第324星:乱戦
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。『グリット』は光を操る『天照らす日輪』。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?『グリット』は闇を操る『闇夜の月輪』。
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。弓術の達人で、『グリット』は弓と矢にエナジーを加え、加えた量により矢が分裂する、『放発射抜』。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。身長が2m近くあり好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。戦闘の荒々しさから、『荒波鬼』の異名を持つ。『グリット』は『硬化』で、『メナス』の攻撃も凌ぐ硬度を誇る。同じ茨城根拠地である駿河とは仲が良い上連携力がある。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。『グリット』は『引用率糸』で、10本の指それぞれから目的に応じた糸を放つもの。これを駆使し、『メナス』の動きを鈍らせ、大河が倒す連携が鳥取根拠地の強み。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、駿河達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例で『守護神』の二つ名を持つ。凛々しく毅然とした態度を取るが、頑固ではなく、柔軟な思考も併せ持つ。『グリット』は『守護壁』で、線上に盾を展開する。その盾は非常に堅固でありながら展開も素早く、絶対防御とも評される。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。『グリット』はナミが『液状化』、ミナが『硬化』。連携もずば抜けており、タッグで右に出るものはいない。沖縄人らしく明るく前向き。
「『光輝く聖槍』!!」
敵地に降り立った朝陽は、まず自身の武器である『光輝く聖槍』を顕現させた。
「ひゃわぁ!!」
その光景に何故か味方が最初に驚くという謎の状況は生じたが、他の地域の面々も興味深そうにそれを見ていた。
「面白い。わたしの『守護壁』による盾の形成にも似ているが、私の能力が盾を創り出す事自体が能力に対し、彼女の能力は『光を操る』モノであったはず。全く別の能力にも見えるが、アレも能力の一つと見るべきか」
冷静に朝陽の槍を分析する盾子とは対照的に、ナミとミナの二人は光輝く朝陽の槍に目を光らせる。
「やは〜!なんだかとってもきれいさ〜!!」
「なは〜!私達のとは全然別物さ〜!!」
自分達の槍を引き合いに出して比較する二人に、盾子は臆している様子がないことに一先ず安堵する。
「聞けば、彼女は火力もさながら万能で多角的な攻撃も可能だそうだ。その時は任せた、アズサ」
「…私の判断が間に合う範囲なら」
控えめな発言ながら、無理とは言わないところに自信を感じ取った盾子は、ひとまず頷く。
「さぁ、見せて貰おうか、期待のルーキー」
一方で、若干劣勢に立たされていた中国地方のメンバーも、朝陽達の参戦により形勢を立て直すことに成功していた。
「ハハハ!!これで乱戦だ!!これならやりようがあるだろ駿河!!」
先程まで不承不承後退していた大河も、朝陽達が現れたことで再び闘志を燃やしていた。
「ええまぁそうですね〜。でも私達が有利になったって訳じゃ無いんで、突っ走りすぎは注意ですよ」
それを程よく諌めつつ、駿河も大河と同じ考えを持っていた。
「ですが大河さんのいう通り、戦場はリセットされました。上手く関東選抜の攻撃を利用しながら、私達に優位な場面を作っていきましょう」
「ったく、かったりぃな。戦況がリセットされたなら、大河の姉さんがいんなら突っ込んでも大丈夫だろ。相手の『グリット』も把握したし、アタシも攻撃に出れる」
安奈は慎重を期すような発言をし、カリナは攻め込むべきだと真逆の発言をしていた。
「まぁカリナさんが暴れたい気持ちは分かりますよ〜。でも把握できたのは九州だけであって、関東選抜組の方はまだ知識だけでしょ。ここはまだ慌てずにいきましょ」
駿河の発言に「チッ」と舌打ちしながらも、カリナはやたらに突っ込むような真似はしなかった。
自身の思いとは裏腹に、駿河の発言が正しいということが分からないほど愚かでは無いからだ。
「ともあれ三つ巴なのは事実。そして中国選抜と九州は一度ぶつかり合ってる。そうなれば必然的に…」
「狙いは、お互いに関東選抜になると言うことですね」
駿河の発言の意図を察した安奈が答えると、駿河は頷き、大河は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「願ってもねぇ展開じゃねぇか!!私の狙いはハナっから関東選抜だったんだ!!出来ることならタイマン張りたかったところだがな!!」
「そりゃ高望みし過ぎでしょ〜。でも目的が一致してるのなら私達にとっては有利なはず。順当に戦っていけばその機会もあるかもですよ〜」
駿河にそう言われ、大河はますます笑みを大きくした。
