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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第243星:消姿

最後まで信じ、そして二人はそれを断ち切った


朝陽も覚悟を決め、二人と対峙する…

 朝陽の『グリット』発動と同時に、透子・無値の二人は再び姿を消した。


 気配もまるで感じない。これにより、先程までの正体不明の攻撃が二人によるものである事を示していた。



「(私の『障壁(オレオール)』で攻撃の手を止めたってことは、透明化しても物理的な攻撃は当たるってこと。だから私の『フリューゲル』を広域に展開して、広範囲に攻撃を続ければ、高確率で当てられる筈…でも…)」



 朝陽は槍を構えながら、今にも乱れそうになる呼吸を悟られないように整える。



「(『カルネマッサ』に放った攻撃で大半のエナジーを使っちゃったから、正直それだけの規模の攻撃を繰り出し続ける程の余力は、今の私にはない…)」



 朝陽のエナジーこマックス値から計算すると、残されたエナジーは1/3の程。


 元々のエナジー量が多く、また自分が生み出した光のだけでなく、自然光をも操ることが可能であるため、消費燃費も良い朝陽の『グリット』ではあるが、それを差し引いても、先程の攻撃で使用したエナジー量は膨大であった。



「(【オリジン】と戦い終わった後の感覚に似てる。何だか全身が無気力になっていくような感覚。でもあの時は目が覚めていきなりそう感じたけど、今回は少しずつ力が抜けていくように感じる)」



 状況は決して良く無いが、自分の状態を掴めているという点においては、今の朝陽にはプラスに働いていた。



「(大技は使用しない。まずは二人の動きの特性と能力を見極める…!!)」



 そう考えた朝陽は、それまで身体の腰に中心点を置いた構えから形を変え、槍を身体の前で縦に構えるような形へと変えていった。


 構え方が変わったというだけで、朝陽が放っていた圧の質が変わる。


 先程までのヒリつくような攻撃的な圧とは違い、静かで、それでいて威圧するようなプレッシャーを放っていた。



「(…踏み込んで来るような様子はありません。私達の攻撃が来るのを待っているようです。それならば敢えて彼女を狙わないと言う手もあります)」



 声は発さず、無値達専用の通信機を介して、無値は透子に考えを伝える。



「(た、たたた多分朝陽さんはそこまで考えてると思う。朝陽さんと他の人達との距離は、そそそそんなに離れてない。これで私達が仮に他の人を攻撃したとしても…)」

「(彼女の攻撃……いえ、射程範囲、ということですか)」



 そう考えれば、朝陽以外のメンバーを狙うのは、自分達の場所を教えるだけであり、デメリットの方が大きくなる。


 そう考えた無値は考えを改め、標的を朝陽だけに絞る事を決める。



「(やむを得ません。出来うる限り隠しておくようにとの指示でしたが、この状況ではカンナ様も許してくれるでしょう)」

「(……!じゃ、じゃじゃじゃじゃあ、使うんだね、無値の『グリット』を…)」



 姿は見えないが、透子は無値が頷いた気配を感じ取っていた。


 二人が姿を消し、朝陽が構えを変えてから一分程が経とうとしていた。


 依然、朝陽はその場から動く様子はない。


 一種の不気味さを感じながらも、痺れを切らしたように動いたのは透子達であった。


 透子の『グリット』は『存在隠蔽ヴァニタス・ハイディング』。


 簡単に言えば姿を消すことの出来る『グリット』であるが、特徴的なのは姿のみならず気配も消すことが可能な点である。


 いわば存在そのものを消すようなものであり、どれだけ熟練した『グリッター』であろうと、『グリット』を発動した透子を捉えることは不可能だろう。


 加えて強力なのが、透子に触れたモノも能力の対象となる点である。


 これにより、無値も透子の能力の恩恵を受けて姿を晦ますことが出来ていたのである。



「(姿…だけじゃない。気配もない。だから動きを機敏に察知する海音ちゃんや、自然の声が聞こえる優弦ちゃんでも対応が出来なかったんだ)」



 瞬時に透子の『グリット』を理解した朝陽は、()()()()()()()


