第308星:東京選抜VS
第二部:東京VS東北VS四国
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。
◆東北地方
神守 紅葉 (24)
青森根拠地のエース。頭の回転が速く、盤面を読む力や相手の思考を読むことにも長けた切れ者で、常に笑みを浮かべ精神的余裕がある。能力は『分身裂』で、自身の身体を映し出す分身と、肉体を持つ分裂能力を持つ。分身は数が多いが実態はなく、分裂は実態を持つが数が多いほど弱体化して現出する。
幻詠 カナヨ (22)
青森根拠地の裏エース。低く落ち着いた声を持つ物静かな人物だが浮世離れしており、話す内容は抽象的でスピリチュアルな印象を与える。
矢吹 立花 (22)
秋田根拠地のエース。品行方正で押しが強く、声量も仕草も基本的にうるさい。自己肯定も強いが、それ故に他人を貶すことは無く仲間思い。『グリット』は『大気射出』で、周囲の空気を一定方向に射出し、空へ浮上したり、相手を吹き飛ばしたりする。持続時間は数秒で、後先考えず放つと自分が吹き飛ぶ。
隠蓑 イロハ (21)
福島根拠地の選抜メンバー。どちらかと言えばサポート役として貢献し、それを護里が見抜き抜擢した。言葉数は多くないが強さに自負を持ち、自分に自信をつけるべく【大輝戦】出場を受け入れた。『グリット』は『無色消姿』で、触れた箇所と同色に身体を染めることができる。
◆四国地方
今獅子 スバル (24)
徳島根拠地のエース。やや熱血な面もあるが努力家で、実力者が集うこの場において最もしっかりとした常識人で、実質的に指揮を取る。『グリット』は『獣化・獅子』で、『エナジー』を集約し、獅子を象ったエネルギー体の姿になる。走力や攻撃力、五感に至るまで獅子レベルまで向上するレアな能力。性格は元のままを維持している。
双波 セナ (20)
愛媛根拠地の前衛隊長を務める『グリッター』。真っ直ぐで語尾に「っす!」等をつける後輩的キャラ。近接戦闘における戦闘力が非常に高く、近接に特化した海音に匹敵する感覚を実戦で養い、俊敏な動きで相手を翻弄する。
是衝 椰静 (22)
香川根拠地のエース。寡黙で最低限の言葉しか話さないため若干コミュ障だが戦闘での発言は的確。『戦闘補具』を駆使した戦闘スタイル。
撫子 撫子 (22)
高知根拠地のエース。一人称は『なでこ』。子供の頃から名前で揶揄われていたが、親から『優しい立派な女性になって欲しい』という想いを知っているため、揶揄われると怒る。
分身体を更に増やした紅葉は、襲い掛かったり駆け回ったりすることで、天城を翻弄していた。
しかし天城は取り乱すことなく、まずはイロハ含む他のメンバーの姿を確認した。
「(よし、今度は奴もちゃんといる。と言うことは一旦気をつけるのは、分身に紛れての本体の攻撃になるが…)」
天城はもう一つ懸念していることがあった。それは、遥の放った弾丸をかわした人物による攻撃である。
紅葉の分身体の数は、天城の視界を覆い尽くさんばかりに増えており、イロハを捉えるだけでも困難な状況であった。
そこに、加えて立花が分身に紛れて攻撃してくるようなことがあれば、流石の天城も現状では苦戦を強いられるだろう。
「ちっ……うざってぇな…『グリット』を使って一気に吹き飛ばすか?」
天城はそう考えて、チラッと遠方にいるであろう遥の方を見た。
「(好きに戦って良いとは言われたが、ここで直ぐに能力を使わされるのはムカつくな)」
天城は第二部開始前の遥の言葉を思い出す。
『東京本部のエリート選抜の名は伊達じゃないってところを、見せつけてやりましょう』
「(能力を使っても力は誇示できる…が、この状況で使ったら、使わざる得ない状況まで追い込まれた事になる。それは癪だな)」
