第316星:東京選抜VS⑨
第二部:東京VS東北VS四国
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。『グリット』は『計算予知』で、相手の動きを計測し、経過と共に予知のように読み解くもの。また、実戦で活用できるようそれに見合った高い戦闘能力を有する。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。『グリット』は『輝伝衝波』で、手首から指までに沿うようにして複数の光の帯が出現し、この状態で壁や地面を叩き付ける事で物体の表面に光の筋を伝播させ、攻撃対象の近くに『エナジー』による攻撃を行う事が出来る。
◆東北地方
神守 紅葉 (24)
青森根拠地のエース。頭の回転が速く、盤面を読む力や相手の思考を読むことにも長けた切れ者で、常に笑みを浮かべ精神的余裕がある。能力は『分身裂』で、自身の身体を映し出す分身と、肉体を持つ分裂能力を持つ。分身は数が多いが実態はなく、分裂は実態を持つが数が多いほど弱体化して現出する。
幻詠 カナヨ (22)
青森根拠地の裏エース。低く落ち着いた声を持つ物静かな人物だが浮世離れしており、話す内容は抽象的でスピリチュアルな印象を与える。『グリット』は『幻影霧』で、口から吐き出した霧で幻影を作りだす。紅葉とは阿吽の呼吸且つ親友で、分身の姿を変えることも可能。
矢吹 立花 (22)
秋田根拠地のエース。品行方正で押しが強く、声量も仕草も基本的にうるさい。自己肯定も強いが、それ故に他人を貶すことは無く仲間思い。『グリット』は『大気射出』で、周囲の空気を一定方向に射出し、空へ浮上したり、相手を吹き飛ばしたりする。持続時間は数秒で、後先考えず放つと自分が吹き飛ぶ。
隠蓑 イロハ (21)
福島根拠地の選抜メンバー。どちらかと言えばサポート役として貢献し、それを護里が見抜き抜擢した。言葉数は多くないが強さに自負を持ち、自分に自信をつけるべく【大輝戦】出場を受け入れた。『グリット』は『無色消姿』で、触れた箇所と同色に身体を染めることができる。
◆四国地方
今獅子 スバル (24)
徳島根拠地のエース。やや熱血な面もあるが努力家で、実力者が集うこの場において最もしっかりとした常識人で、実質的に指揮を取る。『グリット』は『獣化・獅子』で、『エナジー』を集約し、獅子を象ったエネルギー体の姿になる。走力や攻撃力、五感に至るまで獅子レベルまで向上するレアな能力。性格は元のままを維持している。
双波 セナ (20)
愛媛根拠地の前衛隊長を務める『グリッター』。真っ直ぐで語尾に「っす!」等をつける後輩的キャラ。近接戦闘における戦闘力が非常に高く、近接に特化した海音に匹敵する感覚を実戦で養い、俊敏な動きで相手を翻弄する。『グリット』は攻撃を当てたあと、同じ箇所に二度目、二倍の威力にした衝撃を当てる『二重衝撃』。
是衝 椰静 (22)
香川根拠地のエース。寡黙で最低限の言葉しか話さないため若干コミュ障だが戦闘での発言は的確。『戦闘補具』を駆使した戦闘スタイル。
撫子 撫子 (22)
高知根拠地のエース。一人称は『なでこ』。子供の頃から名前で揶揄われていたが、親から『優しい立派な女性になって欲しい』という想いを知っているため、揶揄われると怒る。『グリット』は『撫返』で、両手同士で繋ぎ合わせた『エナジー』で相手の攻撃を吸収し跳ね返したり曲げたりするモノ。また近接戦闘の攻撃を絡め取ることも可能。
言うや否や、遥の行動は早かった。
『《分裂弾》×《 誘導弾》=《分裂誘導弾》」
空中で融合した弾丸が再び無数の球体となり、遥の意思で東北メンバーの方へと飛来していく。
遥が作り上げた融合弾は、東北メンバーの付近で再び分裂。更には紅葉の分身含め、イロハやカナヨにも向かっていった。
「拡散弾を誘導!?もう何でもありだね!!」
紅葉の指示など必要なく、全員が回避行動を取る。
これまでの弾丸に比べると威力が落ちるのか、岩陰に隠れることで凌ぐことは可能であった。
