第286星:『大輝戦』当日
※後書きにサラッとお知らせがあります
※読者の皆様の耳には方言を翻訳してくれる便利なイヤホンがついております
長い訓練を経て、前夜祭を終え、ついにその日は訪れた
全国各地域から選ばれた、優れた戦士達選抜メンバーが集い、競い合う場
『大輝戦』の開幕である
それぞれの夜が明け、ついに『大輝戦』の当日が訪れた。
既に朝陽、夜宵の両名は準備を終え、会場へ足を踏み入れる用意が出来ていた。
「まずは開会式を行い、その後、各グループの発表が行われます。その間、私は観客ステージに待機していますので一旦お別れです」
朝陽と夜宵を見送りに来た咲夜が、この後の動きを伝えていく。
「二人とも、しっかりと認められた上でこの場にいるのです。堂々とした振る舞いを見せてくださいね」
「はい!!」
その上でしっかりと二人を鼓舞すると、咲夜は笑顔で頷き、観客席となる二階のステージへと移動していった。
「今のが千葉根拠地の指揮官か」
そこへ現れたのは、瑠河であった。
「今の言葉掛けだけで分かる。君達は本当に恵まれた指揮官についたようだ。選ばれただけで大騒ぎする私の指揮官に見習わせたいくらいだよ」
そう言った後、瑠河は「今の発言は内緒にな」と片目を瞑り、人差し指で口を塞いだ。
そんなちょっとお茶目な瑠河の様子に、朝陽と夜宵はクスクスと笑う。
「さて、昨日は行き違いがあったせいか挨拶ができなかったが…君が斑鳩 朝陽だね。私は栃木根拠地所属の矢武雨 瑠河だ。宜しく頼む」
「あ、はい!宜しくお願いします!」
瑠河の挨拶に対し、朝陽は丁寧に頭を下げた。
「フフッ、成る程。あの上司あってこの部下あり。本当に素晴らしい根拠地のようだね、夜宵」
「勿論よ。でも、そんな状況でも己を律し強くある貴方も立派だわ瑠河。一緒に戦えて光栄よ」
昨日の前夜祭で更に仲を深めた二人は、握手で挨拶を交わす。
「さて、もうすぐ開会式なんだが…私達のチームメイトのあと一人はどこに……」
「あ、あの……」
とその時、か細くもすぐ近くから、小声の少女のような声が聞こえてきた。
一同が振り返ると、そこには少し大人しめな様子の一人の女性が立っていた。
「か、関東選抜の皆さん、ですよね?私、埼玉根拠地所属の道祖土 真衣と言います。こ、今回は宜しくお願いします!!」
腰の低い人物なのか、自己紹介をしている間に何度もお辞儀を繰り返していた。
「道祖土 真衣…もしや『一網打尽』の異名を持つ埼玉根拠地のエースか?」
瑠河の言葉に真衣はビクッと肩を揺らし、申し訳なさそうな様子で手をブンブンと振った。
「そ、そそそそそんな恐れ多いです異名なんて!!た、ただ私はガムシャラに戦ってきただけで、それで気付いたら『大輝戦』の舞台に……あうぅまた緊張してきた…」
瑠河の言葉への反応は決して否定ではなく、また拒絶でも無い。
よく言えば謙虚、少し悪い言い方をすれば、自分に自信のないタイプと言えるだろう。
とは言え、『大輝戦』に選ばれているのだから実力が確かなのは間違いない。
そうは言ってもこの物腰の低さとあがり症。下手な言葉はそれを誇張しかねないと感じた朝陽と夜宵は、簡単な自己紹介をするだけに留めた。
「さて、これで関東選抜は全員揃ったな。今日明日の二日間だけだが、私達はチームだ。全員で力を合わせ、関東の名を全国に轟かせてやろう!」
チームの指揮を取る習慣があるからか、瑠河は率先してメンバーの士気を上げる言葉を発していた。
朝陽や真衣はともかく、同じく部隊を率いてきた夜宵でさえ高揚するような口調と言葉に、思わず全員の心も引き締まっていた。
その時、マイクのキーンッ!という調整音が辺りに響き渡る。
自然と視線が集まるなか、舞台の上、その視線の先に立つ中央には、『グリッター』の憧れである早乙女 護里が立っていた。
『みんな、今回は《大輝戦》への参加、ありがとう。《メナス》の攻勢が激しくなっているなか、こうして集まってくれて嬉しいわ』
護里は最高司令官らしからぬ、どこか世間話をするような口調で話していたが、しかし、最高司令官という立場にありながら、身近に感じさせられるところが、護里の凄さでもあった。
『今回は急遽特別なルール変更もあったなか、誰一人異を唱えず承認してくれて本当にありがとう。皆には本当に無理を言ってしまって申し訳ないわ。《大輝戦》を仕切る立場として、感謝と謝罪をします』
護里は立場など関係なく、深々と頭を下げた。
初めて護里を見たものも、何度か護里を見てきたものも、『グリッター』にどこまでも真摯的であるが故に慕われているのだということを、この一瞬で痛感させられていた。
