表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
29/481

第28星:決断

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。並外れた戦闘能力でグリッター達の信頼を集め、彼女達に戦う術を伝える。


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負う。現在は療養中。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士(グリッター)』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。大和方針に反対している。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

 鳴り響く警戒警報を耳にし、大和は即座に面持ちを司令官のソレへと変貌させる。



「きたか…咲夜、報告を」



 警報を耳にした大和は、重苦しい表情で咲夜に尋ねる。



「はい。現在届いている報告ですと、目撃出現情報は旧五井海岸近辺。既に陸上から視認できていることから上陸は防げないかと思われます」

「問題ない。陸路での早期決着をつけ被害を最小限に留める。上陸予測地域には避難勧告を出してくれ」

「了解しました。上陸の可能性のある姉崎、五井、国分寺、市原地区を中心に避難勧告を出します」



 出された情報から、大和は次々と指示を出し、そして咲夜もすぐさま対応していく。



「個体数は?」

「確認します。個体数は……?」



 手元にある端末で情報を確認していた咲耶が、眼に映った情報を見て眉をひそめる。



「どうした、咲夜」



 らしくない沈黙に、大和はすぐさま咲夜に声をかけた。



「いえ…すいません情報が錯綜しているのかハッキリとした数が判明していません」



 返ってきた答えに、大和は考えを張り巡らせる。



「(個体数が判明していない…?数が多すぎてというわけでも無いようだし、そもそも目視は出来ているはず。姿が見えないのならそもそも警戒警報はならない…ならハッキリとしていない理由はなんだ…)」



 大和が考え続けているなか、咲夜はより正確な情報を得るべく、引き続き端末から情報を抽出しようとする。


 しかし、届く情報はまばらで、それでいて報告される個体数もそれぞれバラバラだった。



「どういうこと…まるで観測している場所によって個体数が違うみたい…」



 咲夜が何気なく溢した一言で、大和はハッと気が付く。



「咲夜、ちょっと端末を貸してくれ!!」



 咲夜は言われるがまま持っていた端末を渡すと、大和は届いていた報告をいくつかのファイルに分けていく。



「やはりそうか…」

「何か分かったのですか?」



 操作を終え、机の上で腕を組み、その上に頭を乗せるようにしてうな垂れる。



「先週の一件から疑っていたことがいよいよ本格化してきたということさ」

「…?つまり…?」



 大和の言葉足らずの情報から意味を汲み取れなかった咲夜は、もう一度尋ねる。



「メナス達は間違いなく知性をつけている、って話しさ」



 咲夜は僅かながら目を見開き驚く。


 以前から聞いていた話ではあったが、ここまで確証的に言われたのは初めてだったからだ。



「なぜ…そう思われるのですか…?」

「その話をする前に、朝陽、三咲、椿の3人を呼んできてくれ。そこで知性の話と、今回の作戦を伝える」






●●●






 それから間も無くして、執務室のドアがノックされる。



「朝陽、三咲、椿の3名、到着致しました」



 扉の外から聞こえたのは朝陽の声だ。


 大和は「入ってくれ」と入室を促すと、ゆっくりとドアが開けられ、3人は入室し横に一列に並ぶ。



「分かっているとは思うが、近辺にメナスが出現している」

「勿論分かっています。ですが何故我々をここに?一刻も早く出撃させるべきだと思いますが?」

「弁えなさい、三咲三等星。出撃指示は司令官が判断することです」



 あいも変わらず反抗的な発言を、咲夜が厳しく咎める。


 対して大和はさして気にする様子もなく、しかし少し慌てた様子で話を続ける。



「その通りだが今回はやや事情が異なる。これまで通りの出撃では対応仕切れない可能性があるからだ」

「…?つまりどういうことですか〜?」



 ハッキリとしない内容に、椿が問い詰める。



「つまりはこういうことだ」



 大和は合図し、咲夜が手元の端末から3人のアームに備え付けられたモニターへと資料を送信する。



 送られてきた資料には、メナスを表す赤いビーコンが、近い位置で3つの場所にそれぞれ固まっている様子が見て取れた。


 その資料に目を通し、真っ先に気が付いたのは三咲だった。



「これは…この動きはまさか…」

「流石、良く気が付いたね。そう、メナスは数カ所に別れて出現しているんだ」



 大和に言われて、椿と朝陽の二人もその異変に気が付く。



「これって、つまりメナスが別々の場所を襲うってことですか!?」



 続けて事態を把握した朝陽が大和に確認すると、大和はこれに頷いた。



「その可能性が非常に高い。このデータは各観測所からの報告をまとめたものなんだけど、それぞれ報告された個体数が異なっていたんだ。疑問に思って確認してみたら、こういう状況であることが判明した。そしてこれがその3つの組の進行方向だ」



 3人は食い入るように端末を見つめる。



「やっぱり目的地はバラバラ…完全に狙って行っていますね」

「その通り。メナスはこの行動を狙って行なっているね。つまり…メナスが知性をつけているという事実に他ならない」



 大和の発言に、3人は驚いた表情を浮かべた。



「め、メナスが知性をですか?」

「そう。実際、以前からそのような報告はあげられていたことはあったんだ。ただどの報告にも確たる証拠は無く、可能性程度の認識だったんだけど…」

「今回のこの行動が、確証的な証拠になった…ってわけねぇ〜」



 椿が理解し導いた結論に、大和は頷いた。



「…そう言えば先日の戦闘でも、まるで私達の作戦の裏をかくような行動がありました」

「わ、私との戦闘でも、私の『天照す日輪イノセント・サンシャイン』に対応するみたいな動きがありました!!」



 前回の戦闘で、二人も思い当たることがあることを思い出す。



「うん。ボクもその点は気になっていた。ただそれは、どちらかと言えば、メナスのもつ強い本能によるものである傾向が強いと感じていたんだ。だが、今回は違う。明確な狙いと計画性を持って行動している」



