第236星:『レジスタンス』の編成
『レジスタンス』は、かつて『軍』に所属していた人物が離別したことで生み出された、非公式の組織である。
細部から目を離せば、その目的は『グリッター』の待遇の改善、及び差別からの解放等に概ね焦点が充てられている。
そのため、現行の世界の風潮を作り上げ、さらには差別を黙認している『軍』とは、水面下での冷戦状態にある。
『レジスタンス』という組織が公に表に出だしたのは、今から三十年程前である。
設立自体は百年程前からされていたとされ、表の世界に現れたときには、既に組織として十分に成り立つほどに大きなものとなっていた。
その理想と思想に惹かれ、『差別』という過酷な現実から逃げ出したいが為に、当時の『軍』から脱退する者や逃亡する者が後を絶たず、『レジスタンス』に加わるような動きが多く見られた。
肥大化する組織とその動きを危険と認識した当時の『軍』上層部は、明確に『レジスタンス』を危険な組織と定め、攻勢に出る。
しかし、組織として強力に成長を続けた『レジスタンス』は、整った戦力でこれに臆する事なく反撃に出た。
その結果、それから数年の間は、『軍』・『レジスタンス』・『メナス』の三者による戦いが繰り広げられる時代へと成っていった。
これは、現代において『三つ巴戦争』と呼ばれている。
しかし、秘密裏に水面下で行われていた筈の『グリッター』同士の争いは、少しずつ人々知れ渡るようになり、『グリッター』に対する明確な恐怖を植え付ける結果となっていった。
そして、この経過は『レジスタンス』が望み掲げてきた思想に反するといった考えを持つ者が現れだした。
『レジスタンス』は人々から恐れられるのではなく、共に生き、平和を取り戻すことに大義があるという『穏健派』が生まれたのである。
対して、人々に従属するのではなく、『グリッター』がいかに重要且つ必要な存在であるかを知らしめることに意義があるという『過激派』も根強く残り、これにより『レジスタンス』という組織は真っ二つ分かれていった。
結果、『レジスタンス』は内部が浮いた状態に陥ってしまい、また『過激派』の思考についていけなくなった一部の者が、『穏健派』に寝返る、又は『軍』に戻るなどの行動が続いたことで、『過激派』は衰退の一途を辿っていくこととなる。
これにより権力と支持を集めた当時の『穏健派』のリーダー格は再度『レジスタンス』をまとめ上げ、『軍』の会合を経て休戦状態と至ったのである。
『過激派』は『穏健派』に半ば取り込まれるような形にはなったものの、その勢力は未だ健在で、表立った行動を控えながらも、好機を狙い続けていた。
そして、その好機の一つが、今回の千葉根拠地の襲撃である。
目的は直近の強大な『メナス』と交戦した際のデータ、及びその敵と渡り合った根拠地の面々のデータの回収。
そして、『レジスタンス』という戦力の誇示である。
進出当初こそ、『軍』と渡り合うほどの実力と危害を見せていた『レジスタンス』であるが、内部分裂と共にその勢いは沈黙し、『冷戦』などという程の良い単語によって、半ば協力し合うような形となっている。
その原因は『軍』そのものでありながら、その最高司令官である護里に大きな要因があった。
護里は『レジスタンス』の内部が崩れつつあることを察すると、直ぐに穏健派のリーダーに内通文を送りつけ、休戦を申し出たのである。
この休戦を受け入れることで、穏健派は『軍』をバックに使用することが出来るようになるため、権力争いを優位に進めることが可能になることを示唆していた。
当初、穏健派のリーダーはこの申し出を受けるか頭を悩ませていた。
穏健派と言えど、『軍』から抜け出した『レジスタンス』の一員であり、その矜持捨てることに迷っていたからである。
しかし、過激派の暴走は苛烈さを増し、脅迫や拷問などでその勢力に着手し出したのである。
これにより、穏健派リーダーの決意を固め、申し出を受ける覚悟を決める。
『軍』の後ろ盾を手に入れたことで、過激派の勢力は一気に沈黙していくようになる。