『さぁ、堅苦しい話はおしまいにして、《大輝戦》の本番に向けての仕上げをしていきましょう。各部における、対戦地方よ』
護里の発言に、僅かではあるが周囲がざわつく。
いよいよ本番であることに興奮を抑えられないもの、開催されることに対して喜びを覚えるもの、直前に迫り、緊張のあまり息を呑むもの、様々だ。
『振り分けは完全ランダムでいくわ。私の後ろにモニターがあるでしょう?私がボタンを押した後、モニターに各地方と、何部で戦うかが表示されるわ。それじゃあ、心の準備は良いわね?』
聞いた後、間も無くして護里は手元に置かれたスイッチを押した。
モニターには各地方の名前がシャッフルされていき、そしてピタリと動きを止め、表記を映し出した。
朝陽達関東選抜の部と対戦地方は────
●●●
「私達は第三部ですね」
既に第一部の準備は進められ、朝陽達は観客席となる二階のアリーナへと移動を始めていた。
「ついてるわね。明日の二部に向けて、勝ち抜いた2チームの戦力を見ることが出来るわ」
夜宵はこれをチャンスと捉えていたが、一方で瑠河は懸念点も考えていた。
「しかし能力を視れるのはどちらにせよ全員一緒だ。遅かれ早かれの話になる。問題は時間だな。私達は第三部。つまり戦闘を終えてから翌日の開催まで最も時間が短いことになる。回復に費やせる時間が少ないのは悩ましいな」
瑠河の鋭い考察に、朝陽も夜宵も確かにと言った様子で頷く。
「あ、あああの、そ、それも勝ち抜けたらな話ですよね?そのためにはまず、対戦地方の中国地方、九州・沖縄地方に目を向けた方が、よ、よよ良いんじゃないかと」
真衣は申し訳なさそうにしながらも、しっかりと朝陽達に進言する。
朝陽達も、自分達があくまで勝ち進むことを前提に考えてしまっていたことに気が付き、ハッと我に帰る。
「確かに、大事なのはまずは目の前の地方を倒してから、だな」
「『大輝戦』っていう舞台に、少し浮かれ過ぎてたみたい。ありがとう、真衣さん」
お礼を言われると、真衣はまた申し訳なさそうにしながらも「い、いえ〜」と頭を下げた。
その一方で、朝陽はアリーナの反対側へと目を向けていた。
そこでは、同じ地方の仲間と話をする、仙波 盾胡の姿があった。
「(対戦相手には仙波さんがいる。昨日の感じだけで分かる歴戦の猛者としての強さ)」
朝陽はスッと上げた自分の手を見つめ、グッと握りしめた。
「(私の今の力を試すには、申し分のない相手。全力を尽くして、必ず勝ってみせる)」
一同が真衣の言葉で冷静さを取り戻す中、朝陽は一人冷静に、初戦の相手のことをしっかりと考えていたのであった。
●●●
朝陽の視線が仙波 盾胡に向けられていることに、中国選抜メンバーである百目鬼 大河はしっかりと気が付いていた。
「おーおー、昨日挨拶したからって中国地方選抜のことはガン無視かよ。なかなか燃えることしてくれるじゃんか」
言葉とは裏腹に、冷静で好奇心旺盛な笑みを大河は浮かべていた。
「まぁ下手に警戒されるよりは良いでしょ。大河はともかく、私達は真正面から挑むタイプじゃないから、いきなり攻め込まれても困るしね」
その隣では、同じ地方選抜でありながら、同じ鳥取根拠地出身でもある安鬼 駿河がケタケタと笑いながら大河に返す。
「ハッ!!別に正面から来られようと全部跳ね返してやるけどな!!だがまぁ中国地方選抜の司令塔はお前だ。お前がそういうのなら、そうなんだろうな」
その後ろに控える残ったメンバーも、言葉こそ発しなかったが、駿河の意見に同意なのか、コクリと頷く。
「関東選抜に九州・沖縄地方選抜…どっちも一癖あって苦労はしそうだけど、ま、目に物を見せてあげましょ」
不敵な笑みを浮かべ、駿河はジッと二つの地方選抜を凝視していた…
※後書きです
ども、琥珀です
あれですね、クリスマスってもう過ぎてたんですね。
あ、上記の文でお分かりのとおり、クリスマスであることに気付かない程、琥珀はぼっちでした、はい。
クリスマス感が何も無いのもアレなので、今日27日から、年末31日までは連続更新しようかなと思います。
サラッと言いましたが、27〜31日は連続更新しますので宜しくお願いします。
プレゼントされる側でなく、する側ってことで。
え、いらない?
すいませんでした。
本日もお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は明日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




