第350星:日輪の影②
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。『グリット』は、『想いを香りに添えて』で、エナジーを香りに変え、各効果による香りを吸った者の気分の抑揚や感情の起伏を操るもの。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
突如現れた闇の穴は、安奈を飲み込むと直ぐに消え去っていった。
顔を俯かせ、意気消沈した様子を見せる駿河に対し、大河は気丈に振る舞う。
「審判」
そして、審判である京極 俊雅の名前を呼ぶと、どこからともなく俊雅が姿を現した。
「なんだい、嬢ちゃん」
「安奈は無事なのか?」
それは至極当然の質問であった。
通常の戦闘不能による脱落や、フィールドから落下したことによる脱落とは違い、安奈は未知の闇の穴に飲み込まれ脱落した。
モニターに脱落と表示されたということは、少なくとも審判の中で正常な脱落として認知されている事は分かっていたが、それでも確認せざるを得なかった。
「心配すんな。あの黒穴に吸収される前に、うちの『シュヴァリエ』が別の空間を作り出して救出してるよ。ほら」
俊雅が親指で指を刺した方角を見ると、そこには脱落した事で観客席にまで飛ばされながらも、無事な様子の安奈の姿があった。
「『シュヴァリエ』舐めたらダメだよ?伊達に最高司令官直属の部下やってないからね」
その言葉に大河はフッと笑みを浮かべると、答えるべき事には答えたと判断したのか、俊雅は再び姿を消した。
「…つーわけだ。とりあえず安奈は無事なんだ。いつまでも顔を下げてないで立て、駿河」
大河の言葉に、駿河は直ぐには反応を見せなかったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「…今まで、実際の戦場で犠牲者が出ていることを知らなかったわけじゃないんですけどね…」
グシッと目元を拭い、口元にはどこか自虐的な笑みを浮かべながら続ける。
「目の前で……仲間を、間接的にとは言え失ったのは初めての経験です」
ゆっくりと両腕を上げ、駿河は自ら手放してしまった自身の手を見つめる。
「『大輝戦』だから大丈夫だ、なんて全然思えない。二度とこんな経験したくない。そう思いました」
「……じゃあどうすんだ?お前もここで辞退しとくか?」
「おい…」
大河の容赦のない言葉に、カリナが思わず声をかける。
しかし、大河のその言葉を皮切りに、駿河はゆっくりと立ち上がり、まだ眩く輝く朝陽の光を遮りながら、大河の方を振り返った。
その瞳は敗者のソレではなく、覚悟を決めた戦士の目つきであった。
「まさか。ここで挫けてたら、安奈さんに二度と顔向け出来ません」
力強く返された言葉に、大河はニッと笑みを浮かべる。
「あんなこと、二度と経験したくない。だからこそ、逃げずに立ち向かいますよ。それでこそ『グリッター』でしょ」
結果として大河の言葉が発破となり、駿河はこれまで以上に闘志を燃やしていた。
無駄な心配だったと気付き、カリナは「はぁ〜」とため息を吐きながら、関東メンバーへの警戒に戻っていった。
「言葉だけじゃなんも解決出来ねぇからな?今の攻撃の謎、解けてんだろうな?」
「勿論ですよ。推測になっちゃいますけどね」
駿河の言葉に、大河は十分だといった様子で頷き、駿河の言葉に耳を傾ける。
「まず確証のある部分からですが、今の黒い穴は夜宵さんの攻撃によるものです」
「だろうな。形状とかはともかく、異質な雰囲気やオーラがさっきまでのものと同じだったからな」
ここまでは大河でも分かる内容。駿河の推察はそのもう一歩先を行っていた。
「では何故、いきなり私達の元まで夜宵さんの攻撃が届いたのか。それは恐らく、朝陽さんが先程展開させた、あの光の球体が原因です」
目元を隠し、直視を避けながら、駿河は朝陽達の背後に浮かぶ光の球体を指差した。
「何かしらの関係はあると思ってたが、それが直接的にどう関係してくるんだ?」
「要となるのは、あの発光する球体を、彼女達の背後に作り出したところにあります」
大河の問いに、駿河は間髪入れずに答えていく。
「あれは言ってしまえば疑似的な太陽のようなものです。それ程強力な光を放てば、辺りは光に照らされると同時に、周囲の物体に影を作り出します」
最後の言葉でピンと来たのか、大河は再度駿河に問いかける。
「つまり、今の攻撃は…」
