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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
10章 ー開幕:『大輝戦』編ー
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第282星:前夜祭③

※皆さんは耳に方言を翻訳して下さるイヤホンをつけています

※皆さんは耳に方言を翻訳して下さるイヤホンをつけめいます

「あれが最近名前よう聞く斑鳩朝陽か。何かひよっちい感じがしたが、()()仙波の反応を見る限り、かなりの手合いとみた」

「みたいだねぇ。見てたのは私達だけじゃないし、今年のダークホースは彼女になりそうだ」



 朝陽と盾胡のやり取りを、中国地方選抜メンバー、鳥取根拠地選抜所属の百目鬼(どうめき) 大河(たいが)と、安鬼(あじき) 駿河(するが)は、愉快そうにその光景を眺めていた。



「私達以外もあの斑鳩朝陽には注目してたみたいだな。視線がビンビン向けられてらぁ」

「まぁあの子もそれには気付いてたみたいだけどね。それを注視しなかったのは、気付かなかったからか、神経が図太いからか」



 パーティーに向けたドレスコードこそしているが、その立ち振る舞いはどこかガサツで、乱雑なイメージを持たせた。


 それでも、いやだからこそか、纏う雰囲気は強者のオーラであり、明らかに選抜メンバーであることが分かるような雰囲気を醸し出していた。



「だがまぁアイツまだ覚醒して半年も経ってないって話だろ?ダークホースはともかく、そんな奴に主役の座は渡せねぇなぁ」

「そうだねぇ。ま、私達も憧れの『大輝戦』は初の舞台な訳だし?簡単には譲れないよねぇ」



 不敵に笑う二人。


 そんな二人を他所に、朝陽は一人、また一人と積極的にコミュニケーションを取って行っていた。






●●●






「へぇ、それじゃあ北海道地方の選抜は、全員が北海道根拠地から選ばれてるんですね!!」



 そして朝陽は、北海道地方の根拠地に所属する一同と話し合いに興じていた。



「そうなりますね。北海道は北海道しかありませんから」



 五人全員が同じ根拠地というのは、毎年言われている北海道根拠地の強みである。


 実力が伴いながら連携も携えているというこの優位性を利用して、活躍することも多々あった。


 そんな朝陽の対応をしているのは三雲 冴子。


 今季の北海道根拠地における裏エースと呼ばれている存在である。


 キリキリとした口調ながらどこか物腰の柔らかさを感じさせる様子は、千葉根拠地で例えれば三咲に近いものを感じさせていた。



「と言っても、北海道は広いですからね。本来は地域に一つの根拠地が三つ存在しています」

「え、じゃあ皆さん別々の根拠地なんですか?」

「いいえ、同じ根拠地です♪」

「今のくだりなんだったんですか!?」



 初対面とは思えない程に打ち解けた様子で話す二人を、北海道根拠地のエースである加我 真白はどこか真剣な眼差しで見つめていた。



「…?真白ちゃん、どうしたの?」

「……人当たりも良いし、裏表もなさそうな性格……それなのに、この感じる猛者の気配……貴方只者じゃないね」



 これまで友好的だった冴子とは異なり、真白は戦士の表情で朝陽を見ていた。



「『グリット』に覚醒して半年。そこからいくら実績を積んだといっても、『大輝戦』に選ばれるなんておかしいと思ってた。けれど、貴方を見てたら納得したわ」



 真白はゆっくりと朝陽に歩み寄り、距離を近づけてジッと眼を見つめた。



「この様子だと、『悪厄災(マリス・ディザスター)』や【オリジン】を退けたっていうのは本当なのかな」



 人柄よりも戦績に興味を示す冴子は、まさに戦士そのものと言えるだろう。



「あ、えっと確かに退けはしたんですけど……それは司令官のお陰だったり、仲間や、助けに来てくれた戦国さんのお陰で……」

「戦国!?」



 とその時、それまで朝陽の言葉の節々を伺っていただけの冴子が、突如食い入るように朝陽の言葉に反応した。



「せ、せせせせせ戦国っていった!?戦国って、あの『シュヴァリエ』の戦国 巴さんのこと!?」

「え!?あ、はいそうですけど…」

「貴方戦国 巴さんと知り合いなの!?戦い振りは目にした!?どんな人柄だった!?」

「えっ!?えっ!?あの、えっと!!」

「はいはいそこまでそこまで」



 最早ゼロ距離まで近寄ってきていた冴子を、真白が間に割って入って押し返す。


 それで我に帰ったのか、冴子はハッとした様子で赤面し、「コホンッ」っと一つ咳払いをすると、元の冷静さを取り戻す。



「し、失礼。少し興奮してしまって…」

「い、いえ……」



 困惑する朝陽を見て、真白は苦笑いを浮かべながら事情を説明する。



「実は冴子は、『シュヴァリエ』の戦国 巴さんのファンでしてね」

