第307星: 『輝弾射手』②
第二部:東京VS東北VS四国
◆東京本部選抜
唯我 天城 (17)
東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢されたことで、力を追い求めるようになる。『グリット』は『未光粒操作』で、新時代により現認された光速を超えるタキオン粒子を操る力。未だ未熟な力ではあるが、光速に近い速度と衝撃を出せるようになっている。
佐伯 遥 (24)
東京本部エリート。フレンドリーで明るく、堅物で自尊心の高い東京本部では珍しい友好的な人物。一歩間違えれば仲違いしかねない選抜メンバーをまとめ上げる。『グリット』は『輝弾射手』で、『エナジー』を攻撃用の『エネルギー』に変質して放つ能力。シンプルが故に強く、弾にも誘導や炸裂、起動変化など様々な効果を与える事が出来る。
草壁 円香 (21)
東京本部エリート。クールで鋭い目つきが特徴。分析力が鋭く、敵の能力から戦闘面を予測する能力に長けている。指揮力も高いが、エリートが故に能力を過信してしまうことも。
片桐 葉子 (21)
東京本部エリート。移り気かつ気分屋な性格だが天才肌で、一度こなした事は大抵モノにする。その分精神面ではやや幼く、小さな煽りに対して過敏に反応する事がある。
◆東北地方
神守 紅葉 (24)
青森根拠地のエース。頭の回転が速く、盤面を読む力や相手の思考を読むことにも長けた切れ者で、常に笑みを浮かべ精神的余裕がある。
幻詠 カナヨ (22)
青森根拠地の裏エース。低く落ち着いた声を持つ物静かな人物だが浮世離れしており、話す内容は抽象的でスピリチュアルな印象を与える。
矢吹 立花 (22)
秋田根拠地のエース。品行方正で押しが強く、声量も仕草も基本的にうるさい。自己肯定も強いが、それ故に他人を貶すことは無く仲間思い。
隠蓑 イロハ (21)
福島根拠地の選抜メンバー。どちらかと言えばサポート役として貢献し、それを護里が見抜き抜擢した。言葉数は多くないが強さに自負を持ち、自分に自信をつけるべく【大輝戦】出場を受け入れた。
◆四国地方
今獅子 スバル (24)
徳島根拠地のエース。やや熱血な面もあるが努力家で、実力者が集うこの場において最もしっかりとした常識人で、実質的に指揮を取る。
双波 セナ (20)
愛媛根拠地の前衛隊長を務める『グリッター』。真っ直ぐで語尾に「っす!」等をつける後輩的キャラ。近接戦闘における戦闘力が非常に高く、近接に特化した海音に匹敵する感覚を実戦で養い、俊敏な動きで相手を翻弄する。
是衝 椰静 (22)
香川根拠地のエース。寡黙で最低限の言葉しか話さないため若干コミュ障だが戦闘での発言は的確。『戦闘補具』を駆使した戦闘スタイル。
撫子 撫子 (22)
高知根拠地のエース。一人称は『なでこ』。子供の頃から名前で揶揄われていたが、親から『優しい立派な女性になって欲しい』という想いを知っているため、揶揄われると怒る。
スバル達四国地方が爆裂弾による襲撃を受ける中、東北地方も別の手により奇襲を受けていた。
四国メンバーとは違い、個々で回避を行なっていた東北は、同じくこれが時間稼ぎであることを見抜き、距離を詰める東京メンバーを迎え撃つ姿勢を取っていた。
その前座となる最後の弾幕を避けようとした時だった。
「…!?ただの誘導弾じゃない!!皆気をつけるんだ!!」
迫り来る弾丸の異変に真っ先に気付いたのは紅葉。
これまでの進行方向に付いてくる誘導弾とは違うことに気がつく。
これまではギリギリまで引きつけてからの急回避でかわせていた弾丸が、突如90度方向転換し、再び迫って来たのだ。
「これは…弾道を自動じゃなく、本人が引いているのか!!それにしたってこんな正確に動きを予測出来るものなのか!?」
回避した方向は完全に読まれ、2度目の回避は絶望的であった。
「紅葉さん!お手を!」
その紅葉を救ったのは、立花であった。
足から噴射されているジェットで急加速し光弾を回避。更には他の面々も救いながら、最後に紅葉に手を伸ばしていた。
紅葉もこれに即座に反応し手を取ると、グイッと引っ張られる。
