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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
1章 ー朝陽覚醒編ー
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第ニ星:出会い

登場人物紹介


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至っておらず、現在は指揮官の報告官を務めている。戦えないことに引け目を感じている。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。根拠地にいる『グリッター』を束ねる部隊の隊長。責任感が強く、仲間たちから信頼されているが、妹の朝陽が絡むとポンコツ化する。

 姉と別れた朝陽は、今回使用した物資と補給が必要な資材の確認をするために倉庫へと向かっていた。



 『脅威(メナス)』による被害は全国各地に及んでいたが、関東地方の被害は特に酷いものであった。


 中心都市であった東京は真っ先にメナスに襲われたために、その機能をほとんど失ってしまっていた。


 そのため復旧や補給は東京を中心とした主要都市を最優先で行われてきていた。


 完全に普及した現在においてもその風潮は変わらず、千葉の某所にあるこの地には、物資が届くのに時間がかかる状況が続いていた。


 その為減少した物資はいち早く確認し、補充を依頼しなくてはならないのだ。


 今日も朝陽はその現状を確認すべく倉庫を訪れ、扉を開けようとした瞬間のことだった。



「ん?」

「わきゃ!!」



 突然扉が開かれ、中から出てきた人物とぶつかってしまう。


 跳ね返されるようにして廊下に倒れこんでしまった朝陽に、ぶつかってしまった人物はそっと手を差し伸べる。



「ごめんよ、少し考え方をしていたんだ。大丈夫かい?」



 声からして男性であろうか。ただ普段義一から感じている威圧的なものではなく、優しく本心から朝陽のことを心配している声だった。



「い、いえ私こそ思いっきりぶつかってしまって…」



 そこで朝陽は目の前に立つ人物の服装に気がつく。白い軍服姿の青年は、間違いなく『輝く戦士(自分達)』を()()()()()の人物だ。


 見たことのない人物だったが、だからこそ、ここの指揮官、下手をすればそれをも上回る階級かもしれない。


 血の気が引くのを感じながら、朝陽は差し出された手を取ることなく急いで立ち上がる。



「も、申し訳ありません!!私の不注意でした!!」



 背筋を伸ばし姿勢を正す。


 上下関係が出来ているのだからある意味当たり前の動作なのだが、自然とこの動作をしてしまうことが、朝陽は何故か悔しかった。


 しかし、それでも自分がぶつかってしまったのは事実で、その上階級が上の人物だ。


 そういった意味でこの行為は当然のこと…なのだと、朝陽はそう言い聞かせていた。


 男性はしばし差し出した手を出したままポカンとしていたが、やがて手を戻しながら苦笑いを一つ浮かべながら答える。



「はは、そんな畏まらなくて良いよ。そもそも前を見てなかったボクの不注意なんだからね」

「え?あ、はぁ…」



 今度は朝陽が思わずポカンとしてしまった。青年の発言は予想外であったからだ。


 『軍』の上層部は、『グリッター』の管理を訴えているだけあり、それこそ差別意識の固まりだ。


 世間一般の人々よりも『グリッター』を非人間的扱いを行なっている。寧ろ上層部こそが今の時代の『差別』を煽っているのと言えるかもしれない。


 だからこそ、目の前に立つ()()将校の優しい口調が意外で仕方なかった。



「それにしてもあれだね。ここの物資はかなり少ない…というかギリギリでやりくりをしているんだね?」

「は、なにぶん地方なもので、補給物資運搬にも手間暇かかるとのことで、一度に多くは運べない上に、あまり回数も多くないので…」

「ふぅん…回数が多くない、ね」



 そこで朝陽は、目の前の青年の目付きがかなり険しいものになっていることに気がつく。


 そして、自分の今の発言が上層部への不満を告げているように聞こえることにも気が付き、再びサッと血の気が引いていくのを感じた。



「あ、いっいえ!不満があるのではありません!!この資源だけでも私達の根拠地は十二分に活動することが出来ておりますので!!」



 こうした一言一言が根拠地の査定に関わってくる。少しでも悪い点があれば減点という形で何かしらのペナルティが課されるのだ。


 ここは地方の根拠地であり、これ以上マイナスな状況を作り出してしまえば根拠地として成り立たないレベルになってしまう。


 その原因を自分が作り出してしまったともなれば、あの指揮官にどれほど酷い目にあわされるか…そう考えるだけで朝陽の体は震えてしまっていた。



「…ふむ」



 その様子を、青年はどこか怒っているような目で見ていた。ただ不思議と、朝陽はそれが自分に向けられているものではないことに直ぐに気が付いた。



「事前に聞かされてはいたけれど、まさか…ここまでとはね」

「…は?」



 青年の小さな呟きを聞き取れなかった朝陽は思わず聞き返してしまっていた。それに気付いた朝陽はまたハッとしてしまう。


 しかしここも予想に反して、青年は笑顔だった。



「いやいやこっちの話さ。変なことを聞いてしまって悪かったね」

「は、はっ!!い、いえとんでもありません」



 緊張で声が裏返ってしまう失態さえも、青年は笑顔のままで受け止める。



「変なことついでにもう一つ聞いて良いかな?」

