第348星:転機
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。『グリット』は、『想いを香りに添えて』で、エナジーを香りに変え、各効果による香りを吸った者の気分の抑揚や感情の起伏を操るもの。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「あ、あの……」
真衣は恐る恐るといった様子で夜宵に話しかける。
真衣も朝陽と同様に、荒れ狂う夜宵の姿を見ていたのだから、恐れを抱くのは無理のない話である。
それでも、気の弱い真衣が、恐れながらも夜宵に話しかけられたのは、この舞台での成長の証と言えるだろう。
「夜宵さん……朝陽さんの援護、しなくて良いんですか?」
「…そうね、何とかしてあの子のサポートをしないといけないのは分かってる…けど…」
夜宵に残された『エナジー』は残り少ない。
操り慣れていない闇の実体化は、通常の闇の展開よりも『エナジー』を使用するため、多用は出来ない。
とは言え、これまでと同じように闇を展開するだけでは、選抜レベルの『グリッター』となれば回避することは容易いだろう。
それを理解しているが故に、夜宵は朝陽のサポートとなる一手に悩んでいた。
「さ、さっきは私と朝陽さんの連携で崩すことが出来ました!!こ、今度も私の『加速投球』で支援を…!!」
真衣は率先して朝陽のサポートに回るべく、武器を懐から取り出すが、夜宵がそれを手で制した。
「それはダメよ真衣。少なくとも今はまだ」
「ど、どうしてですか!?」
朝陽が攻め込まれていることへの焦りか、真衣の口調には余裕が無い様子であった。
「貴方の『加速投球』の能力は知ってるわ。朝陽とどんな連携を取ったのかも、おおよそは予想がつく。けど、貴方の『グリット』も、朝陽と同じで中国メンバーとは相性が悪いのよ」
朝陽の言葉で一気に冷静さを取り戻した夜宵は、真衣の『グリット』との相性について説明し出す。
「中国メンバーの戦闘の主軸は、言うまでもなく百目鬼 大河よ。彼女の『グリット』は『硬化』。その硬度は、『メナス』のレーザーさえ弾くと言われているわ」
夜宵の説明を受け、真衣も夜宵が何を言わんとしているのかを理解する。
「つ、つまり、私の攻撃じゃダメージを与えられないって事ですか?で、でも私には『戦闘補具』があります!それを使えば…!!」
「『硬歪翼球』のことね。確かに加速させたその球なら、彼女にダメージを与えられるかも知れない」
夜宵はその可能性を認めながら、しかし首を横に振り、「だけど…」と続けた。
「そこまで加速させることが出来たら、の話よ」
「……どういうことですか?」
なかなか核心を得られない状況に、真衣は困惑した様子で夜宵に尋ねる。
「大河さんの右手でもある安鬼 駿河の『グリット』、『引用率糸』は、物に絡ませたり、引っ付かせたり、様々な汎用性を備えた糸を操る力。しかもその精度はピカイチ。だから、仮に貴方がその『戦闘補具』を使用しても、加速する前に捕縛されてしまう可能性が高いわ」
夜宵の説明を受け、真衣は反論することも出来ず納得してしまう。
「で、でもそれじゃ、私達は朝陽さんのサポートが出来ないことになってしまいます!!このままじゃ…」
夜宵もそれは分かっていた。分かっていたからこそ苦悩していた。
そもそも、この状況は夜宵が作り出してしまった物。
自らの暴走で自身の『エナジー』を大量に消費し、あまつさえ、自分を庇って味方を一人脱落させてしまった。
その責任が、今の夜宵に重たくのしかかっていた。
「(私が……一人でも刺し違えることができれば…)」
その重圧は、夜宵を再びマイナスな思考へと傾かせていた。
しかし、それでは身を挺してまで自分を守ってくれた瑠河の脱落を無駄にすることになると直ぐに思い直し、その邪念を捨てるべく、夜宵は首を振った。
「(せめて…もう一度『闇の瘴気』で『闇の領域』を展開できれば…)」
自分の中のおおよその『エナジー』を確認するが、当然、それを持続させるだけの『エナジー』は、夜宵には残されていなかった。
その時、朝陽が戦う前線から、眩い閃光が周囲に迸った。
「あわわわ!!朝陽さんの戦いがますます激しくなってますぅ!!」
目が眩むほどの閃光に、真衣は両腕で顔を隠すが、その時、夜宵はある事に気がついた。
「いま……私の闇が……」
それは、今の閃光が迸る中で一瞬だけ見えた影。
確証も何も無かったが、夜宵はこの時、一つの打開策を思いついていた。
「(もし……今のが可能なのだとしたら……)」
バッと夜宵は顔を上げ、一人戦い続ける朝陽の方を見た。
