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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第234星:通信不能

「…三咲さん、さっきから根拠地との連絡がつかないようなんだが…」



 『カルネマッサ』の対応を続けながら、三咲小隊の一人である紬が、異変を感じ三咲に伝える。



「分かっています。通信機の故障も考えられますが、全員の通信端末が一斉に途絶えたとなると…」

「…!まさか、根拠地で何か時間が!?」



 会話の意図に気付いた、同じく三咲小隊の一員であるタチが、動揺した様子で二人に尋ねる。


 事態に気付いていなかった凛も事の重さに気が付き、オロオロした様子で三人を交互に見渡す。



「可能性は高い…ですね。直ぐにでも確認のために急行したいところです……」



 そう言いかけたところで、三咲小隊の面々は一斉に散開し、回避行動に移る。


 次の瞬間、今のいままで四人が固まっていた箇所を、レーザーが通過していった。



「…ッ!段々と私達を正確に捉えられるようになっている!?」



 朝陽を最初に襲ってから、『カルネマッサ』の動きは次第に活発化していった。


 海面の移動速度が上がり、更にこれまで移動以外に行動が見られなかったにも関わらず、ここにきて三咲達を牽制するかのように攻撃をする行動が見られていた。



「通信が切れる前に司令官から聞いた話だと、『カルネマッサ』は陸地へ向かっているようです。正体が『メナス』であるのなら、目的は人間…つまり、私達も標的ということになります」



 随所で繰り出される攻撃を回避しながら、三咲は僅かな情報を頼りに推測を重ねていく。



「それは分かるけどぉ、それと正確性を増してるのは何が関係してるのぉ?」



 回避をするなかで近くまで寄っていた華が尋ねる。



「元々『メナス』は、感覚的なのか機能なのか、私達人間を感知できる能力を持っています。『カルネマッサ』がその能力を扱えるようになったとしたのなら、私達の動きを読み取って正確性を増すのは考えられることです」



 三咲の説明に納得する動作をする余裕もなく、『カルネマッサ』は再びレーザーを放つ。


 厄介なのは正確性を増した点だけでなく、その動作が全く読めないところである。


 通常の個体の『メナス』であれば、発射前に眼が輝き、更に訓練次第で視線から射線を読み取る事が出来る。



 『メナス』がレーザーを放つ仕組みは、人間でいう水晶体が光を屈折させ一部分に集約される。


 そこに『メナス』特有のエネルギーが溜められることで放たれていると言われている。


 しかし『カルネマッサ』には該当となる眼は無く、その全身は単なる肉塊にしか見えない。


 つまり射線を読み取ることは不可能に近く、加えてどこから放たれるのかも不明のため、かなりの脅威となっていた。



「距離を詰めたいところですが、攻撃の出所が読めない上に、仮に近付けても攻撃の真正面かも知れません!!困りましたね!!」



 『カルネマッサ』の脅威を身をもって体感していた一同は、全く困った様子を感じさせない奏の言葉により、一層その事を痛感させられていた。


 しかし、この状況においても、三咲は冷静沈着に分析を進めていた。



「確かに出所の見えない攻撃は厄介ですが…それについてはもう少しお待ち待っていて下さい。恐らく()()()()()()()()()()