結果として光弾を避けることに成功し、間一髪、東北メンバーは難を逃れたのであった。
これが秋田根拠地のエース、矢吹 立花の『グリット』、『大気射出』である。
その効果は、周囲の空気を『エナジー』で集約させ、一定方向に射出するものである。
これにより空へ浮上したり、放った空気で相手を吹き飛ばしたりすることも可能である。
その持続時間は数秒ではあるが強力で、後先考えず高出力で放つと自分が吹き飛んでしまうほどである。
「ありがとう、助かったよ立花」
「いえいえ!これでも私、秋田根拠地のエースですから!!」
自信満々に答える立花に、この時は心の底から賛同し感謝しつつ、紅葉は今の攻撃を分析していた。
「(さっきまではおおよその位置に目星をつけて放つ誘導弾。その被弾率を見て、場所をより確実に特定した上で、最後に放ったのは、恐らく誘導パターンを自身で決めて放つ、言わば変化弾。この短時間で東京本部エリートの名に相応しい実力を見せつけられてしまったね)」
お手並み拝見気分でいた先程までの自分を猛省し、紅葉は自身にやれやれとため息を溢しながら首を振る。
「さて、反省は十分にしたよ。それにしたって、私達相手に一人だけというのは、いささか舐めすぎじゃないかい?」
紅葉がそう告げた視線の先には、東京メンバーの唯我 天城が隠れることなく真正面に立っていた。
「真正面からの攻撃にまともに対応できない奴が何言ってんだよ。そんなん言うなら、俺が一人で来たことを後悔させて見ろよ」
紅葉の言葉に、天城は悪びれるどころか逆に煽るような口調で返した。
「なるほど…どうやらそれが一番みたいだね。その様子だと、四国地方にも同じように一人だけでメンバーが向かっているようだろうし、お互いに確実に一人ずつ仕留めて勝利を掴ませて貰おうじゃないか」
「いいぜ、やってみな」
売り言葉に買い言葉。
互いの間にピリピリとした緊張感が張り詰め、そして両者が同時に動き出した。
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「スバルさん!大丈夫っすか!!」
「…大丈夫。獅子化する『エナジー』を尾に集中させたから、ダメージはほとんど無いよ。それよりも、目の前の敵に集中して」
自身が言うように、目立った外傷はスバルには見られなかった。
しかし、獅子化が解け倒れているところを見ると、全くダメージが無かった訳ではないだろう。
「でもスバルさん…相手、一人しか来てないですよ?」
撫子に言われ、スバルもゆっくりと目を向けると、そこには確かに一人の人物しか立っていなかった。
「ど、どう言うことっすか!?セナ達には一人だけで十分ってことっすか!?」
「声デカいわねアンタ。私、熱血みたいなタイプ好きじゃないのよね」
セナの反応した声に、単身で近づいて来ていた葉子が、鬱陶しそうな表情を見せる。
「実際一人で来てるんでしょ?そう思われても仕方ないよ」
倒れた体を起こしながら、スバルは真っ直ぐ葉子を見つめる。
「ふぅ〜ん、あっそ。まぁそう思うならそう思っとけば?正しくも間違いでもないし」
前髪をくねくねと弄りながら、葉子は適当な様子で答えた。
その何とも言えない答え方に違和感を感じながらも、スバルを始めとした東北メンバーは、自分達が舐められていると感じて交戦体制に入る。
「あ〜やだやだ暑苦しくなっちゃってさ。言っとくけど私、『大輝戦』にそこまで乗り気じゃないからさ」
葉子はそこまで言うと、グッと拳を構えた。
「悪いけど、ソッコーでケリをつけさせて貰うから」
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「爆裂弾はほぼ成功。操作弾は、もう一段階くらい変化をつけておけばよかったかな?ノーダメージで回避されたのは悔しいわ」
直接戦闘に加わらず、しかし戦闘の局面を一人で操っている遥は、両陣営に単身で挑んでいった二人の様子を見る。
「さて、ここからが本番よ。円香のサポートがあれば私の『光弾』も届くけど、せっかく自由に戦わせるんだからそれじゃつまらないでしょ」
