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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第239星:局所での戦い

日下部 リナ(24)

千葉根拠地の技術班班長を務める女性。開発よりも改善・改造を好み、バトル・マシナリーを『グリッター』のために改造している。技術力は確かなもので信頼も厚い。職人としては大人しい性格だが、意見はハッキリと伝える強さも備えている。


蓮水はすみ 寧花しずか(?)

千葉根拠地、訓練養成所の教官を務める女性。小柄でどこか幼さい外見をしているが、落ち着いた口調と大らかな雰囲気で生徒達を優しく導く。大和だけでなく、沙雪とも顔見知りで有り、相当顔の効く人物であるようだが…?

「は、ははは班長!!すぐ近くで銃撃音が鳴り響いてますよッ!?」



 夜宵達が戦闘を繰り広げるなか、その裏ではもう一つの攻防が繰り広げられていた。


 根拠地の心臓部分とも呼べる機関室である。


 その最深部にあたる室内で、二人の人物が籠っていた。



「そんなの分かってるって。だから急いでるんでしょ。ていうか、危険だと思うなら手を動かしてよリーチ君」



 そのうちの一人、技術班班長の日下部 リナは、カタカタと高速で端末を操作しながら、その後方にいる男性に不満げに呟いた。



「や、やってますよぉ!!でもこんな状況で作業なんて…ていうかリーチじゃなくて利一(としかず)ですッ!!」



 泣き声をあげながらも必死に作業しているのは、技術班の人員である男性、寿 利一である。



「もぉ〜、泣き言言うくらいならなんで着いてきたのさ」



 端末から目を離し、今の半泣きで作業を続ける利一に声をかける。



「だってこんな危険なところに班長一人残せるわけないじゃないですか〜!」



 利一の言葉に暫くポカンとした表情を浮かべたリナだったが、やがて可笑しそうに笑みを浮かべる。



「アンタ、気が弱そうに見えて芯はしっかりしてるよね。通信障害(この事態)に気付いて真っ先に動こうとしたのもアンタだったし」



 いまリナ達が危険を冒してまで機関室にいるのは、根拠地のシステムがジャックされていることが分かったからである。


 そして、その事に真っ先に気付いたのが、利一であった。


 それと同時に『レジスタンス』が根拠地を襲撃。


 根拠地のシステムがまともに作動していない現状は危険と判断し、リナは班長として人員を手動で作動するシェルターへ避難するように命令していた。


 その実、リナは単身でこのシステムジャックの解決のために、単身で機関室へ向かおうとしていた。


 その時、その意図を察した利一が泣きべそをかきながらリナの後を追いかけ、そして今に至っている。



「ほら、しっかりしな!根拠地のシステムを切ってた機能はもう直ぐ解除できるんだから!」

「は、はいぃ!!」



 姉御気質のあるリナに背中を叩かれ、利一は作業に取り掛かる。


 その姿をちょっと頼もしさを感じながら、リナも再び端末の操作に戻る。



「(待っててくださいね司令官、いま助けますから)」



 作業を続けながら、恐らくいま幽閉状態にあるであろう大和に想いを馳せる。



「(そんでもって、根拠地のことは宜しくねみんな!私達も私達に出来ることで戦うから!)」



 そして、今も襲撃している『レジスタンス』と戦闘しているであろう『グリッター』、そして準戦闘員達にも、心の中で声援を送り続けていた。






●●●







「はい、皆さん落ち着いて下さいね。訓練通りに避難すれば大丈夫ですからね」



 根拠地の司令室のある建物から少し離れた場所に位置する訓練校舎。


 そこでは、まだ年端もいかない『グリッター』の子供達が、小柄な教官である蓮水 寧花(はすみ しずか)の指示のもと、避難を始めていた。



「うぅ〜先生ぇ〜、私達どうなるのぉ〜?」



 そのうちの一人、まだ拙さが残る少女が寧花に泣きながら抱きついてくる。


 寧花はそれを豊満な胸で優しく抱きしめ、少女をあやす。



「大丈夫ですよ、何も心配いりません。今もこの根拠地の皆さんが皆を守るために戦ってくれていますし、いざとなれば先生が命をかけて皆を守ります」

「う〜…でもそれじゃあ先生が死んじゃうよ〜」



 胸から顔を出し、少女は泣き顔を向ける。



「あらあら、自分じゃなくて先生の心配をしてくれるなんて、とっても優しい子ですね。きっと立派な『グリッター』になれますよ」



 よしよし、とその少女の頭を撫でると、寧花はそっと少女を立たせる。



「大丈夫ですよ、先生はそんな簡単に死んじゃったりしません。でも、そうですね。少しでもそうならないように、まずは皆がしっかりと避難してくれたら、先生も安心です。だから先ずは、皆と一緒に避難をしましょう」



 寧花の言葉を聞いた少女は、涙をグシグシと拭いた後、力強い瞳で頷き、避難場所へと走り去っていった。


 その少女がしっかりと去っていったのを笑顔で見届けた後、寧花は僅かに聞こえてくる銃撃音のする方へと目を向ける。



「音はまだ遠い…でも確実に近づいて来ているようですね」



 非常事態時のために大和から渡されていた通信機を手に取るも、聞こえてくるのはノイズのみであり、それがいまの状況を物語っていた。



「この計画的な行動と、統率の取れた動きは…恐らく『レジスタンス』ですね。この襲撃の前にも警報があったところを鑑みるに、恐らく『メナス』の襲撃もあった筈…大和くんが後手を踏むのも無理はないですね」



