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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
284/481

第250星:良いわけがない

斑鳩 朝陽(18)四等星

 千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。


霧島 カンナ(28)

 ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性。落ち着いた振る舞いで同じメンバーをフォローする包容力を持つ。正体は対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、情報を豊富に有する千葉根拠地襲撃を立案した今回の騒動の主犯者。

「殺された…?一体どういう…?」

「…そうね、純粋な貴方に教えてあげるわ。この世界は、貴方が思う以上に残酷であることをね」



 それまで常に笑みを浮かべていたカンナは、初めて怒りの表情を浮かべたまま語り始めた。



「私の父と母は『グリッター』だったわ。それも『軍』所属のね」



 予想外の事実に、朝陽は言葉が出ずに驚く。



「『軍』のなかでもそれなりに優秀だったそうよ。何せ、総勢1千人程掛けた大掛かりな作戦の最前線に配置されたそうだから」

「…それって…」



 その作戦に、朝陽は一つの心当たりがあった。


 カンナが戦い始めたのは八歳の頃、今から2()0()()()のことである。



 つまり、その頃の時代には、今の『悪厄災(マリス・ディザスター)』『エデン』の一つ前、『アイドス・キュエネ』が現れた頃である。


 『軍』所属の『グリッター』であり、それ程大規模な作戦を展開するとなれば、恐らく対象はまず間違いなく『悪厄災(マリス・ディザスター)』だろう。



「名誉なことだと思うわ。素直にね。でも悲劇はそのあと起きたのよ」



 カンナの纏う怒気が、より一層強くなる。



「優勢と思われた戦況は一気にひっくり返され、前線では大きな被害が出たわ。当然、私の両親もね」



 それも、話に聞いていた通りの内容である。その戦いは、最終的な結果として勝利、否痛み分けに終わる。


 が、朝陽が知っているのはそこまでであった。



「当然、『軍』は負傷者が出た時の備えを用意していたわ。けれど、その被害は予想を遥かに上回る規模だった」



 ギュッ…と、カンナは拳を握りしめる。



「『軍』は外部の医療機関…つまりは一般人が利用する医療機関に緊急措置として受け入れを依頼したわ。そして医療機関はそれを受け入れた。()()()()()()

「表面的に…?」



 朝陽のその反応は予想通りだったのだろう、カンナは皮肉な笑みを浮かべた。



「依頼した医療機関が受け入れたのは、ほんのごく一部。それもそこまで治療を必要としないような軽症者ばかりだったのよ」

「……ッ!」



 あり得る…朝陽はそう思ってしまった。


 ただでさえ強く根付いている『グリッター』への差別意識。


 その上更に面倒な怪我人を受け入れるとなれば、抵抗感はますます強くなるだろう。



「『軍』の設備の医療機関で優先されたのは命の危機に瀕した人達。私の父と母は、そこまでの状態じゃ無かったわ。()()()()()

「…それは…どう言う…」



 本当は、聞かずとも分かっていた。


 それでも、怖くても、聞かずにはいられなかった。目を背けてはいけないと思った。



「両親は確かに命の危機には瀕していなかった。けれどそれは、直ぐに適切な処理を受けていたらな話よ!!」



 そしてその答えは、朝陽の思った通りのものであった。



「両親は治療さえ受けていれば助かった!!受け入れてさえくれていれば生きていた!!でも死んだのよ!!『グリッター』であるせいで!!誰からも手を差し伸べられずにね!!」



 残酷な世界。


 それはカンナの言う通りであった。


 朝陽が見て感じて来た世界は、まだ言葉だけの世界でしか無かった。


 カンナの放つ言葉が、圧が、そして経験して来た叫びが、その真実をより強く表していた。



「私は憎んだわ。『軍』を…いえ、この世界を!!だから『レジスタンス』に入ったのよ。『レジスタンス』なら、『グリッター』という存在を有るべき正しい姿へと変えてくれると確信したから!!」