「は、私で答えられることでしたら何なりと」



 青年は嬉しそうに頷いた後、近くの窓の外の景色を見ながら尋ねる。



「君は、ここでの生活に…いや、『グリッター』として()()()()()()()()?」

「は…え?いえ、その…それは…」



 朝陽は答えられなかった。


 不満がないわけではない。いや、寧ろ不満しかない。


 けれどそんなことを言えるわけがない。そんなことを言ってしまえば…自分だけでなくここにいる多くの『グリッター』に迷惑をかけてしまう。


 それだけは、なんとしても避けなくてはならない。


 しかし、言葉を出さなくてはいけない口は、何も吐き出すことは出来なかった。



「…や、ごめん。意地悪な質問だったね。今のは忘れてほしい」

「…あ、いや違…今のは肯定ではなく…」



 今の沈黙はまるで青年の問いを肯定しているかのようで気が付き、朝陽は慌てて否定しようとする。


 しかし、青年はそれを遮るようにして同情するような、それでいて心の底から心配するような表情を浮かべ答えた。



「心配しなくて良い。君の言葉を本部や上層部に報告するつもりなんてないし、()()()()()()()()()()()()()()()

「え?」



 青年はもう一度悲哀の笑みを浮かべると、朝陽の後ろへと歩き出す。



「変な質問をしてしまって悪かったね。僕は他にも用があるから、これで失礼するよ」

「え、あ…はっ!!」



 朝陽はもう一度敬礼し、青年を送り出すと、青年は最後まで笑顔のまま手を振り、朝陽に別れを告げた。


 何か毒気を抜かれたような気分になった朝陽は、暫く呆然としたまま青年の背中を見送った。






○○○






 資材物資の確認を終えた朝陽は、報告を終えて休息を取っているはずの姉を探していた。


 姉の夜宵はこの根拠地では随一の実力の持ち主だ。その実力は一等星にも匹敵する。


 等星とは、『グリッター』の『軍』における階級のことである。


 一等星から四等星まで存在し、星の数字が小さいほど階級が上であることを指している。


 本来一等星や二等星レベルにもなれば、こんな辺境には配置されることはまずない。


 現在の都市部となっている東京の最高本部や、第二都市と呼ばれる関西地方に配属されるだろう。


 そう例えば志願するか、若しくは左遷されるようなことが無ければ…


 と、朝陽はそこで廊下の奥から僅かに姉と仲間達の声が聞こえ、そこは走り寄る。



「お姉ちゃ…」

「隊長、大丈夫ですか!?」



 その会話が、決して明るいものでないことに気が付いた朝陽は、思わず身を隠してしまう。



「だ、大丈夫よこのくらい。支障は無いわ」

「でも…」



 どうやら夜宵は怪我をしているようだった。それも声色からしてそれなりの怪我だ。



「(ウソ…だってさっきはお姉ちゃん全然元気で…)」



 夜宵は隠していたのだ。


 考えてみれば朝陽が夜宵に話しかけら時、夜宵は少なくない怪我をしていた。


 その時から、夜宵は怪我の痛みを堪えていたのだろう。暗い面持ちをしていた朝陽(いもうと)を気遣って…



「でも…このままじゃ隊長と言えどもちません!!」

「そうです!今の指揮官は雑な命令ばかりで必要な情報は何一つ伝えない!」

「その癖失態は全て私達のせいだと押し付けて…」

「やっぱり私、指揮官に直談判してきます!!」



 周りにいる夜宵の隊の仲間達からの会話の内容を聞いても、日頃からどれだけ不遇な扱いを受けているのかが分かる。



「止めなさい三咲。掛け合うだけで改善されるならとうにされてるわ」

「隊長…でも!」

「それに、私達が騒ぎを立ててしまえば、他の『グリッター』の人達に迷惑をかけてしまうかもしれないわ。今以上の状況を出してしまうのは避けないと」



 夜宵の言葉に、それでも三咲と呼ばれた女性を始め周囲の仲間達は食い下がろうとした。


 しかし夜宵にそれ以上の剣幕で凄まれ、言葉を紡ぐことが出来ない。



「分かりました…でもとにかく医務室へは行ってください!」

「そうね、このままじゃ戦いに支障がでるものね」

「そうじゃなくて!私達は…!!」

「あはは、分かってるって。心配してくれてありがと。ちゃんと看てもらってくるよ」



 そう言って夜宵はケラケラ笑いながら歩き去っていく。


 しかし、誰一人として見逃さなかった。夜宵が脇腹の痛みを堪えながら、歩いている様子を…

※ここからは作者の後書きです!!興味のない方は読み飛ばして頂いて構いません!!


どうも、琥珀です!!最後までお読みいただきありがとうございます!!


【Eclat Etoileー星に輝く光の物語】第三話でした!!


この物語は1人がずっと主人公というわけではなく、各章毎に主人公が変わるイメージで書いてます(一応主人公、ヒロインは決めてますけどね…)


なので、各話を読み進めていく中で『あ、今はこいつが主人公なんだな』って思いながら読んでいただければ幸いです!!


…まぁその為には、私がどれだけ主人公の魅力を引き立てられるかが求められるんですけどね…笑


次回はまた明日の10時に更新しますので宜しくお願い致します!

それではまた明日!!

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[良い点] 【三点良いところを述べるという企画より】 【良いところ三点】 1*序章では、何が起こったのか分かりやすい流れとなっている。 明確過ぎると通常はネタバレとなってしまうが、この物語では何が原…
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