第340星:闇の領域
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。専用の『戦闘補具』、『硬歪翼球』を所有している。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
夜宵が展開する闇の危険性を察した中国地方の面々は、これ以上領域を広げられる前にと攻勢に出た。
「自分達から私の領域に来てくれるなんてね。手間が省けて助かるわ」
その様子を見て、夜宵はニッと笑みを浮かべる。
不用心すぎると思いながらも、後方に待機する瑠河が矢を構え放とうとすると、スッ…と夜宵がそれを片手で制した。
「!?何故だ、夜宵!!一人で戦うつもりか!?」
制止された意図が分からず、瑠河は思わず声をあげるが、夜宵はそれに反応することは無かった。
「『闇の領域』」
黒い瘴気の名前とは違う、自身の領域の名を呟き、夜宵は単身、中国メンバーを迎え撃つ。
「『引用率糸』!!」
その中国地方は先ず駿河が先手を取る。
「とりゃあ!!」
実体化した闇の瘴気に糸をくくりつけ、道を開くように左右に広げた。
「道は開けました!!行きますよ!!」
駿河の先導について行くように全員がついていくが、夜宵に動揺する様子は無かった。
「その程度で…」
そして手を前にかざすと、それに操られて瘴気が動き出す。
駿河の『引用率糸』で開かれた闇の更に周囲から、大量の闇が駿河達に襲い掛かる。
「あちゃあ!!簡単な道は作れても、流石に質量的に全部は無理ですか!!」
迫り来る闇を前にして、しかし駿河達は焦った様子はなかった。
「螺旋形状」
更に迫ってきた闇に対し、今度はカリナが『グリット』を発動し進行方向を捻じ曲げたことで、夜宵の闇を退ける。
「やっぱり、この展開された闇は、物理的ダメージを与える為に実体化したもののようですね!!これなら私達の『グリット』も通用する!!」
確証は無かったものの、迫り来る闇の前に時間もなく、一か八かで突撃していた中国地方の面々であったが、その賭けは勝利であった。
駿河の読み通り、夜宵が展開した瘴気の闇は、闇を実体化させたものであり、駿河達の『グリット』であっても通じる状態にあった。
これで夜宵に攻め込むまでの道が出来上がり、中国メンバーは作り上げた道で一直線に向かっていた。
「この……!」
対して夜宵は、両手を真横まで上げると、直後、拍手をするように、その手を閉じた。
カリナが捻じ曲げた闇、その更に外側から夜宵の闇が襲い掛かる。
「ちっ!!これ以上は曲げきれないぞ!!急げ!!」
次から次へと襲い掛かる闇をカリナが捻じ曲げるものの、闇との距離は徐々に近づいて来ていた。
「あと少しだ!!これを抜ければあとは…ッ!?」
その時、先頭を走っていた大河が急に足を止めた。
「おい!何やってんだ!!」
「私の後ろに隠れろ!!矢が飛んで来んぞ!!」
大河がそう叫んだ直後、夜宵の視覚に隠れて現れた大量の矢が、中国メンバーに襲い掛かった。
「発放必中・『横雨の矢』」
矢を放った本人、瑠河は、夜宵の指示通りの場所に矢を放ち、夜宵を避けるようにして、Y字を描くようにして的確に中国メンバーを狙い打っていた。
「ッ!?夜宵さんが死角になっていたのに、どうしてここまで的確に!?」
「彼女の技術も然りですが、恐らくこれは夜宵さんの指示さと!?」
大量の矢を大河が受け止めながら、駿河が状況を分析する。
「どういうことだ!?」
「先程、夜宵さんが両手を広げる動作がありましたが、あれはブラフ!!手を広げる事で、瑠河さんが矢を放つためのポイントを指示したんです!!」
「はぁ!?つまり、一瞬広げた手の位置だけで、そこが攻撃ポイントだって理解したってことか!?ホントに即興チームかよ!?」
駿河の考察に対し、カリナはただただ理解不能といった様子を見せるだけであった。
「お前…ら!!話してんのは良いけど…な!!こちとら全身で矢を!!受けてるんだ!!早く何とか…しろ!!」
そんな中、身を挺して駿河達を守っていた大河が、『硬化』により矢を防ぎながら、辛そうな声で対処を求める。
「矢は分裂しても物体だ!!私の『グリット』で捻じ曲げて…」
「待った!!周りから闇が来ます!!そっちの対応を先に!!」
