第299星:道を開けろ
第一部:北海道 VS 中部 VS 近畿
◆北海道選抜メンバー
加我 真白
北海道根拠地のエース。あらゆる武器の達人で、『シュヴァリエ』の一人である戦国 巴に憧れている。『グリット』は『投影武器』で、これまで使用・対峙してきた武器をイメージすることで、『エナジー』を使用しライン状にエネルギー体の武器を形成し生み出すことが出来る。
三雲 冴子
北海道根拠地の裏エース。実力と行動で引っ張るタイプの真白に対し、言葉と知略で味方を引っ張る根拠地の顔。『移転瞬印』で、触れた箇所にマーキングし、自身、又は触れた味方ごとそこへ高速移動できる能力で、連続使用も可能。
能代 雪
北海道の構成員の一人。物事に無頓着で、あまり意欲を見せないが、根拠地の面々は信頼しており、頼まれれば行動する。『グリット』は『緩徐侵冷』で、時間の経過とともに一定空間内の温度が徐々に下げる事が出来る。北海道メンバーが活動できるマイナス50°で止めることも可能。
真白 冷那 【脱落】
北海道根拠地構成員の一人。北海道地方は一つしかないため選ばれたが、それでも選ばれた自負はあり、同時に選ばれた責任感を持っている。『グリット』は『氷凍結』で、空気中の水分を凍結させたり、放ったりする。能力としては氷雪地帯において真価を発揮するため、但し雪との相性は良い。『エナジー』切れにより脱落した。
◆中部地方
矢巾 アズキ 【脱落】
静岡根拠地のエース。可憐でキュートであると自負する少女。実際それに見合うだけの外観もあり、それに実力も伴っているため人気は高い。『グリット』は『私を見つけて』で、サイズを1センチ程まで縮めることができる他、小さくなった分圧縮された攻撃を放てる。小柄になった時専用の『戦闘補具』、『可憐な翼』がある。近畿メンバー、織田野々の攻撃により脱落。
小鳥遊 結華
愛知根拠地のエース。極めて珍しい根拠地所属ながら実家暮らしという、育ちの良いお嬢様で純真無垢な人物。但しいつかはその家系を継ぐために、交渉などにおいては強かさを供える。『グリット』は『境界延離』で、エナジーの残滓を縦に引けば縦に、横に引けば横に空間がズレる特異系な能力。
鍜名 剣美
新潟根拠地のエース。剣術の達人で、『現代の上杉謙信』とも言わせしめる程の実力を持つ。口数は少ないが仲間への理解は深く、また情にも厚いため、仲間のことを第一とする。
長野 絵摩
長野根拠地のエース。能天気ながら掴み所のない人物で、時に人をからかうお調子者。但し戦況を見極め、状況に応じた動きをするのが上手い。『グリット』は『具現絵化』で、描いた絵を実体化させる能力。精密に描けば描くほど精巧な作りの出来になる。
◆近畿地方
黒田 カナエ
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格だが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。『グリット』は『直進邁進猛進』で、進めば進むほど加速していく。但し加速しすぎると自分でも見えず、立ち止まると徐々に効力を失う。
織田 野々
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器は持っている。
沙月が放った大量に放った矢は、ただの矢では無かった。
放った矢の先端にあたる鏃の部分には、微弱ながら帯電する電気を帯びていた。
そして、野々が「道を開けろ」と言った瞬間、沙月はもう一本、その進路先に矢を放っていた。
それは、より強力な電磁波を帯びた矢である。
必然的にその大量の電気を帯びた矢は、周囲の帯電した電気を誘導し──── バチバチバチバチッ!!
