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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第242星:互いの使命

その光、友を救いに、いま舞い戻らん

「『日光の輪(オレオール)』」



 朝陽が夜宵と椿の小隊達と合流すると、すぐさま攻撃を仕掛ける。


 朝陽が技名を叫ぶと、槍の先端を浮遊していた矛が展開され、刃の先端が上を向くような形で一同の周囲に高速回転していく。


 刃には光のエナジーが込められており、高速回転を続ける刃は、やがて朝陽達を守るようなエネルギーの障壁を作り出していた。


 これにより、これまで攻撃を仕掛けてきていた『レジスタンス』の面々は勿論、正体不明の攻撃も朝陽達に届くことは無くなった。



「朝陽「さんッ!?」



 朝陽が根拠地に現れていたことには気付いていたが、まさかこちらの援護に加わると思っていなかった一同は、驚きを露わにする。



「来るのが遅くなっちゃってごめんなさい!ここからは私も戦列に加わります!」



 意気揚々と槍を構える朝陽であったが、七は僅かに困惑した表情で朝陽を見ていた。



「そりゃ願ってもない話だけどさ…私達の方で良いの?夜宵さんと椿さんを助けた方が…」

「その辺りはもう話をつけてあります。私がお願いしてこっちに回らせてもらうようお願いしたんです」



 その言葉に反応したのは言葉であった。



「どういうこと?こっちの方が劣勢に見えたってこと?確かに正体不明の攻撃と相手の数に苦戦はしてるけど、ハッキリと負けるってほどじゃないと思うわ」



 朝陽の発言から、自分達が力不足だと言う風に思われていると勘違いした言葉の口調はややキツめであった。



「その気になれば時間を稼ぐ戦い方も出来るし、いざとなればこの目に見える『レジスタンス』と差し違えるくらいはわけないわ。それなら貴方には夜宵さん達の方へ回ってもらった方が…」

「違うんです。そうじゃないんです」



 言葉の言葉を遮るように、朝陽は首を横に振って答えた。



「そうじゃないって…じゃあ一体どういう……」



 言葉のこぼすような言葉に、朝陽は悲しげな表情を浮かべ、やがてゆっくりと『障壁(オレオール)』を解除した。


 構えていた槍もゆっくりと矛先を下ろし、そして表情と同じく悲しげな声で呟いた。



「……そこにいるんですよね、()()()()()()()()()()



