表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
279/481

第245星:攻略

樹神 三咲 (22) 四等星

千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務め、今戦闘では後衛部隊の隊長も務める。


【朝陽小隊】

譲羽 梓月(23

 冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。


久留 華 (22)

 おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。


曲山 奏(20)

明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。


【三咲小隊】

椎名 紬 (22)

 ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。


八条 凛 (16)

 自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。


大刀祢 タチ (17)

 メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。

「『カルネマッサ』の()は流動的ですが、限定的です」



 朝陽を送り出した後、三咲は『カルネマッサ』から距離を保ちつつ、一同に攻略方法を説明し始める。



「流動的で…限定的?それはいささか矛盾してないかい、三咲さん」



 紬だけでなく、他の面々も言葉の意味を理解できていないような様子で三咲の方を見ていた。



「流動的、というのはそのまんまです。あの肉塊の至る所から、レーザーを放てる『メナス』の目が現れる。ここまでは良いですね?」



 三咲の言葉に、全員が頷く。



「限定的、と言うのは、現れる箇所にパターンがあるということです」

「パターン…?つまり、目の現れる場所は特定の動きしかしていないということですか?」



 梓月の説明に、今度は三咲が頷く。



「これまで『カルネマッサ』の全体を見通して、そのパターンを覚えてきました。まず間違いありません」



 この短時間の戦闘の中で、しかもこの未知の生命体を相手に、そこまで冷静に分析していたことに、一同は思わず感心してしまう。



「それじゃあ〜、私の作戦も十分に決行可能ってことだねぇ」



 華が微笑みながら話すも、三咲の表情は笑っていなかった。



()()()()()()()()。ですがこの短時間で全てを把握した、とは言い切れません。もっと全方位、様々な角度から検証できれば把握できるでしょうが…」



 三咲の懸念はその点であった。


 三咲は『カルネマッサ』のかなりのパターンを把握しているが、それでも相手は元は『メナス』とはいえ未知の存在。


 全てを把握したと言うことは出来ないだろう。そして、その不足部分を補うためには…



「成る程。では我々がその不足部分を補えば良いと言うことですね」



 三咲が言う前に、タチがその考えを代弁する。



「……そうです。私が把握しきれず、且つ予想外の位置からの攻撃に対応するために、皆さんが華さんの盾になって欲しいんです」



 既に『カルネマッサ』を倒す手段については、全員に伝えられていた。


 作戦の要は小隊の目となる三咲、そして唯一仕留めることが可能性を持つ()()()()



「パターンは読めても攻撃速度は言わずもがな。更には不規則です。私の指示があっても回避は難しいでしょう。ですから…」

「華さんが辿り着くまでの間、私達が盾になれば良いってわけね!簡単じゃない!」



 三咲が言い辛そうにしていたことを、凛は自信満々な表情で答える。



「……私は指示を出すために『グリット』の発動に注力しなくてはなりません。ですから、盾としての役割は担えません。皆さんを死地に送り出すような作戦を私は…」

「でもぉ、根底の話は私が考えたことだしぃ」

「三咲さんはそれを実現可能なところにまで持ってきて下さいました!!次は我々の番!!それだけです!!」



 暗い面持ちで呟く三咲に対し、華は優しく、奏は明るく答えた。



「本来であれば私一人で華さんをお送りしたいところですが、どうやらあの『カルネマッサ』の攻撃は一撃も強化されている様子!!私のエナジー量では少しばかりキツイです!!皆さんのご尽力をば!!」

「とは言え万が一の事態に備えて数人後方組を残しておくべきだと思います。梓月さんは後衛でも『グリット』で『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』を操れますし、()()()()()()()()()紬さんも後衛に残るべきかと」



 奏が自身の状態と協力を仰ぐと、次いでタチか冷静にセーフティプランを建てていく。



「そうなると、私、凛、奏さんが前衛となり華さんを守りながら『カルネマッサ』へ接近。梓月さんには隙間のサポートをお願いし、三咲さんと紬さんには全体のサポートとなる指示を。これが理想ですね」



 タチの纏めた陣営に、それぞれが頷く。



「じゃあ私と三咲さんの『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』は前衛組に預けておこう。梓月さんは今のうちに何枚か操れるようにしておいて欲しい」

「もうしてあります。私の分と、皆さんの手持ちの一枚ずつを操れるようにしてあります」



 見れば梓月の持ち分のものと、それぞれの『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』の一枚が淡く輝いていた。



「さっきまでの威力を考えれば、恐らく『耐熱反射鏡ゲトゥルト・シュピーゲル』が耐えられるのは一発か二発。持ち分が無くなれば直ぐに撤退をして下さい」

「ある程度まで近づければ私の『グリット』で曲げながら華さんをサポート出来ます!!撤退分の反射鏡の確保も忘れずに!!」



 作戦の詳細を詰めていく、用意を終えた一同の視線は、今もゆっくりと陸地に向かっていく『カルネマッサ』へ、そして陸地で僅かに上がる黒煙に向けられていた。


 黒煙が出ている場所は恐らく千葉根拠地。


 全員が小さな不安を覚えながらも、その意識は再び『カルネマッサ』へと向けられていた。



「私達は私達がすべきことを…!!なんとしても『カルネマッサ』の侵攻を止め、陸地の安全を確保します!!ですが忘れないでください!!命を懸けることが私達の戦いではありません!!私達の使命は!!」

