第342星:朝陽と真衣
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。『グリット』は、『想いを香りに添えて』で、エナジーを香りに変え、各効果による香りを吸った者の気分の抑揚や感情の起伏を操るもの。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
ドッ!!という衝撃が夜宵の腹部に襲い掛かる。
それが、死角に隠れて現れた大河の攻撃によるものだと気付いたのは、身体が吹き飛ばされてからのことだった。
「夜宵!!」
後方で待機していた瑠河が吹き飛ばされた夜宵の身体を抱きとめ、どうにか二次被害は防がれる。
「夜宵!大丈夫か!!」
「う…ゲホッ!!」
瑠河の言葉に反応できず、軽傷でない事は確かであった。
腹部を抑え、口からは堪らず吐血してしまう。
「夜宵の闇をあれだけ展開されておきながら、真正面からこれを破りにかかるか…何という胆力…」
同じ状況なら自分では出来なかったであろう行動に、瑠河は素直に賛辞を送る。
「ゲホッ……一度不意をついたくらいで…!!」
ようやく痛みが引いてきたのか、夜宵は瑠河にもたれかかりながらもゆっくりと立ち上がった。
「夜宵!大丈夫なのか!?」
「…大丈夫よ…レーザーで腹を撃ち抜かれたわけでも無いし…ただ殴られただけなんだから…」
「殴られただけって…相手は『硬化』の能力で殴って来たんだぞ!?無事なわけが…」
「大丈夫だって言ってるでしょっ!!!!」
瑠河の声掛けに、夜宵は拒絶するような大きな声を出す。
そしてふらつきながらもゆっくりと前へと歩み出した。
「……そうか。余計なお世話だったみたいだな」
夜宵の拒絶とも取れる発言に、瑠河も事が切れたかのように冷たく言い放つ。
中国メンバーの方へと歩み出す夜宵とは逆方向へと歩き出し、再びサポートの体制へと戻っていった。
「このくらい…なんてこと…もっと…私はもっと…」
そんな瑠河の素振りなど微塵も気に掛けず、夜宵は再び闇を纏いだした。
完全に掌握した領域のなかでのまさかの一撃に、安奈の『グリット』の効果も相まって、夜宵の焦燥感は益々強まっていた。
そして、今度は不意を突く隙さえ与えないよう、先手を取ろうとした時であった。
パッと眩く輝く閃光が夜宵達の背後で輝いた後、天井に吊るされたモニターに、与那覇 ミナとナミの脱落の文字が表示された。
●●●
「真衣さん、『硬歪翼球』はまだ使えますか?」
「え?あ、はい。『硬歪翼球』は私が『グリット』の発動を止めれば、加速を止めて手元に戻ってくる仕組みになっているので…」
そういう真衣の手元には、先程投げた球が握られていた。
「じゃあこのまま直ぐに攻撃を仕掛けましょう。真衣さんの武器なら『陸津波』を突破できるのは分かりましたし、私の『フリューゲル』で常時加速させつつ攻撃手段に使えます!」
「わ、分かりました!」
そう言うと朝陽は浮遊し即座に加速。
恐らくアズサを落とされた事で動揺しているであろう九州メンバーへ手を休める事なく攻撃を仕掛けた。
「(気は憚れるけど…でもこれは戦い!!倒さなくちゃ勝ち進めないんだ!!)」
朝陽に全く躊躇がなかったわけでは無い。
しかし、これまで第一部、第二部の戦いを見て来た中で、朝陽のなかで最後まで戦い抜く覚悟を決めていた。
だからこそ、例え仲間を落とされ動揺していても、手を休めるというような手を抜くようなことはしないと誓っていた。
「『硬歪翼球』!!」
朝陽の背後からは、真衣の投げた球が朝陽の直ぐそばを飛んでいく。
すれ違い様に朝陽は『フリューゲル』を展開。意図的に球を跳ね返し、盾子達に辿り着く前に加速させていた。
「(このまま一気に…!!)」
朝陽達に攻めの準備は出来ていた。予想外だったのは、盾子達も反撃の準備が整っていたことである。
「『エスクード』」
「ッ!!」
盾子の盾は、朝陽の進行を妨げるようにして現れる。
「フッ!!」
地面の近くを飛んでいた朝陽は、宙で回転したのち地面を強く蹴り、これを回避する。
「どりゃあぁぁぁ〜!!」
「『『飆鸝槍』・纏風』さぁ!!」
壁をかわした先には、ナミとミナの二人が待ち構えていた。
槍の回転で出来た風の層を纏わせた槍で、一気に朝陽を叩こうという魂胆だろう。
様々な対処方法を考えつくなかで、朝陽が選択したのは────
「『硬歪翼球』」
真衣の投げた球を利用すること手あった。
『フリューゲル』で弾いてコントロールしていた『硬歪翼球』を操り、二人が振り下ろそうとしていた槍の方向に調整しぶつけることで、弾き返す。
「やはっ!?」
「なはっ!?」