しかし、分身体を操る余裕までは無く、残された分身体や分裂体は全て消滅していった。
『よしよし、予定通り逃げて隠れてくれたわね。じゃあ次は燻り出すから、天城君はやり易い相手から落としちゃって』
「了解」
なんの気なしに恐ろしい発言をする遥に、もはや動揺はせず、天城は淡々と答える。
『《誘導弾》×《爆裂弾》=《誘導爆裂弾》』
遥の声が通信機越しに聞こえて来るのと同時に、天城の後方から放物線を描きながら次の弾幕が放たれる。
そして、東北メンバーが隠れたであろう場所に次々と飛来し、爆発を起こしていった。
その弾幕による爆煙の中から、紅葉が飛び出し、そして一気に天城へと向かって来ていた。
しかし天城はこれを相手にせず。すると紅葉は攻撃する素振りを見せながら、天城の身体を通過していった。
「あの爆撃のなかだ。流石に分裂体は作れねぇだろ」
紅葉の行動を読みきった天城は、分身体が現れた方へ高速移動する。
しかし、そこには紅葉の姿は無かった。
「(貰った!!)」
代わりに隠れていたのは、爆撃が止んだ一瞬の隙をついて『無色消姿』を発動していたイロハだった。
天城の背後を取り、完全に不意を突いた攻撃が天城に迫る────ガシッ
「え?」
「こうやって敵を誘い込んで奇襲を仕掛ける。二度目にもなれば分かるぜ、流石にな」
「イロハ!!逃げるんだ!!」
攻撃を止められ動揺したイロハが、紅葉の声を聞きハッと我に帰り、防御の姿勢を取る。
「おせぇよ」
しかしそれよりも早く、天城の『未光粒操作』が発動し一気に加速。
防御も反撃の隙も与えず、続けざまに高速打撃を繰り出し続ける。
そして端まで攻撃を続け、フラフラになったところを、天城は軽く、トンッ、と身体を押した。
「気配は消せても殺気までは消せないみたいだな。分身体が無かったから丸わかりだったぜ」
そのまま後方へ倒れ込んだイロハは場外へと落下し、そしてその姿は見えなくなった。
それと同時に、天井のモニターには、イロハの脱落の文字が表示された。
「(さっきまで崩すのにあんなに苦戦してたのに、あっという間に一人…すげぇな、遥さん)」
他者になかなか心を開かない天城ではあるが、この時は素直に遥に賛辞を送っていた。
それ程までに簡単に感じるほど、東北メンバーの連携が崩しやすくなったからだ。
『天城君、まだだよ。一番厄介な二人が残ってるわ』
「分かってます。次で一気に攻め込みます」
残ったのは青森根拠地の二代エースである紅葉とカナヨ。
既に残り二人となった状況ではあるが、この二人の連携が生きている限り、勝ちの目は十分に残っている。
それは天城も理解しており、油断は微塵もしていなかった。
「爆煙の中心部辺りから声がしました。もう移動してるかも知れないですけど、移動してるなら合流を目指してるかも」
『成る程ね、了解。まぁどこに隠れても私の弾には意味が無いけどね』
そう言うと遥は片手を上げ、再び球状の弾丸を作り上げていく。
『誘導弾』
そして躊躇いもなく弾丸を放っていく。
遥の誘導弾の誘導機能は、相手の『エナジー』を感知して誘導される。
味方の『エナジー』を予め認識しておくことで、誘導弾が味方に当たらないようにする事も可能なため、多少の乱戦であっても発射は可能である。
ある程度の位置の把握は必要なものの、逆を言えば大まかな位置さえ把握していれば、隠れていようと自動で弾丸が誘導する機能によって攻撃が可能である。
まだ爆煙が残る中、遥の放った誘導弾は真っ直ぐ進み、そしてククッと僅かに曲がり、そして飛来した。
「────ッ!!──ッ!!」
爆発の音で全ては聞き取れなかったものの、どちらか一方が相方を心配して叫ぶ声が聞こえて来た。
「…距離と方角は大体掴んだ。終わらせるぜ」
そして天城が再び加速態勢に入ろうとした時だった。
『天城君、待った』
遥の制止の声が、天城の足を止める。
●●●
「(最後の仕掛けは整えた。タネも蒔いた。あとは仕掛けて来るのを待つのみ…)」
爆煙が立ち込める中で、紅葉とカナヨの二人は岩陰に隠れ、天城が攻め込んで来るのを待っていた。
