第328星:誘い込み
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ茨城根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。『グリット』は、『螺旋形状』で、触れたモノ、もしくは一定の範囲内の物質を螺旋状に捻じ曲げる。触れてなくても扱えるため、気付けば拘束されている。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。『死中に活路』で、相手の攻撃が当たる場所が淡く輝いて見えるようになる。あまり前線へは飛び込まないが、この効果を活かした戦闘も得意とする。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
朝陽達が攻め込んんで来たのは想定外ではあったが、盾子達にとっては好都合な展開であった。
既に攻め込ませる用意は済ませていたため、その手間が省けた形になったからだ。
「予定通りに行くぞ。私の盾を牽制に使って、彼女に撃たせる。二人は盾を影にしてアズサ君の指示で攻撃する。良いな」
「「了解さ〜!!」」
二人同時に返事を返すと、盾子は直ぐに『グリット』を発動。
朝陽の進行を妨げるようにして、無数の盾が出現する。
しかし、朝陽に慌てた様子は無かった。
盾自体には攻撃力が無いと既に判断していたため、ギリギリまで盾の出現を待ち、現れたらそれをかわす、乗り越えるなど、最小限の動きで迫っていった。
「すごいね。私みたいに見えてる訳じゃ無いはずなのに軽い身のこなしでかわしてる。まるでパルクールだ」
『グリット』を用いらず、純粋な身体能力だけで盾子の神出鬼没な盾をかわしていく朝陽の姿に、アズサは思わず感心的な声をあげてしまう。
「ふむ、本来の用途とは違うとはいえ、確かにここまで簡単にかわされてしまうと傷付くな。どれ…」
そう言うと、それまで特に動作なく盾を顕出させていた盾子が、手を前に出す。
「『カスケード』」
そう言って形成された盾は、これまでとは違い、盾の背後に何段も積み重なった階段のようなものが作り上げられていた。
「え!?わわっ!!」
その形は予想していなかったのか、朝陽は上手く身体を回しバランスを保ちながらも転がって行く。
「『エスクード』」
そこで動きが止まったのを狙い、今度は両側面から盾を形成。作り出された盾は、朝陽の身体を挟み込もうと迫っていた。
「『光の壁』!!」
回避は間に合わないと踏んだ朝陽は、『フリューゲル』を左右に展開し、光の壁を形成。
これで盾子の『エスクード』の動きを止め、その場から脱出した。
「私と同レベルの盾も形成できるのか。最早私の必要性を疑うレベルだな」
「実績も経験も貴方は桁が違うでしょ。貴方がいたからこそ救われた命が多くなる。へこむ必要はないですよ」
半ば冗談のつもりで呟いた言葉であったが、アズサから予想以上の励ましの言葉を受け、盾子は思わず笑みを浮かべていた。
「ハハハ、確かに。私は人を守るための力としてなら誰にも負けない自負がある。かわされようと防がれようと、『守護神』の名を名乗る私には痛くも痒くも無いことだったな」
気落ちしていた訳では無かったが、思わず気合を入れられ、盾子の気迫が更に鋭くなる。
「さて、では私の仕事を果たすかな」
その視線の先には、今なお直進を続ける朝陽の姿が映っていた。
「(この距離なら、私の攻撃の射程範囲…だけど盾子さんの盾の強度を踏まえると、普通の技じゃ効果はない)」
ここまでの攻防で、盾子の『エスクード』の強さを実感していた朝陽は、次の一手を慎重に選んでいた。
「(『プフェイル』や『ゲジョス』で撹乱しても、多分盾子さんの護りの方が厚い…手数よりも質量で勝負を仕掛けよう!!)」
攻撃手段を決めた朝陽は、前進を止めその場に踏みとどまる。
そして、槍の先端を真っ直ぐ盾子達の方へと向けた。
「(出力はある程度高くても大丈夫。性質を少し変えて、衝撃をより強く……)」
朝陽の狙いをいち早く察したのは、盾子の隣に立っていたアズサだった。
「…!来る。この色合い…高出力、高密度の攻撃。生半可な守りじゃ防げない」
「侮るな。私は五〇体もの『メナス』のレーザーを真正面から防いだこともある。貫けるものなら、貫いてみろ!!」
先程までの落ち着いた圧とは違う、自身のプライドを掛けた気迫を、隣にいるアズサはビリビリと肌で感じ取っていた。
「…そう言う訳だから、こっちの心配は必要ない。攻撃した隙を狙って」
小声で通信を残し、アズサは攻撃の方向を正確に盾子に伝え、盤石の体制を整えた。
「(アズサさんの『グリット』で、私の攻撃はきっと読まれてる。だからこれは牽制程度で良い。ほんの少し気を逸らして、一気に攻め込む!!)」
朝陽の槍の先端に光が集い、集まった光の質量に見合わないサイズの小さな光の玉へと集約していった。