 瞼を閉じ、ただただ意識だけを自分の周囲に張り巡らせた。


 変化はそれだけに留まらず、朝陽の周囲には、僅かに目視できるような薄い(オーラ)が漂っていた。


 予想していなかった朝陽の行動と、謎の光に戸惑いながらも、二人は動きを合わせて朝陽に近寄る。


 朝陽が二人の動きに気付いてる様子はない。


 そして距離は縮まり、攻撃を担っていた無値が拳を振るった瞬間────



「────ッガッ!?」



 直前まで全く動きを見せていなかった朝陽が、見えも感じもしなかった筈の無値の攻撃を避け、更には縦に構えていた槍を手首で回転させ、石突の部分を無値に直撃させたのだ。


 攻撃が直撃し、透子と離れてしまった無値が倒れ込みながら姿を表す。



「…くっ…ツッ…何故、私の動きが…姿も気配も感じることは出来なかった筈です」



 朝陽は目を閉じたまま、再びもとの姿勢に戻ったあと、無値の言葉に応えた。



「確かに二人の姿も気配も感じ取れなかったよ。でもそれは能力を発動した瞬間に分かった。だから私は目を閉じた」

「……?」



 答えているようで答えになっていない内容に、無値は眉を顰める。



「二人の気配は確かに感じられなかった。でも他の気配なら感じられる。風の乱れ、大地を蹴る音…そういった気配なら感じられると思ったんだ」



 朝陽が繰り出した答えに、二人は思わず固唾を飲む。


 今までこのペアで幾度と()()をこなしてきたが、このようなやり方で対処されたのは初めてであったからだ。


 驚くべきはそれだけでなく、対応の速さ。


 状況を理解しつつ、目の前で『グリット』を発動しただけでその対応策を考えついていたのだ。


 無論、これまでの朝陽であればこうはいかなかっただろう。


 これは全て、咲耶との訓練の賜物である。


 実戦的に向けた戦闘の経験が、朝陽の判断力と見解力を高め、瞬時に対応策を考えつかせていたのである。



「(それだけじゃない…あの朝陽さんから出てる謎の(オーラ)…あれが私達以外の気配を察知するための力を強化させている)」



 咲耶との訓練で培われたきたものがもう一つ、この戦いでも働いていた。


 それは『グリット』、正確にはそれに使用するエナジーを巧みに操る力である。


 朝陽は気配の察知だけでは対応に不十分だと判断し、自身の周りに光のオーラを纏わせた。


 これにより、外的気配を感じ取りながら、無値の攻撃がオーラに触れたことでその気配を感じ取り、攻撃を回避した上でより素早く反撃に転じることが出来たのである。


 これは朝陽の『グリット』でなくとも可能な技ではあるが、エナジーを逃さず自身の周囲に展開させるのは高等技術であり、ここにもその成果が出たと言えるだろう。



「(出来た…!先生との修行の成果、ちゃんと出てる!)」



 朝陽の行動はほとんどぶっつけ本番であったが、それを自ら考え実施できる程に朝陽は成長していた。



「…ッ!」



 間も無くして無値は再び姿を消した。


 離れていた透子が近寄り、再び触れたことで姿を消したのだ。


 いきなり二人の必勝法が破れたとはいえ、まだ有効ではないと見切るには早いと判断したのだろう。


 そしてそれは朝陽にとっても望んでいた展開でもあった。



「(見破られたと思って姿を見せてくれた方がまだやり易かった…流石に一回見切っただけじゃ戦い方を変えてはくれないよね)」



 ここまでの一連の流れは朝陽が予想していた通りの展開であったことに間違いはない。


 しかし、今通じた手が二度通じるとは限らない。


 更に決して今の手が必ずしも毎回有効であるともいえない。



「(今のは二人が油断してたのと、私の中でのタイミングが合ってたから反撃できた。でも二人が攻撃に捻りを加えられたら、多分直ぐには対応出来ない)」



 自分が未だ劣勢であるという状況を理解しながらも、朝陽は冷静だった。



「(対応されたら、対応する。その手を止めた時が敗北の時。先生との訓練を思い出して、瞬間瞬間で対応していくんだ。大丈夫、私ならできる!)」



 咲耶との訓練を経て自信を身につけた朝陽は、再び姿を消した二人に怯むことなく、再び意識を集中させていった。

※後書きはお休みさせていただきます

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