第325星:対朝陽
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ茨城根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「どりゃあああああ!!」
「おりゃさ〜!!」
「ちょりゃさ〜!!」
攻め込んで来たのは両地域同時のことであった。
中国地方からは大河が。九州地方からはナミとミナがそれぞれ攻め込んできた。
「接近戦は私が対応します!皆さんは援護を!!」
これに対応したのは朝陽。結果として三つ巴の形にはなっているが、狙いは朝陽に偏っていた。
「おらぁ!!」
硬化した拳で朝陽に殴り掛かってくる大河の攻撃を、朝陽はいなすようにかわす。
「おっ!?」
「とりゃ〜!!」
「おりゃ〜!!」
それに続くようにしてナミとミナが槍で攻撃を仕掛けて来るが、朝陽は同じく槍で受け流すようにしてこれを捌く。
「ありゃ!?」
「うりゃ!?」
その後も朝陽に偏るような形での三つ巴の鬩ぎ合いが続いていたが、朝陽はその全てをいなし、捌いていた。
「ハハハ!!マジかよ!!想像以上じゃねぇかお前!!」
攻撃をかわされている状況にありながら、大河はその状況を楽しんでいるようであった。
「ミナ〜攻撃が全部受け流されてるさ〜!!」
「ナミ〜この人めちゃくちゃ強いさ〜!!」
対するナミとミナの二人も、朝陽の強さに興奮しているようであった。
「…!!」
その時、朝陽の動きがピタリと止まる。
背後を確認すると、朝陽の四肢と背中に光の糸が付けられており、それが朝陽の動きを制限していた。
「これでどうですぅ!?」
糸は駿河の『グリット』によるもの。グッと固定された糸により、朝陽の動きはかなり制限されていた。
「『放発必中』!!」
しかし、その糸を朝陽の後方から放たれた矢が全て射抜いていった。
駿河の行動を読み取った瑠河が即座に対応したのだ。
「『光衝撃』!!」
次の瞬間、槍の先端に光が集まり球体になると、それをそのまま突き出すように大河へぶつける。
「う、おおおああああっ!?」
その衝撃は凄まじく、大河の背後に衝撃波の波のようなものが出来た後、大河は大きく後方へ吹き飛ばされる。
防御の構えをとって致命傷を防ぎ、足は地につけたまま姿勢を崩さなかったのは、流石と言えるだろう。
また、一気に吹き飛ばされながらも外傷がない、その『硬化』の能力も、一級品である証であった。
「ハハッ!!動きが解放されてからの判断はえぇな!!普通は駿河の糸で動き止められたらもっと戸惑うだろ!!」
遠くに離れても聞こえるほどの声量で、大河は素直に朝陽を褒める。
「予習と対策、しっかりしてきましたから」
対して朝陽は普段と変わらず、そして取り組んで当然と言わんばかりの表情で答えた。
その予習と対策は、咲夜が綿密に練り、朝陽達に教えたものであった。
「(ありがとうございます、先生。お陰で、全然焦らずに戦えます)」
無論、朝陽は今の局面の打開が一人で出来たものではないことを自覚していた。
拘束された瞬間に、瑠河が正確に糸を貫いてくれたからこそ、朝陽も反撃という手段に思考を回すことが出来たのである。
「ほんなら次はうちらさ〜!!」
「勢いじゃなく、連携ならどうさ〜!!」
大河との距離が取れたことで、今度はナミとミナの二人が攻め込んで来る。
糸が外れた事で身動きが可能となった朝陽はこれに即座に反応。
まず振り下ろされた二人の槍を、同じく槍を横に倒すことで受け止める。
しかし二人の攻撃はそれだけに留まらず、弾かれた勢いで体勢を立て直し、今度は片方は上半身、もう一人は下半身を狙う形で攻撃を仕掛けてくる。
しかし朝陽は慌てなかった。槍を地面に突き立てると、自身は跳躍し、槍の上に逆立ちをするような体勢になる。
二人の槍は突き立てられた朝陽の槍に直撃。その衝撃で外れた勢いを利用し、朝陽は思い切り槍を横に振った。
ナミとミナの二人もこれを槍で防ぐが、勢いがついた分受け流すことは出来ず、後方へ後退りしてしまう。
「『光の弾丸』!!」
その隙を見逃さず、朝陽は着地と同時に槍を構え狙いを定めると、光の弾丸を放った。
「やはっ!」
「なはっ!」
まるで動きを先読みしているかのような素早い攻撃に、二人は驚いて身動きを取る事が出来ない。
「『守護壁』」
が、朝陽の攻撃が当たる直前に二人の前に壁が出現。朝陽の放った光弾を完璧に防いで見せた。
朝陽が向けた視線の先では、不動の状態で笑みを浮かべる盾子の姿があった。
