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Eclat Etoile ―星に輝く光の物語―  作者: 琥珀
9章 ー第三勢力侵攻編ー
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第233星:『レジスタンス』襲来

 その時、根拠地に再び警報音が鳴り響いた。



「この警報は?誤報?」



 大和は慌てた様子を見せず咲夜に尋ねると、咲夜も冷静に原因の調査を始めた。


 直ぐに原因を突き止めた咲夜であったが、その表情はみるみる険しくなり、目を細めていった。



「…警報は正常です。間違いなく襲撃を伝えています」



 咲夜はやや怒気を孕んだ声色で大和に報告する。



「但しこれは『メナス』の襲撃により慣らされたものではありません。警報対象は()()



 モニターから目を離し、咲夜は大和の方を見ながら「そして」と続ける。



「襲撃対象はここ、()()()()()()()






●●●






「ちっ…」



 二度目の警報音が鳴り響いた瞬間、椿は人知れず舌打ちを鳴らしていた。



「(見張っていたのに、三咲ちゃんに会いに行った隙に姿を見失った。タイミング的にもまず間違いなくあの二人が絡んでるよね)」



 『アウトロー』としての直感が働き、加入した時から四人を警戒していた椿であったが、三咲が復帰したことで一瞬気が緩み、目をつけていたカンナ達を見失っていた。



「(私の中では、あの四人が『アウトロー』であった記憶はない。私が抜け出した後に成った可能性もあるけど、それにしては戦い慣れてるし、それに四人の関係も深そうだった)」



 根拠地内を移動し、カンナ、歪の両名を探しながら椿は考え続ける。



「(『金城 乖離(あの男)』が現れたから徒党を組むようになったとはいえ、元々『アウトロー』は一匹狼の輩ばかり。四人が『アウトロー』である線は薄い)」



 当たりを見渡すも、やはり二人の姿は見当たらなかった。



「(だとすれば考えられるのは…)」



 その間に椿は一つの答えを導き出し終えていた。



「あの四人は…『レジスタンス』ね」



 そう呟いたのと、椿の通信機に大和から声が届いたのは同じタイミングであった。



『椿くん、いま警報を聞いていると思うが、この警報は根拠地襲撃によるものだ。直ぐに小隊メンバーを集めて夜宵くんと合流し……… ────』

「……?司令官〜?」



 大和からの通信は途中で途切れ、耳元の通信機にはノイズが走るだけとなっていた。


 初めは故障を疑った椿だったが、周囲にいた『軍』関係者も通信機を手に取り首を傾げていたため、故障ではないとすぐに気が付く。



「ちっ、通信妨害ね…」



 それも襲撃者の手によるものであることを理解し、椿は再び舌打ちする。



「…何はともあれ、私一人じゃもう対処しきれない、か。聞き取れた部分の司令官の命令通り、小隊の皆を集めて、夜宵さんと合流するのが良さそうね」



 完全に後手を踏まされたことに憤りを覚えながらも、椿は一旦それを心の奥底にしまいこみ、夜宵達との合流を目指すべく再び移動を開始した。






●●●






「カメラに映った映像から、顔認証で何名か識別できました。識別した人員から、襲撃者は『レジスタンス』であると思われます」

「『レジスタンス』…それでボクの情報網にも掛からなかったのか…」



 『レジスタンス』は『アウトロー』とは異なり、一つの組織としてキッチリと成り立っている。


 そのため、『軍』に匹敵するほどの情報統制や、規律が行き届いている。


 様々な界隈に情報網を持つ大和ではあるが、個人ではなく組織を相手にするとなると、その情報を手に入れるには一筋縄ではいかない。



「で、ですがどうして根拠地を襲うんでしょうか!?」



 『メナス』との戦闘のモニターに慣れてきた夕ではあるが、こういった不足の事態の経験はなく、混乱した様子を見せていた。


 しかし、夕はまだ実戦経験がなく、加えてまだ年端もいかない少女であり、動揺するのも無理はない話である。


 大和もそれを理解しており、これ以上混乱させないようにするためにも、冷静に、それでいて緊急性を感じさせないように苦笑いを浮かべて答えた。



「それが分かれば苦労はしないんだけどね。残念ながらそういった思想が共有出来ないから、こうして離別してしまっているわけなんだけども…」



 先程のような意図はあるものの、大和が口にした理由も嘘偽りのないものである。


 タイミングさながら意図の読めない襲撃に、ただでさえ『カルネマッサ』の出現で頭を悩ませていた為に、その現実が重くのしかかる。



「(朝陽くん達とはおろか、根拠地内にいる夜宵くん達とも連絡が取れない。これだけ強力な通信障害は敷地外からは不可能なはず。となると……)」



 大和は机に手をつき、その上に額を乗せてため息をこぼす。



「(出来れば認めたくは無かったけど…こうも状況証拠が出てしまったら受け入れるしかないか…あの四人は『レジスタンス』の一員だ)」



 大和は四人について身辺調査を続けていた。


 しかしそれは、疑心の念も有りながら、それよりも身の潔癖を証明したいと言う想いも込められていた。


 しかし、それは叶わず、奇しくも大和は自分が抱いていた懐疑心が正しかったことを証明してしまった。



「(彼女達が襲撃の手引きをしたのは間違いない。でもまだ、まだ気に掛かっていることがある。その情報次第で対応が大きく変わることになるんだが…)」



 大和は気掛かりになっていることで迷いを見せるが、直ぐにいま陥っている状況を思い出し、払い落とす。



「咲夜、ここの指揮はボクが全部受け持つ。君は外に出て夜宵君達の指揮を直接執り、根拠地側の問題に当たってくれ」

「…!了解しました」



 大和が導き出した答えは、二つに指揮系統を分けることであった。


 『カルネマッサ』の対処についても、『レジスタンス』の対応についても、どちらも一筋縄ではいかない状況にある。


 しかし幸いなことに、この根拠地には、そういった事態に対処できる頭脳が二人存在している。


 言うまでもなく大和と咲夜の二人だ。


 それぞれの事態にそれぞれ一人ずつが当たることで、その負担を減らそうと言う狙いである。


 大和の意図を察し、直ぐに行動に移るべく移動を始めた咲夜であったが……



────ビーーーーッ!!



