第320星:初手
第三部 関東 VS 中国 VS 九州・沖縄
◆関東地方
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?
矢武雨 瑠河 (24)
栃木根拠地の大隊長を務める大黒柱。生真面目だが状況に応じて思考を変える柔軟性も併せ持つ。以前千葉根拠地の夜宵と共闘したことがあるため、二人に面識がある。
道祖土 真衣 (22)
埼玉根拠地のエース。腰の低い人物で、実績を残しながらも謙虚な姿勢を崩さない。逆を言えば自分に自信を持てない性格。
◆中国地方
百目鬼 大河
鳥取根拠地のエース。大胆不敵で豪快な性格。身長が2m近くあるが、それを感じさせないフランクさがある。好戦的な性格ではあるが、局面を見極める冷静さも兼ね備える。
安鬼 駿河
鳥取根拠地の戦略担当。人の深層心理を理解するのが上手く、要は空気を読むのが得意。言葉巧みに味方の士気をあげたりまとめ上げたりする。
大心地 安奈
広島根拠地のエース。非常に穏やかでふわふわした性格の女性。庇護欲に狩られるような雰囲気を纏っており、咲夜達とは別の意味で士気を上げるのが得意。
渦巻 カリナ
山口根拠地のエース。刺々しい口調とサバサバした雰囲気、好戦的な様子が特徴の女性。独断行動に走るように見えて、その実、自身の能力を活かすための動きをするのが得意。
◆九州沖縄地方
仙波 盾子
鹿児島根拠地のエース。『メナス』を倒した功績ではなく、味方を幾度と救ってきた功績で選ばれた特異な例。凛々しく毅然とした態度が印象的だが、決して頑固というわけでもなく、柔軟な思考も併せ持つ。
才波 アズサ
福岡根拠地のエース。寡黙でやや覇気に欠ける口調なのが特徴的だが、自分の役割をしっかりと果たす程度の自覚と覚悟を持っている。
与那覇 ナミ・ミナ
沖縄根拠地の双子のエース。見慣れた人でも間違える程そっくりな双子で、息もぴったし。時々交互にセリフを呟くこともあるため、思考も全く同じなのではと言われる。沖縄人らしく明るく前向き。
「さて、最初はどうする?待ちか、打って出るか」
第三部が開始され、瑠河が同じ関東メンバーに尋ねる。
「難しいわね。東京本部のように超遠距離攻撃手段があるやけじゃないし、かといって待ちに徹して対策を練っておくような智将タイプがいるわけでもないし…」
夜宵が迷い、真衣も答えを出さずにいた。
そんな中、朝陽が真っ先に自分の考えを口にした。
「攻めに出ましょう」
その答えに、メンバー一同の視線が朝陽に集まる。
「攻めるって…奇襲をかけるってこと?」
「えっと、そうじゃなくて、他の選抜メンバーとの距離を詰めながら、攻勢に出よう、ってこと!」
続けられた朝陽の言葉に、瑠河が頷く。
「ふむ、第一部の慎重な展開、第二部の奇襲による展開で視野が狭まっていたな。確かに待つこともせず、さりとて奇襲でも無く、普通に攻め込むのもありだ」
「そっか。そりゃ確かに。遠距離なら瑠河がいるし、朝陽もある程度は対応できる。逆に反撃されても、私と朝陽ならカバー出来る。二択に絞る必要は無かったわね」
考え方が狭まっていた二人の思考を、朝陽は一言で開いていく。
「よし、じゃあ慎重を期しながら攻めて出よう。大まかな位置は分かるが、どっちへ進む?」
「どっちに行っても正体が分からないからどっちでも同じじゃ無い?同じ考えを持って進んでる可能性もあるし、突発的なバッティングだけ気をつければ…」
────ドンッ
その時だった。朝陽達のいる場所より少し離れた位置から、何かの衝突音が響いた。
「な、なな何かの攻撃でしょうか?」
────ドンッ!ドンッ!
続けられ様に鳴り響く音に、真衣が怖がるような素振りを見せながら尋ねる。
「音は…こっちへは向かっていないな。どうやらもう一方の方へ向かっているようだ」
「となると、考えられるのは…」
四人は顔を見合わせる。
「他の選抜メンバーが、別の地域に奇襲をかけてる」
そして、朝陽の出した答えに、全員が頷いた。
●●●
「やは〜!!なんか凄い勢いで迫ってきてるさ〜!!」
「なは〜!!どうするさどうするさ〜!!」
驚きながらも恐怖は微塵も感じてない陽気な様子で、ナミとミナの二人は迫り来る何かを見つめながら尋ねた。
「ふむ、これが奇襲なのかどうかを見極めたいところだが…アズサ、どうだ?」
同じく、迫り来る敵に対し、全く動じていない様子で、盾子がアズサに尋ねる。
「…一応ヴィジョンは見えてない」
「じゃあ迎え撃つとしよう。恐らくこの敵も、邂逅を望んで居るだけだろうからな」
それから間も無くして、盾子達の近くの岩場が砕かれるように弾け、たちこもった煙の中から人影が現れる。
「なぁんだ!!こっちが九州・沖縄の方だったか!!勘が外れたぜ!!」
そこから現れたのは、女性にしては大柄な身長の百目鬼 大河であった。
そしてその後ろでは、同じ中国選抜のメンバーが揃っていた。
「外れとは心外だ|百目鬼 大河。これでも私達だって選抜メンバーなんだがな」
「確かにな!!だが私が戦いたかったのはアンタじゃないもんでな!!」
盾子と大河は、互いに種類は違えど笑みを浮かべて言葉をかわす。
「ふむ、私…というよりは九州・沖縄じゃないということなんだろうが、そうなると、目的は関東選抜だった、ということかな?」
