第345星:暴威
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。『グリット』は、『想いを香りに添えて』で、エナジーを香りに変え、各効果による香りを吸った者の気分の抑揚や感情の起伏を操るもの。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「真衣さん、申し訳ないんですが、暫く後方での待機をお願い出来ますか?」
瑠河から使命を与えられた朝陽ではあったが、直ぐに突っ込むことなく、まずは真衣に言葉をかけていた。
「それは、はい。私は前衛向きではないので。でも待機、ということは、『グリット』での攻撃もしない方が良いってことですか?」
朝陽の言葉に異論は無かったが、疑問に思ったことを尋ねる。
「はい。理由はいくつかあるんですが、大きな理由はお姉ちゃんです。お姉ちゃんの『グリット』は万物を飲み込む闇を操る力が基本です。なので、例え支援をする意図で真衣さんが投擲してくれても、今のお姉ちゃんだと誤って飲み込んでしまう可能性があるんです」
「あ…な、なるほど…」
チラッと視線を向ければ、大量の闇を放って戦う夜宵の姿が映った。
「それに、真衣さんの攻撃はある程度私が操れますけど、下手な攻撃はお姉ちゃんを刺激しちゃうかもしれないです。なので、お姉ちゃんが冷静になって、中国選抜の皆さんと戦うことになったら、その時改めて真衣さんのお力をお借りしたいです!!」
「は、はい!!」
朝陽の真っ直ぐな言葉を受け、先輩であるはずの真衣は敬語での返事を返す。
返事を聞いた朝陽は真衣の返事を聞くと、自身も一つ頷いたあと、光を纏いゆっくりと浮遊し始める。
「タイミングが来たら知らせます!!でも必要だと思ったら自分の考えで動いて下さい!!」
すると朝陽はその場から移動を始め、少し離れた位置で戦う夜宵の方へと飛翔していった。
一人残された真衣は、ヒラヒラと手を振りながら、飛んでいった朝陽を呆然と見届けていた。
「朝陽さん…なんだか指揮官みたいでした…千葉根拠地が有名になった理由が、ちょっと分かった気がします」
小さく、一言を溢しながら……
●●●
「うあああああああああ!!!!」
夜宵から発せられた闇が、大量の波のように大河達に襲い掛かる。
「おいおいおい!!何かめちゃくちゃキレてんぞ!?」
闇を掻い潜りながら、大河が駿河達に叫ぶ。
「や、安奈さん!!これはちょっと効果あり過ぎじゃ有りませんかね!?」
同じく闇の猛攻を掻い潜りながら、駿河が安奈を問い詰める。
「わ、私の『グリット』はあくまで焦燥感等を助長させるだけであって、ここまで一気に爆発することは無いはずなのですが!!」
カリナの手を借りながら闇から逃げる安奈も、状況が掴めず混乱しているようであった。
「何だか知らないが、安奈の『グリット』の効果以上の地雷を踏んじまったってとこか?仲間は大切だが、脱落だけで済むこの『大輝戦』で大袈裟な野郎だな」
一方で、この状況で最も冷静だったのはカリナだった。
夜宵はカリナ達を倒すことにこだわっており、その攻撃は全て実態のある闇によるものであった。
それはつまり、カリナの『螺旋形状』が効力を発揮できることを意味しており、これを駆使して難なく攻撃を回避することが出来るためである。
「おい駿河!!これどうすんだ!?カリナの手助けがあっても、これじゃ反撃まで手がまわらねぇぞ!!」
間一髪のところで闇を回避した大河が、このメンバーの中で最も頭のキレる駿河に作戦を求める。
「そうですね!!ここは一つ様子見と行きましょう!!」
駿河は迫り来る闇に糸を引っ付け、引き剥がすようにしてこれを回避しながら答えた。
「様子見だぁ!?このままこの猛攻を受け続けろってことか!?それじゃやられるのは時間の問題だぞ!?」
大河は思わず叫ぶが、駿河は落ち着いた様子で大河を諭す。
「それです。これだけの質量を使った猛攻。彼女は今、膨大な『エナジー』を攻撃に使用しているはずです。危険な状況ではありますが、これを乗り切ることさえ出来れば…」
「アイツはエナジー切れを起こして、必然的に私達の勝利が決まるってわけか。なるほどな」
すぐそばで闇を捻じ曲げていたカリナが、駿河の考えを理解して頷く。
