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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
37/481

第36星:影漆

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。


【三咲小隊】

椎名 紬 22歳 能力『視界同調(ディペンドオン・アイ)

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。


八条 凛 16歳

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。


大刀祢 タチ 17歳 能力『残志彷徨う不朽の刃イリュージョン・ラーマ

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。

────一体何が起きたというのだろうか…。


 相手の攻撃を掻い潜り、隙を突こうとした動き出し。同種(メナス)から見てもその動き出しは完璧だった。


 しかし、メナスが相手の懐に入った瞬間、少しずつその体は断ち切られていった。


 人間の仕業ではない。


 人間は攻撃をした後で、持っていた獲物は()()()()()()()()()


 肉体を真っ二つにされたメナスは、その体を黒い塵と化し散っていった。


 それを最後まで見届けることなく、タチは再び漆黒の剣を構える。


 当然、メナスも警戒して迂闊に近寄るようなことはしない。


 謎の攻撃の正体を掴むため、三体同時に触手を伸ばし、タチを攻撃する。


 タチはこれを『影漆』で迎撃。


 四方八方から寄ってくる触手に対し、全身を回しながら断ち切っていく。


 しかし、一体だけであるならまだしも、三体同時の触手の攻撃は、『グリッター』の身体能力をもってしてもさばききることは出来ない。


 ()()



【────ッ!?】



 メナスが伸ばした触手は、なにも無い虚空で断ち切られていく。


 しかし何度見返してみようとも、そこには何も存在しない。


 だが触手が何かに触れた瞬間、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


 これが大刀祢 タチの超能力系『グリット』、『残志彷徨う不朽の刃イリュージョン・ラーマ』の能力である。


 『グリット』を発動することで、タチが振るった剣線上に刃のエナジーが残る。


 残留した刃は純粋なエナジーのみで構成されている為、目視はほとんど不可能なほど薄く半透明。


 『グリット』の能力を知らなければ、何も気づかぬままその身を裂かれることになる。



「残り三体…三咲さん、作戦はありますか?」

「個体数は多くありません。このまま力技でも勝てはするでしょうが…」



 三咲は眼鏡をクイッと直し、現状の把握をする。



「私達の小隊編成のバランスは、私と紬がサポートに回り、タチが前に出るという形です」

「え?私は?」

「追々工夫を加えるにしても、今はそこまで応用を利かせる段階ではないと言えるでしょう。今回のように実戦を交えながら、我々小隊のベーシックスタイルを見つけ出し確立して行かなくてはなりません」

「待って、私は?」

「…つまり?」

「今回の作戦はシンプルに行くべき、ということです。即ち…」



 三咲は再びメガネを弄り、タチに作戦の指示を出す。



「ゴリ押しでメナス達を駆逐なさい」



 僅かな沈黙の後…



「…フフッ…アハハハハハハハハハハ!!夜宵さんの右腕を務めていたとは思えない雑な作戦!!でも良いね、私はそういうのも大好きだ!!」

「結局はそうなるんですね…ハハハ…了解しましたよ…それじゃあ先ずは好き勝手にやってきます」



 紬は楽しそうに笑い、タチは呆れたような諦めたような笑みを浮かべ剣を構えた。



「まぁ安心しなよタチ。私達がサポートするからには背中どころか360度身を任せて良いからさ」

「対処しきれない攻撃はここからサポートします。思う存分、その刃を振るってきなさい」

「了解、小隊長」

「ねぇ私はっ!?」



 涙ながらの訴えを気にせず、タチは再びメナスと距離詰める。


 今度は様子見など一切ない、全力の加速だ。その加速力に驚きはしたものの、まだメナスが対応出来ない程の速度(モノ)ではない。


 が、しかし、正体不明の攻撃が、メナスの動きを戸惑わせていた。


 迂闊に動けば見えない何かに切り裂かれるやもしれない。その考えが、メナスの動きを制限させている。


 当然、タチもそれを計算し、真正面から突っ込んでいる。


 そして自身の制空圏内に入り、『影漆』を一閃。


 流石に直撃を喰らうわけにもいかず、メナスは頭を下げて回避を選択、自身の身体が引き裂かれていないことに安堵すると同時に、顔面に強い衝撃が走る。


 その衝撃が、人間に蹴られたものであることに、吹き飛ばされてから気が付いた。


 目の前の人間は、自分(メナス)が下に避けることを読んでいたのだ。



「種も仕掛けにも気付いていなければ、当然最も安全な自分の体の方へ避けるに決まっている。ならば私はその動きを予測して仕掛ければ良い。ところで、良いのか?」



 タチは吹き飛ばされたままのメナスを、いや、それよりも僅かに後ろを指差しこう告げた。



()()()()()()