「!?」



 司令室から外へ出るための扉に触れた瞬間、エラーを知らせるブザー音が鳴り響く。


 咲夜はもう一度試すものの、結果は全くの同じであった。



「これは……」



 全く開く気配のない扉を見つめた後、咲夜は無言で振り返り夕の方を見る。


 夕は咲夜に言われる前に動いており、その原因を探り始めていた。


 そして原因を突き止めた夕は、目を見開き驚きの表情で答えた。



「し、司令室周辺のシステムアクセス権が遮断されています!!ハッチ、通信機、モニター等全てのアクセスが拒否されてます!!」

「つまり、外部とは完全に孤立してしまった…と言うよりは閉じ込められてしまった、というわけか」



 大和は悔しげに瞼を閉じ、ギッ!と音を鳴らしながら背もたれに体重を預ける。



「やられたね。ボク達を封じる為にこんなカラクリを仕掛けてくるなんて。まさか『軍』の電子回路をハッキングする程の技術力を持っているなんて、完全に誤算だ」



 完全に後の手を踏まされたことで、三人のいる司令室には重苦しい雰囲気が漂う。


 その中で唯一席から立っていた咲夜は、諦めた様子を微塵も感じさせない声で大和に尋ねる。



「どうしますか?このままでは両方とも対処できませんが…」



 咲夜の言葉を聞き、大和は目を開いてゆっくりと身体を起こす。


 そして僅かに頭の中で思考を張り巡らせ、やがて一つの結論を導き出した。



「よし、いまは待とう」



 その答えに咲夜は意図を測ろうと黙り込み、対照的に夕は驚いた様子で大和に聞き返した。



「ま、待つって…何もしないってことですか!?それじゃ根拠地は、朝陽さん達はどうするんですか!?」



 これまで出来る限り平静を装ってきたが、それも限界を迎えたのか、堰を切ったかのように慌てた様子を見せる。


 そんな夕を宥めるように、大和はいつものような温和な笑みを浮かべ、優しく諭す。



「落ち着くんだ夕くん。いまこの現状でボク達に出来ることは、ハッキリ言ってない」



 遠回しな言い回しをすることなく、大和はハッキリと夕に告げる。



「システムがジャックされているなら奪い返せば良いけど、これは完全な遮断を目的にしている。これを戻す為には、司令室との機能を遮断している機器を破壊しないといけないけど、ここに閉じ込められているボク達にはそれは出来ない。残念ながら手詰まりだ」



 これまらしくなく、アッサリと敗北宣言をする大和に、夕は何とか言い返そうとするも、そもそもそう言った機能を管理する夕が何もできない為、何も口にすることは出来なかった。



「……本当に、打つ手はないんですか…?」



 悔しさと、憤りで涙声になりながらも、夕は絞り出すような声で最後に大和に尋ねる。



「無い。()()()()



 その含みのある言い回しに、何か意図があることを察した夕は、パッと大和の方を見る。


 そして大和は、ニコッと笑みを浮かべ、再び夕飯の言葉に応える。



()()()に出来ることは、いまはない。けれど、この根拠地にいる人員はみんな優秀だ。ボク達が指示を出さなくても、この事態の解決に向かって動く事が出来るはずだ」



 地下に位置する司令官から、地上を見上げるようにして上を向く大和は、夕だけでなく、その仲間達に向けるようにして呟いた。



「だから信じよう。彼女達が、この局面を打開してくれることを」



 そう呟いたのち、大和は再び夕の方へと向き直り続けた。



「そしてボク達も準備を進めておこう。みんながこのシステムのブロックを解いてくれた時に、すぐに最善の指揮をとれるように」



 諦めた様子など微塵もなく答える大和の言葉に、夕はパァッと笑みを浮かべ、浮いていた涙を拭うと、「ハイッ!」と力強く答えた。


 その様子を微笑ましそうに見届けた後、大和はどこでも無い方に視線を向け、これまでとは一転して鋭い目付きを見せた。



「(このまま終わるボク達じゃないぞ『レジスタンス』の諸君。この根拠地は一枚岩じゃない。底力を見せてあげるさ)」

※後書きです







ども、琥珀です


全然小説とは関係のないことなんですが、感情的になって、自分の主観だけで物事を批判するのは絶対にやめた方がいいです。


例えそれが正しい内容であったとしても、良くない印象を持たれることが多いですし、最悪取り返しのつかないことに…


感情ってコントロールするの難しいですけどね…特に今のご時世だと…


でも、落ち着いた状態での発言は、賛同を得られることもきっと多いはずなので、まずは冷静に捉えて発言しましょうね。



……これ朝に更新されるのに何でこんな重たい内容に…


本日もお読みいただきありがとうございました!

土日はお休みとなり、月曜日にまた更新されますので宜しくお願いします!

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