「おぅよ!!あそこに面白い新人が居るって聞いてたからな!!一回戦って見たかったんだよ!!」
盾子の推察に、大河は隠すことなく答える。
「成る程。確かに彼女のことは私も気になるが、かと言ってこうして対峙した以上、このまま戦いもせず逃げたりはしないだろう?」
「アッハッハッハ!!アンタ噂に聞く名声より好戦的だな!!当たり前だろうが!!目の前に獲物見つけて背中向けるほど腐っちゃいねぇぜ!!」
視線だけがかわれるだけで伝わる重圧。両者間で火花が散らされていく。
「気を付けてよ〜?大河の『グリット』と彼女の『グリット』は結構相性悪いんだから」
ヒョコッと隣に現れたのは、同じ鳥取根拠地から選抜された安鬼 駿河。
血の気の多そうな大河に対し、どこか掴めない雰囲気を纏いながらも、抜け目なさを感じさせていた。
「分ぁってるよ。けど、もしアイツの壁を壊せたら、一気に私達が優勢だろ?」
「ハッハッハ。その超ポジティブシンキング良いねぇ。でもいつもならオッケーですけど、これチーム戦なんでね。安奈さんやカリナさんもいるわけですし、その辺りも加味して動きましょーよ」
大河は今すぐにでも攻め込みたい様子ではあったが、付き合いの長い駿河の言葉に、舌打ちしながらも踏みとどまる。
「私達のことでしたらお気になさらずとも大丈夫ですよ?私達のチームで指揮を執られるのはお二人ですし」
「『達』ってなんだ『達』って。勝手にアタシを含むな」
おっとりとした口調、優しい声色で二人に答えたのは、広島根拠地の選抜メンバー、大心地 安奈。
口調の通り、非常に穏やかでふわふわとした性格の女性で、今も戦場には似つかないおっとりとした笑みを浮かべていた。
対してトゲトゲしく答えたのは、山口根拠地のエース、渦巻 カリナ。
全身黒衣装に包まれ、今のような刺々しい口調とサバサバした雰囲気、めんどくさがり屋な様子が特徴的であった。
「まぁでもアンタの強みは突貫なんだろ。アタシ等に気を遣ってそれが発揮出来なかったら本末転倒だろ?だったら安奈の言う通り、一番のやり方でやるべきだろ」
胡座をかくような状態で座りながら、カリナは安奈の発言を支持する。
「だってよ、大河?」
他のメンバーから賛同を得た大河は駿河の方を見る。駿河はやれやれと言った様子で肩をすくめると、次の瞬間にはニッと笑みを浮かべていた。
「しょうがないなぁ。まぁでも中国選抜はアドリブ多めの方が活きるタイプかねぇ」
駿河が折れる形で賛同すると、大河はニヤリと笑みを浮かべた。
「そう言う訳だ!!待たせたな、仙波 盾子!!」
「構わない。正面から向かってきて来れるのなら私としても好都合だからな」
腕を組みどっしりと構え答える盾子の前に、ナミとミナの二人が前に立つ。
「そう言う訳だ。すまないが前衛は任せたぞ」
優しくも力強い言葉に、二人はいつものように明るい調子で答える。
「やは〜!任せるさぁ!!」
「なは〜!二人一緒ならどんな相手にだって負けないさ〜!!」
そう言うと二人は、背後に固定していた槍を同時に取り出し、ブンブンと回した後構えた。
「ほほぅ、アレは確か、『飆鸝槍』。手を軸にした回転で風を纏い、扱う者によっては舞うような流麗な槍捌きと纏った風による攻撃が特徴の『戦闘補具』だね」
「ぶん回せば回すほど強力になるってことか?」
「簡単に言えばそう。さっきも言ったように、扱う人のレベルによっては、鉄も切り裂く程だから、大河も硬度には気を付けた方が良いよ」
駿河の助言に、大河はニッと笑って答える。
「心配すんな。私はいつでも全力全開。そんでもって、私は鉄より硬ぇ。あんなもんでスパスパ切られたりはしねぇよ」
「そう言うと思った。じゃあ戦い方もいつも通りね?」
「当たり前……だ!!」
話の途中とも言えるタイミングで、大河は全速力で前進を始めた。
「ありゃま。相変わらず血の気の多い…とりあえず大河のサポートは私がするんで、カリナさんは好きなようにやっちゃって下さい。安奈さん必要だと思ったらいつでも『グリット』使ってもらって良いんで」
「分かりました」
「あいよ」
二人からの返事を聞き届けると、駿河も大河の後を追いかけるように走り出した。
天城のような超加速は無かったが、それでも大河の移動速度は長身からは考えられないほどのものであった。
盾子達との距離はあっという間に詰められていき、そしてそのまま衝突しようかと言う時────ガキィン!!
それまで何も無かったはずの場所に、突如壁のようなモノが出来上がり、大河はその壁に衝突していた。
「出たな!!守護神の壁!!」
金属同士による音のようなものを鳴り響かせながら、無傷の大河はニヤッと笑みを浮かべ、その裏にいる盾子に語りかけた。
「前衛は任せる。が、その分後衛で力を発揮するのが私の役目だからな」
そして、その壁を作り出した張本人である盾子もまた、ニッと不適な笑みを浮かべていた…
※後書きです
ども、琥珀です。
先週は急遽お休みをいただき申し訳ありませんでした。
一先ずひと段落したので、更新を再開させていただきます。
ただ、また同じ状況になる可能性がありますので、その際は改めてお休みのご連絡をさせていただきます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




