大河を投げ飛ばした。
「!!」
駿河に投げ飛ばされた大河は、夜宵が生み出した闇を乗り越え、そして落下しながら二人に迫っていた。
この作戦は、最初から二人のなかで決められていたことだった。
夜宵の影による攻撃は正確ながら決定打に欠け、寧ろ二人を誘い込んでいるようであった。
それを読んでいた駿河は、接近した時に大掛かりな攻撃を仕掛けてくると読んでいた。
しかし、残った二人で同時にその攻撃を避けるのは難しいと考えていた駿河は、攻撃面で決定打に欠ける自身を犠牲にすることを決めていた。
決して最初から犠牲になることを決めていたわけでは無く、しかしそうしなければ、朝陽と夜宵の繰り出す連携は崩せないと判断し、決断に至っていた。
「いったれ大河!!渾身の一撃で二人まとめてやっちまえ!!」
夜宵の闇に飲まれる直前、駿河は大河にそう大声で言い残し、その姿を消した。
その言葉に応えるようにして、大河は全力で『硬化』させた拳を振り上げ、駿河によって付けられた勢いをそのままに、朝陽と夜宵のもとへと突っ込んでいった。
これだけの勢いと威力があれば、二人が反撃や防御をしてこようと、打ち崩せると大河は確信していた。
しかし、その確信は、驚きとともに疑念に変わる。
二人に対して突っ込んでいく大河に対し、朝陽が真正面から向かってくるという予想外の行動に出たのだ。
「『閃光の槍』!!」
槍の先端からは光が溢れ出し、やがて朝陽を覆うようにして朝陽そのものを光の槍の矛の中へと包み込んでいく。
駿河が自身を投げ飛ばすことまで計算に入れ、始めからこの正面衝突が狙いであったことに大河は気付く。
その上で、大河は笑みを浮かべ、勝利を確信していた。
「(いける!!アイツの光がどれだけ強力でも、私の『硬化』の方が質で勝ってるのは最初の段階で実証されてる!!)」
まだ体勢を立て直せる状況でその選択を行わず、大河は朝陽に真っ向から立ち向かっていった。
「お前の攻撃ごと、ぶっ潰してやるぜ!!」
そして、大河が勢いよく拳を振りかざそうとした時、その刹那の瞬間で気が付いた。
朝陽が形成した光の槍の先端に、明らかに異質な、黒い闇が覆っていることに。
「まさ……か!?」
視線を向ければ、そこには朝陽に向かって手を伸ばす夜宵の姿があった。
これが、朝陽と夜宵の本当の狙い。
夜宵の攻撃で駿河を脱落させつつ、大河に敢えて正面からの勝負を仕掛けさせる。
そして、朝陽の攻撃ならば打ち砕けると思わせ、撤退の意思を無くさせる。
その上で、大河の『硬化』を無効化出来る夜宵の闇を朝陽の光に纏わせた。
「この……野郎おぉぉぉぉ!!!!」
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
朝陽の攻撃は、まず夜宵が纏わせた闇により大河の『硬化』の性質を奪っていき、そしてその直後、朝陽が形成した光の槍が、無防備になった大河に直撃した。
回避をすることも叶わず、体をくの字に曲げ後方に吹き飛ばされた大河は、何度も地面に叩きつけられながら、やがて動きを止めていく。
「はぁ……はぁ……やったの?」
「分からない……でも手応えはあったよ」
息も絶え絶えの夜宵が朝陽に問いかけると、朝陽は槍を握りしめ、警戒を解くことなく大河を凝視する。
大河は倒れたまま動かなかったが、やがてゆっくりと手を地面に叩きつけ、ふるえながらもゆっくりと立ち上がっていった。
「嘘でしょ……生身で朝陽の攻撃を食らって立ち上がるの…?」
夜宵は立ち上がる大河の姿に恐怖すら覚えていたが、朝陽は冷静に大河の状態を見極めていた。
「いや……」
朝陽が何かを言いかける前に、大河はニッと笑みを浮かべた。
「耐久力が自慢の私がこれじゃお笑い草だな!斑鳩 朝陽。いや、斑鳩姉妹!!」
両手を広げ、大河は自身の体がボロボロであることを見せつける。
「連携一つとっても私達を上回りやがって!!お陰でなんの悔いも残らねぇよ!!」
やがて、立ち上がった足がゆっくりと震え出し、口からは「ケフッ」と少量の血を吐き出した。
「負けんじゃねぇぞ!!私達の悔しさと、そして勝利への渇望、想いを背負って、キチンと勝利してこい!!」
もはや倒れる寸前。その前に朝陽は、その言葉に応えるかのように、しっかりと大きく頷いた。
それを見届けた大河は、もう一度ニッと大きく笑みを浮かべると、そのまま大の字となってその場に倒れ込んだ。
そこへ俊雅が現れると、大河の状態を確認し、小さく頷いた。
その瞬間、先に表示されていた駿河の脱落の文字の後に、大河の脱落の文字が追加されていった。
ギリギリまで追い詰められた関東メンバーであったが、最後は抜群の連携で勝利をもぎ取ったのであった。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は木曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




