第238星:不透明な襲撃
国舘 大和(24)
千葉根拠地の司令官として配属された青年。右腕でもある咲夜とともに指揮をとりつつ、根拠地内の環境面、戦術面、待遇面の改善にも取り組み続け、『グリッター』達からの信頼を勝ち得た。実は関東総司令官という立場であるが、それを隠している。
早乙女 咲夜(24?)
常に大和に付き従う黒長髪の美女。一度は誰しも目を奪われる美貌の持ち主。落ち着いた振る舞いながら、時に優しく、時に厳しく『グリッター』を導く。その正体は100年前に現れた伝説の原初の『グリッター』本人であり、最強の戦士。
斑鳩 朝陽(18)四等星
千葉根拠地に所属する少女。自分に自信が持てない面もあるが、明るく純心。大和と出会い『グリッター』として覚醒。以降急速に成長を続け、戦果を上げ続ける。力不足を痛感し、咲夜に弟子入りを志願する。
【朝陽小隊】
譲羽 梓月(23)
冷静で優しいお姉さん。物事を達観気味に多角的に捉えるベテラン。物体を操る『グリット』を持つ。
久留 華 (22)
おっとりで実は大食いキャラも、人見が良い。経験豊富なベテラン。物体を圧縮する『グリット』を持つ。
曲山 奏(20)
明るく元気で爽やかな性格。真面目な性格ながら物事の核心をつく慧眼の持ち主。物体を屈折させる『グリット』を持つ。
斑鳩夜宵(22)三等星
千葉根拠地に所属する女性。実力もさながら面倒見の良い性格で仲間からの信頼は厚いが、妹の朝陽には弱い。自身の『グリット』の強大さに悩みを抱えている。現在は夜宵小隊の小隊長を務める。その身には謎の人物の心が潜んでいるようだが…?
【夜宵小隊】
私市 伊与 (19)
年齢関係なく他者を慕う後輩系『グリッター』。近接戦闘を得意とする。自身の肉体の動きを加減速する『グリット』を持つ。
早鞆 瑠衣 (18)
十代には見えない落ち着きを持つ、お嬢様系『グリッター』。支援を得意とする。人体・物体を強化する『グリット』を持つ。
矢々 優弦 (16) 四等星
幼少期を山で過ごし、『グリット』無しでも強い戦闘力を発揮する。自然の声を聞くことができる。自然の声を聞き取る『グリット』を持つ。
佐久間 椿(22) 四等星
千葉根拠地所属。洞察力に優れ、トラップを作る『グリット』を扱う。元『アウトロー』であり、一時『アウトロー』としての自分が蘇るも三咲とのやり取りで再び『グリッター』としての姿を取り戻す。『椿小隊』の隊長を務める。
【椿小隊】
写沢 七 (21)
写真を撮るのが大好きで、同時に仲間のことをよく観察し、僅かに変化に気遣うことができる。物体をコピーする『グリット』を持つ。
重袮 言葉 (20)
活発で女の子が大好きでいつもセクハラまがいの行いをするが、時折その表情に影を落とすことがある…幻覚・幻視・催眠の『グリット』を操る。
海藤 海音 (16)
誰に対しても物事をハッキリ言う性格だが、仲間のために行動する優しい心の持ち主。僅かな機微から動きを直感的に読み取る『グリット』を持つ。
樹神 三咲 (22) 四等星
千葉根拠地所属。生真面目な性格な反面融通が利かないことも。戦場全体を見渡せる『グリット』で戦況を冷静に判断、指揮する。当初は大和方針に反対していたが和解し、現在は『三咲小隊』隊長を務める。
【三咲小隊】
椎名 紬 (22)
ややキザッたい口調だが、経験も多く冷静な女性。相手と視線を合わせることで、相手の視界を共有する『グリット』を持つ。
八条 凛 (16)
自信家で勝気な性格だが実際は素直で純粋な性格。自身の『エナジー』を纏わせ、その物体を操る『グリット』を持つ。
大刀祢 タチ (17)
メナス襲撃後も密かに残った武家の家系で、礼儀を重んじる。根拠地の少ない常識者。攻撃した動線上に『エナジー』を残し攻撃する『グリット』を持つ。
【レジスタンス】
五十嵐 歪(25)
礼儀正しく誠実で、やや堅苦しい口調ながら気さくな女性。正体は対『軍』組織『レジスタンス』の構成員で、対象の物質を口内に含む事で情報を得る『グリット』を有する。
霧島 カンナ(28)
ミステリアスな雰囲気を醸し出す女性。落ち着いた振る舞いで同じメンバーをフォローする包容力を持つ。正体は対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、情報を豊富に有する千葉根拠地襲撃を立案した今回の騒動の主犯者。
無値(14)
無感情・無機質な反応の少女。歪、カンナの命令に忠実に従う。その正体は対『軍』組織『レジスタンス』の一員で、兵器として育てられた戦闘員。これまで感情を見せることは無かったが、朝陽の言葉を聞いて僅かに心境に変化があり…?