「「「生きるために立ち向かう!!!!」」」



 その言葉を合図に前衛組が前へ、そしてその後を追うように華が突き進んでいった。


 そして後方では三咲が『グリット』を発動し、更には紬が三咲と視線を交わし、その視界を共有する。


 そして同じく後方組として、梓月が直ぐに防御に移れるよう、『グリット』の発動態勢に入っていた。


 『カルネマッサ』との戦いは、いよいよ終局に入っていった。






●●●






 千葉根拠地は奇襲を受けながらも、ここまでは完璧と言って良いほどの対応力を見せていた。


 予想を遥かに下回る混乱具合に、カンナ達『レジスタンス』が想定外に苦戦を強いられているのは必然と言えるだろう。


 更に予想外なのは、想像以上に侵攻が進んでいないこと。


 計画では、自分(カンナ)達が主力となる『グリッター』を抑えている間に、別働隊の戦闘員達が周囲を攻め込み占拠している筈であった。


 実質、根拠地内外部を占拠してしまえば機能は半減、否実質無効化し、更には人質を捕らえ、戦闘を行わずに勝利を掴むことさえ可能だと考えていた。



「(…おかしいわ…外部施設の占拠に向かわせた別働隊からの通信が途絶えた。『主戦力(グリッター)』はここに集まっている筈だし、奇襲を悟られないように通信機器を含めたシステムもダウンさせた…)」



 カンナは手首につけられた小型のモニターを見る。そこには複雑な表示がされながら、一箇所に75%という数字が表示されていた。



「(ダウンさせたシステムがもう8割近く復旧させられてる。復旧スピードは想定内だけど、発見までの速さが予想外だったわね。まさかこんなに早く動力源の()()に気づかれるなんて…)」



 計画が上手く進まず、カンナの内心には焦りが見え始めていた。



「(事前情報と、ここに来てからの諜報活動で十分に計画を遂行できると踏んでいたけれど、私が甘かったわ)」



 その苛立ちが自分のミスから生み出されていることを素直に認め、カンナは冷静さを取り戻していく。



「(あの司令官達さえいなければ、根拠地は脆く崩れるなんて思っていたけれどとんでもない。自分達で考え動き、成すべきことを成す…これが千葉根拠地の本当の強さなのね)」



 しかし既に計画は遂行されている。予想外、想定外の事態が続こうとも、既に後戻りは出来ない状況であることを、カンナは理解していた。



「(まだ私達の方が若干優勢。それに透子も無値の二人の()()()()()()()()()、一気に戦況を覆せる)」



 朝陽の方へ逸らしていた視線を戻し、前に立つ二人へと目を向ける。



「(それにこの二人の情報なら十分にある。この主力戦さえ制せば、実質勝利は私達のもの)」



 情報と状況をまとめ上げ、カンナは戦況を冷静に見つめる。



「(気になるのは『カルネマッサ』とかいう化け物と対峙してるもう一個の主力組…朝陽が戻ってきたということは、彼女達も戻ってきている…?別動隊から連絡が途絶えたのはそれが原因…?)」



 一つの推測を立てたあと、カンナは首を横に振った。



「(…恐らく違う。それならもう一人か二人はここに加勢して良い筈だし、そもそもアレを見る限りこんな短時間で解決出来るような敵じゃなかったわ。だとすると、朝陽が帰ってきたのは、恐らく個人のみ)」



 戦況は変化したものの、状況が劣勢になったわけではないと判断したカンナは、再び敵意を夜宵達へと向けた。



「…思っていたより時間がないわ。こっちの戦闘を早く片付けるわよ」

「カンナ殿が戦闘中に長考するということは、どうやらそのようでありますな。そいじゃ、急がず慌てず、それでいて手早く終わらせるでありますか」



 そういう歪の表情を、カンナは疑うような眼差しで見ていた。



「(…怪しい動きはない。けれど、どこか戦闘がぎこちない。顔色も悪い。能力酷使のリスクは承知の上で、体力消耗を考慮して日を空けた。にも関わらずこのコンディション…何か別の理由が……)」



 その時、カンナは一つの考えに至るが、一度それを捨て去る。



「(そう結論つけるのはまだ早いわね。それに万が一そうなったら……)」



 カンナは瞳から光を消し、冷めた目つきで歪を見つめ、こう心の内で呟いた。



「(()()()()()()()()()()()())」

※本日の後書きはお休みさせていただきます







本日もお読みいただきありがとうございました。

次回は金曜日の朝を予定しておりますので宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