 その言葉を聞き取る前に、メナスは()()()()()()()()()()()()()()、その身体を引き裂かれた。


 当然、蹴り飛ばした方角も計算済みである。



「残り、二体」



 チャキッ…、という音を立てながら、タチは三度『影漆』を構える。


 またもや見えない何かに同族(メナス)がやられたことに困惑するも、メナスは本能でその原理を理解し始めていた。


 最初にやられたメナスと次にやられたメナスの位置はほぼ同じ。


 そして自分達の触手を切り裂いたのは、あの人間が振った武器の線状であった。


 つまりはあの人間の攻撃戦場には見えない刃のようなものがあるというこだ。


 厄介なのはその刃がメナスをもってしても視認するのが難しいということ。


 目に見えない以上は、近付くのは危険である。


 即ち…



【────ア゛ア゛!!】



 メナスが取るべき行動はシンプルだ。近付かなければ良い。


 遠距離(レーザー)による攻撃でひたすら間合いをとって戦う。


 当然タチ達も【耐熱反射鏡ゲドゥルト・シュピゲール】で対応する。


 しかし相手が二体だけとはいえ、このままではジリ貧だ。



「三咲さん、紬さん、凛、数十秒だけ時間を作ってください」



 【耐熱反射鏡ゲドゥルト・シュピゲール】でレーザーを対処しつつ、タチが3人に頼み込む。



「了解しました」

「やれやれ…あまり直接の戦闘は得意じゃないんだけどね」

「わたs…ッツ!?分かったわ!!任せなさいよ!!」



 自分の名前が呼ばれたことに感動している凛を他所に、三咲、紬、そして少し遅れて凛がタチの前に立ち、代わりにレーザを防ぐ。



「二体だけとはいえこんなに連射できるモノなんだね。正直予想外だよ」

「一つ一つの威力を下げることで連射を可能にしているのでしょう。現に【耐熱反射鏡ゲドゥルト・シュピゲール】の耐久度はそこまで落ちていません」



 三咲は「ですが…」と続ける。



「このままでは反撃に繋げられませんね…凛」

「なにっ!?」

「一瞬だけ相手の攻撃を止められますか?」



 三咲の発言に、凛は僅かに顔を顰める。



「ここからメナスを狙うってこと?私、別に狙撃手ってわけじゃないんだけど…」

「致命傷を与えるのが目的ではないので構いません。一瞬でもどちらかのレーザーが止まれば良いですし、少しでもかすれば()()()()()()()()()()()()()()?」



 そこまで言われて漸く三咲の意図を理解した凛は、懐から自前の武器を取り出す。


 取り出されたのは二丁のハンドガン。


 しかし『グリッター』が用いる『グリットガン』の形状とは違い、通常の銃(ベレッタ)型の形をしていた。


 ダンッ!!という音ともに射出されたのは、やはりエナジーの弾ではなく鉛の弾丸だ。


 とはいえ勿論ただの弾丸ではない。


 射出に使われているのは凛のエナジー。


 そして弾丸自体にも射出時にエナジーを吸収する特性を持っている。


 それにより弾丸は途中で更に加速(ブースト)。メナスの表皮であっても貫通する仕組みとなっている。



【────ヴッ!?】



 放たれた数発の弾丸は殆どがメナスから逸れていったものの、その内の一発がメナスの肩を貫いた。


 それにより一瞬ではあるがメナスの攻勢が弱まる。



「隙、出来たよタチ」

「ありがとうございます、参ります」



 後ろで待機していたタチは、剣を鞘に納め抜刀体勢を取っていた。


 そして素早く抜き、一閃。しかし当然、タチの『グリット』ではその場にエナジーの刃が留まるのみ。


 当然メナスもそれに気付いている。だからこそ、タチの行動が理解できず、ただ困惑するだけだった。



「私の『グリット』では確かに刃は届かない…が、しかし…」



 その時、タチの足元が僅かに揺れる。



「だからこそ、司令官と指揮官は私にこの刃を授けて下さった」



 いや、揺れたのは足元ではない。


 正確にはエナジーで創られた見えない刃の下…そこに先程までは存在しなかった影が出来ており、それが揺れ蠢いているのだ。



「私の新しい刃、『影漆かげうるし』は実体化の剣。影にエナジーが宿り実体化する漆の刃」



 タチの言う通り、影は実体化し巨大な刃と成っていく。



「そしてこの影は…勢いをそのまま実体化する。つまり…」



 そして影は()()()()



