第321星:『守護神』対『荒波鬼』
第三部 関東 VS 中国 VS 九州・沖縄
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。大胆不敵で豪快な性格。身長が2m近くあるが、それを感じさせないフランクさがある。好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、咲夜達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例。凛々しく毅然とした態度が印象的だが、決して頑固というわけでもなく、柔軟な思考も併せ持つ。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。沖縄人らしく明るく前向き。
「…!衝突音が激しくなった。戦闘が始まったみたいだな」
音のする方へ移動を続けながら、瑠河は戦闘が始まったことを察する。
「この距離なら、私なら見れるかも。確認してきます!」
「か、かかか確認ってどうやって……ひゃわぁ!!」
真衣が尋ねようとした瞬間、朝陽は『グリット』を発動。
衣服を変化させ、髪は金糸雀色へと変化し、その色と同色の光で全身を淡く発光させていた。
「…噂には聞いていたが、本当に美しい『グリット』だな」
瑠河は思わず呟き、真衣はその変化に唖然としている様子であった。
「ありがとうございます。じゃあちょっと見てきますね!」
朝陽は少し照れた様子を見せると、ゆっくりと飛翔を始めた。
「ひゃあ!!浮いたぁ!!」
またもや驚きの声を張り上げる真衣に苦笑いを浮かべながら、朝陽はそのまま高度を上げていった。
「朝陽、出来るだけ出力を抑えるのよ。見つからなければ奇襲を仕掛けるチャンスだからね」
「分かってる!」
夜宵の言う通り、普段よりも光の出力を抑え、朝陽はゆっくりと飛翔していった。
「しかし『戦闘補具』無しで空を飛ぶとは……どう言う仕組みなんだ?」
飛び去る朝陽を見ながら、瑠河が夜宵に尋ねる。
「あの子も感覚で飛んでるらしいから、抽象的な事しか分からないけど、イメージとしては自分の『エナジー』を光に変質させて、それに推進力…というより向きを与えてるらしいわ。それで自由に飛び回ってるみたい」
「はわわぁ……羨ましいですぅ……」
納得するように頷く瑠河の隣で、真衣が羨望の眼差しで飛んでいる朝陽を見ていた。
間も無くして朝陽は上空から降りてきた。
「どうだった?」
「うん、やっぱりさっきのは中国地方と九州沖縄地方の衝突音だった。それで、大きな女性の人が前線で戦ってるんだけど…」
「大きな女性……となると、百目鬼 大河だな。彼女の実力は本物だ。それが最前線で戦っているとなると、暴れん坊のように荒れ狂った戦場になっていると思うが…」
瑠河の冷静な説明に、朝陽は首を横に振った。
「それが、突っ込もうとする大河さんの進行方向に、ずっと壁が出てきてて、攻めあぐねてるみたいなの!」
●●●
鹿島根拠地選抜、仙波 盾子の選出は、異例の一例である。
近畿選抜における兵庫の智将、黒田 カナエもまた異質な例ではあるが、この盾子もそれとは違った意味で異例の選出である。
何故ならば、盾子の『メナス』討伐数は一桁程度。
こちらも同じく異例の選出である朝陽でさえ優に50は超えていることを踏まえると、異質な少なさである。
では何故、彼女がこの選抜メンバーに選ばれたか。それは────
「あぁああああうざってえぇぇぇぇぇ!!!!!!次から次へと出てきやがってぇぇぇぇ!!!!」
暴れ狂う大河を抑えるようにして目の前に現れる盾の数々。
これが仙波 盾子の『グリット』、『守護壁』。名前の通り、自身の周囲に盾となる壁を創り出す能力である。
この能力の特筆すべき点は、まずその展開力の速さ。
盾子の『守護壁』は、視界に入り念じた瞬間に形成される。つまり、盾子が認識出来るものであるのならば、即座にその先に展開することが可能である。
二点目はその効果範囲。『守護壁』の効果範囲は、盾子の視界の先だけではない。
実際は、盾子のもつ高い空間認識能力に準じて、念じた箇所に顕出させることが出来る。
そして盾子の空間認識能力は、長い年月を経て磨き続かれており、今回用意されたフィールド内であれば、どこにでも盾を作り出すことが可能である。
そして、最後に三点目。最も重要な点が、その強度。
暴れ狂う大河を押さえ付けていることを見ても分かる通り、並の『グリッター』以上の力を持つ選抜メンバーでさえ、盾子の『守護壁』は砕くことが出来ない。
更に言えば、この盾は、『メナス』のレーザーでさえ貫通しない。
まさに『守護壁』という名に相応しい絶対防御である。
そして、この能力と、磨かれた技術が、彼女が選出された理由そのものである。