「(立花ちゃんとイロハちゃんの二人を失ったいま、私達だけじゃ単純な攻撃力は足りない。それに正面切っての勝負じゃ勝てないのは分かった。だからこれが最後の切り札だ)」
二人が仕掛けた最後の切り札に、紅葉は天城が掛かるのを今か今かと待っていた。
「(…?)」
しかし、待てど待てども天城が攻め込んでくる様子は無く、紅葉は眉を顰めていた。
「(まさか、コレが罠だと気付かれた?いや、そんな筈はない。仕込みも仕掛けるタイミングも完璧だった。彼の性格なら間違いなく攻め込んでくる筈…なのに)」
そうして紅葉が焦れ始めた時だった────キュン…
爆煙が撒き散る視界の悪い中、目の前に遥の弾丸が迫っていた。
●●●
「つまり、あの爆煙は罠、って事ですか?」
遥の制止の理由を聞いた天城は、再度確認のため遥に尋ねる。
『恐らくね。さっき《誘導弾》を撃った時、爆煙の中に入った瞬間、僅かだけど弾が不規則な拡散をしたの』
遥の説明から、天城も情報を整理して意味を理解していく。
「つまり、あの爆煙の中に何か仕掛けがあるってことですか?」
『確信は無いけどね。ただ無闇矢鱈に突っ込むのは危険かもしれない』
「……でもそれじゃ、攻め込み様がないですよ」
『分かってるわ、任せて』
天城が戸惑うなか、遥は間を開ける事なく続ける。
『それを今、確信に変えてあげるわ』
そして遥は、有言実行と言わんばかりに周囲に弾を展開していく。
『《分裂弾》×《操作弾》=《分裂操作弾》』
遥の掛け声と共に無数の弾丸が放たれ、霧の中へと吸い込まれていく。
『……ここで曲がる』
そして弾丸は、直角に角度を変え、岩陰に隠れていた紅葉とカナヨを正確に捉えていた。
「ッ!?カナヨ、回避を…!!」
『そう簡単にはかわさせないよ』
遥の放った弾丸は、二人に当たる直前で分裂。
回避をすることさえ許さず、二人を押し出すようにして直撃していった。
一発一発の威力は高くない《分裂弾》ではあるが、全方位に拡散し何発も当てられることで、その衝撃は十分である。
その勢いにより、爆煙の中から押し出された二人は、直ぐに立ち上がる。
しかし、そこには既に万全の準備で待っていた天城が立っていた。
「やっと素顔を出したな、分身幻覚コンビ」
直ぐに危険を察知した二人は、防御の姿勢に入るが、どれだけ素早くとも天城の加速度には追いつけない。
「『未光粒操作』、『光粒子動』」
あとはもう天城の土俵であった。
防御も全て無効化する超高速移動による打撃を繰り出し続け、紅葉達は場外の直ぐそばまで追い詰められていった。
「ケホッ…ハハ…まさか本当に…君一人に追い詰められるとはね…悔しいが、流石は東京本部のエリート…といったわけか…」
フラフラとした状態でも笑みを崩さず、その上で紅葉は、自分達の完敗を認めた。
「…んなことねぇよ。俺がアンタらに勝てたのは援護があったからだ。あぁ……アンタらは強かったよ」
「ハッハッハ…君にそう言わせただけでも…少しは結果は出せたかな?」
「…そうかもな」
それを最後に、紅葉、カナヨの二人はゆっくりと後方へ倒れ、落下していった。
そして間も無くして、天井のモニターには、二人の脱落の文字が表示された。
「でも悪いな。俺らは東京本部の所属なんでな。負けるわけにはいかねーんだよ」
天城が呟いた一言は、もう誰にも届いてはいなかった。
※後書きです
ども、琥珀です。
私は見切り発車してしまう悪癖がありまして、動揺すると、踏みとどまれば良い場面で突っ走ってより事態を悪化させてしまうことがあります…
小説でも同じで、お読みになって下さる方々ならお気付きかもしれませんが、設定がブレたまま描いてしまっている点が多々あります。
勉強を重ねてはいますが、直ぐには改善できないのが癖というもの。
何とか、たくさんの方に違和感なく、それでいて楽しんで頂けるような作品を目指して頑張ります。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