という鮮烈な音とともに、大量の放電を起こした。
更に沙月は2本の矢を平行に放つ。
こちらは電気をまとっていないただの矢であるが、それが避雷針替わりとなり、爆発的に起きていた放電から電気を吸い付け、まるで電気の通り道のようになっていた。
「はい、どうぞ」
「ふはは!!我に相応しい豪快な道よな!!」
野々はそう言うと、その電気の道を真っ直ぐと進んでいった。
「おい、射武屋 沙月!!貴様はさっきあの絵摩とやらに劣っていると言っていたが、敢えて言ってやろう!!貴様は彼奴には劣っておらん!!優秀な奴よ!!」
その道すがら、野々は振り返りながら沙月にそう告げた。
返事を聞く事なく再び走り始めた野々の言動に、沙月はポカンとした後、クスリと小さく笑みを浮かべた。
「ほんっと、カナエさんと言い、野々ちゃんと言い、人を焚きつけるのが上手いんだから」
沙月は照れ臭そうに頬を掻いた後、大きく息を吐き、元の戦士の顔に、しかしその表情にはより一層闘志を秘めて矢を構えた。
「それじゃ!私ももう一仕事しますかね!!」
●●●
「このままじゃまずいねぇ」
「はい。織田野々さんは『グリット』さながら近接戦闘にも秀でていると聞きます。そうなれば私達が圧倒的不利です」
「や、それもあるんだけど…」
と、絵摩が何かをつづけようとした時、気配を感じて咄嗟に回避行動を取る。
その直後、高速で飛んできた矢が、絵摩のすぐ後ろの岩の造形物に突き刺さった。
「あぶにゃ〜。これなんだよ。場所が割れてる上に距離があるってことは、沙月さんの距離でもあるわけなんだよね」
「…つまり、近接の野々さん、そして遠距離の沙月さん、この両者の得意な距離を作られてしまったというわけですか」
先程まで先手を取り、有利な状況であったにも関わらず、ほんの一手対応を取られた事で、状況は一気に一転してしまった。
完全な劣勢に立たされた絵摩と結華は、それでも闘志を消すことは無かった。
「ま、こうなったらこうなったでやるしか無いよね〜」
「ですわね。不利なだけで敗北が決まったわけではありません。何とか状況を打破して、もう一度有利な状況を……」
「いいや、残念だがここで終わりよ」
絵摩と結華、その両者が反応した時には、既に手遅れだった。
二人の目の前には全容を目視することさえ不可能な程の巨大な何かが迫ってきていた。
「いや、その『グリット』、武器だけでも具現化出来るんか〜い」
「この大きさ…私の『グリット』では届きませんね……申し訳ありません、剣美さん…」
絵摩と結華の最後の言葉を飲み込むようにしながら、巨大な何かは二人を叩きつけるようにして弾き飛ばした。
その勢いは抑えることすら叶わず、フィールドの端まで飛ばされた二人は、呆気なくフォールアウトしてしまうのであった。
「我の『部分具現』の領域に入った時点で勝負はついておったのよ。沙月の放った矢に意識を奪われて油断したな、中部メンバーよ。しかし、良き連携と戦いであったぞ」
野々は元のサイズとなった、自身の『戦闘補具』、『滅し斬り長谷部』の峰の部分で肩をトントンと叩きながら、場外に落ちていった二人に賛辞を送った。
「さて、残るは…一番厄介な剣美とやらか。正直彼奴とは正面から向き合いたくないがなぁ」
そうぼやきながら、『滅し斬り長谷部』を鞘に収め、野々はゆっくりと再び沙月の元へと歩み始めていった。
●●●
天井に吊るされたモニターに、自身の仲間が敗れた表示がされた瞬間、剣美は一際強い太刀筋を入れ、高速移動を続ける真白・冴子と幸町の三人を引き離した。
「…先手を取るはずの奇襲、隙を見ての襲撃、その何れも私がプランとして出したものでしたが、悉く裏目に出てしまった様ですね…」
一人になってしまった事を憂うよりも、仲間達を導き守ることが出来なかった事を、剣美は嘆いていた。
「愚か…あぁ愚かなりや鍜名 剣美。私は何も出来なかった。彼女達の想いに、信頼に、何一つ応える事が出来なかった。愚かでなければ唯のうつけよ」
その佇まいは先程までとは全く異なる、異質な雰囲気を纏っていた。
これには、真白・冴子のコンビは勿論、猪突猛進を生業とする幸町でさえ加速を止めた程であった。
