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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
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第34星:泡沫夢幻

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。


【椿小隊】

写沢 七 21歳 159cm

 写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。


重袮 言葉 20歳 158cm

 活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…


海藤 海音 16歳 151cm 四等星 能力『乗れない波はないシックスセンス・オーラ

 誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。

「海音ちゃん!!」



 叫んだのは3人のうち誰だったのだろうか。


 力なく倒れ込んで行く海音に、3人は一斉に近寄って行く。


 それはつまり、その軌道上には罠がないということを表していた。


 それを察した()()()()()()()()()()一気に加速、椿達との距離を縮めていった。



「…撃退!!」



 椿、七、言葉の3人は各々攻撃をしかけるも、冷静さを欠いた状態では当てられる筈もなく。


 海音のもとに辿り着く前に、メナスと交戦することとなる。



「みんな、近接戦闘に切り替えて!!」



 3人のうちの一人が叫び、残りの二人が応じる。


 しかし、メナスはこの3人であるのなら、接近戦で負けることは無いことを理解していた。


 唯一危険なのは先程から危険な物を手渡している(にんげん)だけ。だからこそ…



「…あ…」



 触手の髪をもってその首をへし折り、()()()()()()()()()



「七!!この…!!」



 味方がやられたことで更に冷静さを失い、突貫してくる人間。


 こうなれば容易いことも、メナスは理解していた。



 人間の二人は武器のようなものを構え正面から挑んでくる。


 それは余りにも無謀な攻勢。ニ対一だあろうとも、何の策も無しに突っ込めば…



「…あ!!」

「うぅ!!」



 返り討ちに合うのは必然であった。


 触手に絡め取られもがく二人に、僅かに歪んだ笑みを浮かべながら、少しずつ力を込めていく。


 二人もその意図に気が付き、必死に触手を剥がそうとするが、こうなってしまえば味方の支援無しに抜け出すことは不可能だ。


 やがて、触手に強く締め付けられた二人の体はピクリともしなくなる。


 全身は青白くなり、息もしておらず、絶命したとことを察する。


 そのその二人の死体を…



【────ア゛、ア゛、ア゛!!!!】



 メナスは弄んだ。刻み、千切り、抉り、切り裂き、捥ぎ取り、潰した。



【────ア゛、ア゛、ア゛アアア!!!!】



 それは一見すれば恍惚するような表情だった。いや、実際そうなのだろう。


 メナスからすれば、人間を殺すことは、娯楽のようなものなのかもしれない。


 今まで殺してきた人間の数だけ、メナスは快楽のようなものを得てきたのだろう。


【────?】



 だからこそ、メナスはその違和感に気が付いた。


 これまでと何ら変わりなく、人間を殺したはずだ。その感覚も確かにあった。


 しかし、メナスは確かに僅かな違和感を感じていた。


 それはまるで何か虚空を掴んでいるかのような…まるで、自分の意識しているものではないものを見せられているような…






()()()()()()()()()()?」






 ゾォッ…と。メナスはこれまでに感じたことのない悪寒を全身で感じ取っていた。


 それもそのはず、間違いなくたった今殺したはずの人間が、無残な姿で横たわりながら自分に語りかけてきたのだから。


 メナスは即座にレーザーを放った。


 なるべく近寄ることなく、確実に消滅させるべく、最高範囲の威力でだ。


 爆発音とともにあたりには土埃が舞う。晴れた先には人間の姿はない。


 心を持たないメナスも思わず安堵といった様子であったが…



「ねぇ…まだ死んでないわよ…?」

「こんな体にしたんだからちゃあんと責任とってくれないとねぇ」



 ベチャリ…という音ともに、メナスの背中に何かがのし掛かる。


 すぐ横には、やはり先程殺したはずの二人の人間の姿。


 いや、それだけではない。それまでそこにいなかったはずの、見覚えのない複数の人間がそこにいた。



「ひひひヒヒヒヒひひひヒヒ…ねェ…」

「殺さナイのぉ〜ねェネぇ〜…」

「こンナにボロボロにしテおいテこのマまぁ〜?」



 血の気のない真っ青な顔に大量の血が滴り、不気味な笑顔を浮かべながら、無数の顔がメナスを見つめる。


 それがメナスの恐怖を助長させていた。


 そう、()()だ。


 メナスは自分の感じているかの感情が恐怖であることを理解した。


 今、自分(メナス)は、この人間達に恐怖を感じているのだ。


 人が…いや生命を持つ者が、恐怖を感じた時に取る行動は決まっている。



【────ア゛……アアアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!】



 絶叫。叫ぶ。ただただ叫ぶ。


 そして再び人間に攻撃する。


 切っても、割いても、引き千切っても、人間達はまた起き上がる。そしてまた切る、千切る…


 何をしても、人間がメナスの目の前から消え去ることは無かった。


 そしてメナスはついに…事切れた。初めて実感した恐怖に、まだ芽生えたばかりであろう心が耐えきれなかったのだ。


