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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
287/481

第253星:憤怒

斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。



【レジスタンス】

五十嵐 歪(25)

 礼儀正しく誠実で、やや堅苦しい口調ながら気さくな女性。正体は対『軍』組織『レジスタンス』の構成員で、対象の物質を口内に含む事で情報を得る『グリット』を有する。


霧島 カンナ(28)

 ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性。落ち着いた振る舞いで同じメンバーをフォローする包容力を持つ。正体は対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、情報を豊富に有する千葉根拠地襲撃を立案した今回の騒動の主犯者。

 これまで、彼女が怒りの感情を覚えたことがないかと言われれば、それは否と答えざる得ないだろう。


 指揮官からの虐待とも取れる指導、夜宵達に向けられれ差別の眼差し。


 その他にも差異はあれど怒りを覚えたことはある筈だ。


 しかし、思考が真っ白に染まり、言葉にならない程の強烈な怒り。


 いや、最早憎しみとさえ言えるであろう激情の渦に、朝陽の心は支配されていた。


 目の前で襲撃を受けた仲間達への出来事は当然。


 しかしそれ以上に、自分の仲間を仲間と思わない、自爆させる作戦に打って出たカンナの行動が、朝陽の逆鱗に触れた。



「あ…あぁ……」



 朝陽の槍を握る手が、いや、全身が震えていた。


 恐怖ではなく、抑えきれない怒りによって。



「あぁ…あああぁぁぁ!!うああああぁぁぁぁぁ!!!!」



 いつもの明るく人当たりの良い表情の朝陽の面影はそこには無く、ただただ怒りと憎しみに支配された朝陽が叫び、カンナ・歪の両名もとへ突撃していく。


 そこに作戦も考えも何もない。


 冷静さも何もかも失い、ただ爆発した感情に任せて突っ込んでいた。


 当然、そんな直線的な攻撃は、戦闘のベテランである両名には通じず、簡単にいなされる。


 自分でもコントロール出来ないほどの速度で突っ込んだ朝陽は、バランスを崩し転がるが、直ぐに立ち上がり再び二人に突っ込んだ。


 そしてこれこそが二人の狙いであった。


 ついさっきまで、二人には(実質カンナのみだが)二つの選択肢が残されていた。


 一つは爆発を囮にして逃亡を図る作戦。


 大人数ともなるとそれは不可能であったが、二人だけであれば爆破に乗じて姿を眩ます程度、造作もないことだろう。


 もう一つは、まさに今の状況。


 爆発を起爆剤として、根拠地の面々に手傷を負わせ、動揺した隙に一気に奇襲を仕掛ける作戦。


 しかし、実際に後者の作戦を取ったのには二つの理由がある。


 一つは透子と無値の存在。


 作戦を伝えられ実行するだけの末端員ではあるものの、少なからず『レジスタンス』の情報を得ている二人を残しておくのは、些かリスクが高かった。


 特に、()()()()()()()『レジスタンス』の状況を鑑みれば尚のことである。



 そしてもう一つは、プライド。


 幾多の戦場を駆け抜け、生き抜き、そして出し抜いてきたカンナにとって、ここまで完璧な失態を犯したことは無かった。


 失態による罰を受けることを恐れているのではなく、これまで培ってきたことが全て失態に終わったという事実を、カンナのプライドが許すことができなかった。


 そこで打ったのが、この後者の手である。


 育ちの良い『グリッター』であればまず動揺することは必須。


 そしてこれまでの情報から、この根拠地は特に仲間意識が高い。


 その分動揺も強くなり、必然的に隙が生まれるだろう。


 そして朝陽は正にその策略にハマってしまっていた。


 仲間を傷つけられた朝陽の動揺は凄まじく、先程までに見られた洗礼された動きは見る影もなかった。


 カンナは単調になった朝陽の攻撃を的確に捌き、そして返り討ちにしていった。


 更に朝陽の対応をカンナに任せているうちに、歪は中型サイズの『バトル・マシナリー()』を取り出し組み立てる。


 そして、朝陽と同じく動揺して動きを止めていた夜宵と椿に向けて何発も放った。


 二人はハッと我に帰るが時既に遅く、歪の放った弾丸は二人を直撃し、二人は小さくない傷を全身に負ってしまう。



「ハハハハッ!!!!お人好しが過ぎるでありますなぁ!!!!折角押していたのに台無しでありますよ!!」



 致命傷にも至る傷を負わせた歪は、何故か額に汗をかきながらも歪んだ笑みを浮かべていた。


 それを見た朝陽は更に激昂し、痛めつけられまともに動かすことさえ出来ない身体で強引にカンナと歪に襲い掛かった。


 しかし、それが最後の攻撃になった。


 正面から反撃を受け、地面に横たわった朝陽は、カンナの手により拘束された。


 最後の力を振り絞って顕現させていた『光輝く聖槍ブリリアント・ヘレバルデ』もその光を失い、ホロホロと儚く散って消え去った。


 纏っていた衣類も元の軍服へと戻り、輝かんばかりの金糸雀カナリア色へと変化していた髪も、無造作に垂れた元の純黄色へ戻っていた。


 それでも、地べたに押さえ付けられた朝陽は、猛犬のように暴れ回った。



「無様ね。エナジーが切れたことで貴方はもう『グリット』を発動することは出来ない。それに肉体ももう限界のはずよ。いい加減諦めなさい」

「ふざけないで!!貴方達みたいな人達に、私は絶対に屈しない!!」



 顔を地面に押さえ込まれながらも、朝陽は睨むような目付きでカンナを見る。



「甘いわね。戦う敵が『メナス』であろうと人間であろうと、全員が必ず無事に生きて帰れる保証なんて無い。戦場では命を墜とすことの方が多いのよ。仲間がやられたくらいでそんなに取り乱していたら……」