朝陽の『フリューゲル』で加速を続けていた球の速度は相当なものとなっており、二人の槍を弾き返すだけに留まらず、弾き飛ばしていた。
「『閃光の矢よ』!!」
好機を逃すまいと、朝陽は『フリューゲル』から光の矢を放つ。
「『エスクード』」
が、槍が弾かれた時点でこれを見越していた盾子の判断力が勝り、二人の前に形成された盾が、これを防ぐ。
しかし、防がれることを予想してた朝陽は、ナミとミナを守るために形成した盾に真衣の『硬歪翼球』をぶつけ跳ね返す。
更に加速した球を朝陽は『フリューゲル』で受け止め、更に盾子の盾を避けるように巧みにコントロールし、変化を付けた。
「朝陽君の『六枚刃』で真衣君の硬球を操っているのか。ならば…!!」
盾の後ろにいたナミとミナを守るように、盾子は再び盾を形成。
これで二人の身を守ると、盾子は更に無数の盾を形成。先程まで朝陽が『フリューゲル』で行っていたような操作を、盾子の盾で行い出した。
「お返しだ!!」
盾で反射させた球を朝陽達の方へ角度を調整し、更に加速させた状態で跳ね返す。
「(冷静…!アズサさんを落とされたのに、一層技の切れ味が増してる!?)」
その素早い切り返しに、朝陽は目の前に迫る硬球に対応しようと動きを止めようとした。
「朝陽さん!!そのまま進んでください!!」
しかし、その背中を押したのは後方にいる真衣だった。
朝陽は短く告げられた言葉をそのまま信じ、減速することなくナミとミナの方へと向かっていった。
「『硬歪翼球』!!」
その後方で、真衣が手をかざしながら自身の戦闘補具の名前を叫ぶ。
────ジャキン!!
その瞬間、『硬歪翼球』の球から小翼が展開される。
展開された小翼により軌道が大きく逸れ、朝陽は直撃を免れる。
更に、既に200km近くまで加速していた硬球の変化はただ逸れるだけに留まらず、U字を描くようにして、再び朝陽の後方へと戻っていった。
「そこまで巧みに操るか!!『六枚刃』有りきの戦術かと思っていたが、それは間違いのようだな!!」
触れていないのに、まるで操っているかのように自在に球を動かす真衣の巧みさに、盾子は苦笑しながら賛辞を口にする。
「『閃光の輝弾』!!」
その間に、ナミとミナの側まで接近していた朝陽は、無数の弾丸を一斉に放つ。
「ま、まださ〜!!『液状化』!!」
「真正面からなら私達でも止められるさ〜!!『硬化』!!」
ナミが床を液状化させそれを盛り上げると、ミナがそれを『硬化』させ、擬似的な盾を作り上げた。
「『誘導弾』!!」
その盾に直撃しようかと言うところで、朝陽は『輝弾』のもつもう一つの特性である誘導効果を発動。
弾は二人の作った盾を避けるようにして軌道を変化させ、両側面と上部から向かっていった。
「『エスクード』!!」
すぐさま盾子が盾を形成。間一髪のところで朝陽の弾丸は防がれる。
「助かったさ盾子さん!!」
「危うく今のでやられるところ……」
盾子に守られ、二人が安堵したその時だった。
「『閃光の貫穿よ』!!」
真正面から朝陽の声がしたかと思うと、二人が作り上げた盾にヒビが入り、次の瞬間、眩い閃光が二人に襲い掛かった。
「ま、眩しい!!何も見えないさ!!」
「ま、まずいさ!!朝陽さんが来る!!ナミ!!『陸津波』をやるさ!!」
閃光で視界は塞がれていたが、盾が破られ、身の危険を察知した二人は、息を合わせて即座に『陸津波』を発動させた。
しかし、後手に回ってしまっていたことで、この勝敗は既に決していた。
不意を突かれながらも、抜群の連携速度で発動に成功していた『陸津波』であったが、朝陽はそれを見越していた。
自身の背後から迫っていた真衣の硬球を先行させると、自分を救ってくれた時のように『陸津波』を打ち砕かせた。
「やはっ!?」
「なはっ!?」
ここまで素早く的確に攻略されるとは思っていなかった二人は、今度こそその動きを止めてしまう。
「『光衝撃』」
そして、二人の視界を奪いつつ、攻撃を掻い潜った朝陽は、ナミとミナ、両名の目の前に立ち、そして槍の先端に作り上げられた光の光球を二人に向けた。
「ありゃ〜こりゃ参ったさ〜」
「ごめんさ〜盾子さん。私達負けちゃったさ」
次の瞬間、光球は二人に直撃し、二人はそこから発せられた衝撃で一気に後方へと吹き飛ばされる。
「ナミ!!ミナ!!」
盾子が二人の名前を叫ぶが、その勢いは衰えることなく、二人を場外へと落下させていった。
間も無くして二人の姿が見えなくなった後、天井に吊るされたモニターに、二人の脱落の文字が表示された。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