 朝陽の言葉に、暫く反応は無かった。


 しかしやがて、誰もいなかった筈の場所から、まるで蜃気楼のようにユラユラと蠢きながら、無値、そして透子の二人が姿を現した。



「……ど、どどどどうして、分かったんですか…」



 怯えの中に交わる疑問と悲しみ。知られたく無かったという思いが、朝陽には伝わってきていた。



「どうしてだろう…分からない。でも分かったんだ。二人が目の前にいるって。二人が、根拠地に戻ってきてるって」



 朝陽の言葉に嘘はなく、なんの確証も無く、直感的に二人がここにいると感じていた。


 確証は無くとも、謎の確信と自信があった。そして、その直感は当たっていた。



「……気配まで消してたのに…、こ、ここここんな簡単に見つかっちゃうなんて…は、ははは初めてです…」



 言葉の内容とは裏腹に、透子に驚いた様子は無かった。


 透子自身も、朝陽が目の前に現れた瞬間、自分がここにいる事を見抜かれている、という事実を感じ取っていたからだ。


 『グリット』を解除し、素直に姿を現したのもそのためであった。


 そして、姿を現した二人の姿を見て、朝陽は再び表情を曇らせた。



「本当…なんですね。本当に…二人は『レジスタンス』で…」

「はい、当初よりこの根拠地襲撃を目的として潜入しました」



 躊躇いながらも、まだ僅かな希望を持とうとしていた朝陽の言葉を、無値はバッサリ切り捨てた。



「貴方がここに来ることは計画外でした。ですが、大きな支障はありません。私達の手で貴方を葬り去れば、却ってこの作戦の遂行がスムーズになります」



 朝陽の悲痛な面持ちに触れさえもせず、無値は淡々と『レジスタンス』としての使命を述べ続けた。



「貴方が私達を前にして躊躇いを見せるのであれば好都合です。私達に対して矛を向けることが出来ないのであればそこを動かないでください。一瞬で楽にして差し上げます」



 どこまでも冷たく、どこまでも無比な言葉に、朝陽の心は益々悲しみに明け暮れる。


 しかしそれと同時に、それまでなりを潜めていた闘志がフツフツと煮えたぎり、槍を掴む手に力が入っていった。



「…確かに私は、二人を前にして…二人の正体を聞いて驚いてるし、悲しんでます」



 朝陽は「でも…」と呟き槍を握り直しながら続けた。



「それでも…ううん、()()()()私は、私自身の使命を果たすよ。この根拠地の為に戦い続けてきた皆のために、この根拠地を守ってきてくれた司令官達のために。その為なら、私はこの槍を貴方達に向けることができる」



 悲しみと、それ以上の覚悟をその瞳に宿して、朝陽は槍を構えた。


 槍を向けられた瞬間、透子はビクッと肩を揺らす。


 その恐怖を和らげるように、無値が透子の前に立った。



「無値……」

「戦いましょう、透子。それが私達の役割。()()としての使命です」



 その時、その言葉を聞いた瞬間、透子は気付いた。


 いつものような機械的な反応、表情。しかしそれらは全て、取り繕われているものだという事に。



「無値……」



 しかし、透子はそれを口にはしなかった。


 自分自身が抱えている苦悩。それと同じような葛藤を、無値も抱えているのだと感じ取ったからだ。



「う、うん…た、たたた戦おう無値。私達の……使命のために……」



 口調は変わらず怯えたまま。しかしその声色は、先程までとは異なり強いものであった。



「…皆さんは周りの『レジスタンス』をお願いします。私は、あの二人と戦います」

「え!?一人であの二人と!?姿を消せるんすよ!?せめて誰かもう一人くらい……」



 伊与が驚きつつも朝陽に進言するが、朝陽はこれに首を横に振った。



「ううん、それじゃダメなの。あの二人とは…私が一人で向き合わなくちゃいけない。それが、あの二人に対しての責任だと思うから」



 朝陽の言葉を理解できたものはいなかった。


 それでも、朝陽の言葉に芯があることを察した一同は、それ以上朝陽の言動を遮るようなことはしなかった。


 そして小隊のメンバー達は朝陽から離れると、障壁が消えたことで再び近寄ってきた『レジスタンス』の戦闘員と対峙し始める。



「朝陽ちゃんは心配だけど、これで私達はこっちの戦闘に集中出来るね」

「そうね。いつでも朝陽ちゃんを援護できるように、一刻も早く蹴散らしましょう」



 七と言葉の言う通り、朝陽が無値と透子の二人を引き受けたことで、戦況は大幅に七達に傾いていた。


 数の劣勢と、戦闘補具(バトル・マシナリー)による補助はあるが、それでも能力を自在に操れる『グリッター』の前では、敗北も時間の問題だろう。


 それを察してか、『レジスタンス』の戦闘員も先程までの勢いはないように見えた。


 根拠地の戦況を揺るがす三つ巴の戦いが、ここに始まった……






●●●






 根拠地への被害は、少しずつでありながらも広がりつつあった。


 この戦闘には、対『グリッター』を想定した戦闘員の他に、通常の戦闘員も組み込まれていた。


 その標的は科学班や技術班など、戦闘能力を有さない人物達の拉致、また抹殺である。


 『カルネマッサ』の対応のため外部へ出た二つの小隊と、内部の襲撃に対応する為に繰り出された二つの小隊、即ち主要戦闘員が根拠地中央、又は外にいるため、その外部では通常の戦闘員達が移動しながら占領を図っていた。