「無事に生きて帰れる人達の命を奪った貴方が!!人の命について語るな!!」



 その時、カンナと歪の二人は、朝陽が怒っている本当の理由を知った。


 朝陽は勿論自分の仲間がやられたことに対して怒っている。


 しかしそれ以上に、仲間(味方)である筈の『レジスタンス』を自らの勝利のために生贄に捧げたことに一番の憤りを覚えていたのだ。



「……は…」



 そのことに気付いたカンナは……



「は、ハハ……ハハハハ!!!!アッハッハッハッハッハッハ!!!!」



 笑った。


 朝陽の言動が心底おかしいような様子で笑い続けた。



「バカだバカだと思っていたけれど、ここまで底なしのバカだとは思わなかったわ。自分だけじゃなく敵の心配までして、その上怒るだなんてね!!」



 滑稽そうに笑うカンナの姿に、朝陽は再び憤りを覚え暴れ回る。


 しかし、笑いこそすれ油断はしていないカンナから逃れることは出来なかった。



「そんな甘ったれた考えで良くこれまで生きてこれたわね貴方。戦場で大切なのはいかに冷酷になれるかよ。勝つために、全てを犠牲にしてもね」

「違う!!戦場で大切なのは()()()()()()!!その為には仲間を想い助け合うことが大切!!()()()()()()()()()()、それが私達『グリッター』の本当の使命なの!!」



 カンナのどこまでも冷たくあしらうような言葉を、朝陽は真っ向から否定した。


 その言葉を聞いた時、小さくない頭痛を覚え表情を歪めていたが、この時カンナはその変化に気付いていなかった。



「あ〜あ〜聞き飽きたわその謳い文句。初代『グリッター』様がご発言されてたとかいうやつね」



 心底気持ちが悪いと言った表情を浮かべ、ベ〜と舌を出す。



「ホント、どいつもこいつもお人好しばかり。最初の『グリッター』は比類無き最強の『グリッター』って言われてるけど、そんなこと言ってるようじゃ本当かどうか怪しいわね。言葉だけが紡がれた伝説の一人歩きなんじゃないかしら」



 もはや朝陽に言葉をは出せる理性は残されていなかった。


 ただただ怒りに支配され暴れ回る姿は、まるで猛獣のようであり、カンナはそれを可笑しそうに見下ろしていた。



「アッハハハハ!!愉快ね!!日頃正義面してる『グリッター』も、化けの皮が剥がれればこれが正体よ!!」



 笑い、見下し、罵る活き活きとした姿に、カンナの本性が表れているようだった。



「でも安心なさい。それもこれも全て、『グリッター』を否定し蔑む()()()達が悪いのよ!!私達『グリッター』が上に立ち、人間全てを管理する正しい世界を作り出すことで、私達は真の進化を遂げることが出来るのよ!!そうすれば、貴方達も劣等感に苛まれることはないわ」



 グイッと顔だけを持ち上げ、カンナは朝陽に自分の顔を近づける。



「さぁ、敗北を認めなさい。私達『レジスタンス』の前にね…」



 周囲を見渡せば、全員がボロボロの姿で倒れる姿が見てとれた。


 倒れ込み動かない様子から、全員が重症であることがわかる。


 その姿に、朝陽の心はどんどんと深く沈み込み……



「私は……私達は屈しない……」



 そして再び輝きを灯した。



「私達は支え、支えられて戦い生き抜いてきた!!そしてその大切さを教えてくれた人がいる!!例えそれが甘い考えだと言われようと!!私達は、私達が歩んできた道と信念を信じ通してみせる!!」



 折れることなく、怒りを混じえながらも、朝陽は最後の最後で自分自身を取り戻し、誇りを添えて叫んだ。



「人を……仲間を大切にしないような貴方の言葉なんかに私は絶対に賛同しない!!貴方の言葉なんかで、私達の信念は曲げられない!!最後まで、立ち向かって見せる!!生きるために!!」





()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()






※後書きです






ども、琥珀です


ゲームというのは自由気ままにやるのが売りだと思います。


RPG系のゲームなんかは特にそうだと思います。


でも昨今オンラインでのゲームが増えていく中で、大人数でプレーするものも増えてきました。


そうなってくると、悲しいかな、社会と同じような環境が出来上がって来るんですよね。


集合時間や出席、報連相などなど。


ただこれらはで一般常識であるため、ある意味で出来て当然のことではあるんですよね。


同時にゲームは趣味でやる方が大半なので、それらを強制するのもまた少し違うのかなとも感じています。


この辺りの線引きは難しいですが、ゲームにも社会性を求める時代が来てるんだなと思う琥珀なのでした。


本日もお読みいただきありがとうございました!

次回は水曜日更新予定ですので宜しくお願いします!

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