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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
2章 ー小隊編成編ー
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第27星:来襲

国舘 大和(24)

再び根拠地に現れた青年。『軍』関東総司令部より『特級』の階級を与えられ、新司令官として正式に根拠地に着任した。右腕でもある咲夜とともに早速指揮にとりかかり、朝陽の『グリット』覚醒を促した。新しい環境で新しいことに挑もうとするが…?


咲夜(24?)

常に大和についている黒長髪の美女。一度は必ずしも目を奪われる美貌の持ち主で、礼儀正しい。落ち着いたただ振る舞いからは信じられい圧力を放つことも。司令官である大和を補佐する。自身が『グリッター』であることを隠そうとするが…?


斑鳩 朝陽(18)

千葉根拠地に所属する少女。『グリッター』としての力を秘めているが、開花に至たらないまま戦場に立ったが、大和の言葉により、『天照す日輪イノセント・サンシャイン』を覚醒させ、仲間の命を救った。


斑鳩夜宵(22)

千葉根拠地に所属する女性。所属している根拠地における『グリッター』達を束ねる部隊の隊長。実力さながら面倒見の良い性格で、仲間からの信頼は厚い。戦場に現れた妹の朝陽の危険にいち早く勘付き重傷を負った。


樹神 三咲 (22)

千葉支部所属。夜宵の率いる『輝く戦士グリッター』部隊の副隊長を務めている。生真面目な性格で、少し緩い隊長に変わって隊を締める右腕。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を見渡す。


佐久間 椿(22)

千葉支部所属。夜宵率いる『グリッター』部隊メンバー。包囲陣形の時には後方隊の指揮を任せられる。洞察力に優れ、物体を還元して透明な罠を作る『グリット』を効率よく扱う。おっとりした口調が特徴。

「「「おはようございます、司令官!!!!」」」

「あ、あぁうん…おはよう、みんな…」



 着任してから一週間目の朝。


 通りすがりざまに早朝の訓練を訪れた大和は、予想外だにしなかった挨拶に、珍しく戸惑っていた。


 それもそのはずで、ほんの数日前までは自分はどこか敬遠されていたのだから。


 それが今、目の前では、全員が姿勢を正し敬礼をしている。


 これには流石の大和も戸惑わざるを得ないだろう。


 当然、この変化を起こしたのは咲夜だ。


 この一週間でほぼ全ての『グリッター』達から畏敬の念を集めていたのだ。


 そして、その咲夜が崇拝している人物なのだから…といった経緯で、彼女達も大和に対し一定の敬意を持つようになっていったのである。


 大和も自分自身が信頼されている訳ではないことに直ぐに気が付いたが、それ以上にこの短期間でここまで信頼を得た咲夜に驚くばかりだった。



「いや流石だね、咲夜。まさかこんな短時間でこれだけ支持を得るとは…」



 執務室へ向かう途中、早朝訓練を切り上げて付いて来た咲夜に、良い意味での苦笑いを浮かべながらそっと呟く。


 咲夜はキョトンとしながらも、同じく直ぐに笑みを浮かべ答えた。



「いいえ、全ては大和の助言あってのことです。『素直な想い』を伝える、それが彼女達からの信頼を得ることに繋がったのだと思います」

「そうか…力になれたのなら良かった。けど、どんな思いをぶつけたんだい?」



 大和の言葉に、咲夜は僅かな躊躇いを見せた後、ゆっくりと口を開いた。



()()()()()()()()()()()()()()()…私自身はそういう想いをぶつけました。誰にも助けを求めず、溜め込んで、そして死を迎える…そんな思いを、彼女達にはしてほしくない。だから、自分だけはなく、彼女達にも素直な想いをぶつけて欲しい…そう考え、話し合ってきました」



 「ですから…」と咲夜は暗い面持ちで続ける。



「私が得たのは支持はなく、同情なのかもしれませんね」



 そう言って咲夜はどこか悲しそうな笑みを浮かべ、彼女の過去を知る大和もまた、その表情に心を痛める。


 それでも、大和が選んだ言葉は慰めではなく、励ましの言葉だった。



「同情だけで彼女達がああも素直になるものか。彼女達は君の想いを感じ取り、共感したからこそ君が信頼に足る人物だと感じたんだ。そして今の姿がある」



 大和は咲夜の瞳を真っすぐ捉え、語り続ける。



「同じ思いをして欲しくない、そう思えること自体が君の優しさなんだ。だから…咲夜自身が前を向いて進むこと、それが彼女達を守ることにきっと繋がる。君自身がその想いを無下にしちゃだめだ」

「…そうですね。ありがとうございます、大和」



 咲夜の答えに大和は僅かに微笑み、ゆっくりと歩を進めた。






●          ●          ●






「そう言えば、気になっていたことがあるのですが…」



 執務室に着き、椅子に座った大和にお茶を差し出しながら、咲夜は自分の疑問を大和に伝える。



「ん?なんだい?」

「大和は、ここに着任される前から部隊の縮小化…つまり小隊編成化を考えていられたのですよね?でしたら、大和や私への反感を拭い去ってから説明された方が、スムーズにことを運ぶことが出来たのではないでしょうか?」

「ふむ…」



 大和は差し出されたお茶を一口含む。一言「美味しい」とだけお礼を伝え、湯呑を卓上に置く。



「確かに、小隊編成という面だけで考えればその方が合理的で効率的だったろう。現に咲夜が彼女達からの信頼を集められている現状をみれば間違いなく、ね。実際、ボクもここに来るまでは同じことを考えていたよ」

「でしたら…」

「だけどね咲夜、彼女達の目には、『(ボク)』という存在は懐疑と不信にしか映っていなかったんだよ。彼女達が見ていたのは『軍』人としての大和。誰もボク自身を見ようとはしていなかった」