 三咲が溢した一言に、全員が驚きの表情を浮かべる。



「解決できるって…本当三咲さん!?」



 堪らず尋ねたのは凛。


 疑いでは無く単純に驚き素直な言葉が出ただけであったが、三咲はその純粋な言葉にもしっかりと頷いた。



「はい。ですが今はまだ検証データが足りません。この速度なら陸に到達するまであと30分は掛かるはず。それまでに必ず解決してみせます」



 三咲は何の根拠もなくこういった発言をする人物ではなく、そして言ったからには必ず結果を出すことを、全員が理解していた。


 だからこそ、一同は先ずは三咲にデータ収集に集中してもらう為に守りを固める姿勢を見せていた。


 そんな中でただ一人、朝陽だけがこの戦闘に集中出来ずにいた。


 その理由は明白である。



「透子ちゃん、無値ちゃん…」



 突如として姿を消した二人が原因である。


 通信が取れなくなった事で、一時的に三咲が指揮を取る事になった現状で、三咲は一先ず二人の案件を後回しにすることに決めていた。


 万が一、今の通信障害の原因に二人が関わっていたとしても、根拠地には大和がおり、咲耶がおり、そして夜宵、椿もいる。


 事が起きていたとしても、それだけのメンバーがいれば十分に解決出来ると踏み、今は『カルネマッサ』の対応を行うことが優先であると判断したしたのである。


 がしかし、戦線を離脱していた三咲とは違い、二人と長い時間を共にしてきた朝陽は、そう易々と割り切ることは出来なかった。


 咲耶との通信で意思を示した朝陽ではあったが、流石にこの状況を流すのは困難であった。


 そして、朝陽もこの状況下で何も気づかないほど愚かではなかった。


 透子と無値が姿を消した瞬間、大和達との通信は途切れた。


 真っ先に考えられるのは根拠地に異変があったという可能性であるが、そうなれば真っ先に怪しまれるのは姿を消した二人、そしてその仲間である歪、カンナである。


 更にいえば朝陽は、二人の悩みを聞いており、そして少なからず葛藤があるのを知っていた。


 そして葛藤する心を持っているからこそ、朝陽は二人のことを最後まで信じていた。


 しかし、結果としてその信用は裏切られた。


 二人はその葛藤に屈し、根拠地の襲撃に至ってしまったのである。


 本音を言えば、朝陽は今すぐ根拠地に向かいたかった。


 例え事実として根拠地襲撃に至ってしまったとしても、二人が何かしらの迷いを持っていることも事実である。


 襲撃したとなればその罪を負うことは免れないだろうが、朝陽に想いのほんの僅かでも話してくれた迷いと葛藤に訴えかければ、二人は踏みとどまってくれるかも知れない。


 そんな考えを朝陽は持っていた。


 もちろんそれは朝陽の希望的観測に過ぎない。


 それでも朝陽は、そのほんの僅かな希望を抱き、二人のことを諦めることが出来なかった。


 しかし、実際に行動に移るのは憚れた。


 何故なら、朝陽はこの対『カルネマッサ』戦においての作戦のキーマンであるからだ。


 これ程の巨大な図体の敵を、一気に消滅させられるのは恐らく朝陽だけだろう。


 そして大和達は勿論、三咲もそれを計算に入れて作戦を練っている筈である。


 朝陽の希望的観測と我儘で、この場を離れるわけにはいかなかった。


 透子達の救出に向かいたいという思いと、この場を離れる訳にはいかないという責任感の二つに挟まれ、ダブルバインド状態となっていた朝陽は、迷いから視界が狭くなっていた。



