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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
10章 ー開幕:『大輝戦』編ー
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第285星:変化

国舘 大和(24)

 千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。


唯我 天城(17)

東京本部に所属する『グリッター』。当時見習いの立場にありながら一羽に認められ、最前線での任務を任され、正式な『軍』の『グリッター』へ昇格した。任務を経て一つの殻を破ったが、その後、月影 天星に抜擢され…?


スフィア・フォート(18)

東京本部に所属する『グリッター』。勤勉さと発想力に優れ、礼儀正しく生真面目。飛鳥と大和の兄妹の凄さに憧れている。幼馴染の天城同様正式な『軍』の『グリッター』へと昇格するが、一羽との離別後、別人となってしまった天城を気にかけ…

「なんだよ、気付いてたのか」



 大和の言葉に反応し、物陰から出て来たのは、大和の言う通り唯我 天城であった。



「(……一羽さんの言う通り、あの時と全く雰囲気が違う…一体この短期間で何があったんだ?)」

「この短期間で何があったのか、そう言いたい面だな?」



 大和の考えを見事に言い当ててみせた天城は、得意気な様子で笑みを浮かべた。



「数ヶ月ぶりの再会だろ?何か挨拶はないのかよ」

「随分と強くなったみたいだね。自信を感じるよ」



 大和は素直に褒めたつもりだったが、天城は露骨に機嫌を損ねたような表情を浮かべた。



「相変わらず上からの物言いだな…!」

「そんなつもりは無いんだけどな…そう聞こえたなら謝るよ」



 これも大和には全く自覚がないが、子どもをあやすような言いフリに、天城は更に腹を立てていた。



「それにしても驚いたよ。まさかあの日あった時から、この短期間で『大輝戦』に出れるくらいまで成長するとは思わなかったよ。()()()()()()()()()()()()()



 大和は自然な会話のなかでさりげなく探りを入れる。



「あ〜別に?ただ指導者を変えて、俺に正しい指導をしてくれるようになっただけだよ」

「(…さっき一羽さんが言ってた薊さん…じゃないな。恐らく月影のことだろう。気になるのは、彼がそれだけ先見の明の慧眼を持ってること…となると、まさか彼は…)」



 詳細な情報までは得ることは出来なさそうではあったが、これで一羽の言った事は事実になる。



「聞くだけ聞いてだんまりかよ」



 そして確かに、天城の纏う雰囲気はガラッと変わった。


 以前は純粋な怒りを持ち、それを制する余裕が無かったが、今は力を身につけたからかその分の余裕が感じ取れた。



「…そうか。良い指導者に巡り会えたんだな」

「あぁ最高だよ!!あんな女のもとでのらりくらりと訓練してたのがバカみたいにな!!」



 そしてその分、態度も相応に不遜になっていた。


 以前は不躾ながらも弁えていた礼儀が無くなり、荒々しく乱雑な口調になっていた。



「(力に溺れかけてるな。一羽さんの懸念してた通りだな)」



 大和は天城に言葉を掛けるか迷った。


 しかし、元より自分を敵対視している天城に、大和から言葉をかけても無駄だろう。


 そして特に何も言葉をかけず、「頑張れよ」とだけ声を掛けて去ろうとした時だった。



「…天…城…」



 タイミング良く、いや、悪くか、スフィアがその場に現れた。



「……あぁ、誰かと思えば、スフィアじゃねぇか」



 天城はニィと浮かべた笑みをスフィアに向け、スフィアはその笑みに怯えた様子を見せた。



「お前と会うのも久しぶりだなぁ、スフィア」

「そう…だね…」



 二人の雰囲気も以前とはまるで違う。


 幼馴染であった二人の間には、明らかに見て取れる亀裂のようなものが見てとれた。



「お前はまだあの女の下についてるのか?だから弱っちいままなんだよ」

「やめてよ。射手島さんは私のことを考えてゆっくりと訓練を積ませてくれてるのよ。貴方みたいに力だけを求めたりなんてしてないもの」



 ピリピリと、二人の間にヒリついた空気がぶつかり合う。そんな二人の様子を、大和は痛々しい心境で見ていた。



「(あんなに仲の良かった二人が、この数ヶ月でこんなことに……月影 天星…お前は一体……)」



 ただ一つ気がついたのは、スフィアが天城の圧に負けない程の強さとメンタルを兼ね備えていることであった。


 以前は実力もさながら、どこか戦うことに対して怯えているような深層意識が完全に無くなっていた。


 それが無くなったのは、スフィアの中で心境の変化があり、そしてそれを上手く一羽が導いたからに他ならないだろう。


 感じ取れる範囲で言えば、実力はスフィアが遥かに劣る。


 しかし、今の天城に対面しても崩れない心の芯の強さが、スフィアを支えていた。



「お前もわからない奴だな。お前も知ってるだろ、俺の今の強さを。アイツの元で指導を受けた一年よりも、()()()から受けた数ヶ月の指導の方が遥かに効果的だった!!その結果が『大輝戦』の選抜だろ!?」