 言葉が使ったグレネードに()()()()()()()メナスは、真実を知ることもなく、生き絶えた。






●     ●     ●







 目の前で突然倒れた最後のメナスを見届けながら、言葉は妖艶な笑みを浮かべクスリと微笑んだ。



「ふふふ。そっか、耐えきれなかったか。そりゃそうよね、それだけアンタ達は命を奪ってきたってことなんだから」



 浮かべている笑みとは裏腹に、言葉の声色は一切笑っていなかった。


 寧ろその瞳には、憎悪とも呼べる黒い影が映っているようだった。


 これが重袮 言葉の『グリット』、『泡沫夢幻(ファントム・ペイン)』。


 能力は、様々なきっかけを作り、対象者に幻影・幻覚を見せるもの。


 今回の例で言えば、明暗点滅による催眠術を使って幻覚を見せていた。


 ド派手なミサイルによる攻撃や、閃光弾による発行、更には椿の『グリット』の罠による閃光でさえも、言葉の『グリット』のきっかけになっていた。


 そう、つまり条件が整っていた段階から、この戦闘は言葉の手の平の上であったのである。



「いやぁ…私、言葉と付き合い長いけど、未だに言葉の『グリット』にかかったことないんだよね。一回催眠術かけられてみたいよ」



 言葉の隣に、全く無傷の姿の七が立っていた。何の気なしに発せられた言葉に、言葉は苦笑いを浮かべ答える。



「七、正直それはちょっとおススメしないかなぁ…」


 

 それは、嘘偽りのない、言葉の想いだった。


 かつて、言葉の『グリット』に最初に付けられた名前は『泡沫夢幻(サブリミナル)』であった。


 効果は同じもので、対象者に幻覚・幻影を見せるというものであると言われていた。


 しかし、その効力を検証していた3人の研究員が次々に発狂し錯乱。


 原因はトラウマ又はそれに匹敵する幻覚による精神破壊(サイコブレイク)によるものであることが発覚したために、検証が中止となった。


 それ故に、言葉のグリットは、人のメンタルを壊す『泡沫夢幻(ファントム・ペイン)』であると判断されたのだ。


 そして言葉も理解していた。


 自分の『グリット』が、家族をメナスに殺された憎悪から作られているものであることを。


 故に、対象となったモノに見せる幻影は、全てトラウマを引き起こすものにしかならない。


 仮にトラウマになるような記憶がないのであれば、トラウマになりうる記憶を植えつければ良い。


 言葉の『グリット』はそんな能力だったのだ。


 この『グリット』を味方に使うことは無い。


 例え憎悪に焼かれていようとも、今の言葉にとって『グリッター』は大切な仲間であるという()()をしているからだ。


 逆に言えば…言葉はメナスであれば何のためらいも無しにこの『グリット』を使うだろう。


 万が一にも命乞いをすることがあろうとも、言葉はそれを鼻で笑ってこう言うだろう。



「そうやって命乞いをしてきた人を、お前達は何千何万と殺してきたんだ」



 と…言葉は内に溢れる憎しみが表に出てきていることに気が付き、気を鎮める。


 そして同じく無傷で、自分達のもとに寄ってくる海音を強く抱きしめる。


 再び騒がしくなる一行から少し離れ、言葉はどこともつかないところを見つめ、呟いた。



「え?結局どこからが幻だったのか…?」



 それは…誰に向けての言葉なのか。言葉は妖艶な笑みを浮かべ、再びどこかの虚空に言葉を投げかける。



「ふふふ…さぁて…どこからが幻なのかしらねぇ…?」






●     ●     ●






「…!!司令官報告です!!朝陽小隊に続き、椿小隊もメナスの殲滅に成功したそうです!!」

「そうか。これで15分足らずで10体以上を仕留めたことになるな。見事な快挙だよ」



 大和は嬉しそうに微笑みながらも、どこか悲しげな瞳を浮かべていた。



「(様々なプランを立てて提案したが、結局、椿小隊に関しては言葉(かのじょ)の考えを押し倒されてしまったな…。とは言え彼女が小隊編成を呑んでくれるための条件でもあった。今回は止むなし、と言うことにしておこう)」



 大和はいち早く言葉の内に秘められた憎悪に気が付いていた。


 直ぐさま咲夜にそのことを伝えるも、言葉は咲夜にも一切心を開かなかった。


 周囲にいる()()()()()()()()()()


 言葉は一見親しく接しているように見えて、実際は全く心を開いていない。


 信頼しているように見えてその実、全く仲間を見ていないのである。


 仮に椿達を大切に想っているというのならば、何故、()()()()()()()()()()()()()を見せることができると言うのか。


 今回の作戦、戦闘経過も全て言葉がプランニングしていたものである。


 結果として勝利を収めたものの、大和は心の奥底の一抹の不安を拭い去ることが出来ずにいた。



「(そのことを、本人がどれだけ自覚することが出来ているのだろうか…)」



 大和は深く考えようとして、首を振って止めた。



「(いや、今はそれよりも優先すべきことがある)」



 一度不安を捨て去り、大和はモニターに目を向ける。



「さぁ、残りは三咲小隊だけだ。最後まで完璧にバックアップするぞ、咲夜、夕!!」

「は、はい!!」「了解」


※ここから先は筆者の後書きになります!興味のない方はどうぞ読み飛ばしてください!!






どうも、琥珀です!!

暑かったり変に寒かったりと妙な天気が続きますね…ですがめちゃくちゃ暑いよりはマシなんでしょうか…


琥珀は以前は夏は嫌いではなかったのですが、今は嫌いな部類に入ります…やはり春秋こそ正義ですよ…


これから暑い日々がやってまいります。皆様どうぞ熱中症にはお気を付け下さい…


本日もお読みくださりありがとうございました!!

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