日浦 透子(16)
常に何かに怯えているような様子の少女。歪、カンナに従う。その正体は対『軍』組織『レジスタンス』の一員。カンナ達の教育で恐怖を植え付けられ、『グリッター』は恐れられる存在でしかないと思い込んでいたが…?
戦況は拮抗していた。
数の上では『レジスタンス』が勝るものの、個の能力は肉体が強化された『グリッター』が勝る。
更に『グリッター』には通常は備わっていない特殊な能力を持っている。
純粋な戦闘において、戦闘員であっても通常の人間である彼らが、『グリッター』達に勝てる要素は無いのである。
「くっ…!!」
がしかし予想外に苦戦を強いられていたのは夜宵達の方であった。
『レジスタンス』は、本来夜宵達の十八番である連携を駆使し、その本来の実力を発揮させないように立ち回っていたのである。
「この…ッ!!」
局面を打開しようと、海音が前に出ようとするが、それを見越していたかのように『レジスタンス』は後退。
更には距離を詰められないように牽制射撃まで繰り出していた。
「あーもう戦い辛い!!動きは読めても直接仕掛けてくるわけじゃないから避けることしか出来ない…!」
距離を取った海音は悔しげな表情を浮かべ、『レジスタンス』を睨みつける。
「無駄でありますよぉ。おたくらの能力は直接、または間接的に全部知ってるでありますからして」
歪はこのメンバーの中では椿と言葉こ能力については得ることができていない。
しかし、他のメンバーの記憶や情報から不完全ながら読み取り、そこから行動を推測していた。
夜宵達が知らされていた歪の能力は、対象の動きを把握し分析するというもの。
今回の行動から見るに、元より正しい能力を伝えるはずも無いが、その詳細はやはり異なるものであった。
「(この分だと、カンナさんの触れた相手の動きを止める、っていう能力説明も虚偽である可能性は高いよね〜)」
見たところ、歪、カンナの二人は小隊のメンバーに手を出す様子は見られない。
二人が椿達と対峙し、他の構成員が小隊メンバーを相手にするようである。
その構成員にも情報は行き届いているのか、海音達は攻めあぐねているようであった。
「(周囲は囲われていてあまり大っぴらな動きは出来ない。これだと私の『グリット』はあまり活かせないな〜。となると、この局面を打開できるのは夜宵ちゃんの『グリット』だと思うんだけど…)」
チラッと椿は歪達に目を向ける。
そこでは、椿達と対峙しながらも不敵な笑みを浮かべる二人の姿があった。
「(襲撃から対応まで…ここまで用意周到に動いているところを見ると、夜宵ちゃんに対しても対策をしてそうだよね〜。そうなると迂闊に動くのは危険かな〜…)」
こういった手合いの相手とは良く戦ってきた椿は、夜宵達以上に二人を警戒し慎重になっていた。
しかし、こちらの能力の特性と特徴を知られてる以上、時間をかけても不利なのは変わらない。
夜宵も同じ考えを持っていたのか、攻勢に出るべきだと言う視線を椿に送っていた。
簡単にやられることは無いとはいえ、小隊メンバーも相当に苦戦している。
いつ、大きく不利に傾くともしれない状況に、椿も覚悟を決めた。
夜宵も『グリット』を解放し、完全な臨戦態勢に入り、前に出ようとした瞬間であった。
「ッ!ガハッ!?」
突如、隣に立っていた椿が体を横くの字に曲げ吹き飛ばされていく。
「椿!?」
直ぐに椿のもとへ向かおうとするが、次いで夜宵の身体に強い衝撃が走る。
吹き飛ばされ、地面に数回叩きつけられながらも姿勢を直した夜宵は、周囲を警戒する。
しかし、攻撃した敵の姿は見えず、攻撃された手段も全く分からなかった。
「今のは…?一体どこから!?」
夜宵と同様に椿も周囲を警戒するが、やはりその正体を見極めることは出来ていないようであった。
「(これはカンナさんの能力かな〜?死角をついた攻撃とか〜、空気を固めて攻撃するとか〜?)」
椿は様々な可能性を加味して思考を張り巡らせらるが、その可能性の全てに首を振る。
「(いやぁちょっと違う気がするな〜。今の攻撃は決して死角を突かれたって感じじゃ無かったし〜、攻撃もどちらかと言えば、生身による攻撃っぽかったし〜)」
椿が打たれた謎の攻撃は、不意こそ突かれたが威力が高いわけでは無かった。
更に言えば攻撃も物質などによるものではなく、硬さがありながらもどこか柔らかさを感じさせるものであった。
「(さて、となるとより分からないのはどうやって攻撃をしてきたか…だけ…どっ!!)」
考えをまとめている間に再び椿を攻撃が襲う。
気配も挙動も感じられないため、流石の椿もこれを防ぐことは容易ではなかった。
「(このままじゃジリ貧、かな〜。ここはいっちょ隙を作ってそこへ動きを誘導してみますかね〜)」
そう言いながら取り出したのは、小さく切られた網。
それを『グリット』の素材として使用し、罠として設置する。
