第297星:マーキングムーブ
第一部:北海道 VS 中部 VS 近畿
◆北海道選抜メンバー
加我 真白
北海道根拠地のエース。あらゆる武器の達人で、『シュヴァリエ』の一人である戦国 巴に憧れている。『グリット』は『投影武器』で、これまで使用・対峙してきた武器をイメージすることで、『エナジー』を使用しライン状にエネルギー体の武器を形成し生み出すことが出来る。
三雲 冴子
北海道根拠地の裏エース。実力と行動で引っ張るタイプの真白に対し、言葉と知略で味方を引っ張る根拠地の顔。
能代 雪
北海道の構成員の一人。物事に無頓着で、あまり意欲を見せないが、根拠地の面々は信頼しており、頼まれれば行動する。『グリット』は『緩徐侵冷』で、時間の経過とともに一定空間内の温度が徐々に下げる事が出来る。北海道メンバーが活動できるマイナス50°で止めることも可能。
真白 冷那 【脱落】
北海道根拠地構成員の一人。北海道地方は一つしかないため選ばれたが、それでも選ばれた自負はあり、同時に選ばれた責任感を持っている。『グリット』は『氷凍結』で、空気中の水分を凍結させたり、放ったりする。能力としては氷雪地帯において真価を発揮するため、但し雪との相性は良い。『エナジー』切れにより脱落した。
◆中部地方
矢巾 アズキ 【脱落】
静岡根拠地のエース。可憐でキュートであると自負する少女。実際それに見合うだけの外観もあり、それに実力も伴っているため人気は高い。『グリット』は『私を見つけて』で、サイズを1センチ程まで縮めることができる他、小さくなった分圧縮された攻撃を放てる。小柄になった時専用の『戦闘補具』、『可憐な翼』がある。近畿メンバー、織田野々の攻撃により脱落。
小鳥遊 結華
愛知根拠地のエース。極めて珍しい根拠地所属ながら実家暮らしという、育ちの良いお嬢様で純真無垢な人物。但しいつかはその家系を継ぐために、交渉などにおいては強かさを供える。
鍜名 剣美
新潟根拠地のエース。剣術の達人で、『現代の上杉謙信』とも言わせしめる程の実力を持つ。口数は少ないが仲間への理解は深く、また情にも厚いため、仲間のことを第一とする。
長野 絵摩
長野根拠地のエース。能天気ながら掴み所のない人物で、時に人をからかうお調子者。但し戦況を見極め、状況に応じた動きをするのが上手い。『グリット』は『具現絵化』で、描いた絵を実体化させる能力。精密に描けば描くほど精巧な作りの出来になる。
◆近畿地方
黒田 カナエ
兵庫根拠地きっての智将。近畿の平穏にこの人有りとまで言われ、近畿では犬猿の仲である奈良や大阪の根拠地からも一目置かれている。『グリット』は『念通信』で、自身のエナジーを飛ばして脳内に語りかけるものだが、それだけに留まらず、自身の考えを理解できるように断片的に送り込むことも可能。
射武屋 沙月
奈良根拠地のエース。明るく前向きながら冷静で、矢の腕には自信がある。個性的なメンバーが揃う近畿メンバーを纏めるリーダーシップ性も備わっている。『グリット』は放った弓に様々な効果を付与する『付乗の矢』で、局面を打開する爆破や、壁を貫く高速の矢など、様々な場面に対応できる万能系の『グリット』。
真田 幸町
京都根拠地のエース。猪突猛進、直往邁進の恐れ知れずで真っ直ぐな性格。どんな敵にも真っ向から挑むため時に窮地を招くが、基本的に素直な性格のため、止まれと言われれば止まる。また、無闇に突っ込んでも勝てる実力も備わっている。
織田 野々
大阪根拠地のリーダー。傲岸不遜で唯我独尊で傍若無人。自分こそが次に選ばれる『シュヴァリエ』と疑わない。基本的に京都根拠地とは犬猿の仲で、特にリーダー格である武田晴風とは仲が悪いものの、忠実で真っ直ぐな真田はそこまで嫌っていない。傲慢な性格ではあるが、それに見合う器は持っている。
北海道根拠地選抜メンバー、三雲 冴子の『グリット』、『移転瞬印』は、触れた箇所をマーキングし、自身、又は触れた味方ごとそこへ高速移動できる能力である。
