第317星:第二部戦終了
第二部:東京VS東北VS四国
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆東北地方
神守 紅葉 (24)
青森根拠地のエース。頭の回転が速く、盤面を読む力や相手の思考を読むことにも長けた切れ者で、常に笑みを浮かべ精神的余裕がある。能力は『分身裂』で、自身の身体を映し出す分身と、肉体を持つ分裂能力を持つ。分身は数が多いが実態はなく、分裂は実態を持つが数が多いほど弱体化して現出する。
幻詠 カナヨ (22)
青森根拠地の裏エース。低く落ち着いた声を持つ物静かな人物だが浮世離れしており、話す内容は抽象的でスピリチュアルな印象を与える。『グリット』は『幻影霧』で、口から吐き出した霧で幻影を作りだす。紅葉とは阿吽の呼吸且つ親友で、分身の姿を変えることも可能。
矢吹 立花 (22)
秋田根拠地のエース。品行方正で押しが強く、声量も仕草も基本的にうるさい。自己肯定も強いが、それ故に他人を貶すことは無く仲間思い。『グリット』は『大気射出』で、周囲の空気を一定方向に射出し、空へ浮上したり、相手を吹き飛ばしたりする。持続時間は数秒で、後先考えず放つと自分が吹き飛ぶ。
隠蓑 イロハ (21)
福島根拠地の選抜メンバー。どちらかと言えばサポート役として貢献し、それを護里が見抜き抜擢した。言葉数は多くないが強さに自負を持ち、自分に自信をつけるべく【大輝戦】出場を受け入れた。『グリット』は『無色消姿』で、触れた箇所と同色に身体を染めることができる。
◆四国地方
今獅子 スバル (24)
徳島根拠地のエース。やや熱血な面もあるが努力家で、実力者が集うこの場において最もしっかりとした常識人で、実質的に指揮を取る。『グリット』は『獣化・獅子』で、『エナジー』を集約し、獅子を象ったエネルギー体の姿になる。走力や攻撃力、五感に至るまで獅子レベルまで向上するレアな能力。性格は元のままを維持している。
双波 セナ (20)
愛媛根拠地の前衛隊長を務める『グリッター』。真っ直ぐで語尾に「っす!」等をつける後輩的キャラ。近接戦闘における戦闘力が非常に高く、近接に特化した海音に匹敵する感覚を実戦で養い、俊敏な動きで相手を翻弄する。『グリット』は攻撃を当てたあと、同じ箇所に二度目、二倍の威力にした衝撃を当てる『二重衝撃』。
是衝 椰静 (22)
香川根拠地のエース。寡黙で最低限の言葉しか話さないため若干コミュ障だが戦闘での発言は的確。『戦闘補具』を駆使した戦闘スタイル。
撫子 撫子 (22)
高知根拠地のエース。一人称は『なでこ』。子供の頃から名前で揶揄われていたが、親から『優しい立派な女性になって欲しい』という想いを知っているため、揶揄われると怒る。『グリット』は『撫返』で、両手同士で繋ぎ合わせた『エナジー』で相手の攻撃を吸収し跳ね返したり曲げたりするモノ。また近接戦闘の攻撃を絡め取ることも可能。
「…つまり、あの爆煙が『グリッター』だった、ってことでしょうか?」
夜宵は驚いた表情と口調で、今の戦闘を振り返った咲夜の説明に尋ね返す。
「そうです。正確にいえば、東京本部の女性、佐伯 遥さんが放った弾丸による攻撃、それによって生じた爆煙に紛れ、幻詠 カナヨさんが爆煙に擬態するようにして霧を発生させました」
「なんと…相手の攻撃を自分達の攻撃に取り込もうとしたと言うのですか」
カナヨ達の狡猾な手段に、瑠河も驚きの表情を浮かべる。
「そこへ上手く誘い込み、奇襲をかけるのが狙いだったのでしょう。並大抵の者なら引っ掛かる高度なテクニックでしたし、実際天城も飛び込む寸前であった筈です」
説明の中でふと気になる点があったが、朝陽は一先ず咲夜の説明に耳を傾ける。
「ですが結果として、それも看過されました。恐るべくは佐伯 遥さんの一瞬の違和感も見逃さない慧眼と判断力。東京本部所属は伊達では無い、ということですね」
「ひ、ひえぇ…だ、第一部とは違って本当に個人戦みたいな戦いでした…」
東京本部メンバーに完全に萎縮する真衣に対し、咲夜は首を振る。
「個人戦とはまた違いますが…それよりも真衣さん、まだです。まだ第二部は終わっていませんよ」
「…え?あ…」
