第278星:総司令官
各地方総司令官
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
興梠 叉武郎 (56)
北海道総司令官。厳正・冷淡な性格で、物事を淡々とこなす。『グリッター』をあくまで手駒として考えているが、それは自分の経験のもと、部下達を死なせないようにするため。直接指揮を下すことは無くなったが、様々な事態に対応できるマニュアルなどを作成している。
工藤 あやめ (45)
東北地方総司令官。元技術・科学班出身で、作戦を論理的に立てる。そのため、経験則に則ったやり方を主とする興梠や武田沢とは馬が合わない。但しこれまでに『メナス』を研究し続け、今の『軍』の基本戦闘スタイルの確立に貢献している点は両者共に認めており、戦術における先駆者と言える。
藤木咲 柚珠奈 (42)
中部総司令官。快活で明るく真っ直ぐな性格。元々前線で戦っていた『グリッター』で、『グリッター』に対しての理解がある。現場は指揮官達に任せているが、『グリッター』としての立場を経ての助言をするなど、総司令官として尊敬されている。
武田沢 銀次 (60)
近畿地方総司令官。頑固者で厳格。但し良くも悪くもをも意味し、自陣に非がないと思えば断固として守り抜く姿勢を貫く。北海道総司令官の興梠とは長い付き合いで、厳格なもの同士反りが合わず喧嘩ばかりしている。が、実際は互いにその力量は認め合っている。
桂木 捻 (35)
中国地方総司令官。捻くれ者で根性なし。基本的に護里の慧眼で選ばれる総司令官のなかで、唯一最高議会から選出されたいわゆるコネ出世。思考も差別の塊であり、単に情報を最高議会へ垂れ流してる傀儡だが、そういった待遇を受けているためか根拠地等は反骨心で溢れており、最もタフと言われている。
東條 龍一郎 (50)
四国地方総司令官。明朗快活で豪快な性格。決して揺らぐ事のない信念に、力強さと意志の強さを持つ。『グリッター』ではないものの、『戦闘補具』を使用し前線に立ち続け、かつては『人類最強』と言われていた。実績に裏付けされた言動に、心酔する者も多い。
鷹匠 悟 (35)
九州地方総司令官。大和に次ぐ若さと早さで出世した人物で、話の場をまとめたり和やかにしたりと、天性のカリスマ性を有する。絶望的な状況を打破する先見の明が鋭く、そこに目をつけた護里がいち早く抜擢した。本人もそれが一人でも多くの命を救えるのならと了承し、真剣にあたっている。
「大変お待たせしました。千葉根拠地……あぁ、失礼、関東総司令官、国舘 大和です」
薄暗い部屋の中には、大和を含め九名の人物が机の周囲の椅子に腰掛けていた。
「良いのよ。貴方の立場は特殊ですもの。さ!これで全総司令官が揃ったわね」
パン、と笑顔で手を叩いたのは最高司令官である早乙女 護里。
先日の辛そうな表情は一切なく、普段通りの笑顔を浮かべていた。
その最高司令官を前にして、今この場には、各地方における最高権力者である総司令官達が揃っていた。
北海道総司令官──── 興梠 叉武郎
東北地方総司令官────工藤 あやめ
中部地方総司令官────藤木咲 柚珠奈
近畿地方総司令官────武田沢 銀次
中国地方総司令官────桂木 捻
四国地方総司令官────東條 龍一郎
九州地方総司令官────鷹匠 悟
そして関東地方総司令官────国舘 大和
これに護里含めた九名がこの場に揃っていた。
護里が明るい雰囲気を醸し出しているが、いずれも総司令官まで昇り詰めた猛者であり曲者揃い。
室内はどこかピリピリとしていた。
「やれやれ、毎度毎度遅刻とは、随分と偉い身分だねぇ関東総司令官君?トップの君がそうだと、君の部下達の程度も知れるというものだよ?」
完全に見下し小馬鹿にしたような口調で大和に語りかけるのは桂木 捻。
適度に伸びた前髪を弄りながら、「ふふん」と鼻で笑う。
「……遅れたことについては本当に申し訳なく思ってます。しかし、今のボクの事情についてはご存じのはず。それをご理解なされた上での発言であれば、総司令官としてはもう少し頭の働かせた発言をされるべきかと」
対して大和は口調を変えず、寧ろ笑顔で皮肉たっぷりの言葉を返す。
「何をこのガキッ…!?」
買い言葉に売り言葉。