流石に戦力が拮抗していた穏健派と同時に、『軍』を相手にすることは不可能と判断したのである。
しかし、過激派もそれで収まるはずがなく、一発逆転、勢力増強を目指し、今回の計画に至ったのである。
そして、事態は今に至る… ────
●●●
夜宵に名を呼ばれ、歪とカンナの二人は僅かに警戒心を高める。
しかし、それとは対照的に、夜宵は二人の身を案じたような様子を見せていた。
「良かった、二人とも無事だったのね」
演技…には見えない。
どうやら夜宵にはまだ二人の正体は気付かれていないようであった。
歪とカンナは一瞬顔を見合わせると、小さく頷きあい、やがてこれまで浮かべてきたような笑みを浮かべる。
「そちらこそ!ご無事で何よりであります!なんて、みなさま程の方々がそう簡単にやられる筈がないでありますがね!」
歪の言葉に夜宵は一瞬苦笑いを浮かべるものの、直ぐに気を引き締め直した表情へと戻る。
「いまこの根拠地が襲撃されているわ。数も正体も不明。通信機がやられてるのか、司令官達と連絡が取れない状況なの」
「……ほぅ、それはそれは…」
心の中で「(なによりであります)」と付け加えながら、歪は夜宵から根拠地の混乱具合を引き出していく。
「それで、我々の取る行動は?」
「数も正体も、更に言えば目的も分からないわ。広範囲の敷地面積だから、本来であれば戦力を分散させたいところだけど…」
夜宵が判断に迷っていることを察した歪は、真面目な表情を作り、夜宵に提案する。
「それは危険であります!正体が不明なのであれば、現在この根拠地に残っている二小隊で合流し、堅実に事を運ぶべきであります!」
夜宵はまだ悩んでいた様子であったが、歪の言葉に背中を押されたのか、やがて小さく頷き、歪の提案を受け入れた。
「そうね。それじゃあまずは急いで椿と合流しないといけないわね。通信機が無いから少し時間はかかりそうだけど、移動しつつ事態に対処しながら合流を目指しましょう」
夜宵小隊の面々がそれぞれ了承の返事を返す中、歪は心のなかでほくそ笑んでいた。
「(クヒヒッ!狙い通りであります。これでとっとと合流して貰えれば、ここに集まった同志達を集中させて一気に叩けるであります。分散されるとちと厄介でありましたが、これは上手く事が運ばそうでありますな)」
カンナもうまく事が運べていることを理解し、表情に出さないもの内心は笑っていた。
「(厄介なのは異質な能力と、強いカリスマ性を持つ|この女、そして私達をやたらと警戒しているあの女の二人。その二人が合流してくれるのであれば、二人は私達で対処できる。残りのメンツはここに集まった同志達を総動員すれば押し切れるわ。上手く事が運べているわね)」
先を行く夜宵達の後を追うなか、歪は密かに端末を操作。
『軍』が作成したものでは無い通信機器を使用し、現在襲撃を実行している一同にメッセージを作成し、襲撃予想ポイントを送信する。
「あ、夜宵さん達だ!」
間も無くして、遠くの方にもう一つの小隊である椿小隊の面々が見えてくる。
別行動をとっていたのか、そこに椿の小隊は無かったが、通信機器が無くともスムーズに合流出来るあたり、流石と言えるだろう。
がしかし、この時ばかりはこれがマイナスに働いていた。
合流を待っていた二人は最大の好機が訪れたことを確認し、ニィ…と笑みを浮かべる。
「〜ッ!?夜宵さん!!」
対面から向かってくる七の切羽詰まった叫び声を聞き、夜宵は眉を顰める。
そしてその視線が、自分の背後に向けられていることに気が付き、後ろを振り返る。
その視線の先には、夜宵達目掛けて攻撃を繰り出す、歪・カンナの姿が映っていた…
※後書きです
ども、琥珀です
SFなのかローファンなのか悩みましたが、とりあえずローファンタジーで通します笑
これを機にSFでは?という意見が増えたらSFってことにします笑
本日もお読みいただきありがとうございます!
明日も朝更新されますので宜しくお願いします!