周囲に無数の光弾を浮かせながら、遥はジッと戦局を見つめた。
「まずは東京本部のエリートたる強さを見せてあげなさい。一気に攻め込むのは、その後よ」
両陣営で始まった戦いを見ながら、遥は不敵な笑みを浮かべていた。
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「ちっ……鬱陶しいマネしやがって…」
天城が対峙する東北地方では、早くも混戦となっていた。否、混沌とした状況になっていた。
「さぁ私はここだよ?」
「どこを見ているんだい?私はこっちだよ?」
「ほらほら、私をしっかり見て?」
いま、天城の周囲には、天城を囲うようにして何十人にも及ぶ紅葉が立っていた。
前後左右、どこを見渡してもそこにいる紅葉の姿に、天城は苛立った様子を見せる。
これが青森根拠地のエース、神守 紅葉の『グリット』、『分身裂』で、『エナジー』を分散させて自身の身体を映し出す分身を作り出す能力である。
「見かけだけ増えても本体は一つだろうが。なら、手当たり次第やっていけば良いだけだ!!」
そう叫ぶと天城は自前の高速移動で次々と紅葉が生み出した分身体に攻撃を仕掛ける。
分身体はホログラムに近い作りなのか、攻撃を仕掛けるとすり抜けるようになっていた。
一体、また一体と攻撃を仕掛け続ける最中、数体目に攻撃を仕掛けようとしたところで、
「ッ!?」
天城は紅葉の分身体とは違う箇所から攻撃を受けた。
紅葉の実態を見つけたわけでもなく、しかし攻撃を受けたことで本能的な警戒心が高まったのか、天城は一度距離を取る。
「おやおや?」
「私を見つけてくれるんじゃないのかい?」
「まだ私は触れられていないんだけどなぁ?」
紅葉は余裕のある表情を崩す事なく、分身体と自分を混ぜるように歩き出した。
「うるせぇ。隠れてコソコソ攻撃するような奴にとやかく言われる筋合いはねぇよ」
距離を取って状況を確認した天城は、今の攻撃の仕掛けを直ぐに見抜く。
「隠蓑 イロハってやつの『グリット』か。増えたやつの影に隠れてせこい攻撃を仕掛けやがって」
天城がそう言うと、呼ばれるようにしてイロハが岩の表面から姿を現した。
これが福島根拠地の選抜、隠蓑 イロハの『グリット』、『無色消姿』である。
その効果は、自身が触れた箇所と同色に身体を染めることができるもので、触れている限りその姿を同色とすることで姿を隠すことができるものである。
先程は分身体の紅葉が敢えて近くの岩場に寄っていたため、近寄って来たところを襲撃したが、本来は味方を隠すために使用するなどサポート向きの能力である。
「…私達相手に、一人で来るようなヒトに…言われたくない」
表情では分かりづらいが、その口調はどこか怒っているようにも感じられた。
曲がりなりにも選抜メンバーの集団に、一人で挑んできたことに腹を立てているのだろう。
「なに一丁前に怒ってやがんだお前は。それで十分だから一人で来てるんだろうが。事実を突きつけられて勝手に腹を立ててんじゃねえよ」
「…生意気!」
無表情からも分かる怒気を放つイロハを、分身体の一体の紅葉が「まぁまぁ」と宥める。
「好きなように言わせておけば良いさ。少し力をつけたものは、そうやって己の力を過信して自滅するのが定めさ」
イロハの代わりに紅葉に口撃され、天城は僅かに苛立った様子を見せる。
「まぁでも正直君達の言動に腹立たしさを感じているのは私も同じでね。悪いけれど遠慮せずに攻めさせて貰うよ」
そう言うと紅葉は、それまで立たせていただけの分身体を、一斉に天城に向かって走らせた。
「ちっ!」
天城は防御の構えを取るが、紅葉は次々と天城をすり抜けていく。
やがて分身に紛れて通り抜けていったのであろう本体の紅葉が、背後から攻撃を仕掛けた。
「次から次へと…鬱陶しい力だな!!」
「ハハッ!申し訳ないが今の私には褒め言葉だね!!」
その紅葉を筆頭に、東北地方の猛攻が始まる。
※本日の後書きはお休みさせていただきます
本日もお読みいただきありがとうございました。
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