「『目的地変更ディスティネーション・ホールド』!!」



 次の瞬間、朝陽の目の前に人影──奏が立ち、目前にまで迫っていたレーザーの進行方向を曲げることで朝陽の身を守っていた。



「あ…あ、ありがとうございます、奏さん!!」



 すぐに状況を理解した朝陽は、サッと顔を青ざめさせ、奏に頭を下げた。


 しかし奏は怒った様子はなく、いつものハツラツとした笑顔を浮かべたまま振り返った。



「いえいえ!朝陽さんが分かりやすく悩んでいらしたようでしたので近くに居たまでです!!」

「うっ…ご、ごめんなさい…」



 優しさ溢れる発言にも思えるが、実際はただ単に心を抉っていることに奏は気付いていない。


 それをフォローするためか、梓月、華の二人も朝陽の側に近寄る。



「まぁそれだけ素直に悩めるのはぁ、朝陽ちゃんの良いところだと私は思うよぉ」



 華がにこやかに笑って答えると、梓月はやや苦笑いを浮かべて続く。



「そうですね。戦闘中に集中出来ないのはあまり褒められたことではありませんが…」

「うぅ……ごめんなさい…」



 梓月の言うことは正論で、朝陽は再び落ち込んだ表情で謝罪する。



「ですが、朝陽さんが迷っている理由はよく分かります。お二人のことを考えていたのでしょう?」

「あははぁ、相変わらずだねぇ朝陽ちゃん〜」



 完全に自分の内心を看過されてしまっており、朝陽は「うぐっ……」と言葉に詰まる。




「朝陽さんが頭を悩ませている時は、大抵人を慮っているときですからね!素晴らしいことではありますが!!」



 どストレートに褒められ、先程までの悩んでいた表情はなりを顰め、うっすらと頬を赤らめていた。



「それじゃ〜朝陽ちゃん行ってらっしゃい〜」

「……えっ!?」



 聞き間違いだと思い、朝陽は思わず聞き返してしまう。


 しかし華はにこやかな表情を浮かべたままであった。



「ここは私達が受け持ちます。貴方は根拠地へ行ってください」



 そして、梓月もこれに加わってくる。



「そ、そんなこと出来ません!だって、私がここを離れちゃったら…」

『そうです、《カルネマッサ》に対応できる者が居なくなってしまいます』



 離れた位置から、通信機で会話を聞いていた三咲が強い口調で三人を制する。



「大丈夫だよ椿ちゃん〜。『カルネマッサ』については私に考えがあるんだぁ」



 しかし華はこれに臆することなく、いつものようなにこやかな表情で答えた。



『…それは、朝陽さんがこの場に残って攻撃を仕掛ける、という手段よりも良い手段なのですか?』

「それよりも良い、とは言えないけどぉ、それに匹敵する可能性とは言えると思うよぉ」



 まだ疑心暗鬼な三咲が華に問い詰めるも、華はこれにも即答する。



「(華さんは仲間に優しく甘い方ではありますが、部別はついている方。それに何の考えもなしに発言する方でもない…その華さんがそう言うのだから…)」



 僅かに悩んだ末、三咲は三人の言うことを了承し、朝陽を送り出すことを許可するとこにした。


 華達の言う通り、朝陽が戦闘に集中出来ていない方は三咲も気付いていた。


 しかし、朝陽が居なくては『カルネマッサ』に対応できないと考え、三咲は敢えて触れなかった。


 しかし、それに代わる作戦があるというのならば、朝陽を送り出した方が、根拠地の救出にも手を加えられれため、理にかなうと判断しのである。



『分かりました、華さんを信じます。朝陽さん、根拠地を宜しくお願いします』



 本音を言えば、三咲も根拠地のことは心配しており、内心は不安であった。


 送れる戦力は朝陽ただ一人。それでも、朝陽ならばという安心感を覚えることも出来た。


 その言葉に秘められた想いに気付き、朝陽は一瞬逡巡しながらも意を決したように頷いた。



「分かりました!わたし、根拠地に行ってきます!!」



 そういうと朝陽はゆっくりと奏達から離れていった。



「根拠地を救ったら必ず戻ってきます!みんなも連れて帰ってきます!!だから、皆さんどうかご無事で!!」



 全身にカナリア色の光を纏い、朝陽は高速で根拠地の方へと飛翔していった。



「…行ってしまいましたね。華さん、これで作戦の話は嘘とか言ったら本気で怒りますよ?」



 朝陽を見送る最中、近くまで寄っていた三咲が華に尋ねる。



「アハハ〜大丈夫大丈夫。そんなこと言わないしぃ、作戦があるのもホント〜だよぉ」



 ふんわりと笑みを浮かべながらも、華は嘘をついていない表情で返す。



「それで、作戦というのは?」

「んとね〜」



 三咲が尋ねると、華はゆっくりと説明を始めた…

※後書きです







ども、琥珀です


最近前書きに登場人物紹介がない事が多いな…と思われるかもしれないですが、一応主要キャラしか出ていない現状なのと、コロコロと場面が変わるので、必ずしも前書きのキャラが長時間出るわけでも無いので、かえって分かりづらくなるかな、と思い、敢えて今は記載しておりません


本編で本格的な戦闘シーンなどが始まれば、印象付けたいのでまた再開します。


……決して打ち込むのがめんどくさいとかそんなんじゃn…


本日もお読みいただきありがとうございました!

明日も朝に更新されますので宜しくお願い致します!

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