「ファンじゃない、尊敬してるんだ」

「だからファンとして巴さんの話を聞くと目がないんですよ」

「だからファンじゃない!!尊敬してるの!!」



 全く話を聞かない冴子に食いつく真白。


 そんな仲の良い二人の姿に、朝陽は羨ましく思いつつも、この仲の良さ(連携)が、自分達に牙を剥くことを考えると複雑であった。



「あの、巴さんのことなんですけど、実は私その時気を失ってて…だから戦う姿は見てなかったんです。ただ…」

「ただ…?」



 朝陽はこの事実を伝えるべきか悩んだ末、ハッキリと伝えることを決めた。



「私が目が覚めた時、巴さんは【オリジン】と対峙した後でボロボロな姿でした。顛末は見てないんですが、恐らく敗北した後だったと思います…」

「うそ…あの巴さんが…」



 恐らく真白は巴の戦いをどこかで見たことがあるのだろう。


 とても信じられないといった様子で、朝陽の言葉を、それでも受け止めていた。



「私達は巴さんの強さを知ってる。その巴さんでも勝てなかったってことは、【オリジン】の強さはそれを更に上回る、ってことですね」



 冴子はどこか悔しそうに、真白は冷静に受け止め、それぞれ一口飲み物を口に含んた。



「でも、巴さんが駆けつけても勝てなかった【オリジン】を、よく撤退まで追い込んだな。一体どうやって?」

「それは……」



 流石にそこまでは朝陽の口から話すことは出来なかった。


 あれ程の激しい戦い。『軍』が観測していてもおかしくはないが、今のところその兆候は無い。


 そして咲夜が自分の過去を打ち明けてくれたのは、根拠地の面々を信じてくれているから。


 目の前の二人は人が良く、短時間話しているだけでも信頼できる人達だと確信を持てていたが、それでも話すのは憚れた。



「……どうやら話せる内容じゃ無いみたいね」



 口籠る朝陽の反応を見て何かを察した真白は、それ以上追求しなかった。



「ごめんなさい…」

「謝ることじゃないですよ。同じ『グリッター』同士といえど、話せないことはあります。特に今は、『大輝戦』の前夜ですから、ね」



 冴子も気にした様子はなく、寧ろ優しく語りかけてくれた。



「それにしても恐るべくは【オリジン】ね。貴方や優秀な司令官が居ても尚歯が立たないほどの圧倒的な強さ。私も腕には自信がある方だけれど、ちょっと相手にしたくないって思っちゃうわね」



 真白がそう言うと、真白がこれに続く。



「私達も選抜に選ばれる程度には実力があるので分かりますが、対面しただけでもハッキリと感じる猛者である貴方でも手が出なかったのですか?」

「…はい。()()()()()()全く歯が立ちませんでした…」



 悔しさを滲ませながら、朝陽は暗い口調で答える。しかし、次の瞬間には顔を上げ、力強く答えた。



「でも、また襲ってくることがあったら、次こそは負けません!!今度こそ、皆を守って見せます!!そのために、私は力をつけてますから!!」



 両手を拳にして胸の前に出した朝陽の瞳は明るく前を向いており、冴子、真白の二人は同じ根拠地ではないものの、何故か頼りになる感覚を覚えていた。






●●●






 それから間も無くして、朝陽はその場を去っていった。


 冴子と真白の二人は、残りの二人の選抜メンバーと合流しながら、朝陽との最後の言葉について、ある意図を感じていた。



「気付いた?冴子。朝陽の最後の発言」

「勿論気付きましたよ。()()()()()()…ってところですよね」



 真白はニヤッと笑いながら頷いた。



「話に聞く限り【オリジン】は、認めたくないけれど巴さんをも追い詰める強さを持ってる。その【オリジン】に対して、()()()、って言い回しをしてた。つまりは…」

()()()()()()()()()()()…という事になりますね」



 冴子もその意図を汲み取っており、小さく笑みを浮かべながらドリンクを口にした。



「楽しみね冴子。【オリジン】を相手にした、最早歴戦の猛者となりつつある斑鳩朝陽。そんな彼女と戦えるなんて」

「…そうですね。私はあまり血の気が多い方ではありませんが、少しだけ、楽しみです」



 二人だけの会話はそこで終わり、二人はゆっくりと残りの二人の元へと歩みを進めていった。

※後書きです







ども、琥珀です


方言について学ぼうと努力しました


しかし、中途半端な方言を使うことや、読んでくださる皆様が一回一回意味を調べたりする手間を考えがえた結果、皆様には標準語に自動変換して下さるイヤホンをつけている設定にしました。


許して下さい。


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は月曜日の朝『6時頃』を予定しておりますので宜しくお願いします。

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