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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
10章 ー開幕:『大輝戦』編ー
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第268星:衝突

皇 イクサ(32)

 『レジスタンス』の過激派の頭領。過激派の名に恥じない過激な思考の持ち主で、最低限の作戦等は立てるものの、半分は勢いと感情任せに動く。カリスマ性は高く、そして『グリッター』の自由という理想を体現すべく行動に移すという性分から、確かな信仰を得ている。


神宮院 アンナ(32)

 穏健派、ジェネラスのリーダーであり、従来の『レジスタンス』という組織自体のリーダーでもあったが、イクサと決別したことで勢力が二分した。穏健派だけあり、活動は控え目で平和的な思考を持っている。また行動で動くイクサとは対照的に言葉で人の心を動かすタイプで、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っている。

「はっはっはっはっ!!そうかそうか!!()()()()根拠地襲撃は失敗したか!!」



 ここは『レジスタンス』の本部。


 本部といっても、過激派の本部であり、穏健派とはまた別のところに建てられていた。


 辺りは茂みと木々に隠れ、簡単には見つからないような場所に建築されていた。


 建築物は新しさを感じるが、ところどころが破れたり破壊されたりしていることで、どこか物騒ながら物々しさを感じさせた。


 その総本部の中ではわ赤い髪を後ろで束ねた、荒々しい様子の女性が、ボロボロになった椅子に座り、笑いながら報告を聞いていた。



「『グリッター』の主力は四人失って、準戦闘員も50名近く失った。少なくない損失だと思うが?」

「構わねぇよ。私が許可した事だし、何なら作戦自体。奪えたら儲けもん程度の気持ちだったからな」



 親しい人物に対して接するように報告する女性に対し、椅子に座る女性、過激派の頭領──皇 イクサは適当な様子で答えた。



「んま、実際は私が裏で手引きしてもう一人『グリッター』派遣してたから、実際失ったのは五人だな」

「またお前はそんな勝手を……だがまぁ基本無駄なことはしないのがお前だ。何か狙いがあったんだろ?」



 イクサに親しげに話す女性、白銀 明鉄(しろがね あかね)は、近くに腰掛け尋ねる。



「まぁなぁ。失敗する可能性はあったから、何の爪痕も残せなかったら困るからよ。最悪その根拠地の司令官だけでも()っとこうと思ったんだが…」

「ま、狙いとしては悪く無いよな。で、何が腑に落ちないんだ?」



 明鉄が続け様に問い詰めると、イクサは椅子の肘掛けに肘をかけ、手の上に顔を乗せながら答える。



「言ったろ?私が派遣したのは『グリッター』だって。そんで今お前から聞いた報告を聞く限り、その根拠地の司令官とはマンツーマン状態になった筈だ」

「……あーそういう。底辺レベルとはいえうちの『グリッター』がただの人間に負けたのが腑に落ちないってわけ」



 明鉄の答えに、イクサは息をこぼす事で答える。



「まぁでも腐っても根拠地の司令官なわけでしょ?それもわざわざうちの戦力を割いてまで襲撃したわけだし、対『グリッター』用の対策くらいはしてたんじゃ無いの?」

「ん〜まぁそうなんだがよ〜。どうしても納得出来ないんだよなぁ。なぁんか重要な秘密がある気がして……」



 と、その時であった。



「た、大変です頭領!!本部に襲撃者が……うわぁ!?」



 慌てた様子で報告に来た人員が、扉の外からの衝撃でイクサ達の方へ吹き飛ばされる。


 扉は粉々に砕かれ、周囲には土煙が舞い散る。


 その中からは、一人の人物が現れる。



「おいおいおいおい。仮にも穏健派のリーダー様がそんな過激な登場をして良いのかぁ!?」



 言葉とは裏腹に、来訪者を歓迎するかのような笑みを浮かべ、イクサは襲撃者…否、穏健派リーダーの神宮院 アンナを見つめ叫んだ。



「黙りなさい下郎。これまで幾多と言葉を交わし、理解をしようとしてきましたが、もう限界です。貴方達は超えてはならない境界線を越えた。よって、私の手で粛清します」



 それに対してアンナは冷静に、冷酷に、淡々とイクサ達を糾弾した。



「はっはっはっ!!粛清と来たか同じ志を持つ同志よ!!私は悲しいぞアンナァ!!」



 言葉とは裏腹に、全く悲しそうな素振りを見せず笑うイクサに、アンナは厳しい眼を向ける。



「確かに…かつては同じ志を掲げていました。ですが今は違う。貴方は変わった。非道な手段を使うことを厭わず、力で物事を解決するようになった。もはや同志ではありません」



 アンナの言葉に、しかしアンナはやはり「クックック」と笑う。



「まぁ変わっただろうよ私は。それについては否定しやしないよ。でもな…」



 そこでガラッとイクサの雰囲気が変わる。



()()()()()()()()()()()()?」



 軽そうで、どこか親しみを覚えやすかったイクサからは、辺りがビリビリとひりつく程の圧を放ち、それがアンナを襲う。



「お前のやるやり方を何年、何十年と続けてきて、一体何人がその想いに心動かされた?一体どれだけの人が言動を変えたってんだ」

「……それは…」

「私から見ればな、お前の行動こそが『レジスタンス』にそぐわないんだよ。自由と解放を訴えながら、やってることは言葉による訴えかけだけ。そしてその効果は殆どない。お前は一体何がしたいんだ?」



