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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
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第37星:初陣終了

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


────千葉根拠地・司令室



「…!!司令官!!三咲小隊からもメナス撃破の連絡が入りました!!」

「これで今回出撃した三咲、朝陽、椿、三小隊からの報告、並びにメナスの撃破が完了しました」



 咲夜、夕の二名は、届いた報告を大和に伝え、大和もその報告を満足そうに受け取った。



「了解した。本作戦はこれにて終了。彼女達にもお疲れさまと伝えてくれ」



 夕が「了解しました!」と答え、三小隊にそれぞれ通信を入れる。


 勝てたことが嬉しいのか、それとも自分も一緒に戦えたことが嬉しいのか、夕は通信機越しに小隊の面々と楽しそうな会話に華を咲かせていた。


 その様子を微笑ましく見つめたあと、咲夜は通信機を外し、大和の元へと歩み寄っていく。



「作戦完了、お疲れ様でした大和。彼女達にとって初の小隊編成の中での実戦でしたが、大和の期待に応えて十分な戦果を挙げられたのではないでしょうか」

「そうだね。不慣れな小隊編成でありながら、短期間で仲間の能力とくちょうを理解して効果的な戦闘スタイルを確立していった。十分どころか期待以上の戦果だ。これはひとえに彼女達の努力の賜物だね」



 大和の回答に、咲夜は嬉しそうな表情で「そうですね」と頷いた。


 短期間とはいえ、大和以上に彼女達と接し、そして鍛えてきた彼女からすれば、今回の活躍はやはり相当嬉しいものがあるのだろう。


 その様子を今度は大和が微笑ましく見つめていると、咲夜は突然やや意地の悪い笑みを浮かべた。



「逆に言えば、今回は必要最低限の指揮と指示だけで十分でしたね。大和は少し空気でしたか?」

「おいおい、意地の悪いことを言わないでくれ…」



 困ったような笑みを浮かべる大和に、もう一度咲夜はクスリと笑い、「失礼いたしました」と謝罪する。


 このような意地悪を言ってしまうほど、今の咲夜は気持ちが高ぶっているのだろう。


 表情にはあまり出ない咲夜だが、こういったところに滲み出てくるあたり、年相応の可愛らしさがあるな、と大和は思った。



「まぁ事実、確かに今回はボクの出番は殆ど無かったね。事前に少しだけアドバイスをしたくらいだった。けれど悪いことじゃない。寧ろ良いことだと思ってる」



 司令室に用意された椅子に腰かけ、話を続ける。



「支援できる環境が整ってきているとはいえ、実際の戦場ほど完璧に状況が把握できるわけじゃない。現場で適切な判断が下せるのならそれが一番だよ」



 大和の答えに、咲夜も「そうですね」と納得し頷く。


 が、当の発言した本人は、回転式の椅子を半回転させ、どこか納得のいっていない表情で窓の外を眺めていた。



「(確かにの出番が無かったことは良いことだ。けれど、つまりは俺が必要のないレベルの事態であったということにもなる。わざわざ出現場所を分けて現れてきたメナスが、こうも簡単にやられるものなのか…?)」



 窓の外から見える海の地平線の景色を眺めながら、大和は更に深慮する。



「(メナス自身に『知性』が伴ってきていることは間違いない。今回の戦闘を見ても頭を使って戦っている様子は所々で見かけた。けれどどちらかといえばまだ本能の部分に寄った知性の使い方だった)」