 3人は顔を見合わせ、大和の言葉に賛同する。



「その上で、今回の作戦内容を伝える。今回採る作戦は、()()()()()()()()()()()()



 3人は端末から目を離し、一様に大和を見る。しかし、それもそのはずだ。




「小隊編成による戦闘なんて…いくらなんでも無理です。百歩譲っていずれ実戦するにしても、まだ一度も試していない戦術を結構するのは自殺行為です」



 大和なりに下積みは進めていた。


 しかし現状取り組めたのは互いの能力の把握、そして流動的な少人数メンバーによる訓練のみ。


 とても実戦レベルには至っていない。


 大和もそれを理解していないほどバカではない。


 小隊編成戦闘を行うには未だ不十分であることは重々承知していた。



「ボクも欲を言えば、最低でも一度は正式な小隊編成によるシミュレーション訓練を行っておきたかった。だけど残念ながらこれが戦場だ。いついかなる時も、臨機応変な対応で挑む必要がある」

「ですが…」



 咲夜に弁えろと言われようとも、三咲は引き下がるつもりはなかった。


 対応力にかけるとは言え、それならば今まで通りの部隊編成の方が遥かに効果的だからだ。


 この時ばかりは、中立の椿と大和に賛同する朝陽もやや懐疑的な表情を浮かべていた。


 が、大和も個人の考えに囚われて小隊編成を結構することは考えていない。


 全ては現場のメンバーを知る咲夜との意見交換を取り入れてのものだった。



「実際、実戦で行えるかどうかを咲夜に尋ねてある。これまでの戦闘と訓練、メンバー間の理解やその浸透度…それらの総合的な判断は咲夜に一任してある」



 大和は咲夜に目配せし、代わりに答えるよう促す。咲耶もそれを理解し、代わりに3人に目を向ける。



「答えはイエスです。完成度としては不十分ですが、小隊メンバーの選抜は済んでいますし、今回の規模であれば十分に対応出来ます。」



 咲夜は「但し…」と付け加え、大和を見つめる。



「それらを十分に活かしきれる優秀な司令官がいれば、ですが」

「何も問題はない。状況と戦況を把握して、必ず君達を導く指示を出してみせるよ」



 大和の答えは即答だった。


 一度その指揮を経験しているからか、不思議と3人は大和の言葉に信頼を感じることが出来ていた。



「ですが…」



 それでも、一抹の不安は拭えない。


 大和の方針に対する反感を除いても、やはりなれないスタイルでの戦いによる影響は、不安要素でしかないのだ。


 大和もそれを感じ取り、誠意を見せるため帽子を取り、真っ直ぐと3人を見つめる。



「実戦訓練を行えないままこのような状況になってしまったのは、ボクの司令官としての力不足によるものだ。それに関しては何も言い返せない。ホントに申し訳ない」



 帽子を取ったまま、大和は深々と頭を下げる。


 しかし、頭をあげた時には既に元の司令官としての表情へと戻っていた。



「小隊編成がボク個人が考えている戦術であることを差し引いても…現状、今回のケースに対応するためにはこれしかない。ボクを試す機会でも何でも良い。仮に戦いに勝っても納得することが出来なければ辞任でもなんでもする。だが今この戦いにおいては、必ず君達を生還させ、勝利を呼び込む指示を出すことを約束する。だから、ボクを信じてくれ」



 今度は頭を下げることはしなかった。


 代わりに司令官としての誇りと信念を含んだ力強い瞳で3人を見つめた。



「私は良いよ〜」

「椿!?」



 真っ先に答えたのは、意外にも椿のだった。



「や、小隊編成そのものに賛同する訳じゃないけどなぇ。でも今回の戦闘ではそれが一番効率的だと思うし、一番被害を減らせるとも思うからぁ。だから、賛成かなぁ、って」



 それに賛同するようにして答えたのは朝陽。



「わ、私もそう思います!!今は私達のいざこざよりも、皆の危険を取り除くべきです!!その解決策が小隊編成なら、やるべきですよ!!」



 これで答えを出していないのは三咲のみ。


 しかし、それは最早答えが決まっているようなものだった。



「…分かりました。司令官殿の作戦で参りましょう」



 ホッと安堵の表情を浮かべる一同。しかし三咲は大和に「但し」と付け加えて答える。



「これが最初で最後の機会にしてください、司令官。小隊編成は本当に有効なのか、その指揮をアナタに任せて良いのか…その見極めをこの戦闘でさせて下さい」



 不遜とも取れる態度に、しかし今回は咲夜は何も言わなかった。代わりに大和が力強く頷いて答える。



「分かった。必ず君の…いや、君達の期待に応えてみせるよ」

※ここから先は筆者の後書きになります!!興味のない方はどうぞ読み飛ばして下さい!!






どうも、琥珀です!!

台風ですか…子どもの頃はテンションが上がったものですが、社会人になってからはバカヤロウって感じですね…行けないし、帰れない…辛味ですよ…


まぁそんな事情も踏まえて、皆様台風にはお気をつけ下さいまし笑


【報告】

第7星、第17星、第20星に挿絵を付けました!宜しければ併せてご覧ください!!


本日もお読みくださりありがとうございました!!次回は月曜日の更新になります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