第31星:朝陽小隊【挿絵有り】
国舘 大和(24)
再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?
咲夜(24?)
常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。
斑鳩 朝陽(18)
千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。
斑鳩夜宵(22)
千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。
樹神 三咲 (22)
千葉支部所属。夜宵の率いる『グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。
佐久間 椿(22)
千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。
【朝陽小隊】
譲羽梓月 (23)
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。
曲山奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。
「『天照す日輪』!!」
交戦開始と同時に、朝陽は『グリット』を解放。
纏っていた衣類が白と青のワンピースへ。ズボンも同色に新調されより機動的なモノへと変わり、むき出しになった肩から足首までにかけて純白のマントがかけられていく。
髪はカントリースタイルで結われ、元の純黄色から輝かんばかりの金糸雀カナリア色へと変化していった。
「前に出ます!!」
そう言い残し、朝陽は更に加速。既に陸地に上陸した6体のメナス目掛けて突っ込んでいく。
「速い…そして、美しい…」
「分かるよぉ梓月ちゃん。キラキラしてぇ、それでいて真っ直ぐでぇ、お星様みたいだよねぇ」
「はい!正に朝陽さんを体現したようなグリットですね!!」
その背中を追いながら、3人は素直な感想を口にしていた。
「ですが、見惚れるのはここまでにして、私達もそろそろ行かないといけませんね」
「そうだねぇ、私達が焚きつけたからには、その責任を果たさないとねぇ」
「それではまずは私が!!距離的にメナスの攻撃を考慮しますと私のグリットの出番かと思いますので!!お二人はその間に次の準備を!!」
それを伝えると、今度は奏が朝陽を追うように加速していく。
「(距離、残り800!!メナスにはまだ気付かれてない!!)」
解放した『グリット』の力もあって、朝陽とメナスの距離はグングンと縮まっていく。
「(あと300!!これなら死角から一気に…!!)」
朝陽が攻撃態勢に移行した瞬間、メナスの赤い瞳が突如こちらを向いた。
その事に気付いた時には、既にメナスからはレーザーが放たれていた。
「【耐熱反射鏡】を…ダメ、間に合わな…!?」
「『目的地変更』!!!!」
直撃寸前、朝陽の前に奏が立ち『グリット』を発動。
瞬間、メナスの放ったレーザーは、グニャリと曲がり、何処へもなく飛び去っていった。
「い、今のは…奏さん!」
「危なかったですね朝陽さん!!先陣を切れと言った私が言うのも何ですが、流石に直線的過ぎです!!一見気付かれていないようでも、向こうは必殺の間合いを図っていた、という場合もあるので気を付けましょう!!」
叱咤するような内容とは裏腹に、その表情は噛み合っていない。笑顔の表情を浮かべていた。
「は、はい!!助けていただいてありがとうございます!!」
素直なお礼に奏は満足そうに笑顔で頷く。
「既にご存知かとは思いますが、私の『グリット』、『目的地変更』は屈折です!!と言うよりは物体を曲げる力です!!今は防御として使いましたが、恐らく私が朝陽さんの隊に組み込まれたのには別の理由があります!!」
「べ、別の理由!?」
その内容を聞こうとするも、直ぐに第二波が朝陽達を襲う。
「申し訳ない!!小隊の話を聞いていた時からていっ!!考えてそいっ!!ていたんですがとりゃ!!話すタイミングせいっ!!逃してしまいましたのでといっ!!後程!!」
話しながらグリットでレーザーを曲げると言う器用なことをしながら、奏は少しずつメナスと距離を詰めていく。
奏の『グリット』は自分で言った通り、物質を曲げるもの。
物体と呼べる形あるものには効果をもつが、空気のような無形物にはあまり効果をもたらさない。
「(レーザーといえど物体を貫くからには質量があります!!ならば私のグリットで曲げることも可能!!)」
夜宵、朝陽に次いで、奏も【耐熱反射鏡】を必要とせずレーザーに対応できる。
但し、前者の二人が持続的に能力を発動し塞いでるのに対し、奏のグリットは、レーザーを曲げる度に能力を発動しなくてはならない。
エナジーの消耗度は比べ物にならない。
「(それでも引くわけには参りませんね!!)」
光速レベルの速度で撃ち出されるレーザーと相対しながらも、奏の顔から笑みが消えることは無かった。
「(あの日…私があの場所に入れば夜宵さんが傷付くことはなかった筈です!!だから…今日ここで朝陽さんの小隊に配属されたのは、きっと運命なのでしょう…同じ轍を、朝陽さんには踏ませません!!)」
あの日、奏は警邏のための臨時的な部隊に編成され、戦線には出ていなかった。
その時の悔しさもあるのだろう。奏の目には強い意志が込められていた。
「奏さんがレーザーを防いでくれてる…今なら!!『光輝く聖槍』!!」
朝陽の声に反応し、周囲に漂っていた光の粒子が集約、やがて光り輝く槍へと型どっていった。
「『六枚刃』!!」
そして槍の先端に漂っていた六枚刃が一斉に展開され、奏を攻撃しているメナスの方へと光速移動させる。
「『光の矢よ』!!」