「飛ぶ斬撃と化す」

【────ッツ!?】



 突如迫り来る斬撃。


 メナス達は再びレーザーを放ち撃墜を試みるが、影の刃はレーザーを引き裂いて進む。


 回避は不可能と判断したのか、メナスは何故か地面に向けてレーザーを放った。



「(む…?)」



 違和感の残るその行動に気が付いたのは、視界をジャックしていた紬のみ。


 レーザーによって土埃が舞う中、影の刃はそれを裂くようにしてメナス体を切り裂いた。



「任務、完了」



 タチはゆっくりと刃を納め、勝利の言葉を紡いだ。



「メナスの殲滅を確認。任務達成ですね」



 勝利に安堵する三咲を尻目に、紬は先ほどのメナスの行動の違和感を拭えずにいた。



「(何故、メナスは最後に地面に向かってレーザーを…何か意図が…)」



 不意に、紬の脳内に舞い上がった土埃が映る。



「(そうか…!地面を狙ったのは土埃を起こすため!そして土埃を起こしたのは私達の視界から外れるため…!!)」



 紬が意図を理解するのと同時に、メナスが地面の中から姿を現した。


 レーザーにより視界を封じたあと、一体のメナスはレーザーで地面を焼き切り、そのまま忍び寄ってきたのだ。


【────ア゛ア゛!!】



 メナスは既に攻撃態勢だ。そして不意を突かれた三咲達は後手に回るしかなく…



「なんてね!!」



 次手を打ったのは凛だった。


 先程のハンドガンを前に構えたあと、大きく下に振り下げる動作を見せた。


 次の瞬間、それに合わせるようにしてメナスが三咲達の方へと引き寄せられていった。



【────ッ!?!?】



 謎の引力で引き寄せられるメナス。それは肩から引き寄せられているようだった。


 そしてその箇所が、自身に当てられた、あの銃弾の場所である事に気がつく。



「惜しかったなメナス。そして…そこは先程『飛影』を放つために我が刃を振るった場所ぞ」



 その言葉がメナスに理解できたかは分からない。


 しかし、メナスは引き寄せられる方向にあの刃があることに気が付いていた。


 が、引き寄せられる力に抵抗することもできず、最後のメナスは真っ二つに引き裂かれ、その身を塵と化し、消え去っていった。


 これが凛の『グリット』、『アナタのハートを(シーフ・ユア・)狙い撃ち(コア)』。


 能力は誘導能力で、触れたモノにエナジーが宿り、そこに攻撃を誘導することが出来るというもの。


 その逆も然りで、自身のエナジーが宿ったものを引き寄せることも可能である。


 今回使用したのが正に後者であり、自身のエナジーを宿した弾丸を当てることで、メナスにエナジーを帯同させ引き寄せたのである。



「私の『グリット』が解除されてないからおかしいと思ったのよね!念のため用心しといて良かったわ!!」



 堂々とした仁王立ちを見せながら、凛が勝利を喜ぶ。



「…最後に美味しいところを持っていかれたね、三咲さん」

「保険をかけたとは三咲さんの指示だけど、それをあの咄嗟の中で対応したのは凛の判断によるものです。これは認めるしかないのでは?三咲さん」


 紬とタチに言われ、三咲は凛の方を見る。そこにはキラキラした目を三咲に向ける凛の姿が…


 三咲は観念したようにため息を一つ吐き、そして笑顔で答えた。



「アナタのおかげで助かりました。流石は私の小隊のメンバーです」



 三咲の言葉に凛は顔を輝かせ、そして満面の笑みを浮かべた。

※ここから先は筆者の後書きになります!興味の無い方はどうぞ読み飛ばしてください!!







ども、琥珀です!!

すいません、今回は本編長めです!!


意図したものではなく、分量コントロールが出来ずに引き起こした筆者のミスです…


ただ殆どが戦闘描写なので恐らく読むのに苦労はしない…か…と?笑


すいません、以後気をつけます…

すっかり暑くなってきましたね…皆さま熱中症にはお気をつけください…


本日もお読みくださりありがとうございました!!

次の更新は月曜日の予定です!!宜しくお願いします!!

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