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「いま言ったように、両地域の狙いは私達になる筈だ。入り交じった戦いにはなるだろうが、慌てず、離れ過ぎず、互いにカバーし合って戦うぞ」
他の地域がジリジリと戦況をはかるなか、朝陽達も瑠河の説明に耳を傾け、この後の展開を予想していた。
「互いのカバーなら任せて。千葉根拠地の得意分野だわ。いけるわね、朝陽」
「うん、任せてお姉ちゃん。自分から言ったからにはその分責任も取るよ」
強気な発言ではあったが、気負っている様子はなく、その表情は寧ろ自信に満ち溢れていた。
「頼もしい限りだ。乱戦になると真衣殿の『グリット』が活きる場面がなかなか出ないと思うが、必ず必要な時が来る。それまでは私の側で援護を頼む」
「は、はいぃぃぃぃぃ!!」
既に狼狽えている様子が見られた真衣ではあったが、怯えながらもその場から逃げ出すことは無かった。
「……さぁ、来るぞ!!」
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「ウフフ、まだ初々しさが残っていたあの子が、こんな短期間であんなにも立派になるとは思わなかったわ」
フィールドに立ち尽くす朝陽の姿を眺めながら、最高司令官である護里は頬を綻ばせる。
「おや、護里さん。関東選抜に知り合いがいらっしゃったんですかか?」
護里の表情の変化に気が付いた、同じ最高司令官の席に座る九州地方の最高司令官である鷹匠 悟が尋ねる。
「えぇ、ちょっと前にね。ほら、『メナス』に知性が芽生えつつあるって分かった事があるでしょ?その時にちょっとね」
護里の言葉に、一同が「あぁ…」と頷く。
「ふん、そういや厄介ごとは殆ど千葉根拠地に降り掛かっておったな。それを退けたというんじゃから、護里さんが一目置くのも無理はないわ」
厳格そうな口調ながら、北海道地方の総司令官である興梠 叉武郎は、これまでの千葉根拠地の活躍を正当に評価していた。
「あら、私はちゃんとみんな平等に見てるわよ。まぁ確かに面識があるからそれとなく見ちゃうのは否めないけれどね」
年配の女性らしからぬお茶目な口調が妙に似合う護里の言葉に、各地方の総司令官の目が必然的に朝陽達に集まる。
「でも私も千葉根拠地の色んな話は聞いてますよ!知性の話もそうだけど、あの『悪厄災』を二回も退けたんでしょ!すっごいよね!一昔前は一個師団レベルの人数が必要とまで言われてたのにさ!」
興奮気味に語り出したのは、中部地方総司令官の藤木咲 柚珠奈。
元『グリッター』であるためか、その活躍にはやはり強く感じるものがあるようであった。
「それだけじゃない。護里さんからの報告が事実なら、あの伝説の存在とまで言われた【オリジン】も退けてるはず。実績だけなら頭ひとつ抜けてるわ」
冷静ながら柚珠奈と同じく千葉根拠地を称えたのは、東北地方総司令官の工藤 あやめ。
普段は冷静沈着な彼女も、流石に【オリジン】撃退という事実には関心を抱いていたようであった。
「ふん!そうは言っても彼奴一人の力ではあるまい。千葉根拠地の底力は認めざるを得んが、個人となればまた話は別じゃ」
対照的に、批判的、言い方を変えれば的を射た発言をしたのは、近畿地方総司令官の武田沢 銀次であった。
「しかし銀次殿。個人としての実力も優れるから、この『大輝戦』の舞台に選ばれたのではないかな?根拠地全体での活躍だけならば、個人を選抜するこの舞台には選ばれないと思うが?」
銀次の発言に対し否定的なコメントを返したのは、四国地方総司令官の東條 龍一郎。
その的確な発言に、銀次も「フンッ」と鼻を鳴らし押し黙ってしまう。
「フフフ、何だかんだでみんなあの子に興味を持ってる見たいね」
そして、まとめとして発せられた護里の言葉に、全員が様々な反応で押し黙った。
「まぁ彼女の活躍が嘘偽りでは無いのは事実でしょう。彼女からは実力云々以前に、自信が満ち溢れている。それだけの修羅場を駆け抜けてきた証拠です」
朝陽の強さを認めた上で、悟は「ですが…」と続ける。
「私達の九州地方だって駆け抜けてきた修羅場は負けてませんよ。事態の大きさでは負けていても、その数ならば絶対に負けてない。その経験の差と揺るぎない自信を持って、彼女達なら勝利を収めてくれる筈です」
朝陽達から目を離し、今にも攻撃を仕掛けようとする自信が総括する地域、九州選抜のメンバーを、悟は真っ直ぐ見つめる。
「それは私の地域にも言える事!!幾多の戦場を駆け抜け、そして生き抜き、勝利を収めてきた!!ちょっとやそっとの活躍程度でイキがらないで欲しいですねぇ!!」
悟の言葉に乗っかるようにして、中国地方の総司令官である捻も高々と発言する。
ちょっとやそっとの活躍ではないと思っていた一同は、ズレた発言をする捻の発言に呆れた様子を見せていた。
それでも、今の発言のように、自身の収める地域を応援する気持ちはあるようであった。
「ウフフ、みんな気合いが入ってるわね。それでも勝ち残るのは一つの地域だけ。さぁみんな、この戦いを見守りましょう」
護里の言葉と同時に、九州地方と中国地方が動き出し、一日目最終戦となる第三部の戦いは、佳境に入ろうとしていた。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