千葉根拠地における凛に似た能力だが、凛の能力がマーキングしたものを引き付ける能力であるのに対し、冴子の『グリット』はいわば逆、引き付けられる能力であると言えるだろう。
その加速度は高速移動と言うよりは最早ワープに近く、『グリッター』はおろか、『メナス』でさえ目視することは不可能だろう。
そしてこの形こそが真白が『エース』と呼ばれ、冴子が選抜に選ばれた最大の理由であった。
北海道根拠地では圧倒的な戦闘力を誇る真白の実力に、知識とそれを巧みに操る知性を備えた冴子が組み合わさる事で、『メナス』を圧倒する戦力となるのである。
ある意味で、北海道メンバーにおける最強の形態と言えるだろう。
「…ッ!」
「お、おぉ!?」
これにより戦況は一変した。
攻撃で圧倒し、速度で押し込んでいた状況は変わり、剣美の攻撃は不意を突く冴子の高速移動で封じられ、速度が売りであった幸町よりも早く先回りし攻撃を仕掛ける。
三つ巴であった局面は、冴子の参戦により一気に真白が攻勢に回る形になった。
「おい、どうする?あのままだと幸町が削られるのも時間の問題だぞ。沙月に援護でもさせるのか?」
それを少し離れた位置で見ていた野々が尋ねると、カナエは震えた身体と口で答える。
「た、たしかに現状は押されていますが、北海道メンバーの最強フォーメーション、即ち奥の手を出させる事には成功しました!つ、つ次の一手はもう少しお待ちを!」
この状況も想定の内と言うカナエに感心しながら、チラッと野々は沙月の方を見る。
「まぁ此奴に矢を撃たせても仕方ないか」
「なんでよ」
「当たらんだろ、あの速度じゃ」
「当たらないわね、確かに」
コントのようなやり取りをするなか、沙月はそれでも矢と弓を構えた。
「おい、下手に撃って幸町に当てるようなことになるなよ?」
「大丈夫です。と言うか北海道の二人は狙いません」
野々が沙月の弓を見ると、確かに矢は高速移動を続ける二人には向けられていなかった。
「ジッとしている剣美さんを狙います。元々その場に留まって捌く居合の達人である剣美さんは、それを最大限に発揮させようと動きを止めてるでしょ。なら、幸町さんの援護もしつつ、北海道の二人が剣美さんを脱落させてしまえるようにしようかと」
「ふむ……まぁ、案としては有りか。どうなんだ、カナエ」
野々がカナエに尋ねるも、カナエの反応はやや鈍かった。
数秒程してようやく頭で理解したカナエは、ジッと考える素振りを見せる。
「しゅしゅ、手段としてはあり、です。です、が、動かない、方が、彼女の体温…も奪われて、結果として北海道メンバー…や、幸町さんが倒しやすくなる…可能性があり…、ます。少しだけ、様子をみましょ、う」
既にまともに呂律が回らない程凍え出しているカナエの姿を、野々は考え込んだ様子で見つめる。
「(戦闘における知性は間違いなく国内一。しかしここにきて戦闘における戦力的低さが顕著に現れ出したな。とは言え此奴がおらんとこの先の展開の好転が望めん。何とか少しでも暖を取りたいものだが…)」
そう考えていた矢先であった。
「一弓入輝・『灯火の矢』」
沙月が弓の向きを変え、カナエの直ぐそばへ放つと、そこから放たれた矢が地面に突き刺さると同時に、ボッと燃え出した。
「出来るだけ火力を抑えたから、長持ちはしないけど少しは暖を取れるでしょ、カナエちゃん」
周りの温度はマイナス50度。沙月の放った矢による炎は小さな焚き火程度ではあったが、寒さに強くないカナエにとっては救いの炎であった。
「あ、ありがたい!!だいぶ思考が止まりかけていただけに!」
効果は的面で、一時的にではあるが、カナエは元の元気を取り戻していた。
「この思考が残ってるうちに、さっきの発言の訂正をしておきます!」
「む?訂正とな?それは剣美を攻めるということか?」
プランとしては悪くないと思っていた野々が、眉を顰めながら尋ねる。
「いえいえ!ハッキリ言って彼女の強さは規格外です!私が智将なら彼女はまさに武将。下手に手を出そうものなら大火傷を負いかねません。まぁ私はいま凍傷を起こしかねませんけども!!」