カリナが『グリット』を発動しようとするのを制止し、駿河が迫り来る夜宵の闇の対処を求めた。
「ちっ!!だがこの量だ!!両方同時には無理だぞ!!」
「矢の方は私が対処します!!」
駿河の言葉を聞いてカリナは直ぐに行動に移る。
『螺旋形状』により迫り来る闇の進行方向を変え、中国メンバーへの直撃を回避させる。
一方でカリナは、大河の後方の地面に糸を吸着させ、思い切り良く引っ張る。
それにより、地面が引き抜かれ、分厚い壁となって瑠河の矢を防いだ。
「プッハ〜!!傷はねぇが衝撃で酔いそうだぜ!!」
大河の言う通り、『硬化』の効果により瑠河に怪我らしい怪我は見当たらなかった。
矢による攻撃もこれ以上は効果を発揮しないと判断したのか、一先ず収まっていた。
「んで、どうするよ。ここでジッとしていても、すぐに周囲の闇が攻撃してくんだろ?」
「一気に攻めたいところですが、さっきの連携を見ると、そう簡単にはいかなさそうですね…さて、どうしたものか」
駿河達が攻略方法に悩む中、安奈はただ一人、今の一連の攻撃に違和感を感じ取っていた。
「あの、今の攻撃なんですけれど…もしカリナさんが瑠河さんの矢の対応をしていたら、夜宵さんの闇が私達に直撃していましたよね?」
一同は一度目を見合わせながらも、小さく頷く。
「結果論になりますが、夜宵さんとしては、闇による攻撃をもう少し遅らせていれば、私達は実際にカリナさんに対応を任せていた筈です。それなのに、わざわざ対応出来るようなタイミングで攻撃を仕掛けて来ました」
「…つまり、どういうこと?」
カリナが結論を尋ねると、安奈は一つの案を思いついた表情で、一同に話し始める。
「もしかしたら、あのお二人の連携を崩せるかもしれません。私の『グリット』で」
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「(どうやら私のことを忘れていたわけではない…そこは安心したが…)」
夜宵のサインを直ぐに理解し矢を放った瑠河は、最終的に防がれはしたものの、想定内であったため取り乱すことはなかった。
寧ろ動揺したのは、夜宵の行動に対してである。
「(今の追い込んでからの場面で、あの攻撃を繰り出すのは早すぎる。焦っているのか、夜宵?)」
今の一連の連携による攻撃は、予め決められたものではなく、夜宵の意図を感じ取り、瑠河が素早く対応した事で成り立っていたものである。
瑠河はその指示に従って正確に矢を放っただけ。
しかし中国メンバーの動きを止めた事で、夜宵が一気にトドメを刺すイメージは出来上がっていた。
「(あともう少し攻撃のタイミングを遅らせていれば、中国選抜のカリナが私の攻撃に対応して、大きな隙を作れたはず。何故攻め急いだんだ!)」
自分に対して冷静に援護を依頼しながら、当の本人は焦り、攻め急ぐといった状況に、瑠河は夜宵の状態が理解できなくなっていた。
「(一度声をかけに行くべきか…?だが先程もあまり私の言葉に耳を傾ける様子は無かった…下手な刺激は今の夜宵には逆効果にしかなり得ない可能性もある…静観して、援護に徹するべきなのか…)」
まさか相対する敵にではなく、味方に対して混乱するとは思いもよらず、瑠河は頭を悩ませていた。
「(一番の理想は朝陽を連れてくることだろうが…先程の様子を見るに、向こうの戦場も激戦状態。しかも、一人倒したのだから、より呼べる状況では無い。こちらのことは、私が何とかしなくては…)」
本人は気付いていないが、瑠河もこの時考えの視野が狭まっていた。
朝陽達が成果を挙げていることもあり、自分達のことは自分達が何とかしなくてはという考えにとらわれてしまっていたからである。
普段は落ち着きのある瑠河であるが、夜宵から溢れ出る瘴気と、まるで人が変わったかのような雰囲気に戸惑い、いつもの冷静さを失ってしまっていた。
しかし、冷静さを失ったままである要因は、もう一つあった。
瑠河達は気付いていなかった。
夜宵の闇とは別に、自分達の周囲に、どこか刺激臭にもにた薄い鼻を刺激するような香りが漂っていることに…
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




