第337星:闇の瘴気
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。『グリット』は『加速投球』で、投擲した物体が跳ね返り続けるほど加速していく能力。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ鳥取根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても操れるため、気付けば拘束されているケースも多い。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「おいおい…何か嫌な煙みたいなのが斑鳩 夜宵から噴き出てんぞ」
夜宵の全身から溢れ出ている瘴気を見て、大河が面倒臭そうに呟く。
それとは逆に駿河は興味と警戒半々といった様子でそれを見つめていた。
「恐らくですが、夜宵さんはあの煙…いや、あの瘴気でフィールドを覆い尽くそうとしてるんじゃないですかね」
「はぁ?そうなるとどうなるんだ?呼吸でも出来なくなんのか?」
意図が理解できない大河は、声を荒げて駿河に尋ねるが、駿河も首を傾げていた。
「いやぁハッキリとした効果は分かりませんよ?でも多分そういう感じではないと思う。彼女の出してる瘴気は、これまで見てきた彼女の闇とどこか似てる。だから、闇そのものを広げてる、って見方が正しいかな?」
「それはつまり……このフィールド全てが彼女の攻撃対象になるという事ですか?」
駿河の考察に、安奈が結論を付け加えると、駿河はその通りだと頷いた。
「だったらゆっくりとしてる時間はもうねぇな。時間を掛ければかけるほど向こうが有利になると分かってジッとしてるわけにはいかねぇだろ」
単直ではあるが的を射ている大河の言葉に、カリナ、安奈の二人は頷く。
しかし駿河だけはまだ引っ掛かる点があるのか、考え込んでいるようであった。
「(妙ですねぇ。そんな事が出来るなら最初からその手を使えば良かったはず。それをしなかったと言うことは、あの技には欠点があるという事。だとすれば、我々が攻め急ぐのは却って逆効果になる可能性があるけど…)」
駿河はチラッと大河の方を見る。
平静を装ってはいるが、朝陽との邂逅はほとんどならず、盾子には攻撃を防がれ、ナミとミナの二人には良いようにやられている。
チーム戦とは言え、未だその真価を発揮できず、自身が好むような戦闘を行えていないことに、内心は相当ストレスを溜め込んでいるはずである。
少なくとも、駿河はその大河の内情を理解していた。
「(まぁ…攻めるのを宥めて大河の強みをこれ以上抑えるのはデメリットの方が大きいですし、何より彼女のらしさを奪う。他の人達にも不必要に警戒して動きが鈍られてもアレですし、一先ず私が警戒しておけば良いでしょう)」
そこまで考えて、駿河も大河の言葉に賛同し、前に出た。
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夜宵から溢れ出る闇の瘴気を、瑠河はジッと目を細めて眺めていた。
「(異質…これまで様々な『グリッター』と出会ってきたが、ここまで奇怪な『グリット』の持ち主とは初めて出会った…)」
夜宵の『グリット』は事前に聞かされていた瑠河ではあったが、目の前に映る光景が、どうしても不気味に感じてしまっていた。
「(闇を操る力とは聞いていた。だが、これはその効果に入るのだろうか…自分の身体から…瘴気を発するなんて…)」
無論、ただこれだけで瑠河が夜宵から離れるようなことは無い。
しかし、何故か夜宵の『グリット』からは、それを見る度に悪寒を感じる事しか出来なかった。
自分の周囲にも漂うドス黒く蠢く闇の瘴気。それが、自分を飲み込むのでは無いのか。
そう考え、無意識に恐怖を感じてしまっていた。
「大丈夫よ、瑠河」
そう夜宵に告げられた時、良い瑠河は不覚にもビクッと肩を揺らしてしまった。
「これは私が展開している闇。貴方には一切危害を加えないわ。だから、大丈夫」
「そう…か。そう…だな」
信頼の意味も込めて、強い口調で返すつもりだった。
しかし、自分の心を見透かされ、あまつさえ逆に言葉をかけられてしまい、瑠河はその動揺を隠しきれなかった。
しかし、一先ず危険性がない事を改めて理解したことで、瑠河は考える余裕ができた。
「それだけ目立つ行動だ。中国メンバーも黙って見てはいないぞ」
「分かってる。けど、それは私としても望む展開よ」
「(私としても、か…)」
今の夜宵の頭の中に、自分が入っていないことを悟り、瑠河は僅かに瞼を閉じる。