大和の挑発のような発言に完全にノせられ、捻は思わず席を立ち上がるが、それを一人の老齢な男性が制止する。
「よさんかうつけが。今のは自分の発言で足引っ掛けたんだろうが」
男性の声は渋くそして低い。その圧を感じさせる声に、この中では若く見える捻は恐れた様子で席に着く。
「大和ぉ。お前も立場があるのは分かるがな、ここは最高司令官含め総司令官達が集う重要な場だ。遅れるのは良いがな、そのヘラヘラした面は改めろ。それが捻達を苛立たせるんだよ」
捻に次いで大和を叱咤するのは、北海道総司令官の叉武郎。流石に同じ総司令官だけあって、その一言一言には弱くない圧と威厳が伴っていた。
「…すいません、半ば習慣みたいになってしまっていて。以後気をつけます」
流石の大和もこれには自分に非があると思い謝罪すると、叉武郎は「フンッ!」と一つ鼻を鳴らすだけでそれ以上追求しなかった。
叉部郎は厳正・冷淡な性格で、物事を淡々とこなす総司令官として有名だ。
そのために、薄笑いとはいえ余計な仕草を見せた大和の行いが気に食わなかったのだろう。
「ほらほら!その話はお終い!大和君も座りなさい」
「ありがとうございます、失礼します」
護里が促し、大和も席に着く。
「さぁそれじゃあ【大輝戦】直前のミーティングをするわね。といってもこの場では事前に送った内容の最終確認よ」
総司令官達は全員が配られた資料に目を通す。
事前に送られたものであるにも関わらず、全員がしっかりと資料に目を通すのは流石と言うべきだろう。
その中で唯一資料に目を通していない人物がいた。先程大和に噛み付いてきた捻だ。
「……おい桂木。既に渡された資料とはいえ最終確認の場だ。キチンと目を通せ」
これに叱責したのは、興梠とは違う渋くドスの効いた声色で話す、近畿地方総司令官、武田沢 銀次。
人によっては聞くだけで臆してしまいそうな声だが、神経が図太いのか、はたまた鈍いのか、捻は前髪を弄って資料を手に取らない。
「おい、聞いてんのか桂木ぃ!!」
「あ〜はいはい聞いてますよ。いま貴方が自分で言ったでしょ。既に渡された資料だって。こんなもん見なくてももう分かってますって」
「…舐めた態度とりやがってガキがッ!!」
カッとなった銀次が席から立ち上がろうとするも、その動きがピタッと止まる。
まるで銀次の周囲に壁があるかのように、身動きが取れなかった。
「まぁまぁ落ち着いて銀次君。彼の言う通り、これはもう事前に渡した資料だから、彼の言う通り読むのは必須じゃないわ」
護里に諭され、銀次は捻の方を睨みながらも気を収め、捻は「フフンッ」と鼻で笑った。
「さて、それじゃあさっきも言ったように再確認ね。捻君、これまでの『大輝戦』との変更点をまとめてくれるかしら」
「……は?え、いや……」
突然説明を求められ、捻は前髪から手を離して明確な動揺の色を見せる。
「あら、さっき読まなくても分かるって言ってたから、一番それが手っ取り早く済むと思ってたのだけど……もしかして私、聞き間違えちゃったかしら?」
捻が「うぐっ…!」と悔しそうな表情を浮かべると、今度は銀次が「フンッ!」と笑い返した。
「捻君、貴方が最高議会の推薦で選ばれた総司令官とは言え、この場ではそれは関係ないわ。何百、何千の部下を従える身として、最低限のことはしなさい。良いわね」
護里の十八番である、笑顔でありながら向けられる圧に、捻は悔しそうにしながらも資料を手に取った。
護里はそれに満足そうに頷くと、先程自ら振った変更点について説明を行った。
「とまぁ変更点はこの辺かしら。伝聞でも確認はしたけれど、質問のある子はいるかしら?」
護里が一同に確認すると、その内の一人、東北地方総司令官、工藤あやめが手を挙げた。
「『大輝戦』の実施内容を実戦形式に変えた理由は分かりました。関東本部から独立して東京本部として選抜する理由も納得しました。しかしそこまでして枠を増やした理由が読めません。それならば、各地方から選抜する人数を通常通りにし、八地方二部制で行うのが効率的では?」
工藤あやめは根拠地の元技術・科学班に所属していた経緯があり、またそれも混じえた戦略にも長けていたために抜擢された総司令官だ。
作戦や発言内容は作戦を論理的であり、今も護里にそう言った説明を求めていた。