しかし、視線をチラッと映すと、直ぐに考えを改めたような表情を浮かべる。
「どぉやら、そう簡単にことは運びそうにねぇぞ」
大量の闇が周囲に蔓延るなかで、一筋の閃光が、戦場に瞬く。
●●●
「お姉ちゃん!!」
闇がまるで荒波のように溢れるなか、朝陽はどうにかそれを回避しながら夜宵へと近付いていた。
「とにかくまずはお姉ちゃんを正気に戻さないと…!」
夜宵が冷静さを欠いているのは、見るだけで分かることだが、瑠河の言葉から、今の夜宵がそれだけに留まらない精神状態にあると言うことを、朝陽は汲み取っていた。
「もしかしたら…【オリジン】の時の……」
思い返されるのは【オリジン】と戦闘になった時の記憶。
まるで別人になったかのような夜宵の言動を、朝陽は思い出していた。
「(私の中には、私じゃないもう一人の誰かがいる……もしかしたら、お姉ちゃんの中にも…)」
一度会話を重ね、自分の身を任せたことのある朝陽は、直感的にそれを感じ取っていた。
「(そう言えば、前に私の中の人と話した時に、その人はお姉ちゃんのことを彼女って言ってた。じゃあ、お姉ちゃんの中にいる人は、私の中の人と知り合い…?)」
考えている矢先に闇が迫り、朝陽はそれをすんでのところで回避すると、顔をブンブンと振り回した。
「今はお姉ちゃんに集中!!これだけ大規模な攻撃をしてたら、すぐに『エナジー』が切れちゃう!!」
朝陽は飛翔速度を早め、グングンと夜宵に近づいて行く。
すると、夜宵の瞳がこちらへ向けられた。
「…!!お姉ちゃっ…!!」
夜宵の名前を呼びかけた時、朝陽は直ぐに違和感に気が付いた。
前髪で隠れた片目とは反対側、その瞳が、まるで狂気に晒されたかのように、赤く輝いていることに。
朝陽は直ぐに今の夜宵が自分を認識できていないことを察し、同時に視界に入ってしまったことで、自分も攻撃対象になったことを理解する。
その予想通り、闇の波の一部が朝陽を飲み込まんと言わんばかりに襲い掛かってくる。
「『光の盾』!!」
朝陽は『フリューゲル』を含め、複数の小さい光の盾を形成。
盾は上から下へ光が流れているため、迫り来る闇を最小限の面積で受け流しながら移動することを可能としていた。
「(あの目……【オリジン】の時のお姉ちゃんの目に似てる…けど、意識自体はお姉ちゃんのものを感じる…!今ならまだ、お姉ちゃんの目を覚ませるはず!!)」
ほんの僅かなアイコンタクトで夜宵の状態を把握した朝陽は、どんどんと夜宵との距離を縮めていた。
「『闇の球』」
夜宵はグッと拳を握りしめながら、そのまま拳を僅かに上げる。
すると、闇の波の中から無数の闇の球体が浮かび上がってきた。
「『重力解放』」
すると、夜宵の作り出した闇の球体から、引力が発せられる。
「これは…あの時のブラックホール!?でも…」
その姿形から、朝陽は一瞬、かつて自分達を飲み込んだ夜宵のブラックホールを思い出したが、直ぐに違和感を感じ取る。
「(あの時ほど強い引力は感じられない。小さな規模のものを大量に作り出して、動きを鈍らせようとしてるのね)」
朝陽の睨んだ通り、動きを鈍らせた隙に、夜宵は再び闇の攻撃を朝陽に向けて放った。
「(回避することも出来るけど、このままじゃジリ貧…。それに余計な『エナジー』を使うことにもなる。ここは一か八かで…!!)」
引き寄せられる引力の球体に囲まれながら、朝陽はグッと力を込め、槍を夜宵向けて構えた。
「『光の槍よ』!!」
朝陽の言葉と同時に、槍の先端の矛が輝き出し、光が集まって肥大化していく。
その光は推進力となって、夜宵の作り出した重力場を抜けていく。
そのことに気が付いた夜宵が、朝陽を飲み込もうと闇を広げていく。
「『閃光の槍』!!」
波のように飲み込もうとする闇を、朝陽は全身に光を纏い、自身が光の槍となることで、闇の波を突き抜けていった。
「この…ッ!!」
夜宵が更に攻撃を仕掛けようとするが、加速した朝陽の速度には反応できず、直ぐ側まで接近を許していた。
夜宵との距離はほぼゼロ。その距離で朝陽は…
「お姉ちゃん!!」
姉である夜宵を力強く抱きしめた。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