天城は『グリット』使用の考えを改め、代わりに懐にしまっていた、小型化していた『戦闘補具』を取り出した。
取り出された武器はガシンガシンと音を立てて組み立てられていき、やがて槍の形へと変わっていった。
「武器を使わされるのも癪だがしゃーねぇ。一気に追い込んでやるよ」
天城は『戦闘補具』、『機槍』を突き付けながら、そう宣言した。
●●●
「あれは…『機槍』!!」
『機槍』と言えば、朝陽にとって良くも悪くも思い出に残っている武器であった。
「そうですね。アレは『グリッター』用にカスタマイズされていますが、貴方が『グリッター』として覚醒してない時に実戦で使用した『戦闘補具』です」
咲夜の言葉に、同じ関東メンバーである瑠河と真衣の二人がざわつく。
「覚醒してない時って…じゃあ生身で『メナス』に向かったと言うことか!?」
「す、すすすす凄すぎます!!」
二人が驚きと感動を交えた言葉を向けるも、朝陽は複雑そうな表情を浮かべていた。
「い、いや…そんな大そうなことをした訳じゃなくて…何というか自暴自棄になってたって言うか…」
「その通り、本来は褒められたことではありません。ただ、当時の背景を考えれば、理解は出来ることではありますけどもね」
朝陽の言葉に有無を言わさず同意しつつ、その事をやむを得ない出来事であったと同情しながら答えた。
「覚醒出来ず自分は戦えない日々が続き、周りは命を懸けている。そして当時の上官は無能。お二人も、これだけ聞けば理解出来る面もあるのではないでしょうか?」
咲夜がフィールドから目を逸らさずに続けると、二人はそれに敏感な反応を見せ、それぞれ俯いた。
朝陽と夜宵は忘れがちであるが、従来『軍』の上層部にあたる司令官や指揮官の人物像は酷いものである。
指揮能力があるならまだ良いものの、それすらも備えていないような人物が多い。
護里の最高司令官就任により、朝陽が出会った群馬根拠地における、雲越のような人物が就任するなど徐々に改善が見られているとは言え、その最高幹部が同様な状況のため、素早い改善は今後も見込まれないだろう。
そして二人の反応を見るに、咲夜の指摘は的を射ていたのだろ。
そして夜宵は夜宵で、いちど瑠河達栃木の宇都宮根拠地の救援に向かった際に、その指揮官の酷さを目にしていたのを思い出していた。
「そうか……夜宵達も辛い日々を過ごしていたのだな…」
「で、でも、今は素晴らしい指揮官や司令官がいるようで安心しましたぁ」
瑠河は同情的に、真衣は安堵の笑みを浮かべて二人を見ていたが、現在も咲夜の言うような指揮官のもとにいる二人の前では、朝陽達は素直に喜ぶことが出来なかった。
その後ろでは、咲夜がジッと『機槍』を構える天城のことを見つめていた。
「(天城…大和から聞かされていたとはいえ、まさか本当に『大輝戦』に出ているなんて…)」
その表情は、知人に向けられているものよりも更に親しい瞳であり、そして同時に悲しげな憂いの色を混ぜていた。
「(変わってしまった…とは聞かされていましたが、別人のよう…どうして貴方はそこまで…)」
咲夜と天城の関係性は分からない。しかし、この中で最も咲夜を知る朝陽だけが、咲夜の向けている視線に気が付いていた。
●●●
「悪いけど、私は出し惜しみしないタイプだから。一気にケリ、つけさせて貰うわよ」
一方で、四国地方と対面する葉子は、天城と違って早くも『グリット』を発動させていた。
『グリット』を発動させた葉子の両腕には、それぞれ10本ずつの波打つ光の帯が纏われている。
「あれ、なに」
「明らかにヤバそうなのは分かるっすけどね」
椰静が聞くと、セナが警戒しながら答える。
「スバルさん、どうしますか…?」