 カンナの過去は、ただただカンナに敵対心を向けていた朝陽の心にも、強く響いていた。


 その時の立場が自分であったなら、果たしてカンナの行動を拒絶できただろうか。


 カンナの想いを、否定することが出来ただろうか。


 その答えは出てこなかった。


 何故なら自分は、霧島 カンナではないから。



「私の…私達の母は、『軍』人として戦って死んだそうです」



 朝陽が語りかけ返して来たことに、カンナは眉を顰め訝しげに見つめる。



「私を産んだ時、タイミング悪く『メナス』が襲撃してきて、直ぐそばにいた母は、動けるはずの無い身体に鞭打ち、無理をして戦いに挑み、そして死んだそうです」



 これは、夜宵から聞かされた話であり、その夜宵もまた、別の人物から聞かされた話である。



「母は死に、そしてその近くにいた人々は救われました。私はそんな母の行動を誇りに思います」



 ギッ…とカンナの朝陽を睨む目付きが鋭くなる。



「…えぇそうね。そういう輩もいるでしょうよ。私の両親もそうだったんでしょうから」



 そんなカンナに対して、朝陽は悲痛な面持ちで話を続けた。



「父は……母が『グリッター』であることを知って間も無く、姿を消したそうです。ちょうど私を…妊娠した時だったそうです」



 僅かに、カンナの見る目が変わる。怒りや憎しみのなかに、ほんの僅かに憐憫の感情が混ざる。



「そうよ。所詮『グリッター』とそうでは無いものの壁は取り払えないのよ。それが、今の世界の理なのよ!!」

()()()()()()()()()()



 朝陽に向けられていた憐憫の眼差しは一瞬で消え去り、カンナは再び鋭い目つきで朝陽を睨みつけた。



「確かに……私は父の行動を良く思っていません。でも母は、私達を捨てた父と同じ人々を命懸けで救いました!!差別だけじゃない、去られたことでもっと心を痛めていた筈なのに、母はそれを乗り越え、そして最後まで『グリッター』としての使命を果たしました!!」

「それが何だと言うの!?例えその行動が誇り高くとも、その過程の根底には全て『差別』が存在してる!!そんな世界に生まれついて、貴方はそのままで良いと言うの!?」



 感情的になるカンナとは対照的に、朝陽は冷静さを取り戻していった。



()()()()()()()

「ッ!」



 予想とは違う答えに、カンナが言葉に詰まる。



「私だって、世界を変えたい。『グリッター』が世界の脅威なんかじゃないってことを知ってもらいたい!!」

「だから!!その役割を私達『レジスタンス』が担って…!!」

「人を…同じ『グリッター』を恐怖で抑え込むようなやり方をする貴方達が、正しい世界を創れるとも思えない!!」



 ギリリッ!とカンナの口から歯が軋むほど力強く噛む音が聞こえてくる。



「正しい世界の変え方なんて私は知らない。正しい世界の変え方なんて、無いのかもしれない。けど、仲間さえ大切にしない貴方達のやり方を、私は絶対に認めない!!」

「この…!!何も知らないガキが……!!」

「ガキであろうと、甘ちゃんと呼ばれようと構わない!!貴方達が無値ちゃんや透子ちゃん達にしたことは絶対に許さない!!」



 カンナの琴線に触れたのであろう、先程までの様子とは打って変わって、完全な戦闘狂と成って、カンナは再び朝陽に詰め寄った。


 しかし、激情的な言葉とは裏腹に、冷静さを取り戻した朝陽は、カンナが近付くまでの間に咲夜との模擬戦を思い出していた。



「意識を一つの動作に向けない…」



 朝陽の反応可能な攻撃を超えた速度の攻撃が繰り出され、朝陽は転倒する。



「無理に起き上がらなくて良い、追撃を警戒して、まずは一連の攻撃を防ぐッ!!」



 倒れ込んだ朝陽に攻撃を仕掛けるが、予めそれを予測していた朝陽はこれを回避。


 思わぬ形で攻撃を防がれたカンナは一瞬動揺し、そして朝陽はその隙を見逃さなかった。


 動きが止まった瞬間を狙い、腹部に蹴りを入れ込む。



「グフッ!?」



 蹴り込みを入れられたカンナは後方へ弾き飛ばされ、朝陽もその勢いを利用して身体を反転、起き上がらせた。



「この……どこまでも…しつこい!!」

「ハァ…ハァ…負けられない…私は絶対に!!」



 戦況はやはり朝陽が劣勢。


 エナジーの使い過ぎで体力もすり減り、呼吸も乱れている。


 まともな技を発動することさえ難しいだろう。


 それでも朝陽は……



「『レジスタンス』である貴方にじゃない。復讐することでしか世界を変えられないと考える貴方には、絶対に負けられない!!」



 腹部を抑えながら、カンナはギッ!と朝陽を睨みつける。



「分からずやが!!ならどうやってこの腐敗した世界を変えられるか言ってみなさいよ!!」





『ボクが変えてみせるさ』

※後書きです







ども、琥珀です

喘息というのは思っていたよりも辛いものですね


咳だけならともかく、酷くなると呼吸が乱れる乱れる…


脳に酸素がいかないから上手く頭も回らなくなる上に体調も悪くなる…


こういった持病からは、早く解放されたいものです…


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は水曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願い致します。

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