そして、設置した左側面に敢えて隙を作り出し、攻撃を誘い込んだ。
がしかし、謎の攻撃はそれを見越して避けたように動き、罠は作動しなかった。
「ッ!?」
再び攻撃をその身に受け、蓄積されてきたダメージにより椿の身体がふらつく。
「〜ッ、私の罠がこんなに何度もかわされたのは初めてかも〜。ちょっと悔しいなー」
脇腹を抑え、額に冷や汗をかきながらも、椿は平静さを装う。
弱った姿を見せるのは、敵に効果的であると思われてしまうからだ。
「椿、こっちへ!」
名前を呼ばれるや否や、椿はそちらを振り返る。そこには、手を差し出す夜宵の姿があった。
すぐに意図を察した椿はその場から離れ、夜宵の側による。
「『闇夜の月輪』」
次の瞬間、夜宵の周囲に黒い闇が広がっていく。
闇は夜宵と椿の周囲を避けるように展開されていき、やがて二人を囲んでいく。
「助かったよ夜宵ちゃん。ちょっとあのままだとヤバかったかも〜」
「見てたところ、さっきから椿を襲ってるのは多分人よね?」
夜宵は闇を展開し、周囲を警戒しながら椿に確認をとる。
「多分ね〜。私の罠は物質であれば対象になるから〜、仮に『グリット』による攻撃であっても反応はする筈だから〜、反応すらしないのはおかしいかな〜」
夜宵の言葉を肯定し、椿は背中合わせになるような位置を取る。
夜宵の『グリット』は万物を飲み込む闇の能力。
それを二人の周囲に展開することで境界線を貼り、近づかせない事を目的としていた。
「(せめて種を明かせるくらいまでは時間を稼ぎたいな〜。このままだと一方的に削られるだけだし〜)」
まずは呼吸を整えようと、その場で一呼吸入れた時であった。
「きゃッ!?」
椿達と少し離れていた位置で『レジスタンス』と交戦していた瑠衣が悲鳴と共にバランスを崩す。
「もらった!!」
その隙を突いて、『レジスタンス』の一人が攻撃を仕掛けようとするが、その前に伊与が割って入る。
「そうはさせないっすよ!!」
『レジスタンス』の一人が繰り出した攻撃を跳ね返すと、勢いそのままに伊与は反撃に映る。
元々身体能力で勝る『グリッター』は、一瞬にして優勢に持ち直すものの…
「わっ!?ちょ、なんすか!?」
今度は伊与の膝の裏部分が不自然に倒れ、姿勢が崩される。
すると再び反撃に転じられ、それも三人が同時に襲いかかって来たために、流石の伊与も苦戦を強いられる。
その様子を見ていた夜宵は、慌てた様子で伊与達の救援に向かおうとするが、椿が肩に手を置き制する。
「落ち着いて夜宵ちゃん。いま皆を助けにいくためにこの闇の領域を解除したら相手の思う壺だよ」
「椿…でもこのままじゃ皆が危険だわ!」
夜宵は尚も動こうとするが、椿は更に言葉を重ねて夜宵を諭す。
「伊与ちゃん達に攻撃を仕掛けるようになったのは、私達に手出し出来なくなった証拠だよ。つまり今謎の存在は、私達に近づかない」
椿は「それなら…」と歪とカンナの二人に目を向け続ける。
「私達はこのまま、あの二人を先に片付けちゃおう。そっちの方が最終的に戦いを上手く運びやすくなるから」
椿の冷静な言葉を聞き入れ、夜宵もようやく冷静さを取り戻していく。
「クヒッ!聞いたでありますかカンナ殿。お二人は自分達を倒すつもりでいるようでありますよ」
二人から険しい目を向けられても、歪は不敵に笑うだけであった。
「ま、この根拠地は自信を持つだけの戦いに勝利して来たから理解は出来るわね」
そうは言いつつも、やれやれといった様子のカンナは、それまでとは一転して強烈なプレッシャーを放つ。
「けど教えてあげるわ。決して『メナス』とのような実直なものだけが戦いじゃないんだってことをね」
これまで対峙してきた『メナス』とは違う殺意の種類に、慣れている椿はともかく、夜宵は体を一瞬震わせながらも、気丈にその圧に耐える。
ジリジリと互いを牽制しながら、両者は一斉に地面を蹴り込んだ…
※後書きと謝罪文です
ども、琥珀です
四ヶ月…四ヶ月です。
執筆人生これ程長く休載してしまったのは初めです。
大変申し訳ありませんでした。
長い闘病生活を二ヶ月ほど続け、そこから気持ちを立て直すのに二ヶ月も要してしまいました。
本作品を読んでいただいていた皆様には、本当に大変申し訳なく思っております。
現在症状は安定しているものの、完治には至っておりません。
そのため、再び休載してしまう可能性もある状況では御座いますが、執筆欲が上がって来たいま、筆を止めるのは正しくないと思い、再開に至りました。
当面の更新は月・水・金の週三回を目標に頑張って行こうと思っております。
休載を重ね、いつまた休むやもわからぬ拙作ではございますが、今再、冒険にお付き合いいただければと思いますので宜しくお願いします。
大変長らくお待たせ致しました。
また本作品を宜しくお願い致します。