「攻めるよ」
撫子の問いに、スバルは即答した。
「アレがどんな効果があるかは分からないし、相手は本部のエリートだけど一人だけ。なら、時間をかけずに攻めるべきだ」
スバルも葉子の光の帯には警戒心を見せつつも、現実目線で捉え、攻めの選択肢を導き出した。
「了解っす!フォーメーションは話し合った通りで良いっすか!?」
「うん、セナちゃんは予定通り前衛で行こう。でも追加でスバルも前に出る」
続けられたスバルの言葉に、一同の視線が集まる。
「セナちゃんの攻めに不安があるとかじゃなくて、油断も慢心もなく、一気に攻め込もうって話。単身で攻め込んでくるからには自信と実力があるわけだろうし、それならこっちも全力で叩こう」
説明された言葉に、一同は納得し頷いた。
「椰静ちゃんと撫子ちゃんはあの帯の動きに留意してて欲しい。状況を見て戦い方を変えるから、注意深く観察してて」
「分かった」
「き、気を付けてください」
後方待機を命じられた二人も、スバルの指示に従い僅かに距離を取る。
「よし、じゃあ行くよセナちゃん!」
「はいっす!!」
スバルの掛け声で、二人は同時に前へと飛び出た。
それを見たあと、葉子は右手を岩の造形物につけ、そして呟いた。
「『輝衝伝播』。」
その瞬間、葉子の右手から帯が四つ消え、それと同時に4本の光の線が岩から壁や地面を伝わっていった。
光の線はスバル達を通り過ぎ、後方に待機していた椰静の方へと向かっていった。
「!?二人とも、そっちに攻撃がいった!!」
スバルが声を張り上げて伝えると同時に、二人は攻撃に備える。
と、光の帯が二人の近くまで来た瞬間────ドバッ!!
光の帯から『エナジー』が噴き出て二人に襲い掛かった。
スバルの警告が功を奏し、危機を察した二人は不意の攻撃に対し即座に回避行動を取る。
「…!かわしきれない」
しかしその攻撃範囲は想像以上に伸び、その余波が二人に届こうとしていた。
「椰静ちゃん、撫子の後ろに!」
そう言って撫子は椰静の前に出ると、自身の『グリット』を発動させた。
同時に両手が発光し出し、その両手を開くと、そこに薄い膜のようなモノが型取られていく。
「『撫返』!!」
その膜に葉子の攻撃が当たった瞬間、撫子は両手の上下を逆さにする。
すると、膜に当たった攻撃がそのまま跳ね返り、攻撃を相殺し合った。
これが高知根拠地のエース、撫子 撫子の『グリット』、『撫返』。
両手同士で繋ぎ合わせた『エナジー』の膜で相手の攻撃を吸収し、跳ね返したり曲げたりする効果を持つ。
また近接戦闘においても有効で、相手の攻撃を絡め取ったり、勢いを跳ね返すことも可能である。
「ありがとう、助かった」
「う、ううん、これくらい」
何とか事なきを得たことで、前進していたスバルは安堵の息を吐くものの、目に見せられた葉子の『グリット』の厄介さに足を止めていた。
「ほんっと、エリート様ってのは一筋縄じゃいかないよなぁ」
苦笑いを浮かべながら、スバルは悠々と立ち尽くす葉子を前にし、そう呟いた。
※後書きです
ども、琥珀です。
年明けて早くも一ヶ月ですよ、早いモノですね。
ところで、傘の防御率って何パーセントくらいなんでしょうか。
頭と身体の半分は防げても、足はビショビショ、風が吹けば身体の半分も濡れますよね。
意味がないとまでは言いませんが、もう少し防御力を上げたいところ…
まぁその究極系はカッパなんでしょうが、あれはもはや纏うですからね、意味が違う気がします。
なんか斬新な傘が出てこないかなと思う所存でございます。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は水曜日を予定しておりますので宜しくお願いします。