 大和は言いながら、初めてここを訪れた時のことを思い出す。


 枯渇した資源、繰り返される差別、自意識に刷り込まれた兵器意識…予め聞かされていた大和も、流石に愕然としていた。



 行く先で出会ったグリッター達も、目は合わせても自分を見ていなかった。


 『軍』の人間など皆同じだと、諦めと恐怖にも似た面持ちでこちらを見ていたのだ。



「その時、思ったんだ。都合の良い言葉で彼女達の信用を得るのは簡単だ。けれどそれでは、彼女達自身と向き合うことは出来ない、とね」

「ですが…反感を買うような言動でなくとも宜しかったのではないですか?」

「ボクとしては特段反感を買うような言葉を発したつもりはなかったんだけどね。ただ、予想以上に彼女達の『軍』への不満が強かった。結果的に彼女達が最も反応したのがその部分だったからね、そこを利用したのさ」

「大和自身を、見て貰うために…ですか?」



 咲夜の答えに、大和は小さく頷く。



「良い関係からだけが良好な関係を築き上げるわけじゃない。ましてやここでは他の根拠地よりも質が悪い環境だったからね。良い顔して作り上げた関係は、きっと表面上のものだけだと思った。だから仕掛けた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…そのような損な役割を…何も司令官である大和が背負わなくても宜しかったのではないですか?事前にお伝え下れば私でも…」



 大和が自ら犠牲になってしまったことに不服に思い、また直ぐにその事に気付かなかった自分への怒りを込めて咲夜は答える。



「万が一が起きた時、君は()()()()()()()()()()()。けれどボクは()立てない。その時、信頼関係が必要なのは現場に立つ君だ。それに君には彼女達を訓練する役割を担って貰っている。そんな君にこの役割を押し付けるわけにはいかない」



 理解はできる、けれど納得は出来ない。


 そんな複雑な心境を抱えながらも、咲夜は大和に言い返すことは出来なかった。



「まぁでも、正直なところもう少し穏便にやれたかなと反省しているよ。彼女達の本心を引き出すにしても、もっと良いやり方があっただろう、ってね。司令官として着任したばかりで、ボクも少し焦っていたみたいだ」

「あ、では大和も一度彼女達と組手をされてはどうでしょう?私と同じで実戦のなかから信頼を得られるかもしれませんよ?」

「いや、それは遠慮しておくよ。グリットの能力を持たないボクが挑んでもボコボコにされるだけだし…それに」

「…?それに?」



 大和はもう一度お茶を啜り、苦笑いをしながら答える。



「組手でセクハラになって左遷されたくないからね」






●         ●         ●






「結局、この一週間は何の動きもなかったねぇ。小隊化の話はどうなったんだろ~」



 時刻は昼時。午前帯の業務を終えた朝陽は、三咲、椿の二人と昼食を摂っていた。



「さぁ?結局やったのは互いの能力の把握と、適当なメンバー間での編成訓練だけ。やっぱり信頼の置けない人なんじゃなんですかね?」



 三咲が手に持つスプーンをクルクル回しながら言うと、朝陽は思わず席を立つ勢いで反論する。



「そ、そんなことないですよ!!司令官さんは信頼できるお方です!!」



 その行動に驚くことなく、三咲は朝陽を見つめ言い返す。



「じゃあどうして何もしないし言ってこないの?」

「そ、それは…し、司令官さんには他にも仕事があるから…」



 ハッキリとした答えを返すことが出来ず言い篭る朝陽。


 自分の発言で雰囲気を悪くしてしまったことに責任を感じてか、椿が「まぁまぁ…」と割って入る。



「はいはい~今のは私が悪かったから、二人とも落ち着こうねぇ」



 二人も直ぐに言い過ぎたことに気が付き、互いに頭を下げて謝罪をする。


 話題を切り替えるべく、椿が次の話を振る。



「小隊編成のこともそうだけどぉ、最近『メナス』の出現情報も聞かないよね~」

「確かに…この間のような襲撃は兎も角として、小規模な目撃情報とかなら毎日来てもおかしくないはずだけど…」



 メナスの個体数は、人類の現在の人口の3分の2にも及ぶと言われている。


 ただ一定数にまで及ぶと分裂の速度が低下し、増加が止まることと確認されている。


 もしこの変化速度が変わっていれば、とっくに地球は制圧されていただろう。


 それでもこの個体数。


 通常であるのならば何かしらの報告があってもおかしくない。いや、寧ろ報告がないことがおかしいのである。



「何か…嫌な沈黙ですよね…まるで戦力を蓄えているみたいな…」

「寧ろ逆かもねぇ。この間の戦闘で30体も一気に攻めて来たじゃない~?それでここら近辺のメナスはある程度の数が減って……」





【警戒警報!!警戒警報!!近辺にメナスの反応有り!!近辺にメナスの反応有り!!グリッターは至急戦闘配置へ!!繰り返す!!グリッターは至急戦闘配置へ!!】





「…なかったわねぇ…」

「たかが30、されど30.私達の戦いが無駄じゃなかったと思いたいわね…」

「そ、そんなことよりも戦闘準備に入らないと!!行きましょう!!」



 朝陽に背中を押される形で、二人も移動を開始する。



 そして当然、この警報は執務室にいる二人の耳にも届いていた。


※ここからは筆者の後書きになります!興味の無い方はどうぞ読み飛ばして下さい!!





どうも、琥珀です!!

実は先程まで、「皆様、本は読まれますか?私は小説を書くことが趣味で…」みたいなことをこの後書きに書いていました。


いや、ここに、投稿している時点で知ってるちゅうねんっていう話ですよ笑


なんだか寝ぼけてたんですかね…笑


本日もお読みくださりありがとうございました!

次回の更新は金曜日になります!!

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