真衣はそこで、まだ四国メンバーの一人が残っていることを思い出し、再びフィールドに目を向けた。
●●●
「(残るは私だけ…でもせめて…一矢報いて見せる…!!)」
四国メンバーが敗れさるなか、とある手段で葉子の攻撃を防いでいた椰静は、天城達の戦いが終わって、ほんの一瞬葉子の気が抜けた瞬間を狙って奇襲をかけた。
手に武器は握られていない。代わりにグローブのようなものを身につけていた。
これは外傷を極力防ぐ専用の『戦闘補具』、『帷子』。
攻撃を受け止めることの多い椰静の『グリット』の特性に合わせて作られたものである。
その椰静の『グリット』とは、『衝撃吸放』。
与えられた衝撃を吸収し、任意のタイミングで打ち放てる能力である。
吸収可能な量は限られているが、その分吸収できる回数に限りは無い。
この奇襲のために、戦闘の陰で椰静はセナの攻撃をわざと受け止めていた。
椰静の『グリット』らセナの『二重衝撃』と非常に相性が良く、直ぐに強力な衝撃を吸収出来るためである。
そして、葉子の『輝伝衝波』を防いだのも、この『グリット』によるものであった。
吹き飛ばされた衝撃を、『衝撃吸放』で幾分か緩和し、そして使用した分の衝撃を、葉子の攻撃でチャージしていたのだ。
「(威力は十分!!当たれば終わり!!)」
これまで完全に姿気配を消し、一瞬の隙を待ち続けた甲斐もあり、葉子を攻め込むタイミングは完璧であった。
「(行ける!!気付いてない!!)」
差し出された拳が、あと数センチで葉子に当たろうかという時だった────ドッ!!
「!?」
どこからともなく『エナジー』による攻撃が襲来し、椰静はその攻撃の直撃を受けていた。
「良い攻撃のタイミングだったんじゃ無い?結構ギリギリまで気付かなかったわ」
その時、遥が真っ直ぐ自分の方を見ていることに椰静は気付く。
「遥さんの言う通り、円香からアンタの動きのパターン、聞いといて正解だったわ」
そう言われ、椰静は今の攻撃が葉子の『輝伝衝波』によるものであることを理解する。
「まさか……予め私の……攻め込む場所に……」
「そう、攻め込む場所に、攻め込むであろうタイミングに合わせて『輝伝衝波』を伝播させて当たるようにしておいた。上手くドンピシャに当たってくれたわ」
自分の行動と作戦が全て見透かされていた事実を知り、葉子は戦意を喪失し、もはや笑みを浮かべるしか出来なかった。
「言っとくけど、強かったわよアンタら。『輝伝衝波』を使って、遥さんの援護を必要とするなんて思わなかったから」
そう言いながら、遥はそっと近くの岩に手を触れる。
「でもごめんね。私、エリートだから」
そして、リロードの終わった『輝伝衝波』の残り四本全てを伝播させ、その攻撃は全て椰静に直撃した。
衝撃を吸収する間も無く攻撃を受けた椰静は、ゆっくりとその場に倒れ込んだ。
どこからともなく俊雅が現れ、状態を確認すると、ジャッジアウトの判断が下された。
この瞬間、東京本部の勝利が決まったのであった。
●●●
「今度こそ終わりましたね。ハッキリ言って、東京本部の完勝と言えるでしょう」
咲夜は戦いが終わり、そう総評付けた。
「先生、この戦いが常に東京本部が優位に付けたのは、佐伯 遥さんの支援の賜物ですよね?」
「その通りです。個々の実力は勿論高かったのは事実です。ですがそれを最大限に発揮できるように場を操っていたのは、佐伯 遥さんです」
朝陽の考察を、咲夜は頷いて肯定する。
「彼女の『グリット』は、自分で倒すよりも崩して取らせる戦い方に向いています。彼女もそれを十分に理解して、だからこそ、序盤は戦況を見ていたキライがあります」
「そうなのですか?てっきり、東京本部の強さを見せつけるために敢えて手を出さなかったのかと…」
「それも否定はしません」
瑠河の考えにも、咲夜は否定することはしなかった。
「ですが一番の理由は、変幻自在の自身の弾を、どう効率良く扱い、どう効果的に追い詰めるかを観察するためであったと思います」
咲夜は「事実…」と続ける。
「彼女が戦闘に参戦してからは、どちらの戦況を一方的になりました。何故だと思いますか?」
「それは…今仰ったように、相手の動きを見極めたからてわは?」
「それは大枠の答えですね。比率で言えば半分程度正解です」