「良い攻撃だ。間に合わないかと思ったぞ」
「…その割にはまだまだ余裕がありそうでしたけどね」
両者がそんなやりとりをする中、朝陽の後方では、夜宵を除く二人が唖然としていた。
「これは驚いた…噂には聞いていたが、まがりなりにも同じ選抜メンバーを同時に三人を相手にしても全く怯まないとは…」
「す、凄すぎます朝陽さん!!」
普段はオドオドばかりしている真衣も目を輝かせて見ていた。
「あの子は一人で十体以上の『メナス』を相手に悠々と戦えるから。それに最近は戦闘経験の不足を補うために弟子入りもしたみたいだし」
妹を褒められたことが嬉しいのか、夜宵はどこか得意げに答える。
「むぅ…能力で差異があるとはいえ、『メナス』の純粋な身体能力は『グリッター』を上回る。それを同時に…」
「で、でも瑠河さんの『グリット』なら同じことは可能では?」
真衣の質問に、瑠河は首を横に振った。
「それは君だって同じだろう、真衣君。そしてそれは、ある程度距離が保たれていればの話のはずだ」
瑠河の指摘が図星だったのか、真衣は何も言い返すことが出来なかった。
「私も距離さえあれば、複数体いようとも対応は出来るだろう。しかし、接近戦に持ち込まれれば一体相手にするのが精々だ。それに距離があったとしても『メナス』にはレーザー攻撃がある。時間が経てば経つほど、不利になるのは私だ。しかし、朝陽君はその点も対応出来る…だろう?夜宵」
瑠河の言葉に、夜宵はその通りだと頷いた。
「あの子の『グリット』の真価は、接近戦に対応した専用の槍、中距離戦に対応した『六枚刃』、遠距離戦に対応した能力、この近中遠の全てに対応した万能性にあるからね」
改めて聞かされる朝陽の『グリット』の汎用性の高さに、二人はただただ感心するばかりであった。
「恐るべくは、それを覚醒間もない彼女が使いこなしている点か。通常なら慣れるだけで数ヶ月…彼女の『グリット』程ともなれば、半年は掛かりそうなものだが…」
それについては、夜宵は答えることが出来なかった。
理由の一つは、恐らく朝陽、そして自分の『グリット』が、他の者とは少し異なっていると感じていたためである。
以前から時折あったように、夜宵は『グリット』発動時に意識を失うことを察していた。
加えてその時の記憶が無いものの、その間にも自身が戦闘を行なっていたという事実も薄々と感じ取っていた。
そして、異なるが同じような感覚を、朝陽の『グリット』から感じていた。
自分とは違う何かが己の中に宿っている感覚。それが『グリット』なのか、それとももう一人の人格が眠っているのか、それは分からない。
それもあり、夜宵はそれを口にしなかった。
そしてもう一つの理由は、朝陽とは違い、自分は己の力をまだ完全に掌握していることが出来ていないためである。
朝陽が強すぎる自分の力を徐々にモノにしているのに対し、夜宵は力を解放すればするほど、まるで飲み込まれそうになる闇の力に溺れそうになっていた。
その違いが光と闇の違いなのかは分からない。しかし、どんどんと力を身につけ、能力をモノにしていく朝陽と比べて、夜宵は心の奥底で自分を卑下にしていた。
「(朝陽…貴方の力は『大輝戦』でも色褪せないのね…)」
槍を構え、一人輝く朝陽を、夜宵はどこか濁ったような瞳で見つめていた。
「夜宵、大丈夫か?」
その時、瑠河に声をかけられ、夜宵はハッと我に帰った。
「ご、ごめんなさい、大丈夫よ」
夜宵は少し焦った様子で返事を返しながらも、瑠河の言葉に返答した。
瑠河はジッと夜宵を見つめたが、特に何も追求せず次のプランを話し出した。
「よし。正直彼女の力は私の想像以上だった。チーム全体で戦う予定だったが、彼女を主軸にした戦い方が一番良さそうだ。夜宵もそれで良いな?」
「…そうね、分かったわ」
瑠河のたてた作戦に、夜宵の返答はどこかぎこちな無いものであった。
※後書きです
ども、琥珀です
昔の文献か何かに、人類は魔法と科学の二択で、科学の発展を選んだと言うのを見ました。
科学は便利で、人々の生活を豊かにしましたが、もし、今やSFの世界となった魔法が発展していたらどうなったんでしょう?
そもそも魔法があったのかも定かでは無いですが、魔法の発展した世界にも住んで見たいですね
ハ○ー・○ッターの姿現しとかめちゃくちゃ便利そうですけどね…笑
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




