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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第237星:読み合い

「夜宵さんッ!!」



 その声が届き、振り返った時には既に手遅れだった。


 カンナ、歪みから繰り出された攻撃は、既に夜宵達の目の前まで迫っており、どんな防御手段も間に合わない状況であった。



「おっとっと〜」

「そんなことだろうと思ったわよ」



 その二人の攻撃を、同じく二人の人影が前に出て防いだ。


 完全な不意打ちを防がれ驚きの表情を浮かべつつ、歪とカンナの両名は一度距離を取り、目の前に立った二人に目を向ける。


 そこに立っていたのは椿、そしてその小隊に所属する言葉であった。


 状況が掴めず困惑する二人に、椿はいつものふんわりした笑みを浮かべて振り返る。



「いやぁ〜間一髪だったね夜宵ちゃん〜。でも間に合って良かった〜」



 その言葉を聞き、二人が自分達を守ってくれたことを察した夜宵だったが、やがてその視線は歪とカンナへと向けられた。



「今のは…二人ともどうして…」



 自分が攻撃されたという現実を受け止められず、夜宵はその事実が嘘であることを願いながら尋ねた。


 しかし、その期待は歪がこれまで夜宵達に見せてこなかった歪んだ笑みを浮かべたことで打ち砕かれていった。



「クヒッ!!いやぁ惜しかったでありますなぁ!!合流したタイミングでこの根拠地の心臓である夜宵殿を仕留められれば、冷静さを欠いた皆様方も一気に仕留められると踏んでいたのでありますが!!」