 ほんの僅かな情報から、今とこれまでの状況を把握した寧花は、そっと目につけていたメガネを外し、胸元にしまう。



「根拠地と『メナス』のことは、大和くんと皆に任せれば大丈夫でしょう。怪我人が出ても、沙雪ちゃんがいれば安心できる」



 そして、ゆっくりと銃声のする方へ目を向ける。


 その目は、先程までの人当たりの良い優しい眼差しではなく、戦士のように鋭く、そして子を守る母のように強い圧を纏っていた。



「ですから、私はここを死守します。可愛い生徒達には指一本…いえ、視界にすらいれさせません」



 教官ではなく戦士のような振る舞いで、蓮水 寧花が訓練校舎の前に立ち塞がる。






●●●






「…!し、司令官!まだほんの僅かですが、根拠地のシステムが復旧しました!」



 電気系統まで遮断され、薄暗くなっていた司令室に、小さな電気が点灯し出す。



「これは…補助電源が戻ったのか。この短時間で良くも…これはリナ君のおかげかな?」



 『レジスタンス』の襲撃からまだ15分と経っていない状況ながら、根拠地のメンバーは既に異常事態を察し行動を開始していた。



「ボクが指示を出さなくても自ら考えて動く。みんな本当に優秀だよ」



 大和が感慨深そうに笑みを浮かべると、珍しく夕がこれに反応した。



「そ、それはちがいます司令官」

「え?」



 首を振って否定する夕の言葉に驚きながら、大和が聞き返す。



「み、皆さんは確かに優秀です。きっと本部に行っても活躍できる人は沢山いると思います」



 大和もそれには同意見だった。


 戦闘員である『グリッター』はもちろんのこと、技術班班長の日下部 リナ、科学班班長の一ヶ瀬 瑞樹、医師の市原 沙雪も、本来であれば根拠地という枠組みに収まるような才能の持ち主ではない。


 それこそ、最高本部でも十分に名を馳せることは可能な程だろう。


 それが、根拠地に留まっているのは、沙雪のように理由を持つ者もいるが、それ以上にこれまで正当に評価されて来なかったからである。


 だからこそ、その才能を遺憾無く発揮しているこの状況に、大和は感動を覚えていたが、夕は違うようであった。



「で、でも、その才能を、惜しみなく、そして恐れずに発揮できるのは、司令官が来てくださったからです」

「…!」



 夕は少しオドオドしながらも、それでも力強く続けた。



「司令官が着任なされなければ、私達はきっと今も小さい籠に囚われた鳥だったと思います。その籠から解き放ち、自由と自信を与えてくれたのは司令官です」

「夕くん…」

「私達が、指示がなくても一体感をもって事に当たれているのは、司令官という存在が有るからです。皆が司令官を慕い、信頼しているからこそ、自分達にできることに全力を注ぐことが出来ているんです」



 およそ十歳の少女が放つ言葉とは思えない発言に、しかし大和は自分の心が強く奮い立っているのを感じていた。



「私達は、司令官について行きます。どこまでも、どんな道であっても。その為に、全力を尽くします。だから司令官…どうか、どうか…!この窮地を…!!みんなのことを!!」



 次第に緊張感が高まってきてしまったのか、自分の発言を整理できなくなったところで、大和は夕の頭を優しく撫でた。



「ありがとう、夕くん。君の言葉はボクの心に強く響いて届いたよ」



 ワシワシと撫でられ、夕は落ち着きを取り戻し、心地良さそうな表情を浮かべる。



「彼女達の成長を見て、ボクは少しだけ達成感に浸っていたよ。でも、これはまだ過程に過ぎない。この根拠地はまだまだ成長できるし、それを促すのはボクの役目だ」



 少しずつ普及しつつある根拠地の機能を目にしながら、大和はその目に闘志を燃やしていく。



「根拠地がシステムを取り戻したら、そこから怒涛の反撃を見せてみせるさ。千葉根拠地の司令官としてね」



 そして大和は、振り返ることなく、今も司令室の出入り口に立つ咲耶に声をかける。



「今回は根拠地内の戦闘だ。だから外部に情報が漏れる可能性はかなり低い」



 そして、目だけを咲耶に向け、力強く言葉をかけた。



「暴れてもらうぞ、咲耶」

「はい、根拠地に踏み入ったことを、後悔させて見せます」



 そして咲耶も、大和の言葉に答えるように、静かに、しかし重く力強く答えた。


 その瞳は、感情を必死に抑えながらも闘志をむき出しにした野獣のようであった。

※後書きです






ども、琥珀です。


正直なところ、以前よりはっきりと書くスピードが遅くなっている自覚があります…


一時のペースは良くとも、少し書くと頭がボーっとして、指が止まってしまいます…


自覚するとやはり悲しいものがありますね…


でも、アイディアが出てくる感触は変わらずのままだったので、そこは不幸中の幸いでしょうか笑


出来うる限り今のペースを続けていきたいと思いますので、引き続き宜しくお願い致します!

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