「「『閃光の貫穿よ』!!」」
「『エスクード』!!」
朝陽が攻撃するのと同時に、盾子は自身の前に幾多もの盾を形成していった。
────キュウ……ゥン……
朝陽の放った超高密度の光は、何重にも重ねられた盾子の『エスクード』を次々と貫いていった。
「ッ!!」
まるで盾など存在しないかのように突き進んでくる朝陽の攻撃に、盾子は更に『エスクード』を重ねていく。
「う、お、お、おおおおぉぉぉぉ!!!!」
消滅しては形成し、消滅しては形成し、これらを繰り返し、朝陽の光球は盾子達の手前でその勢いが止まり…
「『エスクード』!!」
その超高密度の光が炸裂する前に、盾子はそれを覆い囲うようにして無数の盾を重ねていった。
直後、その内部で爆発のような音をさせ、一番外側にあった盾すらヒビが入るほどの威力を見せつけられていた。
「恐るべき破壊力、そして貫通性だった……アズサ君の指示と忠告が無かったら、今ので私はやられていたかもな」
どうにか抑え込んだ事で安堵した盾子であったが、アズサがバッとこちらへ振り返った。
「まだ!!直ぐそばまで来てる!!」
アズサに見えたのは、盾子に走る細い線。
それが朝陽の槍による直接攻撃であると気付き、即座に声を掛けるが、振り返った先に、既に朝陽は立っていた。
「貰った!!」
朝陽の攻撃を防ぐことに全力になり、盾子の反応は明らかに遅れていた。
そのため、この朝陽の攻撃にいち早く反応できたのは、『死中に活路』を持つアズサと────
「貰ったのは!!」
「こっちの方さ〜!!」
あらかじめ、このタイミングを狙っていたナミとミナの二人であった。
手持ちの『バトル・マシナリー』である『飆鸝槍』は、高速回転で大量の風を纏い、既に最大威力を発揮出来る状態になっていた。
「(しまった…!盾子さんに気を取られすぎて…『フリューゲル』を展開する…?いや、もう間に合わな…)」
朝陽の考えが纏まる前に、ナミとミナの『飆鸝槍』が勢いよく振り下ろされた。
槍そのものの威力と、纏われた風が周囲に吹き荒れ、辺りに土埃が舞う。
ナミとミナの攻撃を知っていた盾子は、余波を避けるために『エスクード』を展開し無傷。
直撃は避けられない距離ではあったものの、この視界の悪さを利用しての万が一の反撃を警戒していた。
しばらくしても反撃は来ず、次第に土埃は晴れていった。
そして、ナミとミナによって振り下ろされた槍の先には、朝陽の姿が────
「やはっ!?」
「なはっ!?」
────どこにも無かった。
慌てて周囲を散策する九州メンバーであったが、その姿は近くにはどこにも無かった。
そして霧が完全に晴れたことで、その姿を発見する。
「…あそこだ」
アズサが指差した方角、その先に確かに朝陽の姿はあった。
しかし……
「(あの距離…この一瞬で一体どうやって?)」
朝陽の位置は、つい先程まで立っていた場所から50mは離れていた。
いかに身体能力が優れた『グリッター』と言えども、ただ回避するだけならまだしも、一瞬で50mの距離を移動することは不可能である。
しかし現実問題として、朝陽はその位置まで自分達から離れていた。
「(危なかった…思わず使っちゃったけど、寧花先生との約束の範囲内だったし、良いよね)」
対して朝陽は、驚愕する九州メンバーとは対照的に落ち着いた表情であった。
攻撃こそ際どいタイミングで仕掛けられたものの、考えるよりも先に身体が動く条件反射が働き、移動に成功していたからだ。
「(盾子さんの盾が予想よりも固くて、視野が狭まっちゃった。ナミさんとミナさんが隠れてることに気付かなかった)」
そして、今の自分の動きの悪かった点を振り返り即座に反省。そして、次は無いようにとフィードバックしていた。
「…アズサ、今の一瞬で何か見えたか?」
自分達よりも可視化に優れるアズサに尋ねるも、アズサは首を横に振るだけであった。
盾子も全く見えなかったため、アズサの反応は予想通りではあった。
「まだ手の内を隠していると言うのか?どれだけの猛者だと言うのだ、君は」
それでも、今目の前で起きた理解を超えた現象に、流石の盾子も苦い笑みを浮かべるしか無かった。
※後書きです
ども、琥珀です!
祝!!三周年!!
本日で本作品は三周年を迎えました!!
長期のお休みを頂いてしまったり、誤字・脱字を繰り返したり、設定が緩々だったり…
色々と至らないことの多い作品では御座いますが、読んでくださる皆様のおかげでここまで続けることが出来ました!!
まだまだ展開的には半分も行っていませんが、これからも末永く本作品を応援してくださればと思います!!
皆様、これからも本作を何卒宜しくお願い致します!!
本日もお読みいただきありがとうございました!!
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします!!