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出来うる限り能力の使用を避け、咲夜との訓練で培った近接戦闘のみで挑んでいた朝陽であったが、4対1の状況では、それにも限界があった。
元々肉弾戦を得意とする大河に加えて、阿吽の呼吸でそれをサポートする駿河、朝陽の能力を封じることが可能なカリナ、後方支援に特化した安奈と、中国メンバーの攻守のバランスは非常に良く、今のスタイルの朝陽とは非常に相性が悪かった。
唯一これを打開するとすれば、朝陽の能力を使用した遠距離攻撃が最も効果的になるだろう。
しかし、先の通り、カリナには朝陽の光線を曲げることが可能な能力がある上に、下手な攻撃では大河の『硬化』を上回ることは出来ない。
夜宵程では無いが、既に九州選抜との戦いで『エナジー』を消耗している朝陽は、使う技もタイミングも慎重にならなくてはならなかった。
しかし、大河を起点とした絶妙な連携を前に、加減をしていられる余裕などある筈も無く、朝陽は大河の攻撃を防ぐために、つい先程『光衝撃』を使用させられていた。
その衝撃で大河を退けることは出来たものの、ダメージを与えることは出来ず、結果、単に朝陽が消耗しただけになってしまっていた。
「(このままじゃジリ貧だ…『エナジー』もドンドン減っていくし、使用しても決定打になってない。何とかして四人の連携を崩したいけど…)」
多対一という状況は、実は朝陽は得意とする状況である。
何故なら朝陽には『フリューゲル』という自在に操れる刃があるため、それを駆使すれば相手が多少多かろうと対応することは十分可能である。
しかし、いま朝陽がそれをしないのは当然理由がある。
一つは、『フリューゲル』を操っても、それに使用する技には当然『エナジー』が必要となること。
『フリューゲル』自体は非常に燃費良く操る事が出来るため、実際にはそこまで負担にはならないが、そこに技の使用が加わると、当然消費『エナジー』は必然と増えてくる。
もう一つは大河の存在。
『フリューゲル』は朝陽の意志で自在に操る事が出来るが、裏を返せば朝陽が命令を出さなければ、ただ浮遊しているだけに過ぎない武器である。
大河がそれを理解しているかは不明だが、朝陽が『フリューゲル』を自在に操るための間合いと時間を、大河は一切作らせていなかった。
また、『フリューゲル』から繰り出せる技の出力は、朝陽本人から放たれる技に比べると劣るため、仮に展開し、大河の動きを鈍らせようと試みても効果はないだろう。
かといって、大河を無視して他の三人に意識を割けば、接近戦を得意とする大河に一気に押し切られ、朝陽は致命傷を負うだろう。
このような状況で、現状朝陽がうてる唯一の策が、接近戦で大河に対抗することで、他の三人のサポートを極力減らさせることであった。
「(でもそれは、あくまで苦肉の策…このまま戦えば、負けるのは間違いなく私…そうなる前に何か打開策を…)」
しかし、ここまで考えど考えど策は思いつかず、逆に大河達中国メンバーの勢いは増すばかりであった。
「(ダメだ…このままじゃやられる…それならいっそ、あの技を…)」
朝陽が覚悟を決め、何かの技の体勢に入ろうとした時だった。
「『闇夜の月輪』」
姉である夜宵の声が聞こえ、その直後、朝陽を避けるようにしながら闇が広がっていった。
「ちっ!!」
実体化していない闇は、大河の『硬化』を無効化するため、大河は一度退かざるをえなかった。
「お姉ちゃん!?『グリット』を使って大丈夫なの?」
夜宵の思わぬ行動に驚く朝陽に対し、夜宵は苦笑いを浮かべて答えた。
「大丈夫…ではないわね、正直。でも、これからの作戦には、一度彼女達に引いて貰わなくちゃいけなかったのよ」
作戦と聞き、朝陽の表情に僅かに光が灯る。
「一か八かの博打みたいな作戦だけど、ノッてくれるかしら、朝陽?」
その視線の先に映る夜宵の様子は、普段の、これまで見てきた斑鳩 夜宵の姿そのものであった。
だからこそ朝陽は、どこか嬉しそうに笑みを浮かべながら、直ぐに頷いた。
※後書きです
ども、琥珀です。
私はプロフィールは結構しっかりと書くタイプです。見た人がキチンと認識してもらえるようにするためです。
ただ先日それにも関わらず、見てた内容と違うと言われてしまいまして、頭のなか「?」になりました。
ハッキリと書いておいた内容なんですけどね…
もっとハッキリ書けと言うのか…という思いを抱いた日でした…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