 天城はどこか挑発的であったが、スフィアがこれに乗ることは無かった。



「確かに力はつけたね。でも、『大輝戦』に選ばれたのは本当に実力なの?選ばれた理由は、天城が一番嫌う、コネでの出場なんじゃないの?」



 スフィアはあくまで冷静に、そして現実味のある答えを返す。


 すると、天城から先程までの余裕のある表情がスッと消え、冷え切った目でスフィアを見下ろした。



「なら試してるか?俺が実力で選ばれたんだって言う事実を…」

「『大輝戦』は実力で選ばれるんじゃない。実績と功績、そしてその過程での人物像で選ばれるのよ」



 二人の間の緊張感がピークに達し、一触即発の雰囲気にまで至った瞬間────



「やめろ」



 大和が仲裁に入り、動き出していた天城の手を掴んでいた。



「ッ!?」

「あ……大和さん」



 スフィアは今の今まで大和の存在を忘れていたかのような声をあげ、片や接近した大和の存在に()()()()()()、驚いた様子を見せていた。



「天城……力を身につけたのは良い。だがそれを仲間に向けるな。自分の力を見せびらかしたいだけの行動はオモチャを貰った子どもと同じだ」

「……ちっ!!」



 掴まれていた手を強引に振り払い、天城はゆっくりと後ずさる。



「大和もスフィアも、好きに思うが良いさ。どうせ『大輝戦』で全部俺が正しいって分かるんだからな!!」



 それだけ言い残し、天城はその場から去っていった。


 あとに残された大和とスフィアの二人の間には、気まずい沈黙が続いた。



「あの……大和さん、お久しぶりです」



 それでも、スフィアの人の良さが自分の辛い感情を押し殺して声を振り絞った。



「うん、久し振りだね。君も見違えるように成長したみたいだ」



 大和もそれを無視することなく、出来るだけ温和な雰囲気で答える。



「ありがとうございます。大和さんにそう言われると自信になります」



 スフィアの言葉に嘘は無いだろう。それでも、その言葉と浮かべられた笑みにはどこか辛そうな表情が見てとれた。



「天城を……ずっと気にしてるんだね」

「……はい」

「良かったら、話してくれるかな」



 下手な話題転換はせず、大和は直球で尋ねた。



「前に大和さん達と会った後、私達は一羽さんの指揮下のもと『アウトロー』の動向の調査の任務にあたったんです」

「(『アウトロー』の動向調査任務……ボクが椿君に依頼したのと同じ任務かな)」



 元々その任務は『軍』の本部から回された任務であったため、最高本部でも同じ任務に取り組まれていてもおかしくは無い話であった。



「その時まではいつもの天城だったんです。それどころか、まだまだ半人前でさえなかった私に背中を預けてくれたり、『一緒に強くなろう』って言ってくれたんです…それなのに、その任務が終わってから、また力だけを求めるようになって…」

「そして、天城は一羽さんの指揮から外れ、そして今の天城に至る…と」



 大和の答えに、スフィアは頷いた。



「天城は、任務前に言ってくれたんです…ッ!!『俺はお前のために強くなる。俺がお前を守れるように、お前がもう、怖がらなくて良いように』って…!!でも今の天城は…」

「自分の事だけに固執し、自分の力に溺れてるわけか…」



 それは先程の天城の様子を見れば一目瞭然であった。



「大和さん……私はどうしたら良いんでしょうか…大和さんなら、天城を何とか前みたいに戻せますか!?」



 顔を見上げ、大和を見る目は潤んでいた。


 天城の前では気丈に振る舞っていても、やはり心の奥底には不安と孤独で一杯だったのだろう。



「残念ながら……ボクが彼にしてあげられる事は、ない」

「…ッ」



 そんなスフィアの想いに、大和は残酷な現実を突きつけた。



「でもスフィア、君なら出来る」

「…え!?」



 そして、希望となる理想を伝え始めた。



「天城がどうして力を求めるのか、どうしてあそこまで変わってしまったのか、ボクにも分からない。その前の彼からもボクは嫌われていたからね」



 大和は「でも…」と続ける。



「君は違う。君はどんな時だって彼の側にいて、彼の事を想い、そして一度は背中を預けられるまで信頼された。だから、()()()()()()()()()()

「…私が、追いつく…」



 エコーの様に繰り返されたスフィアの言葉に、大和は深く頷いた。



「今は、彼は自分の力に驕って誰の言葉にも耳を傾けない。だから、君が彼の元まで追いついて、そしてぶつけてあげるんだ。力だけじゃない、言葉で」



 スフィアの目の色が、明らかに変わったことを大和は感じ取る。



「彼を取り戻せるのはボクじゃ無い。君だ。だから君も、今は強くなるんだ」



 大和はスフィアの肩に手を置き、力強く訴えた。



「一羽さんについていけば大丈夫。君も必ず天城に追いつける。その時に、思いっきり今の、それまでの想いをぶつけてやれ。そうすれば、きっと天城も気付いてくれるさ。本当の強さにね」

「本当の…強さ?それは……」



 大和はそこまで言ったところで肩から手を離し、ゆっくりと距離をとった。



「そうだな。まずは君がその本当の強さを見つけてから、かな」



 そして大和はゆっくりとその場から離れていった。



「大丈夫。君なら必ず見つけられる。ボクの言う、本当の強さの意味をね」



 そんな抽象的なアドバイスしか残せない自分を恨みながら…

※後書きです








ども、琥珀です。


私は特定の人が歌う音楽を好きになることは無くて、その一曲だけが好きになることが殆どです。


更に言えば曲も歌詞付きではなく、サントラのようなBGM系の音楽を聞くのが好きです。


そういった音楽を聴いていると、私の中で戦闘等の情景が頭の中に浮かんで、気付けば物語になっているからです。


文章・物語の創り上げ方は人それぞれですが、やはり、自分自身の創り上げ方があると良いな、と思います。


自分語りでした。


本日もお読みいただきありがとうございます。

次回の更新は月曜日の『朝6時頃』を予定しておりますので宜しくお願いします。

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