「お許して下さい、中部の御三方…いえ、どうか許さないでください、このどこまでも愚鈍な私を」
剣美は立っているだけ。にも関わらず、まるで周囲が揺らいで見えるほどの圧とオーラに、思わずその場にいた全員の背筋がゾッとするほどであった。
「何も成し遂げられなかった…故に、私はこの最後の機会をものにしましょう。心半ばで敗れた皆様のために、もう一度機会を与えるべく、死力を尽くしましょう…」
先程までとはまるで違う、どこまでも異質な雰囲気を放つ剣美に、しかしここで幸町が勢いよく突っ込んでいった。
「(先程までとは比べものにならない雰囲気!!ですがならばこそそれが成る前に仕留めます!!これだけ加速をつけられた状態なら!!)」
幸町の速度は、加速を続けたために、冴子のよる『移転瞬印』に匹敵するほどの速度に至っていた。
そこに攻撃の衝撃が重なり、手のつけられない程のものになっていた。
だからこ起きた過信だろうか。
『待ってください!!幸町さん!!』
というカナエによる『念通信』による声掛けも届かず、一直線に突き進んでいった。
対して剣美は、異質なオーラを放ちながらも、これまでと同じ居合の構えを取り────
「毘沙門抜刀・神楽」
通り過ぎた。
その刹那の出来事は、客席の観客には、否、手練れの『グリッター』でさえ何が起きたか理解できなかっただろう。
側から見れば、勢いよく突っ込んでいった幸町の横を、剣美がゆっくりとすれ違ったようにしか見えなかったからだ。
しかし、それがそもそも異常である。
止まらず加速し続けた幸町の速度は、最早目で追えるような速度では無かった。
その横を、まるで道端でただ通り過ぎるように、しかもゆっくりとすれ違って見えている時点で、異様な光景でしかなかった。
そして、その異変はすぐに起きた────ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!
すれ違った幸町の全身から、まるで遅れてきたように無数の打撃が襲い掛かってきたのだ。
「ぬぁ…がっは!?」
いつ?どこで?どこから?
それさえ分からず防御することさえままならず、その攻撃を受け続けた幸町は、最後の打撃を受けた後、ゆっくりとその場に崩れ落ちた。
その直後、どこからともなく『シュヴァリエ』京極 俊雅が現れ、倒れた幸町の容体を確認する。
「ご安心を。全て峰打ちです」
「見たいだな。大きな怪我は何一つ負ってない…が、この試合はもう無理だね」
俊雅は片手を上げ、審判判断を伝えると、倒れた幸町の周囲にワームホールが現れ、その身体を飲み込んでいく。
その身体は選抜メンバー用の観客席へと運ばれ、近くにいた医療スタッフが丁寧に対応していた。
最後まで幸町の姿を確認した後、剣美は纏うオーラを変えることなく、今度は真白にも目を向けた。
「私の仲間は全て近畿メンバーにやられましたが、それが貴方達に牙を向けない理由にはなりません。覚悟は宜しいですね?」
ただ言葉を向けられているだけであるにも関わらず、二人にはその一言一言がプレッシャーとなって襲い掛かり、互いに大量の汗をかいていた。
「冗談じゃないわ…まだ本気じゃなかったってこと?」
「信じられませんけど…どうやらその様ですね……」
後ずさる事なく気丈に立ち振る舞える二人は流石の一言と言えるだろう。
今の剣美の放つオーラはそれ程のものであったからだ。
「あまり好んではいませんが、力を尽くし敗れ去った仲間達のため、私はいま敢えてこの名を名乗りましょう」
長い太刀を携え、そして剣美は自身のもう一つの二つ名を名乗った。
「『戦神』、鍜名 剣美。推して参ります」
※後書きです
ども、琥珀です
私はぶっちゃけアニメや漫画のような超能力系よりも、特撮などのSF系の力に憧れを抱くタイプなんですよ。
ウルト○マンとか仮面○イダーとか、変身して戦う類いですね。
理由は多分、単純に変身するシーンがカッコ良いからです。
もっとまともな理由は無かったのかって話ですね。
あと結華、活躍の場をちょっとしか作ってあげられなくてごめん……!!
本日もお読みいただきありがとうございました。
明日も朝更新予定ですのでよろしくお願いします。