「分かった。なら私はどうすれば良い?」
「少し離れて攻撃してくれると嬉しいわ。この『闇の瘴気』で一気に攻撃範囲と速度は上がるけど、それでも熟練の『グリッター』の接近戦の速さに対応することはまだ出来ないわ」
「了解した」
瑠河はそれ以上のことは何も追求せず、夜宵に従うようにしてその場から離れていった。
そうして一人になった夜宵は、瑠河には明かさなかった胸の内を、心の中でつぶやいていた。
「(不思議な感覚…自分の中の…自分じゃない何かとドンドン深く繋がっていく感じ…)」
それは、以前から感じていた感覚。
【オリジン】との戦いで意識を失い、その後、『混沌の闇』など、以前は使用できなかったような技を会得してから覚えるようになった感覚であった。
記憶は一切ない。しかし、自分の中には、自分じゃないもう一人の誰かがいる。
そしてそのもう一人の自分は、今の自分よりも遥かに深く、強く、そして濃い闇で渦巻いている。
この『ダークネス・マイアズム』を編み出した時、無論大和の助言もあって発展した技ではあるが、それ以前に、夜宵は自分の心にタップしていた。
『大輝戦』の直前に、咲夜に鍛えられても尚自分の力の足らなさを自覚していた夜宵は、気付けば最初は恐れていた自分の内に秘めた強力な闇に惹かれていた。
これまで自分の意思で制限してきた闇の力を、解放して見たいという欲望と、力を求める渇望に魅入られたのである。
そして、ほんの僅かに触れたことで解放されたのが、この技である。
身に潜む闇に触れた瞬間、ハッと我に帰った夜宵であったが、自分の中の何かが溶け込み、そして帰化したような感覚を覚え、驚きよりも安堵の感情を覚えていた。
強化された、と言うよりも、もとに戻った。そんな安心感である。
「負けられない…負けられないのよ…」
気付けば、夜宵は無意識に小さな声でそうつぶやいていた。
誰に対してか、誰に向けられたのものなのかは分からない。
しかしその表情は、つい先程まで見せていたもとの夜宵とは、少し異なる険しさを見せていた。
夜宵は気付いていなかった。闇を受け入れることで、自分が少しずつ変化していることに…
●●●
真衣には、専用の戦闘補具が存在する。
抜群のコントロールを磨き続けてきた真衣ではあるが、それでも、ただ投げるだけでは限界がある。
また、加速すればするほど、投げた物体への負荷も強くなるため、理論上は無限に加速できるものの、投げた物体に限界が来ると粉砕してしまう。
そこで、埼玉根拠地のメンバーとともに改善策を考え、根拠地唯一の専用戦闘補具を作成するに至った。
そして出来上がったのが、『硬歪翼球』と呼ばれる球。
一見すれば先程の球となんら変わらないように見えるが、一番の変化は使われている素材。
その素材は、武器の名前にもなっている『ウルツァイト』と呼ばれる鉱石である。
これは火山性の残留物から得られる物質で、現在地球上で最も硬い物質と言われている。
これにより、理論上でしか不可能と言われていた無限の加速を可能としており、埼玉根拠地内での実験では、マッハを記録している。
当然それ以上の加速も可能ではあったが、使用している盾に限界がきたため中止となっていた。
無論、『硬歪翼球』は一切無傷である。
その奥の手とも呼べる武器を、真衣は取り出していた。
「私一人じゃ出来ないけど…朝陽さんが託してくれたこれが使えるなら…」
その真衣の周囲には、朝陽が残した『フリューゲル』が漂っていた。
理屈は分からないが、現在は真衣の意思で動かせるようになっていた。
それはつまり、これまで埼玉根拠地の仲間達が担ってくれていた役割を果たす事が可能である事を意味する。
「朝陽さんが信じて託してくれたんです……私は…、その信頼に応えたい!」
真衣の想いに応えるかのように、『フリューゲル』が一斉に拡がり、九州メンバーと、朝陽を飲み込んだ『陸津波』の周囲に展開されていった。
「…これは、朝陽君の…?」
突如展開された『フリューゲル』に一同が困惑するなか、少し離れた位置で、既に真衣は投擲体勢に入っていた。
「待っててください朝陽さん!!今度は私が、貴方を助けます!!」
そして真衣は、自分に出せる全力で、『硬歪翼球』を思い切りよく投げた。
※後書きです
ども、琥珀です。
パソコンを修理に出しましたが、まだ業者からの連絡来ず…
誠に申し訳ないのですが、一旦来週の更新はお休みにさせて下さい。
データ次第になりますが、予定としては来週明けに更新を再開する予定でいます。
更新が不定休になってしまいま申し訳ありません。
復帰したらまた宜しくお願い致します。
本日もお読みいただきありがとうございました。