「大和…?」

「(可能性としてあり得るのは、一個体ないし少数個体にのみ高い知性が宿っているという可能性…若しくは…)」

「大和…」

「(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…)」

「大和!」



 そこまで考えて、大和はようやく自分の名前が呼ばれていることに気が付いた。



「あ、あぁごめんよ咲夜。どうしたんだい?」

「どうした…ではありません。急に声掛けに反応なさらなくなるものですから…何かお考え事でしょうか?私にもなにかお力になれることがありましたら… 」



 どうやら咲夜に心配をかけてしまっていたことに気が付く大和。


 周りを置いて考え毎にふけってしまっていたことを反省しながら、「大丈夫だよ」と微笑みかける。



「ごめんよ、大丈夫だ。考えごとはしてたんだけど、今はまだボクの妄想の域を出なくてね。もう少し確証を持て利用になったら相談するよ。少なくとも君には必ず」



 咲夜はまだ大和のことを気にかけているようだったが、これ以上は失礼にあたると考え身を引く。


 大和はそれにも申し訳なく思いながらも、追及されなかったことに感謝した。


 そして笑顔で立ち上がり、二人に語り掛ける。



「さぁ、作戦は終わった。全員の無事を確認するために出迎えをしようじゃないか!!」






●          ●          ●






────東京・『軍』総司令部・最高司令官居室



「…以上、今回の千葉根拠地からの報告です」

「ありがとう飛鳥ちゃん」



 口頭で報告を受けながら、自身も同様の書類を読み込む護里。


 全ての報告が終わると、かけていた眼鏡を外し、飛鳥にお礼の言葉を伝える。


「それにしてもメナスの別個進行だなんてねぇ…これも初めて聞く事案よね?」

「はい、これまで管理してきた報告書類にも同様のものは存在しませんでした」

「そうよねぇ…私が現役時代の時も集団で攻め込んでくるのが常套手段だったわ。それがメナスの強みであり、同時に弱点でもあったわけだけど…」

「それがこのような手に出てきたんですから、一概に弱点とは呼べなくなりましたね…厄介なことになりそうですが…」

「(それもあるけど…)」



 護里は指を組み、その上に顔を乗せる形で考え込む。



「(一世紀もの間なんの変化もなかったメナスが、ここ数カ月で急速な進化を遂げている…?あり得なくもない話ではあるけど、少し突拍子のない話なのよね…何かがきっかけで成長をしているのでとしたら…)」



 ふと、護里は手元の資料の最後の文面に、『Y.K』と記されていることに気が付く。


 これは大和の名前のイニシャルで、そのままの読みなら大和・国舘となる。


 しかし日本での場合、正しくは国舘 大和(K Y)と打たれるのが通常である。


 それがこの資料では逆に打たれているのである。


 これは大和と護里の秘密の暗号のようなもので、暗に情報を伝えるときなどに使われる。


 この場合は逆、つまりは『裏』を意味している。



「(『裏』…書類の裏と言うわけでもないし…あぁそういうことね)」



 最初は戸惑っていた護里だったが、すぐに大和の伝えようとしている意図を理解した。



「(『裏』で手引きしている人物がいる可能性があるということ、つまりは私と同じ可能性に行き当たったということね)」



 護里はクスリと微笑むと、その書類を机の上に置いた。



「(分かったわよ坊や。その可能性のありそうな人物はこちらで当たりをつけておくわ。…それにしても…)」



 護里は机の背もたれに背中を預け、大きくため息を吐く。



「あまり子供たちを疑うような真似をしたくないんだけどなぁ~」



 思わず飛鳥が目を向けてしまうほど大きな声でそう呟いた。



「は…?えと…護里さん?」



 キョトンとした様子で自分を見る飛鳥の視線に気が付き、護里は優しい笑みを浮かべる。



「あぁごめんなさいね、ビックリさせちゃったかしら。大丈夫、こっちの話よ」



 発言内容からもう少し内容を確認したかった飛鳥だったが、護里の優しい笑みがそれを拒んでいることに気が付き口を閉じた。


 そうさせてしまったことに護里は僅かに罪悪感を覚えながらも、それを口にはしなかった。



「(さて…どこから洗ってみますかね…)」



 既にその眼つきは、『軍』最高司令官としてのそれになっていた。

※ここから先は筆者の後書きになります!!興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい!!






ども、琥珀でございます!!

前話は多かったくせに今回は少ない…なんてアンバランスなんですかねぇ…(自虐)

まぁ読みやすさを目指したということで…←

次の話から、また上手く調整しますのでお許しください…


本日もお読みくださりありがとうございましたm(_ _)m

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