鹿島根拠地はここ数年、一般市民はもちろんのこと、『グリッター』でさえ一人も被害者を出していない。
理由は単純。『メナス』の攻撃を、この盾子が全て防ぎ、詰んでしまうからである。
これが、仙波 盾子が選出された理由。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な『グリッター』である。
「流石は鳥取のエースにして『荒破鬼』の二つ名を持つ大河殿だ。私の盾があると分かっていても、思わず身を引きそうになるプレッシャーだ」
対して鳥取根拠地のエースである百目鬼 大河の選出理由は至って真っ当。
天田の『メナス』を、その実力を持って討ち倒してきたからに他ならない。
2メートル近くある身長に、その荒々しい戦闘スタイルから、『荒破鬼』という異名をつけられているが、盾子はまさにそれを目の前にしていた。
通常なら全力でぶつかれば怪我をするのは相手である。
しかし、先程から鳴り響くのは金属音のような衝突音ばかりで、大河は傷ひとつ負っていなかった。
「バカヤロウ!!この程度で私が傷つくかよ!!」
再び盾子の作り出した壁に激突し、金属音を鳴らす大河。
これが百目鬼 大河の『グリット』、『硬化』。
なんの捻りもない、全身を硬化させる能力である。しかし、その硬質度は非常に高く、盾子の形成する『守護壁』にも劣っていなかった。
先程から鳴り響く金属音は、互いに硬質化した物体同士がぶつかったことによるものであった。
「おらどしたぁ!!守ってばかりじゃ勝ち目はねぇぞぉ!!」
荒々しい口調ではあるが、大河は冷静であった。これは相手を攻撃に誘導する誘い文句である。
このままではこの局面を打開できないと踏み、荒れ狂ったように見せかけ、相手の動きを誘導しようとする思惑があったのである。
「ふむ、確かにその通りだ。ミナ、ナミ」
「やは〜!待ってたさ〜!」
「なは〜!やったるさ〜!」
その誘導に敢えて乗るようにして、盾子はいくつかの盾を解除。代わりにミナとナミが正面からぶつかり合えるような状況を作り出した。
「わざわざ正面から向かってくるとは良い度胸だチビども!!一気に叩き潰してやるよ!!」
纏うオーラはまさに鬼そのもの。
しかし、明るくマイペースなミナとナミは、大河の圧をもろともしなかった。
「ミナ、私が先にいくさ〜!それに続けて打ち込むさ〜!」
「分かったさ〜ナミ!」
そう言って前に出たのはナミ。『飆鸝槍』を携え、一気に大河に攻め込む。
そして、振り回していた『飆鸝槍』を思い切りよく大河に叩きつけるが────ガキィン!!
刃に混ざって風も纏っていた『飆鸝槍』は、大河の『硬化』により防がれ、ダメージは全く無かった。
「残念だったな!その武器とアタシの硬化は、私の勝ちみたいだ!」
そして反撃に転じるべく、大河が拳を振りかざしたところで、ナミがその場にしゃがみ込む。
そしてその背中合わせのようにしてミナが現れ、巧みな動きで攻撃を仕掛ける。
「バカが!!今のを見てなかったのか!!その武器はアタシには通用しな……」
そのミナの攻撃が迫った瞬間、大河の直感が何かを感じ取り、一度は防いだはずの攻撃を直前で回避した。
大河は駿河達のいるところまで一気に後退。そして二人を警戒するように睨んだ。
「どうしたんです?あの二人の攻撃なら警戒する必要はないって分かったんじゃ……」
そこまで言いかけたところで、駿河の口が止まる。
何故なら、大河の腹部には、『飆鸝槍』にまとわれた風が掠ったことで出来た小さな切り傷が出来ていたからである。
「ありゃ?こりゃ一体どういうことでしょう?」
「分かんねぇ。ただ、二人目の攻撃が当たる瞬間、悪寒がしたから下がったらこれだ」
大河の『硬化』が、盾子の壁にも劣らぬ硬度を誇るのは既に実証済みである。
では、二人の使う『飆鸝槍』がそれを上回る切れ味を誇るのか?
それも否である。
『飆鸝槍』は高い攻撃力に長いリーチ、そして鋭い切れ味を誇る槍ではあるが、盾子や大河の硬度を上回る程ではない。
それでは何故、ミナの攻撃が大河に通じたのか。それは……
「…あんまり情報が無かったんで確証は持てなかったんですけど、どうやら、与那覇 ナミさんの『グリット』は、『液状化』のようですね」
これが理由であった。
※後書きです
ども、琥珀です
最近随分と暖かくなってきましたね〜
それに比例して、どうやら花粉が蔓延しているらしいです。
私は花粉症じゃないので分からないのですが、周囲にはくしゃみやら鼻水やらで大変そうな方がちらほら…
「ざーこざーこ♡花粉にも耐えられないんて恥ずかしい〜♡」
メスガ樹ってね…すいませんでした…
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