「ボケれる程度には頭が戻ったようだな。それで、ではどこを訂正すると言うのだ?」
元のキレのある発言をするようになったカナエに笑みを向けた後、野々は再度尋ねる。
「簡単です。剣美さん達が三つ巴になっているのなら、私達は残りの戦力を叩くんですよ」
カナエはニンマリと戦略を練る智将らしい笑みを浮かべ、二人に提案した。
「残りの戦力とな。まぁ出来る事ならこの気温を下げてる輩をどうにかしたいが、そんな散策をしていると隙を突かれん。となると…」
「そう!狙いは中部メンバーです!」
両手で野々を指差し、その通りだとカナエは伝える。
「中部メンバーで最も厄介なのは剣美さんで間違いありませんが、彼女一人なら北海道メンバーと途中まで共同戦線を張って倒すことは可能だと思います。加えて彼女達は持てる手を全て出し尽くしてますし、大幅な優位を取れます。だからこそ、その状況を作り出すためには…」
「我々が残党を処理するというわけか。まぁ妥当ではあるな」
野々はカナエの考えに賛同する。
「しかし伊達に彼奴等も選抜として選ばれておらん。そして貴様が言うには我は『グリット』を温存しておかねばならぬのだろう?沙月一人では厳しいと思うが?」
「基本的な方針は変わりません。明日の決勝戦を目指すとして、野々さんの『グリット』は絶対に必要になります。ですから出来るだけ温存しておきたいのが正直なところです」
そこまで言ったところで、カナエは「しかし…」と続ける。
「ハッキリ言って私はこの『大輝戦』を舐めていました。まさかあんな決死の手を使ってマイナス50度の世界をいち早く創って来るとは思ってもいませんでしたし、剣美さんの圧倒的な強さは想像以上でした。ですから、私も温存などと言う甘い考えは出来る限り捨てます」
カナエは智将らしい真面目な目付きで語り、野々はそれを感心した様子で頷いていた。
「なるほどな。戦場を理解してきたらしい。つまり、我の『グリット』は必要な場面において解放して良いと言う認識で良いな?」
野々の言葉に、カナエは頷いた。
「はい。向こうが決死で来るのなら、こちらも全力で答えましょう。使うべきと判断したら、躊躇なく使用してください。その判断は、実戦経験の多い野々さんに任せます」
「分かった。それなら話は変わってくる。中部の二人は我々が倒そう。行くぞ沙月」
「あーちょい待って」
野々が進もうとするのを、沙月は声をかけて静止する。
そして、数本の矢を取り出すと、それに『エナジー』を込め、カナエに手渡した。
「はい、これ。さっきの『灯火の矢』。地面に突き立てるだけで発火させられるから限界が来たら使うと良いわ」
渡された槍は三本。しかしそれはカナエにとってありがたい代物であった。
「ホントはもっと渡せると良いんだけど、私はあんまり『エナジー』量が多くないから、さっきまでの攻撃と、ここからの戦闘を考えると、多分それくらいが限界。ごめんね」
「とんでもない!これだけでも大感謝です!!必要に応じて私の『グリット』でテレパシーを送ります故!戦闘はお願いします!」
「うん、任された」
そう言うと、沙月は今度こそ野々と共に岩陰から離れ、離れた位置にいる中部メンバーへ攻撃を仕掛けに向かった。
カナエは沙月から預かった三本の矢を大事に握りしめると、再び寒さに震え出した身体にグッと力を込めた。
「もう油断も何もしませんよ。『近畿の平穏に我有り』という言葉が伊達ではないというところをみせてやりますとも」
ここまで完全に手のひらにありながら、近畿の智将の戦略が、再び猛威を奮おうとしていた。
※後書きです
ども、琥珀です
最近気付いた事ですが、私はどうやら冬より夏派のようです。
今まではどっちも好きでどっちも嫌いでしたが、最近ちょっと傾きました。
理由は仕事ですね。朝早くに出る事が増えたので寒くて嫌になりました。
なんのこっちゃいなって話でした。
本日もお読みいただきありがとうございました。
明日も更新されますので宜しくお願いします。