「そうよねぇ、なかなか受け入れられないわよねぇ」
キビキビと話すあやめに対し、護里も困ったような表情を浮かべる。
「通常の『大輝戦』の内容を変えるだけでなく、東京本部の選抜メンバーを加えろだなんて急に言われるんだもの。ホント、困っちゃうわよね」
その言葉だけで全てを察したのか、あやめは小さく数度頷くだけでそれ以上のことは口にしなかった。
「まぁ詳しいことは言えないけれど、残念ながらこれも決定事項なの。申し訳ないけれど了承していただけるかしら」
暗に上層部から圧をかけられたということを示唆され、各総司令官の面々は何も言わず頷いた。
唯一、最高議会の釈度で総司令官の席についている捻だけは偉そうに鼻で笑っていた。
「追加されることは分かりました。しかし各地方の選抜メンバーに関しては、総司令官が指揮ないしは監督をすることになるわけですが、今回は関東選抜メンバーもいますし、大和君が両方見るわけではありませんよね?それでは誰が代わりに?」
そう質問したのは、九州地方総司令官の鷹匠 悟だ。
大和に次ぐ若さと早さで出世した人物で、話の場をまとめたり和やかにしたりと、天性のカリスマ性を有する。
絶望的な状況を打破する先見の明が鋭く、そこに目をつけた護里がいち早く抜擢したと言われている。
「一応名目上は私が執るわ。ただ、私は全体の運営や指揮とかやることが多いから、基本的には副官の楓ちゃんにお願いすることになるかしらねぇ」
「あ〜楓さんか…それでは心配はいりませんね」
護里程ではないが、その護里の隣に長い間立ち続けてきた楓も、『軍』のなかでは一目置かれている存在である。
悟の言う通り、代わりに指揮を取るのが楓ならば問題ないと異論を唱えるものは居なかった。
「しかしバトルロワイヤル形式の『大輝戦』か。もっと早くに開催していれば出てみたかったものですな」
好奇心旺盛に呟いたのは四国地方総司令官、東條 龍一郎。50歳とは思えない若々しい姿に、鍛え上げられた肉体。
揺らぐ事のない信念に、力強さと意志の強さを持つ龍一郎は『グリッター』ではないものの、『戦闘補具』を使用し前線に立ち続け、かつては『人類最強』と言われていた程の人物である。
こういった手合いの話となると、昔の血が騒ぐのだろう。その表情はどこか闘争心に溢れていた。
「それはいくらなんでも無茶でしょ!!当時の単調な『メナス』ならともかく、今回は『グリッター』の精鋭選抜メンバー間のバトルロワイヤルなんだから!!」
龍一郎の発言を否定したのは、中部地方総司令官の藤木咲 柚珠奈。
快活で明るく真っ直ぐな性格さながら、元々前線で戦っていた『グリッター』であることもあり、『グリッター』に対しての理解が強いため、総司令官としても一際尊敬の念を集めている人物である。
「そうかな?『メナス』を共に退治してきたからこそ手の内がわかる、とも捉えられるぞ?」
「そりゃ何回かご一緒したことがありますから、全部は否定しませんよ?でもね、『グリッター』の成長も日進月歩。そんな簡単な話じゃないですって」
ふふふ、と互いに含みのある笑い声を発しながら牽制し合っていると、護里は「はいはい」と手を叩いた。
「話が逸れちゃったわね。それじゃあミーティングを続けて……」
とその時、扉がノックされ、返事を待つ前に開かれた。
入ってきたのは先程話に出てきたばかりの雛菊 楓であった。
「会議中に申し訳ありません。護里さんに急いでお耳に入れたいことが」
そう言うと楓は、返事を返す前に護里に近寄り何かを耳打ちする。
次第にその表情をこわばらせていくと、「ふぅ…」と一つ息を吐いた後、各総司令官の方を見て口を開いた。
「レジスタンスのトップ二人の決着がついたそうよ」
※後書きです
ども、琥珀です。
書く事はないです。
そう言えばもう十二月になるんですね…
もう今年も終わり…新型のアレが蔓延してから三年近く経ちそうになり、勢いは衰えず新しいオミクロン株が出て…
また昔のように楽しく外に出れる日は来るんでしょうか…不安ですね…
でも読むのは何の問題もないので、是非ご一読下さい!←
本日もお読みいただきありがとうございました。次回の更新は金曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします。