「そうです。朝陽さんの日輪で伸びた夜宵さんの影が、安奈さんと繋がった結果、突然の黒穴を作り出す技に繋がったんですよ」
この説明で合点がいったのか、大河のみならずカリナも成る程、といった様子で頷いた。
「だとすれば、この状況はかなり不味いよな」
「はい。夜宵さんの影がまた私達にくっ付けば同じような状況になりかねませんし、私達の影でなくとも、周囲の物影を操って攻撃を仕掛けてくる可能性もあります」
一気に劣勢な状況に追い込まれていた事に気付き、カリナは「チッ」と舌打ちをする。
「で、どうする?」
一方で、自分では局面の打開策を浮かべることなど出来ないと理解している大河は、駿河にその策を尋ねる。
「作戦としては二つです。あの日輪…疑似的な太陽は、長時間持続することは無いはずです。なので、あの太陽が消えるまで回避に専念する事」
「もう一つは」
その作戦を否定することなく、あくまで一つとして受け入れ、大河はもう一つの作戦を尋ねる。
「なぁに、簡単で単純な作戦ですよ」
そこで駿河は、これまで浮かべてきた軽い笑みを浮かべ、大河の質問に答える。
「闇を操る隙も場面も与えず、私達らしく突貫してやろーって作戦です」
駿河の出した二つ目の作戦に、大河、そしてカリナの両名は、ニヤリと笑みを浮かべた。
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「お姉ちゃんの予想通りだったね!」
作戦を立案してから直ぐに結果が出たことで、朝陽は歓喜の笑みを浮かべる。
「私もここまで効果抜群だとは思わなかったわ。それに、『エナジー』の負担もほとんどない。これならこのまま押し切れる」
夜宵の『グリット』は、強力な性能を持つ反面弱点も多く存在する。
咲夜などによく指摘される展開力の遅さがその代表例に当たるが、それに比例する程に『エナジー』の消費量が大きいことが挙げられる。
元々の総エナジー量は多い方の夜宵ではあるが、それでも通常の戦闘持続可能時間は15分が目処になるだろう。
同じ量の『エナジー』を椿が持っていた場合、戦闘持続可能時間は2時間を越えるだろう。
それ程までに夜宵の一回の『エナジー』の必要量は凄まじいのである。
しかし、今の夜宵の技、『闇の影穴』は、『エナジー』をほとんど使用していなかった。
その理由は、元々『エナジー』を必要としないという技である訳ではなく、技を発動するに当たって必要な、展開分の『エナジー』を抑える事が出来たためである。
それを補ったのが、朝陽の『光の日輪』。
強力な閃光を発するこの技を自分達の後方に放つ事で、夜宵達の前方には無数の影が作られる。
また自分達の影も伸びるようにして中国メンバーの方へと向かっていくため、通常展開に必要とする『エナジー』のコストをカットする事が出来たのである。
まさに光と闇における、姉妹の連携技である。
「この後はどう動くと思う?」
「私達にとって一番厄介なのは距離を置かれる事だけど、それだと向こうも攻撃の手段を失うはず。戦闘の主軸である大河さんが接近戦を得意にしてるなら、距離を置かず、逆に一気に仕掛けてくる可能性が高いと思うわ」
夜宵の考えに、朝陽も賛同する。
「でもこれだけ有利な条件なら、いくらでも勝機はある。影を直接繋げることも出来るし、周囲の岩陰にも既に繋げてる。これなら普段の半分以下の『エナジー』で闇を操れるわ。攻めて来てくれるなら願ってもない話よ」
夜宵の言う通り、朝陽の光に照らされたフィールドの岩陰からは、夜宵が操る闇の影が蠢いていた。
「でもあの三人の連携ならこれだけ手数を整えても突破してくるかも知れない。それをどう攻め切るかが問題ね」
「それなら簡単だよお姉ちゃん。こっちの手数をもっと増やせば良いんだよ」
そう言って朝陽は振り返る。
夜宵も釣られて振り返ると、そこには朝陽の閃光で目をやられ、目を抑えながら「あううぅ」としゃがみ込む真衣の姿があった。
※後書きです
ども、琥珀です。
応援してたチーム優勝しました!!
11年、この時を待ち続けてました…
これを記念しまして、本日から金曜日まで毎日更新したいと思います!!
皆さまお楽しみに!!
それでは!!本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は明日、火曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