「…今のを防がれたのは正直驚いたけれど、それを止めたのが貴方達二人ならちょっと納得だわ。最初から私達のことを警戒していたものね」



 二人が何を言っているのか理解できない、否、理解したく無いという心境に陥った夜宵であったが、そんな夜宵の肩に、椿は優しく手を置いた。



「気持ちは分かるけど夜宵ちゃん〜、残酷だけど受け入れて〜。この根拠地襲撃事件の手引きをした主犯者は〜、彼女達なんだよ〜」



 夜宵はギュッと目を閉じ、ズクンと痛む胸と混乱する頭を整理する。


 二人が裏切り者であったこと、そしてそんな事に自分は微塵も気付いていなかったことを責め立てた。



「自分を責めちゃダメだよ夜宵ちゃん〜。司令官でさえ疑問を持つ程度だったみたいだし〜、彼女達の手口は相当狡猾だったよ〜。夜宵ちゃんのせいじゃない」



 視線は二人から離さず、椿は優しい口調で夜宵を慰める。


 そして、実際それは事実である。


 大和も四人に対し懐疑心を抱き情報を探し求めたものの、怪しいと思われるモノは挙がらず、独自では限界があると判断し、副司令官である桐恵に依頼をした程である。


 特殊な出で立ちである椿でさえもその正体については今の今まで掴めていなかったために、ここまで行動に移す事ができなかった。


 もっと早くに動いていれば、と一瞬後悔したものの、ここまで用意周到に攻め込まれては、最早その手腕を認めることしか出来なかった。



「(まぁだからこそ〜、ここから先は好きにはさせないけどね〜。三咲ちゃん達も頑張ってるわけだし〜、こっちは私達がやらなきゃね〜)」



 謎の生命体、『カルネマッサ』との戦闘に挑んでいる友人の姿を思い浮かべながら、椿は二人と対峙する。



「認めたくない…けど、今の不意打ちといい、攻撃後の発言といい、貴方達が裏切ったのは本当みたいね」



 夜宵が険しい目付きで二人を睨むものの、当の二人はあっけらかんとした様子であった。



「不意打ちには失敗したでありますが、まぁ合流は当初の予定通りであります。ここからは数の量で少しずつ押し込ませていただくでありますよ」



 歪の発言は、恐らく襲撃させている仲間達を呼び寄せ、夜宵達を襲わせようとする算段だろう。


 直接的な対峙こそしていないが、これまでに聞こえてくる銃声と侵攻速度から、歪達の仲間が『グリッター』でないことを、椿は察していた。


 『グリッター』の身体能力は、通常約二倍ほど。単純な計算ならば一人の『グリッター』に対し二人は必要になる。


 『軍』の一員として鍛えてきた夜宵達であれば、更にその数を必要とするだろうが、全員で八名であることを踏まえれば、三十名入れば抗戦することは十分に可能だろう。


 更に言えば、歪とカンナの両名は『グリッター』であり、その本当の実力は未知数ながら相当なものであることが予測される。


 恐らく戦闘を行うのは夜宵と椿の二人。残りは六名となり、『レジスタンス』に求められる必要性人員は更に少なくて済むだろう。


 加えて『メナス』と違い、相手は人間。


 『メナス』の場合は純粋な身体能力が厄介となるが、同じ人間であれば狡猾な『知性』が最も厄介となる。



「さぁ、間も無くここに同志達が集結するであります!!楽しいパーティーと洒落込もうでないでありますか!!」



 その瞬間、歪達の背後で複数の爆発が起こる。


 爆発のした方角は歪達達が招集をかけた『レジスタンス』の同志達が通ってくるであろう道。


 その方向から爆発が起きたということは…



「残念〜。何も備えてないと思ったかな〜?」



 椿達による反撃を受けた、ということである。



「私来るのが遅れたのは〜、きっとこういう動きをするだろうな〜って読んで〜、予め通るであろう道に罠を仕掛けてたからなんだよね〜」



 ニッコリと笑みを浮かべる椿であったが、その笑みはいつもの様なフワッとしたものではなく、不敵なものであった。



「おやおやまぁ……カンナ殿の言う通り、どうにも椿殿には我々の思考パターンが読まれているように感じるでありますな」

「ここまでハッキリと読まれると、ちょっと嫌悪感を覚えるわね。もしかして貴方、私達と同業者なの?」



 味方がやられたというのに対して動揺した素振りを見せない二人を訝しげに思いながら、椿は二人の発言に眉を顰める。



「一緒にしないで欲しいかな〜。()()()()()()()違うよ〜」



 表情は変わらず、しかし口調は鋭く椿は答えた。


 歪はジッとその様子を見ていたが、やがてどうでも良いことだと思い直したのか、興味を失う。



「数を入れて攻め込んできたみたいだけれど見込み違いだったわね。そんな簡単にやられる程この根拠地は甘く無いわよ」



 もはや完全に歪達を敵と認識した夜宵が、交戦態勢をとりながら話しかける。


 夜宵達は合流し、『グリッター』は全員で六人。対して孤立した歪達は二人。


 実力を兼ね備えていようと、それだけで跳ね返せるような状況でないことは明らかであった。



「早いうちに投降した方が身のためだよ〜。今なら司令官達にも口添えを……ッ!?」



 危険を察知したのは椿だけではなかった。


 夜宵含め全員がその場から飛び退くと、次の瞬間、攻撃と思われる衝撃が起こる。


 負傷したものは一人もいないものの、全員が周囲を警戒し、夜宵、椿の二人が睨むようにして歪達をみる。


 対して歪はあっけらかんとした表情で笑い、そして答えた。



「残念、何も知らないと思ったでありますか?」



 それは先程の椿の言葉への意趣返しとも取れる発言。


 その意味を理解する前に、答えは先に現れた。



「つ、椿さん!周りに敵が…!!」



 海音の言う通り、周囲には『レジスタンス』だと思われる敵が椿達を取り囲んでいた。



「佐久間 椿、『グリット』は『鮮美透涼の誑惑(ラオム・クラルハイト)』で、物質を(トラップ)に変える能力。罠は透明化し視界には入らず、更に複数の物質を組み合わせることで状況に合わせたモノへと変化できる…ん〜万能な能力でありますな!」

「……私の能力を…」



 歪の自分の能力の説明を聞かされ、椿は不快そうな表情を浮かべる。



「まぁそれさえ分かれば対応は可能であります。先ほど椿殿が仰られた通り、同志達が通るであろう道筋に罠を仕掛けることを見越して、その地点にダミーを投げつける。あとは罠が誤作動を起こして暴発する算段であります。計画通りでありましたな!」



 説明をされただけでなく、行動まで見透かされていたことに、更に不愉快さを覚える。


 歪は椿の能力、特性、性格を自身の『グリット』である『情報漏洩(スティール・リーク)』で読み取っていない。


 しかし、それ以外の小隊メンバーなどの記憶、情報をもとに総合的に判断し、行動パターンを読んでいた。


 これが、カンナが歪を作戦の要としている理由である。


 戦力的に劣ろうとも、歪はそれを補ってあまりある能力がある。


 故に、今回の作戦のリスクが高い中でも、決行に至ることができたのである。



『あなた方の能力は全て把握してるでありますよ。性格も、行動パターンもね。だから、先ほどの言葉、そっくりそのままお返しするでありますよ」



 そう言って歪は、再び歪んだ笑みを受かべ、夜宵達に語りかけた。



「早いうちに投降した方が身のためでありますよ。今なら、いたずらに命を失う前に救ってみせるであります」



 ギリリッ、という歯を食いしばる音が鳴り響き、両者の視線がぶつかり、火花が飛び散っていく…

※後書きです






ども、琥珀です


もしかしたら、今の投稿ペースは今の私に合わないかもしれないと思い始めました


おかげさまでなんとか書き連ねることが出来ていますが、そのペースはギリギリで、質が懸念されてしまいます…


今後週三のペースにすべきかを検討していこうと思います…


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝更新れますので宜しくお願いします!

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