「…ちっ、野郎どもの人影一つねぇぜ。逃げ足の速いやつだ」



 銃を携えた一人の厳つい男性が、苛立った様子で舌打ちをする。


 男性の言う通り、侵入してから15分が経過した今も、人一人見つけることが出来ずにいた。


 これは各部署の迅速な判断が功を奏していた。


 危険を察し、素早くシェルターへの退避を指示していたリナ、敵が少しずつ侵攻してきている事を察知し、迅速な避難を開始した寧花。


 そして科学班の班長である瑞樹も同様に、シェルターへの避難を指示しており、ここまで人的被害が無いのは、彼女達の賜物と言えるだろう。



「…おい、アレを見ろよ」



 その時、別の男性が顎で集団の視線を集める。その視線の先には一つの建築物があった。



「なんだありゃ。学校か?」

「みたいだな。『グリッター』の養成学校みたいなもんだろ」



 その時、数十人はいるであろう集団は、ニタリと一斉に笑みを浮かべた。



「つーことはだ、あそこにはガキ達が怯えながら隠れてるってわけだ」

「あぁ間違いねぇ。隠れるっつっても校内に限られてるだろうからな」

「ヒヒッ!ガキどもが大好きなかくれんぼ、ってわけだな」



 そして戦闘員の集団は、手に持っていた銃を構え、内部への侵入のために建物へと近寄っていった。



「うっ!?」



 その時、後方にいた一人の男性が呻き声をあげると、突如その場に倒れた。



「お、おいどうしッ……」



 それに気づいた別の男性が駆け寄ろうとした瞬間、今度は呻き声すらあげずにその場に倒れ込んだ。



「な、なんだ!?狙撃か!?」

「周囲を警戒しろ!!円陣を組め!!場所を特定しろ!!」



 残った戦闘員達は、全方位を見渡せるように円陣を作る。


 その中央にスッ…と音もなく一つの影が姿を現し、クルリと鋭く一回転する。


 すると、円陣を組んでいた戦闘員全員が、その場に崩れていった。



「うふふ、困りますよ?私の大事な生徒に手を出されては」



 戦闘員達を仕留めた人物、()() ()()は、いつものように温和な笑みを浮かべながら、意識を失った戦闘員達に語りかける。



「ご心配なく。命は取りませんよ〜。大和くんもそれは望んで無いでしょうし、沙雪ちゃんも悲しむでしょうからね」



 誰の耳にも届いていないであろうが、それでも寧花はまるで教鞭を奮うかのように戦闘員達に話し続ける。



「でも目が覚めてまたお痛をされても困りますから、あまりしたくは無いですが拘束させていただきますね」



 すると寧花は、目に見えないほどの速さで手を振るうと、次の瞬間、バラバラに倒れていた戦闘員達が野太いワイヤーのような紐で漏れなく拘束されていた。



「とりあえずこんなところでしょうか。被害は出ずに済みそうですね」



 表情を変える事なくその光景を見届けた寧花は、時折響き渡る戦闘音が聞こえる根拠地の方へと目を向けた。



「…この戦いは、貴方達にとって一つの試練になるかも知れませんね」



 憂いを帯びたその表情は、かつて教師として弁を振るった人物としての顔つきであった。



「ですが、貴方達なら乗り越えることが出来るはず。ひとりでは無理でも、支えて助け合える仲間がいるから。だから、頑張って。先生も応援してるわ」



 それだけ言い残し、寧花は再び姿を消したのであった…

※後書きです







ども、琥珀です


毎回毎回長い登場人物紹介だとめんどくさいかな、と思い、今回は短めの文を書いてみました


そう言えば以前あとがきで、私は咲夜を咲耶が正しいと書いてしまった(かもしれない)のです…


お休みいただいている間に自分の設定メモをしっかり確認してきました。

結果、キチンと意味を込めて、『咲夜』が正しいことが判明しました。


改めて、彼女は『咲夜』です。宜しくお願いします←


本日もお読みいただきありがとうございました!

次回は金曜日に更新予定ですので宜しくお願いします!

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