先行した六枚刃から光の矢が次々と放たれていく。しかし、相手は常軌を逸した存在、脅威。攻撃の手こそ止めたものの、朝陽の光の矢は全て躱されていく。
「クッ…この!!」
「まぁまぁ慌てない慌てなぃ〜」
攻撃を外し、即座に次の攻撃に移ろうとした朝陽を、いつのまにか隣にまで来ていた華が諌める。
「先手を取ったのは向こうでぇ、その分メナスには余裕がある…そんな状態で藪から棒に撃ったって当たらないよぉ」
およそ戦場には似つかない、フワフワした笑みを浮かべながら、華は的確なアドバイスを送る。
戦場でのこの冷静さは、やはり経験と場数の違いを見せていた。
「命をかける戦場だからこそ慎重かつ冷静にぃ。一手の間違いが死に繋がることもあるからねぇ」
「は、はい!ありがとうございます!!」
朝陽の素直な返事に、華はまたフワリとした笑みを浮かべる。
「私の『グリット』もそうなんだけどぉ、この小隊に編成されたメンバーはあまり攻撃的な『グリット』を持ってないの〜。だから、攻撃の核はやっぱり朝陽ちゃんになると思うの〜」
「は、はい、分かってます!!絶対に仕留めてみせます!!」
強く意気込むものの、やはり朝陽の表情には硬さが見て取れる。
『グリッター』としては初の実戦、そしていきなりの小隊長への抜擢。緊張するなと言う方が無理な話だ。
だからこそ、華は笑う(元から微笑みの多い女性だが…)。
ここで自分達まで硬くなっていたら朝陽は間違いなく本来の力を発揮することが出来ないことを分かっていたから。
「落ち着いてねぇ朝陽ちゃん。攻撃の核にはなって貰うけど、朝陽ちゃん一人に全部を担わせるつもりは無いから安心して〜」
「と、言いますと…?あ、お三方が隙を作って下さるんですね!!」
「ん〜まぁまぁ追々そういった連携も作っていけば良いと思うけどぉ、まだ私達の小隊としての連携成熟度を考えると、それはまだ早いと思うからぁ、今日はシンプルなのでいくよぉ」
華の答えに、朝陽の頭には疑問符が浮かび上がる。
「まぁとりあえず、朝陽ちゃんは光線の用意をお願い〜。今回の細かい作業は私達が準備しておくからぁ〜」
「え、えっと…よく分からないけど…了解しました!!」
朝陽は展開していた『フリューゲル』を呼び戻し、華に言われた通り光線の準備に入る。
華はそれを確認すると、耳元の通信機でこの場にいない梓月に連絡を取る。
「そう言うわけだから梓月ちゃん、こっちの準備は順調だよぉ。そっちの用意ができたら教えてねぇ」
『了解です、華さん。もう間もなく準備が出来ます』
通信を終え、華はメナスに目を向ける。メナスは攻撃こそ仕掛けてくるものの、極端に距離を詰めてこようとしてくる様子はない。
メナスの特性の一つとして、どちらかと言えば遠距離戦を好む傾向がある。
圧倒的な身体能力を持っているとは言え、姿形は人間の女性の姿。
武器等は一切持っていないことから、レーザーによる遠距離攻撃こそが最も適した攻撃であるため、と言われている。
「(とは言え迂闊に距離は縮められないんだけどねぇ。近接戦闘をしても、触手に絡め取られてやられたって言う話は珍しくないし、基本的に遠距離戦に応じるしかないんだけどぉ…)」
華は腰回りに付けられた小型のポットを一つ手に取る。
「(今回の作戦に限っては、好都合なのよねぇ)」
クスリ…と一つ微笑み、ポットの蓋を開ける。
すると、そこから大型の銃のような物が二つ飛び出し、華はそれを手に取る。
「『輝線機関銃』〜、撃っちゃうぞぉ」
次の瞬間、両腕に持たれた機関銃から、無数の光弾が何発も放たれる。
メナスもこれは流石に躱しようがなく、何発か直撃を受ける。
「(す、すご!?と言うかどこから取り出して…!?)」
華が扱っているのは『輝線機関銃』と呼ばれる銃である。
以前扱っていた『輝線銃』の上位版で、連射性に非常に優れた武器である。
派手な攻撃に比べて反動は少なく、また重量も元来の機関銃より軽いため、二丁撃ちも難しくはない。
勿論、『グリッター』の覚醒による肉体強化有りきの話ではあるが。
そして、華がこの機関銃を取り出したのは、華の超能力系『グリット』、抑圧開解によるものである。
この『グリット』は、言ってしまえばプレス機のようなものである。
物体を圧縮し縮める、それが華の能力、『抑圧開解』である。
この能力の真価は、その圧縮度合いにある。通常の圧縮では、縮まらせるのには限度がある。
プレス機によるプレスでは二次元に、真空パックのような圧縮では三次元にそれぞれ圧縮できる限界がある。
しかし、華の『抑圧開解』には、基本的にそれが存在しない。
自身のエナジーが許す限り、自在に物体を圧縮し留めることが出来る。
但し、圧縮する物体が大きければ大きいほどエナジーの消費量は大きくなる。
また、生物を圧縮することは出来ない。
加えて圧縮したものを元のサイズに戻す場合、圧縮するのに使ったエナジーと同量のエナジーを使用するため、その配慮も行わなくてはならない。
それでも、この機関銃二つ分程度であるなら、エナジーの心配はそれほど無い。
故に、華はフワッとした笑みを浮かべながら、機関銃を乱射しているのである。
しかし、『輝戦機関銃』は連射性こそ高いもの、その分一発一発の威力は高くない。
何発も当てれば流石にダメージは通るが、華一人では致命傷に至るまでにはいかないだろう。時間稼ぎが精々だ。
しかし…
『お待たせしました。いつでもいけます』
華の狙いはまさに時間稼ぎであった。梓月の通信を聞き、華は機関銃の撃つ手を止めた。
「それじゃあみんなぁ、行こっかぁ」
華は代わって、フフッ、と不敵な笑みを浮かべる。
※ここから先は筆者の後書きになります!!ご興味の無い方はどうぞ読み飛ばしてください!!
※本日はマジで読み飛ばしてもらって大丈夫です!!
琥珀です。梅雨は嫌いです(終)