夜宵が出した答えに、咲夜はそれでは物足りないと暗に比喩した。
「……両地方の、頭を先に押さえたから?」
「その通りです」
その後続けられた朝陽の答えに、咲夜は笑みを浮かべて頷いた。
「四国地方の今獅子 スバルさん、東方地方の神守 紅葉さん、どちらも選抜メンバーという即席チームでありながら、リーダーとして振る舞える器と実力がありました。第一部で言えば、中部地方の鍜名 剣美さん、近畿地方の黒田 カナエさんのような人物です」
正確に言えば担っていた役割はそれぞれ異なるが、咲夜はそこは言及せず、一同は成る程と頷く。
「今獅子 スバルさんの『グリット』は、単体の戦闘能力で言えば、第二部の中では最も強かった筈です。攻撃力、素早さ、耐久力、どれをとっても一級品の強さを兼ね備えていました」
「ですが、」と咲夜は続ける。
「彼女はその力を、味方を守るために使用しました。いえ、正確にはそうせざるを得なかった状況を、佐伯 遥さんが作ったと言えるでしょう。結果としてスバルさんは本来の『グリット』の性能を発揮できないまま敗れる結果となりました」
スバルに対する説明に、朝陽達は何度も頷く。
スバルの見せた『グリット』が、迫力の割に目立たなかったのはその為かと納得していたのだ。
「逆に神守 紅葉さんに対しては、能力の最大限を見極めた上で、強みとなる部分を潰して圧倒しました」
「つ、つつ強み、ですか?」
恐る恐る尋ねる真衣に、咲夜は頷く。
「紅葉さんの『グリット』の強みは、本体の位置を悟らせず、相手を惑わせた上で味方に反撃をさせることにあります。実際、天城はそれに釣られた上で、矢吹 立花さんの攻撃や、隠蓑 イロハさんの奇襲を受けています」
その場面を思い返し、一同は三度頷く。
「それが『強み』であることに気付いた遥さんは、まず本体の位置を割り当てるための弾幕を張りました。既に天城が本体を見極めてはいましたが、彼女にはもう一つの能力、『分裂』があることを知っていたので、それを伝える意図も有ったのでしょう」
一同がその場面を思い返すと、確かに遥の攻撃が始まってから、天城の反撃は一気に鋭くなったのを思い出す。
「そして先ほども述べた通り、最後の爆煙による罠を見抜いた、一瞬の違和感も見逃さない慧眼と判断力。これらを最大限に発揮した上で、味方を活かして勝利。一戦目が黒田 カナエさんの掌の上と例えるのなら、二戦目は佐伯 遥さん独壇場だったと言えるでしょう」
ゴクリッと真衣が唾を飲み込む音が聞こえて来る。
「あ、あんな人に勝てるのでしょうか…」
完全に臆した様子の真衣に、しかし咲夜は優しい言葉は投げかけなかった。
「それは分かりません。全体を見れば遥さんの独壇場ではありましたが、それが出来るだけの味方の実力も確かでした。今回の『大輝戦』の優勝候補の筆頭であることには間違いありません」
「あうぅ…」
「ですが初めから臆していたら、どんな戦いでも生き抜くことは出来ません」
代わりに咲夜が投げかけたのは、発破であった。
「実際の戦場では、時に命を掛ける必要があります。けれどそれは私達にとってさ、死を覚悟しろという意味ではありません」
「生きるために、立ち向かうため」
朝陽が即座に答え、咲夜は満足そうに頷く。
「真衣さん、バトルロワイヤルとなったいま、『大輝戦』でも為すべきことは変わりません。最後まで生き抜き、そして立ち向かうことが大切なのです。貴方は今まで、その覚悟を背負って戦って来たのでは?」
咲夜の言葉にハッとした真衣は、先程よりも強い表情を浮かべていた。
「確かに東京本部は強い。けれどその前に、貴方達は目前の戦いに勝利する必要がある。中国地方も、九州沖縄地方も侮れる相手ではありません」
咲夜の言葉に、全員が頷く。
「まずはこれからの戦いに勝利して来なさい。東京本部が強いだの、勝てるかどうかだの、そんな事は勝ってから今の戦いに勝ってから考えれば良いことです。目の前の戦いに集中すること。良いですね?」
「「「はいっ!!」」」
関東メンバーの意識は完全に次の戦いに向いていた。
そしていよいよ、朝陽達関東選抜の舞台、第三部が始まろうとしていた…
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