 これまで優位に立っていたアンナが、ここにきて初めてイクサの圧に押される。



「……確かに、貴方の言う通り、私の行動は、『グリッター』の自由と解放の道を進むにはあまりにも遅すぎるのかも知れない。いいえ、進んでさえいないかも知れない」



 アンナは「しかし」と続け、キッとイクサを睨みつける。



「だからと言ってあなた方の取った非道な行為を許すつもりはありません。差別を無くすために、味方を生贄にする非人道的な行いもさながら、『()()()()()』が人の上に立つなど!!そんなことは絶対にあってはならない!!」

「ははは!!じゃあどうしろってんだ!?このままあいつらの下について、駒として働き続けろってか!?」

「違う!!私達は平等を目指し、志していた筈です!!」

「それが変わらねぇから私達が変わる必要があるんだろうが!!」



 互いに放ち合う圧と怒号。


 そのプレッシャーは凄まじく、衝突さえしていないのに、建物全体が揺れるほどであった。



「……どうやら言葉を交わしても無駄なようですね」

「みたいだなぁ。ホント残念だよ。私はお前とはずっと仲良くしていたかったぜ」

「…………私もです」



 イクサは常に本音をぶつけ、そしてアンナも最後の最後で本音を溢す。


 そして、『レジスタンス』の二大頭領がぶつかり合った。






●●●






「護里さん」



 大量の資料に囲まれるなか、最高本部『グリッター』最高司令官、早乙女 護里に、副官であり右腕である雛菊 楓が声をかける。



「あら、どうしたの?いま一応手が離せない状態なのだけど…」



 護里が小さく驚いたのは、楓が護里の状況を見て声を掛けて良いかどうかの判断を間違えることがないからだ。


 この大量に積み上げられた資料を目にしながらも声を掛けたということは、それに値する情報であることを表していた。



「お忙しいのは重々承知です。ですが、至急お耳に入れるべきかと思いまして」



 普段は四十代半ばに見合った落ち着きを持つ楓だが、この時はどこか落ち着かない様子だった。


 それを悟った護里は、一度ペンを置き、楓の話に耳を傾ける。



「分かったわ。それで、内容は?」

「つい今しがた入った情報ですが、『レジスタンス』の穏健派リーダー、神宮院 アンナと、過激派頭領、皇 イクサ、及びそれぞれの勢力が衝突したと……」

「……それはまた…急な話ね…」



 頭を抱えるようにしながら、護里は大きくため息をこぼす。


 そして思い返されるのはつい昨日の会談での会話であった。



『今回の失態、非は私達にあります。この問題の…皇 イクサとの問題の解決は私達の手でケリをつけます』



 穏健派のリーダーである神宮院 アンナとは、時に協力関係にあることもあり、良く知った仲であった。


 『レジスタンス』と言うと敵対的な存在に思われるが、アンナに関しては言葉で人の心を動かすタイプであり、心から『グリッター』と人の平等な世界を願っていた。


 だからこそ、ケリをつけると口にした時に、護里はアンナがこのような手に出ると想像出来なかったのである。



「(アンナちゃんの行動が予想外なのもあるけれど、それだけじゃ済まないわね。トップ同士のぶつかり合い。それはつまり『レジスタンス』同士の全面戦争を意味するわ。構成員同士がぶつからなくても、どちらかのトップが崩れれば、一気に戦力も傾く。ハッキリ言って国内の情勢が変わると言っても過言では無いわね…)」



 護里は抱えていた頭を上げ、天を仰ぐようにして悩む。



「如何なさいますか?衝突している場所の目星はついています。最高本部(うち)から戦力を派遣して、制止することも可能ですが…」

「そうしたいところだけど、得策じゃないわね。『レジスタンス』同士の戦いに『軍』が介入すれば、世間が『レジスタンス』と関わりを持っているんじゃないかって疑うに決まってる」



 護里は目頭を擦りながら「それに…」と続ける。



「こういった厄介ごとに、上層部の面々が戦力を割く許可を出すわけがないわ。【オリジン】が現れたという情報さえまともに取り合わなかっただから」



 楓は確かに…といった様子で頷く。



「…ですが…結果次第では…」

「分かってるわ。正直なところ、アンナちゃん達穏健派が勝ちさえすれば、『軍』にも世間にもそこまで影響は無いと思う。けれどもし、皇 イクサが勝利することがあれば…」



 そうなれば、『レジスタンス』はその活動を一気に活性化させるだろう。


 穏健派の勢力を傘下に収めれば、その戦力は並の根拠地を優に上回るからだ。


 更に皇 イクサはアンナとは対照的に行動で仲間を惹きつけ引っ張るタイプ。


 影響力だけで言えば、イクサの方が色濃く出る上に、一気に攻勢に出てくる可能性があるからだ。



「まったく…大事な『大輝戦』が間近だって言うのに、予想外に大胆に動いてくれたわねアンナちゃん……」



 護里は珍しく片手で頭を抱えて悩みこむ姿を見せる。



「それでも私達は信じるしか無いわ。アンナちゃんの言葉を…」



 どちらかといえば諦めに近いような口調に、楓も断腸の思いで小さく頷いた。

※後書きです






ども、琥珀です


通算300話越えてるじゃないですか!(今更)


嬉しい反面、物語が思うように進まず、悪戯に混乱させてしまっているような気がして申し訳ないです…


このペースだと、完結は2000話になりそうです…

とにかく無事完結することを祈ります…


本日もお読みいただきありがとうございました!

次回の更新は水曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします!

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