第341星:アロマ・フィーリング
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「…どうなんだこれ、効いてんのか?」
夜宵と瑠河がそれぞれ焦りを感じている最中、中国メンバーの面々は、敢えて動きを止めて様子を伺っていた。
理由は単純。いま中国メンバーは、攻撃を仕掛けるための仕込みをしていたからだ。
「その人の性格、状況によって効力は異なりますが…それでも間違いなく効果は出ている筈です」
カリナの問いかけに対し、安奈は時折『フゥ〜』と口から息を吐き出しながら答える。
安奈の『グリット』、『想いを香りに添えて』は、様々な効果を持つ香りを充満させ、発した香りにより、心理面に働きかける『グリット』である。
効力は様々で、青色の吐息なら落ち着きを、緑色の香りなら安らぎを、そして、黄色い人を刺激する香りからば焦りや不安を。
いま安奈が発している香りがまさにそれであり、二人が焦っている事を見抜いた安奈が、それを助長させているのである。
「しかしアレだな。『グリット』の効果とはいえ、年頃の女がこういう刺激臭を口から出してると……なぁ?」
「い、言わないでください!!普段は安らぎの香りか落ち着きの香りしか使用していないんです!!今回は状況が状況だからこそ、敢えて私は…!!」
大河がからかい半分、苦笑い半分で呟くと、安奈は顔を赤くして恥ずかしがって答える。
そんな安奈を、「まぁまぁ」と駿河が嗜める。
「大河も私達も、ちゃんと分かってますって安奈さん。初めて見るからつい言葉にしちゃっただけだよ〜」
安奈はムゥ…と不満げながらも、ひとまず納得した様子で、再び息を吐き出す。
「安奈さんの目論み通りなら、これで二人の焦燥感は強くなる筈だ。そうなれば、攻撃の隙も出来やすくなる」
「ですね〜。さっきみたいにタイミングがズレてくれれば完璧。連携が乱れてくれれば尚よし、だね」
迫り来る闇に対していつでも対処できるように警戒しつつ、一行は仕掛けが終わるのを待つ。
「…ふぅ。一先ずこれで十分蔓延はしたと思います。あとはあのお二人がどれだけ焦っているかにも左右されますが…」
そう言うと、大河とカリナが勇んで立ち上がるが、安奈がそれを制する。
「あ、ちょっと待ってください。このまま突っ込むと、皆さんも『焦燥の香』の効果を受けてしまいます」
「あぁ!?じゃあどうすんだ!?」
これまで散々焦らされたことで、本来好戦的な大河の我慢は限界に達していたのだろう。
制止した安奈の言葉に対し、思わず言葉を荒げてしまう。
「ちょいちょい大河さん〜?」
「大丈夫です駿河さん。大河さんのお気持ちも分かりますので」
嗜めようとする駿河を制し、安奈は全く臆した様子を見せる事なく続けた。
「先程も申し上げましたが、私は普段は味方を落ち着かせるための香りを使用しています。それは戦場で冷静さを欠かないためです」
「……んで?」
流石にいきなり声を荒げ過ぎたと感じたのか、大河は少し冷静になって安奈の言葉に耳を傾ける。
「なので皆さんには、今の香りとは真逆の香りを纏っていただきます」
「…あ、なるほど〜!要は効果を中和させるというわけですか!」
いち早く理解した駿河の言葉に、安奈はその通りだと頷く。
「『落ち着きの香』」
そう呟いた後、安奈は再び息を吐き出す。
名前の通り、青色の吐息が大河達の周囲を包み込んでいくと、一向は目に見えて心情の変化を感じ取っていた。
「……なんか、すげぇ落ち着いた」
「…だね。自分では落ち着いているつもりが、実際はこんなにも緊張してたんだって実感させられた感覚…」
「『落ち着きの香』は、緊張をほぐしてリラックスさせる効果がありますので」
大河達が「へぇ〜」と感心する中で、カリナがふと思ったことを口にする。
「なら最初から使ってれば良かったんじゃないか?こんだけリラックス出来るんなら、戦闘でもだいぶ楽になったと思うんだが」
カリナの問いに、安奈は首を横に振って答えた。
「それはあまりおすすめしません。確かに『落ち着きの香』には今言った効果がありますが、逆を言えば緊張感に欠けてしまうんです。余程あがり症で緊張してしまう方なら良いですが、皆さんのように場数を踏んであまり緊張されない方に使用すると…」
「戦闘に必要な緊張感が損なわれる…即ち警戒心が薄れてしまう、というわけですか」
結論を駿河が述べると、その通りだと安奈は頷いた。
「特に、大河さんやカリナさんは感情の昂りで戦場を網羅するお方です。駿河さんの『グリット』も繊細な技術を求められますし、メリットよりもデメリットの方が多いと考えていたのです」
「なるほどな。落ち着くけど落ち着かない…何か矛盾した感覚を覚えてんのはそう言うことか」
胸をトントンと叩きながら違和感を感じていた大河が、納得したように頷いていた。
「大河さんには特にそう言った違和感を感じるかもしれませんね。ですが、夜宵さんの側に行けば効果は中和していきますから、すぐに解消されると思います」
大河は「ふ〜ん」と感じる違和感を覚えながらも納得していくと、今度は駿河が疑問を覚える。
「あれ?私達が近づく事で中和されると言うことは、戦闘になれば夜宵さん達に与えた効果も中和されてしまうんじゃ?」
「いえ、問題ありません」
駿河の疑問に対し、安奈はキッパリと答えた。
「私が夜宵さん達に対して行ったのは、香りを蔓延させること。対して私が皆さんにしたのは、香りを纏わせること。なので、皆さんの鼻腔に入ってくる『焦燥の香』だけを中和するようにしてあります」
「はぁ〜!そんなことまで可能なのかよ!香りとか言って侮れねぇわ」
安奈の説明に、カリナは感心した様子で話を聞いていた。
「まぁこれで効果の用途は分かった。それで、いつになったら仕掛けられるんだ?」
早速安奈の『落ち着きの香』が効いているのか、冷静になった大河が安奈に尋ねる。
「仕掛けるだけならいつでも。ただ、仕掛ける時はなるだけ意表を突くような形が理想です」
「それは…より一層焦らせるため、です?」
駿河が尋ねると、安奈はコクリと頷いた。
「私の『グリット』では、焦りを深めるのには限界がありますが、自ら焦りをうめば、それを早く深くする効果はあります」
「なるほど、それで意表を突くのが理想と…しかしこれだけやれる事が限定されてるとそれもなかなか…」
「あるぜ」
駿河が頭を悩ませていると、大河がニッと笑って答えた。
「あるぜ、アイツの意表を突いてやる方法が」
自信満々に答える大河。
しかし付き合いの長い駿河は、嫌な予感しか感じ取っていなかった。
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「…動かない?私の攻撃なんて恐るるに足らないと言うことかしら?」
瑠河の矢を防ぐために引き上げた床の盾を背にしたまま動きがない中国メンバーに対し、夜宵は苛立ちを覚えていた。
「(闇は必要最低限蔓延させた。どこへ移動しようと、どこから攻撃してこようと対応出来る)」
皮肉にも、その闇が安奈の『グリット』を隠している事に繋がっていたが、当然夜宵がその事に気がつく事は無かった。
そっちが攻める気が無いのなら…)」
そう考え、夜宵が行動に移ろうとした時だった。
────ドッ!!
「ッ!?」
それまで壁として建てられていた床の盾が、突如動き出し、夜宵に迫り出した。
「くらえオラァ!!」
それが、背後から大河が思い切り良く蹴ったことで移動したことを理解した夜宵は、しかしこれに動じることは無かった。
「その程度で…!!」
周囲の闇を操作し、夜宵は岩に闇の槍を次々と突き刺していく。
大河の馬鹿力で吹き飛ばされた大岩ではあったが、次第にその勢いは衰えていった。
「どっ……りゃあああああああ!!」
が、その勢いが完全に止まろうかと言うところで、更に岩の後ろから大河の声が聞こえ、その直後、巨大な岩が一気に砕かれた。
「なっ!?」
割れた岩の後ろから見えたのは、大河が拳を振り下ろした後の姿。
初めから岩による直接攻撃を狙っていたわけではなく、岩で大河の行動を隠す事が狙いであった。
そして、勢いを止められたところで岩を砕く。砕かれた破片は、小粒状になって夜宵に襲い掛かった。
「このくらい…!!」
夜宵は更に闇をかき集め、迫り来る岩の破片にぶつけていった。
破片は夜宵の目前にまで迫っていたが、その全てを受け止める事に成功していた。
そして…
「貰ったぜ!!」
その闇を掻き分けるようにして、大河が姿を現した。
※後書きです
ども、琥珀です。
実は先週から高熱を出してまして、今日ようやく治まったところです
39度の熱なんて久し振りに出しました…
昔ほどしんどくはないんですが、倦怠感というか、無気力感が凄まじいですね…
三日間くらいなんもせず、ひたすら寝てました…
仕事休んでる罪悪感はあったんですけどね…
今はもうだいぶ楽になったので、明日からは仕事に復帰しようと思います。
あ!コロナではなかったのでご安心ください!
それでは、本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします!




